CLS350に乗る


CLSクラスはEクラスのシャーシを利用して、Eクラスより大きくSクラスより小さなボディーを纏わせたモデルだ。
メルセデスの車は実用一辺倒か、或いは無駄だらけかで中間が存在しないように感じる。
だがこのCLSはその中間とも言える車なのではないか。
実用主義と言うことでAクラスやCクラスは良くできていると思う。
後席の足下の広さなど、Cクラスを楽にしのぐAクラスは立派だと思うし、ボディーサイズの割に内部スペースを広く取ったCクラスだって捨てがたい。
逆に5リッターのエンジンと1.8mを超える横幅を持ちながら、たった2名しか乗ることの出来ない無駄の極致のSLにだって意味はある。
CLSはEクラスより大きなボディーでも室内スペースはEクラスより狭いのではないかと思う。
シートにしても、前後長や横幅はSLより明らかに狭い。
それでいて全幅はSLよりも広く、当然ながら前後トレッド幅も広い。
全長だってSクラスやセルシオのような5m超とは言わないが、それでも4.9mなのだから立派な体格だ。
車両重量はSLより軽い。
SLはオープン化による補強のために多くの構造材が使われており、これが車両重量を増している。
メルセデスが4ドアクーペというように、CLSは実用性や快適性を制限しても独特の雰囲気作りに徹した感じだ。
ガラス面積は少なく、リアシートに座ると(旧スカイラインほどではないが)穴蔵感覚だ。
リアシートは2人専用であり、従って乗車定員は4名となる。
パーソナル色は強いがリアには専用の空調コントロールパネルが備わるなどしているし、穴蔵とは言ってもこのサイズの車なので非実用的ということはないが足下は決して広くはない。

CLSクラスには当初350と500が存在した。
350は3.5リッターの不等間隔爆発V6エンジンから272馬力を出力し、5リッター3バルブシングルカムV8エンジンは300馬力ちょっとの出力を発揮した。
が、出力だけを見ると3.5リッターと5リッターで1割程度しか変わらず5リッターエンジンの存在価値?が疑問視されはじめてきていた。
CLS誕生後約1年を経過して5リッターエンジンはDOHC化された5.5リッターとなり、出力も3.5リッターエンジンの100馬力増しにあたる387馬力となった。
3.5リッターエンジンの方も直噴化などで20馬力ほどを上乗せしているが、2006年12月時点で日本には未輸入となっている。
AMG製の6.2リッターエンジン搭載車もあり、こちらは514馬力を出力する。
SL500に乗り始めた頃はそのパワーの無さに愕然としたものだが、やがて慣れた。
CLS350の加速タイムはSL500とあまり変わらず(パワーウエイトレシオがさほど違わない)、乗用車としては普通のレベルだと思う。
トランスミッションは7段変速なのだが、一体どこに入っているのか?いつシフトしているのかも気にしなければ全く分からないし、何速に入っているかなど気にしていても分からない。
足回りはコンベンショナルなもので、フロントがダブルウイッシュボーン的(メルセデスは4リンクと呼ぶ)なもので後輪がマルチリンクだ。
ハーシュネスの吸収はCよりもSLよりも優れていて、大型国産車に乗っているのではないかと思うほどである。
一方で固さはベンツのそれであり、Cクラスよりは堅くSLよりは柔らかいセッティングだ。
広いトレッドと長いホイールベースから来る乗り心地は良いが、SLのハイドロアクティブサスがあくまでも車体をフラットに保ち続けようと制御しているのとは違い、コーナではロールもするしノーズダイブだってする。
操作系の重さはSLと同等程度で、Cクラスよりは軽い。
剛性感はSLに劣ると思う。
段差でフロアに振動が伝わるとか、ドアが揺れるとかの国産車並みのブルブル感を感じることは皆無だが、ふとした瞬間に剛性が足りていないのでは?と思うことがあった。
エンジン音はほとんどキャビンに入ってこず、この点でもCやSLと大きく異なる。
Cは4気筒と言うこともあって振動を感じられるし、SLのV8 だって多少の振動や排気音を十分感じさせてくれる。
シングルカム時代のE320にもしばらく乗ったことがあるが、静粛性ではCLSの方が上だと感じた。
ブレーキシステムはSLや旧EクラスのSBCは姿を消し、コンベンショナルなタイプに改められた。
フィーリング的にはSBCよりもコンベンショナルなタイプの方がずっと自然である。
ちなみにディスクロータの雨滴除去などはABSユニットで油圧を発生させて対処しているし、坂道発進アシストシステムなども同様だ。
ホイールは18インチだが、17インチホイールが使えるブレーキディスクロータサイズだ。
フロントは4ポッドとSLと同様ながら、リアはフローティングキャリパ(SLは対向2ピストン)になっている。
インパネ周り、メータクラスタはEクラスそのもので面白みには欠ける。

中央に速度計、右に回転計は良いとして、左に大きなアナログ時計は如何なものか。