Celeronを液体窒素で冷やす


今回は液体窒素を使用して炭酸ガス以上に冷やしてみようと言う実験を行った。
なお本文中で使用しているデータはDOS/Vmagazineの98年10月15日号及びオーバクロックマニアックスで使用する為に取ったものを含んでいる。
より詳細に知りたい方は上記書籍をお求めいただきたい。
(オーバクロックマニアックスは98年中には発売されると思います)

Celeron300のコア電圧最適値を調べるために、コア電圧に対するDOS起動の限界周波数を測定した。
ヒートシンクとファンはIntel純正品のため、電圧アップに伴い温度も上昇する。
DOS/Vmagazine10.15では冷凍車内にマザーボード毎持ち込んで温度特性を測定したので、その時に得られた,約−2MHz/℃の温度傾斜による補正予想値も合わせて記す。
コア電圧 限界周波数 CPU温度 温度傾斜による補正を加えた予想値
2.0V 470MHz 31.8℃ 470MHz
2.2V 492MHz 32.0℃ 492MHz
2.4V 493MHz 32.6℃ 495MHz
2.6V 497MHz 33.5℃ 500MHz
2.8V 496MHz 34.4℃ 501MHz
3.0V 494MHz 37.0℃ 504MHz
3.4V 486MHz 43.5℃ 509MHz
今回の実験にはCeleron-333(Mendocino,キャッシュ付きCeleron)を使用したのだが、巷の噂ではCeleron266/300に勝るとも劣らないクロックアップ耐性だと聞く。


さて常温での最適電圧がどこにあるのか?さっそく同様のテストを行った。
コア電圧 限界周波数 CPU温度
2.0V 430MHz 32.0℃
2.2V 453MHz 33.6℃
2.4V 475MHz 36.2℃
2.6V 483MHz 39.7℃
2.8V 474MHz 41.8℃
3.0V 468MHz 45.1℃
今回は温度傾斜を測定していないのだが、まあCeleron300と同程度と思って良いのではないだろうか?これを見るとCeleron300よりクロックアップ耐性は低いと言わざるを得ない。
どうやら私が入手したバルクのMendocinoはハズレだったのかも..

さて本題の冷却の方だが、魔法瓶に入った液体窒素はこれだ。

LN2 これで10リットル入っている。
加圧保存が出来ないので、蓋の隙間から窒素ガスとなって逃げている。
窒息死するといけないので、窓は少し開けておこう..液体窒素にも色々な温度のものがあるそうで、コイツはマイナス195℃だそうだ。
これを断熱容器に移すわけだが、非常にサラサラした感じの液体である。
断熱容器は科学の粋を結集した,これを使用した。


何を隠そう,カップラーメンの容器である。
比較的柔らかい発泡樹脂で出来ているが、液体窒素を入れるとカチカチに固まる。
若干は容器の外側に霜が付くものの、触れないほど冷えるわけではなく断熱性は良好だ。
液体窒素にしてみれば自分の温度より200℃以上も高い所に移されるわけで、ボコボコと盛んに沸騰して暴れる。
このカップ麺の容器の中にジャボンとCPUを漬け..られるほどではないので、CPUの方に冷却用の容器を取り付けることにした。

Mendocino333 銅箔を半田付けしてケースを作成する。
液体窒素が漏れるとイヤなので半田付けは厳重にしたが、半田と銅の熱膨張率の違いでクラックなど入らないだろうか?双方とも柔らかい粘りけのある金属だから大丈夫かな?

液体窒素を(レンゲで)注ぐとこうなる。
ケースの周りに霜は付くが、蒸発した液体窒素が周辺を覆ってくれるために結露はさほどではない。
もちろんCeleron本体基板にはコーティング剤を塗って水分から保護している。
Celeronと液体窒素の温度差は250度近くにもなるわけで、ケースの内部では液体窒素があふれそうな勢いで沸騰している。
とにかく液体窒素の減りの早いこと。
実験中は常にレンゲが手放せない状態だ。
液体窒素がマザーにこぼれても問題ないが、チップセットが冷えすぎると動かなくなる気配がある。

Temp
この位の温度がMendocinoにとっては心地よいようである。
って、この温度なら何も液体窒素を使わなくても炭酸ガスで十分なんだけどなあ..

マイナス100℃以下になると動作がおかしくなってくる..DOSでの起動限界を見ながら液体窒素の量を調整して冷えすぎないようにするわけだが、これが難しい。
結局140MHzの5倍=700MHz辺りを拝んだだけで今日の実験は終了した。
液体窒素の消費量が激しく、前記書籍用の写真撮影を控える今,思う存分液体窒素を使えないと言う事情なのだ。
撮影が終了してから更に実験を進めたが、CPUと共に冷えてしまうチップセットが安定動作を阻む原因らしい。
冷え切ったチップセットをドライヤーで温めると復活する。
が、CPU付近が極低温なのでチップセットはすぐに,指が張り付くくらいの温度にまで冷えてしまう。
結局の所、チップセットとCPU温度を適度にバランスさせながら徐々に周波数を上げていくわけだが、温度管理に手間取って限界までなかなか周波数を上げられない。
何とか昨日の700MHzを超えたいのだが、そううまくは行かなかった。
が、マイナス100℃辺りまで冷やしたとして、Mendocinoの基板上のチップコンデンサの容量変化は問題にならにのか?と言う疑問がある。
一般に小型のチップセラミックコンデンサは温度特性が悪く、これが低温下で正常に機能しないのではないかという不安だ。
一方で−50℃〜−60℃で600MHz超の実験報告もあり、温度傾斜の−2MHz/℃を妥当とするならば−100℃で700MHz,−200℃で900MHzの計算になる。
例え900MHzでCPUが動作したとしても、その場合のマザーボードクロック(FSB周波数)は180MHzに達するわけで、チップセットやメモリ,そしてクロック発生用IC(これが問題)を正常に動作させるのは難しそうである。


Celeron(Mendocino)333MHzが期待通りに行かなかったので、次にCeleron300を持ち出してみた。
ただし、コイツは4.5倍モードしか持っていないのでマザーボードクロックの方が厳しくなる。
チップセットを過冷却から保護するために、チップセット上に遮熱シートを乗せた。


ケースの中で液体窒素が沸騰しているのがお解りいただけるだろうか?

この状態でもチップセットが冷えて動かなくなるので、たまにドライヤーで温めるという,クロックアップに加熱が必要な変な具合となった。
逆に冷やしておきたいのはメモリだ。
積極的に冷やさなくてもこの通りなのだが..

この状態でもFSBは143MHz辺りまでしか上がらない(或いはCPUの限界か?)ので、643MHzあたりが限界だった。
ここから考えると、6倍とか7倍速モードを持ったCPUならもう少し楽にクロックを上げられるかも知れない。
I/O電圧やメモリのメーカなどを選べば更なるクロックアップが出来るとは思うのだが、私の手元の部品ではこれが限界だった。
ちなみにI/O電圧の可変はプリンタポート近くにあるR27を取り外して、5KΩの可変抵抗を取り付けて行った。
この電圧設定が極端にずれていると、パワーオンできない状態になるので注意。
最後になるが、CPUを液体窒素温度(-195℃)まで冷やした状態で動作するのか?テストしてみた。
答えは「動作しない」,何度が限界なのか測ってはいないが、とにかく動作しないのである。
液体窒素の量を調整して温度が上がってくると動作するのだから、CPU以外の部分が影響しているとは考えにくい。
従って−200℃で900MHzは実現できない。
これが実験の結果である。


液体窒素が余ったので、こんなものを冷やしてみた。


フロッピィの中身である。
果たしてパキパキになるのだろうか?恐る恐る,いや、期待を込めてピンセットで掴んでみると..

ふにゃふにゃである。
全く面白味がないので、今度は導電スポンジを入れてみた。
コイツは期待に応えてくれるかわいいヤツで、ご覧の通りパキッと折れた。