燃費改善グッズと可変背圧マフラー


可変背圧マフラーのアイディアは古くからあり、我が国の量産車としても日産がセドリック・グロリアでマフラー後部の排気管にシャッタバルブを付けた例がある。
これがパワー特性にどの程度貢献したのかは記憶にないのだが、背圧を上げる事による静粛性の向上という面に於ける効果は確かに認められた。
ただしこの機構は早々に姿を消す事になる。
セド・グロにこの機構が搭載される数年前、私自身も同様なものを試した事がある。
ただしセド・グロのように自動開閉式のバタフライバルブではなく、ネジをゆるめてバタフライバルブの位置を決め、再度ネジを締め直して固定するというきわめて原始的なものだった。
きっかけはZ31(フェアレディーZのV6エンジン搭載初期モデル)に社外品マフラーを取り付けてみた事に始まる。
そのマフラーは某雑誌で賞賛?されていた海外製のもので、いわゆる「ヌケが良く音もこもらない」という謳い文句のもの。
早速それを購入し自力で交換を行ったが、ヌケの良さは低速トルクの目に見える減衰につながった。
ターボ車だったのでマフラー背圧の多少の変化は関係ないかなと思ったし、むしろブースト制御アクチュエータの動作点変化からブーストが上がる効果がメリットになると思っていたのだが、実際には運転しにくい状態が強調される結果になった。
実はこのZ31は発売後にカム作用角を小さくするという変更(希望者のみディーラで行われた)を行ったほどアイドル安定性や低速トルクに難のあったエンジンなのだ。
音に関しても、消音部体積が小さい事もあって爆音とは行かないまでもかなり音量は上がってしまった。
そこでマフラー出口にシャッタバルブを付けてみようと思い、真鍮板(加工のしやすさで)とステンレスシャフトを蝋付けして自作した。
もちろんこれの効果は確認出来たのだが、やがて熱と圧力でバルブは歪んでしまった。
結局それを機会にノーマルマフラーに戻す事になった。
市販車でこの可変背圧システム採用第2弾はフェラーリではなかっただろうか。
シャッタバルブの位置はメインマフラーの前方だと思われたが、これも記憶に定かではない。
ちなみにこれも1モデルだけの装備で、現在は使用されていないと思う。


吸気側に可変カムタイミングや可変吸気管長を採用する車両は多いが、排気管にこれらの機構を使った車両は数えるほどしかない。
自動車メーカは排気管と吸気管をセットで考えて設計する訳なのだが、排気管の方はいじくり回しても効果が少ないという事もあって積極的には可変化が行われないのだろう。
ただ燃費とパワーの両立という点を踏まえるならば、このマフラー背圧コントロールはいくらかの効果があるのではないかと考えられる。
しかし自作するとなるとシャッタバルブの開閉コントロールが面倒で、しかも可動部は排気ガスや熱や圧力によって(にわか作りでは)早々に傷んでしまう。
かといってディーゼルエンジン車の排気ブレーキみたいなものを流用するのはかなり大げさ。
シャッタバルブ無しで背圧をコントロール出来ないだろうか?

表面のなめらかな球体の空気抵抗係数(CD)は0.45程度なのだが、それは球体付近の流速によって変化する。
この球体が置かれる流速が130m/S程度になると臨海域に達し、CDは0.1程度まで小さくなる。
野球のボールにもこれは当てはまり、投手が剛速球(野球のボールだと時速200Km/h以下で臨海域に入るらしい)を投げれば、その速度を殆ど落とすことなくバッタめがけて飛んでくる事になるのだとか。
マフラーの中に球体を入れたらどうなるだろうか?低速域など排ガス流量の少ない時に球体は大きな抵抗となり、高負荷高回転で流速が早まればその抵抗は少なくなるのではないのか。
シャッタバルブのように高負荷域で積極的に抵抗を減ずる事は出来なくても、背圧変化を減らす効果くらいは認められるのではないか。
と、流体力学的計算をする事もなく、私は球体をマフラー後部のパイプの中に入れてみたのだ。
結果は「効果無し」だった。
球を大きくして抵抗を増やせばそれなり、球が小さければ何もないのと余り変わらないという結果しか得られなかった。
次に目を付けたのがゴルフボールである。
ゴルフボールは表面にディンプルを付ける事によって空気抵抗を減らしている。
この抵抗も流速によって変化し、およそRe=0.7×105程度(流速で26m/S程度)から急速に空気抵抗は減少する。
その空気抵抗係数は単なる球体の0.1には及ばないものの、0.2程度は期待出来そうだ。
更にディンプル数を増やすと20m/S以下でも臨界点は訪れるのだが、臨界点を超えてからのCD値は0.25程度と高くなる。
もっと臨界点を低速側に持ってきたければディンプルの深さを増せばいいが、臨界点以降の空気抵抗係数は上がってしまう。
ちなみにこれはゴルフボールのデータであり、直径やディンプル径などを変化させた場合はデータそのものが変わってくる。
と言う事はゴルフボールの方に排気管径を合わせた方が設計が楽だ。
何しろ抵抗球体を作る為には小型とは言っても風洞が必要になるのでアマチュアには手が出せない。
ゴルフボールをそのまま排気管に入れたら溶けるのは当然なので、何らかの方法で耐熱物質で作り直さないといけない。
うまく行くかどうかは保証の限りではないが、ゴルフボールの型を石膏か何かで取って、その型の中に金属なり耐熱物質なりを流し込んで作る事は出来ないだろうか。
金属だと相当な重さになりそうだから中空にしたい所だが難しそうである。
そもそも実験する前に、排ガス量と流速と背圧と抵抗体の効果を計算してみないと始まらないな。
と、思いながらずいぶん長い月日が流れてしまった。
誰か実験した人があったら結果を教えて下さい。