一次電池充電器を科学する


最近また一次電池(マンガンやアルカリ乾電池)用の充電器が売られている。
一次電池を充電できるのか?答えはYes,実は、10年ほど前に一次電池の充電特性をテストした経験があるのだ。
これは、某民生機器メーカが電池駆動用の機械を作ったが、消費電流が大きすぎて非常に不経済な代物になってしまった(ま、LCD付きデジカメよりは良かったと思うが)そこで内密に一次電池の充電特性測定を行って、販売店に対する売り込みの席で経済性に難癖を付けられたときの回答にしようと企んだ訳だ。
その時の実験の結果を要約すると..
1.乾電池の電池容量の1/3〜1/4を残した状態で充電すること
2.アルカリでもマンガンでも充電できる
3.5〜6回繰り返して充電するうちに電池容量は徐々に低下する
4.完全に放電した電池は充電できない
5.急速充電すると電池は発熱して壊れる
まあ、こんな所だった。
充電後の電池容量は、当時の電池で新品時の80%程にまで回復する。


これが購入した充電器だ。
一応国産で、製造メーカ名も書いて有るという代物だ。
能書きによるとアルカリ/マンガンの一次電池、ニカド/ニッケル水素の二次電池が充電出来るとなっている。
当然の事ながらリチウム系の電池は充電できない。
リチウム系の電池は100%以上(たとえ101%でも)充電すれば性能劣化や致命的損傷が起きるからだ。


上の写真は、化粧箱の側面に書いて有るものだ。
この中で興味があるのは「マイクロプロセッサー」と言う言葉。
さて、CPUが入っているのか?それとも「小さな処理(制御?)回路」と言う意味か??この手の商品は、製造原価低減が勝負だろうからCPUなど入れるのだろうか..もう一つ、上から6項目目に「充電時間が短い!(単三型で最大12〜14時間充電)」と!12〜14時間を「短い」と表現するとは..ちなみに、昔やった実験時には4〜5時間で充電していた。
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この機器には、取り説も付いてくる。
A3サイズの紙が2枚折りにされたもので、結構な文字数が印刷されている。
注意点や機能説明(LEDの点滅速度とその時の状態など)も数多く書かれているが、その中で「本器は性能の異なる各種の電池を連続分析したデータをマイクロプロセッサーに入力してあり、マイクロエレクトロニクスで作られた回路で、各々の電池に会わせて最適の充電ができるよう自動的に充電電圧と波形を作り、電池をリフレッシュしてくれます。」(原文まま)と書いて有る。

やはりCPUが入っているのか?その他にも、
*マンガン電池は数回、アルカリ電池は15回程度再利用できる
*再充電電池は新品の能力までは復活しない
*電池にはばらつきがあるから充電性能は保証できない
*新品の電池を入れておくと自己放電が防げる
*アルカリ電池は充電によって自己放電が非常に大きくなる
*急速放電(電池消耗の激しい機器で使用)させた電池は充電しやすい
*上記と逆に長期間かけて放電した電池は充電できない
とある(取り説から一部引用)
この充電器のスペックは以下の通り(取り説より)
入力 DC6V/500mAアダプタ使用
消費電流 0.08A(8VA)最大
充電電流 1.5V電池:最大160mA
動作温度 0℃〜40℃
充電時間 単三で12〜14時間(最長)
LED 各レーンごとに電池状態表示
検出方法 dV/dt,-ΔV,最大電圧,内部抵抗
電池種類 自動検出
外形寸法 220×141×58(本体)
重量 700グラム(アダプタ含む)
なお、PL関連項目では一応一般的時効の説明がなされた後「充電中は必ずフタを閉めて下さい」との事。
電池の爆発対策かな?

これが、充電器のフタを開けたところだ。
単5から単1,006Pまでセットできる構造になっている。
さて、中身はどうか?ウラ蓋のゴム足に隠されたビス4本を外すと、ケースはすんなり開いた。


基板の中では最も安価なベークの片面基板にデバイスが乗っている。
トランスの類がないのは、供給がACアダプタ経由の6Vだからだ。
中央右寄りに見える28ピンの黒いデバイス..
これがCPUか?
CPUらしいと判断する理由は二つ、一つはクロック発振用のセラロック(商品名)が付いていること。
二つ目は、コストダウンに細心の注意が払われていると見られる基板ながらICソケットが使用されている点だ。

おそらくロットが進んでくれば、ソフトも安定してじか付けになるのだろうが..
その他には、ライター用(と、取り説に書いて有る)12V電池と006P用の9V以上の電圧を作り出すための(たぶん)チャージポンプかスイッチングレギュレータ,電流制限用と思われる抵抗などが並んでいる。

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実際に充電特性を測定して見ようとも思ったのだが、昔の実験で分かっている面もあるのと、充電特性は新品時の使い方や保存期間メーカ等によって様々でありとてもデータ化できそうにない。
それに、充電に半日もかかるというのだから自動測定でもしないとつき合っていられないしね。
ま、とりあえず使い切った電池を何本か入れてみよう..
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たまたまあったアルカリ電池、バッテリチェッカで確認すると真ん中のLEDが点灯した。
(ソニー製のようだ..勧銀で貰ったもの)電圧計で測定する手もあるが、アルカリ電池の起電圧がどの程度なのか?正確にわかっていない。


LEDは3つ、全消灯が残量ゼロで100%が全点灯って具合らしい。
測定時には、1.5V系電池で約100mAの電流を流して電圧測定する構造のようだ。
充電開始前、アルカリ電池は2番目のLEDまで点灯していた。
早速充電器にセットすると充電器のLEDが点滅を始めて充電状態であることを示す。
そのまま約3時間ほど放置しておくと、充電器のLEDが点灯に変わって充電完了となった。
この電池の場合は残量が60%程(あくまでも電池チェッカでね)有ったと思うから、この程度の時間で充電できると言うことか?さて、取り説に書いて有ることが事実だとすると充電したアルカリ電池は自己放電が大きいらしい。
どの程度のものなのか?まさか1日で半分に減ってしまうこともないと思うが、一応明日まで放置することにする。
充電後の電池電圧だが、電池チェッカで負荷をかけた状態で1.255Vある。
充電後の解放電圧は1.596Vであった。
これが、22時間後にどうなったか?解放電圧は1.310Vまで低下した。
電池チェッカで負荷をかけると1.187Vと、充電直後より下がっている。
ちなみに、電池チェッカはかろうじて3個のLEDが点灯状態だ。