CJ43A フロント周りO/H


スカイウエイブは整備済みエンジンにも乗せ換えたし、残った大仕事と言えばフロントフォークのオーバホールだ。
実はしばらくはこのまま乗っていようかと思っていた。
エンジンなどは興味があることも手伝って作業がはかどるのだが、サスペンション系は今ひとつ気が乗らない。
もしも新車時から一度もオーバホールされていないとすると、内部はさぞかし汚いだろうなぁとも思う。
そもそもフロントフォークなんてバラしたことがないのでうまく出来るのかどうか。

しかしある日フロントフォークを見ると何故か汚れが付いている。
これまでそんなことはなかったのになぁと思ってよく見ると、フォークがストロークしたところまでは綺麗になっている感じで線が入っている。
これってオイル漏れってヤツかも。

右側はそんな感じでホコリが付いているのだが左側は異常がない。
ということは右のオイルシールが傷んでいると考えられる。
仕方ない、オーバホールするか。
そう思って重い腰を上げた次第である。

インナーチューブを観察すると上の方に点サビが見られる。
その部分まではストロークしないかなと思うのだが、バラしてみないと解らない。
点サビの数は多くないので修正可能ではないかと思う。
駄目ならインナーチューブを買うことになるが、これは1本1万円近くするので何とか修正したい。
修正が必要か否かも含めてバラし始めよう。

バラすにはフォークだけを抜き取る方法とハンドルのシャフトごと抜いてしまう方法がある。
ハンドルのシャフトごと抜けばステムベアリングのチェックも出来る。
ステムをバラすのはフックレンチがあれば出来るのだが、組み立て時にトルクレンチを使おうとすると専用工具が必要になる。
テキトーに締めて良いものなのかどうか。
堅すぎればベアリングが渋くなるだろうし、柔らかすぎればガタが出る。
ちなみに締め付けトルクは3kg・mが指定だ。
ロックナットの方はこのトルクで締めればいいのだが、下のナットはこのトルクで締めた後に1/2〜1/4戻すと指定されている。
どうやら「手で締め付けた程度」に締めるらしい。

フォークを抜く為にはトップキャップを外さなければならない。
スカイウエイブの場合はトップキャップが抜け止めというか何というか、そんな感じで引っかかっているからだ。
そしてこのトップキャップを抜くには17mmの6角レンチが要る。
そんなデカいものは持っていないので対辺17mm(M10)のロングナットを突っ込んでメガネで回す。
17mmの6角レンチは600円くらいなのだが、L型に曲がっている部分の寸法もそれなりに大きいので使いにくい。
緩めるのは良いとして、締めるときは上から押さえなければならないからだ。
なので今回は組み立てが簡単そうな、ステムシャフトごと抜こうとは思うが旨く行くかな。

と、その前にアウターチューブ下部のキャップボルトを少し緩めておこう。
バネでテンションがかかっている状態の方が緩めやすい。
全部ネジを抜いてしまうとオイルも出てくると思うので適当な堅さまで来たらやめておく。

トップキャップを外すとバネの反発力でそれが上に押される。
ねじ山を傷めない為には上から押さえつけながら手のひらでトップキャップを緩めていけばいいが、結構大変だ。
外す時がこれなのだから組むときはもっと大変だろうなと思う。
その点ステムシャフトごと外してしまえば広い場所で作業が出来るので組み立ては楽になる。
ただしステムシャフトを一人で組み立てるのは(ベアリングを入れたりセンタを出したり)結構難しい。
ステムを抜いてベアリングのチェックは出来てもベアリング等の交換はちょっと面倒だ。
ベアリングレースが圧入されているので、治具を作るか専用工具を使わないと外せない。

バラすのには当然ホイールも外すのでホイールのベアリングも交換したいと思った。
フロントホイールベアリングは6202型で規格品である。
純正品はKOYOの6202RSで定価840円(純正部品だと600円くらい)だ。
RSというのは片側(両側だと2RSになる)に接触型シールが付いたタイプである。

ベアリングは同じ型番でも結構詳細が分かれている。
シールドが片側か両側か、鋼板シールドか樹脂シールか、鉄製かステンレス製かなど。
ベアリングと言えばNTNでホームセンターなどで買うことも出来る。
6202型だとサフィックスがLLB(非接触シール型)LLU(接触シール型)LLH(低摩擦トルク型)などがある。



開放型以外は防塵性があるが防水性があるのはLLUやLLH型となる。
たぶん純正に相当するのはLLU型になるのだろう。
グレードアップ?するならKOYOだと2RK(防水防塵性能アップ)や2RD(同、そして低摩擦トルク型)、NTNだとLLUやLLHが相当品だ。
ステンレス製はNSKの6202-H-20T1XDDUあたり。
単車には使えないかも知れないがセラミックボールのものなんてのもある。
いずれにしても規格品なのでKOYOでもNTNでもNSKでもNACHIでも同等品がある。

ホイールベアリングは圧入されているが、比較的簡単に抜くことが出来る。
治具はピストンピン外しの時に作ったものと同じ原理で、ボルトとワッシャと塩ビ管があればいい。
この治具でベアリングを圧入する(反対側に引っ張る)ことが出来る。
6202型ベアリングの外形は35φなのでVP25(32φ)かVP20用の継ぎ手(33φ)SGP25(34φ,これは鋼管)が圧入用としては良い。
ベアリングの中心穴径は15φなのでM10位のボルトが良いだろう。

抜くときはマイナスドライバでベアリングを反対側からたたく方法が一般的?みたいだ。
ホイールの2つのベアリングの間にはディスタンスカラーというパイプが入っているのでベアリングを抜くのが難しい。

何とかベアリングの軸に引っかけて抜く方法はないものか。
と、コンクリート用アンカーなんて使えないかと思った。



中央のネジ型は、表側からベアリングの中止穴に突っ込んでネジを締めるとテーパ部が食い込んで本体が広がりベアリング内径にはまる。
そのままネジを締めるとベアリングごと抜けてくるのではないかと思う。
(ネジを締めるとテーパ部が引っ込むタイプと、一旦引っ込んだテーパ部をネジが押すように動くタイプがある)
M10型だと外形が14mmなので引っかかってくれるはずだ。
長さは最大で15cmくらいのものまである。

まあ長いものが入手出来なくても短いものを突っ込んで固定した後はフォークのトップキャップを外す為に使うロングナットでシャフトを延長して、これもフォークのオイルシールを圧入する為に使うVU40を下駄にして引っ張れば抜けるのではないだろうか。
ここではVP30/VP40の変換ソケットを入れてみた。



抜けなかったらベアリングを冷やせばいいかな。
ドライアイスでも乗せて。
ホイールを温めても良いがあんなに大きなアルミ製のものを温めるのは相当大変である。
ヒートガンでは気休め程度、バーナであぶるくらいが良いらしい。

※他のページを検索したら上の絵の右側の打ち込み式のものを入れて、反対側からひっぱたけばいいと書かれていた。

この異径ソケットがまるで専用品のようにピッタリだ。





バラシを開始する。
初日はバラシまでの作業だ。
純正部品などはWebikeに発注しているのだが、ご存じの通りウエビックの納期はいい加減である。
Web上では3日程度となっているのに、発注して丸一週間以上経っているが音沙汰がない。
なので組み付け用の純正パーツがないのだ。

Web!keは処理が早く出来れば納期は早いようで、納期が遅いという事は注文が放置されているという事になる。
早く欲しい時には注文時にその旨を言っておくと多少効果があるのと、注文時に銀行振り込みを指定して返信メールが来る前にさっさと代金を振り込んでしまうと早くなる。
通常は、注文品の納期をメーカに問い合わせ→回答を得て注文主に代金報告(振り込みの場合は請求、カードの場合は引き落とし)→メーカに発注→納品されたらそれを発注主に発送の手順になる。
だが先に振り込んでしまうと注文品をそのままメーカに発注するので時間ロスが無くなるというわけだ。
但しこの方法は推奨されない。
メーカ品切れや廃盤の場合の処理が面倒だからである。
でもこの方法を採ると発注翌日にWebikeから出荷される事もあるので、月曜発注で水曜着が現実的となるのだ。


今回はステアリングシャフトごと抜くのでフロント周りを外す必要は無い。
これだけでも相当な作業量の軽減になる。

ハンドルバーを固定している4本のキャップボルトを外してハンドルバーを外す。
工具があればハンドルバーを付けたままでも良いのだが、6角レンチが普通のL型のもののみだったのでハンドルバーも外した。
ハンドルバーを外した後ハンドルバーがくっついているハンドルホルダをステアリングステムから引き抜く。
これは簡単だ。



フックレンチは持っていないのでマイナスドライバでナットを緩める。
さほど固く締まっているわけではないのでマイナスドライバとハンマーで緩む。
少し緩めば↓のような工具?が使えないでもない。



↑は自転車の整備用というか常備用の板レンチみたいなもの。
ホームセンターで200円くらいで売られている。
ステムを止めているロックナットではない、下側のナットは自転車用工具で緩められる。

下で押さえていて貰わないと、ナットを外した瞬間に下に落ちる。
手を回して一人で出来ない事もないが、落下注意だ。
一人で行う場合は下に緩衝材を敷いておくとかビニール紐で最後まで落ちきらないように縛っておくなどした方が良い。



ステムやフロントフォーク一式がくっついているものは結構重い。
下から押さえて貰わないと一人で外すのは危険だ。
ブレーキホースの止め金具などの取り外しを忘れなければ、すぽっと抜ける。



ステアリングステムの上下のベアリングをチェックする。
上側はグリスも正常でベアリングもレースも特に異常は見られなかった。



しかし下側のベアリングはグリスが泥のように変質している。
スカイウエイブはニードルローラベアリングではなくアンギュラボールベアリングタイプだ。



レース側の古いグリスを取ってみたが、レースも傷んでいるなぁ。



交換したいのは山々なのだが、レースを打ち替えるのは又面倒な話である。
前輪を浮かせた状態でハンドルを動かしてみたが、クリック感があるわけでもなかったので今回は見なかった事にしてベアリングだけ換えるかなぁ。

上側のレースの状態は悪くない。
グリスだってグリス色をしている。



しかし下側はグリスのかすがこびりついて酷い状態だ。
パーツクリーナで清掃したらこの茶褐色のものは取れたが、表面が荒れている。
ベアリングレースをコンパウンドで修正するなんて許されるのだろうか。



ベアリングは、泥のようになったグリスの残骸を取ってみたがボールが曇っていた。
アウターレースは圧入されているので抜くには工具が必要だ。
なのでアウターレースは掃除だけにして、ベアリングのみを交換しようと思った。
だがベアリングを買ったらアウターレースも一緒に付いてきた。
というか、そう言うものらしい。



じゃあロワーアウターレースだけでも換えてみようかなぁ。
と思ったのだが、どうせならアッパーアウターレースも換えたい。
そこでストレートにステムアウターレース抜きを注文、翌日には配達されてきたので打ち抜いてみる事にする。

まずはロアアウターレースを抜く。
整備書によればマイナスドライバやタガネで打ち出せと書かれている。
が、そもそも圧入されているのだからそれを抜くのは結構大変だ。
外したアウターレースは再使用しないのでバーナであぶるなどした方が良かったかも。

最初は細目のマイナスドライバで隙間を空け、次に中くらいのマイナスドライバを使い、最後はアタッカーと称される叩きこじり専用ツールで引きはがす。
ロアアウターレースの下にはシールがあるのだが、実は整備書にはこれが書かれていなかった。
シール類などは例え再使用が可能だと思われるような部分であっても"換えろ"と指示されている。
なので、何も書かれていないと言う事は再使用出来るんだろうなぁと思った。



ら、十分すぎるほど傷んでしまった。
こんなにベロベロになったわけで…



一応修正したんですよ、これでも。
レースを外す時にドライバをシールとレースの間に入れるとこうなる。
三つ叉とシールの間にドライバを突っ込んで、シールごと持ち上げるようにすればダメージは少なかったかも。
いやいや専用ツールで外せば良かったかな。

と今更言っても仕方がない。
参ったなぁ…
今から部品発注すると又作業が止まるし、こんなシールがあってもベアリングは傷んでいたし…
一応このベロベロのシールを突っ込んでみると、完全なシールには当然ならないが無いよりはマシだ。
仕方がない、再利用しよう。
あとはグリスの耐水性に期待するという事で。

ベアリングを突っ込むとこの辺りまではストンと入る。
温めておけばもう少し入るかも。



いずれにしても叩き込まないといけない。
例によって塩ビ管を使う。
ステアリングステムの太さが30φなので、内径31φのVP30がピッタリだ。
適当な長さに切断したVP30をかぶせてステムごと逆さまにし、自重を使ってゴンゴン入れていく。



外したアウターレースと新品



次は車両側、アッパアウターレースだ。
汎用ベアリング抜きをセットして上からパイプを突っ込んで叩く。
コンコンというかゴンゴンやりながら抜いていく。
使ったパイプは19φのステンレス製、タオル掛けなどに使うアレだ。



アッパーアウターレースはさほど固いものではなく、何度かゴンゴン叩いたら抜けた。
旧アウターレースと新品



アッパーアウターレースの挿入はネジ締め上げ方式を使う。
これもホイールベアリング外しや挿入時に活躍したもので、結構使い回せるじゃないか。
が、どうもまっすぐ入らない。

結局アウターレースを抜く工具のエッジ部分を当てて下からハンマーで叩いて入れた。
これも固い事は固いがものすごく入りにくいわけではない。
グリスをたっぷり付けてシャフトを組み上げる。
ベロベロになったオイルシールはこの位置にしかならない。
もっと入り込むのかなと思ったのだが違う。
これだとシール性が余り良くない。
もっともガイドの中まで入れてしまうと摺動抵抗が問題になるか。




さてフォーク部分の分解にかかる。
フォークのアウターチューブとインナーチューブの所のオイルシールを留めているクリップ部分だ。
サビサビかと思ったが、意外にマトモだ。



このクリップをマイナスドライバで外し、フォーク下のネジを外してインナーチューブを引っ張るとアウターチューブから抜けてくる。
最も外側がアウターチューブ、その内側がインナーチューブ、更にその内側にシリンダと呼ばれるものが入っている。

写真一番上がシリンダ、シリンダに入っているバネはリバウンドスプリング。
シリンダに挟まっている青いシールがピストンリングと称される部品だ。



全体はこんな感じ。



パーツリストに載っている図が以下だ。



フォークオイルは汚れてはいたが金属粉が多いとか乳化している事はなく、オイルの色は灰色っぽかった。
フォークのスライドメタルなどの減り具合も、まあこんなものかなという感じ。
ノーメンテで乗られていたとしても走行距離はさほどではないのかも知れない。
ドライブ系のメンテで3万キロくらいの実走行距離ではないかと想像したが、フォークの状態からもそんなものかなと思う。
ただし年月が経っているのは事実であり、ステムのベアリングのような状態になっているわけだ。

フォークからのオイル漏れの原因がわかった。



傷ではなく固着した痕のようだ。
さほど固くくっついているものでもなく、2000番の耐水ペーパで円周方向に研磨して除去した。



点サビも綺麗に取り去る事が出来たがクレータになった。
ただしここまでストロークする事はないので気にする事はない。

他に爪が引っかかるかどうかという深さの縦傷が何本もあった。
ゴミや石を噛んだとかそんな感じで出来た傷なのだろうか。
これらも耐水ペーパで修正したのだが、1500番くらいの耐水ペーパを使って磨くのは大変だ。
もっと粗いペーパを使って順々に細目で仕上げていく方法の方が良さそうである。

インナーチューブのメッキ膜厚は50μm〜100μmらしい。
200μmを超えるような厚さになると割れたりする事があるという。
一方で爪が引っかかるくらいの傷は30μm位だろうから、それを削り取ったとしてもメッキが完全に失われるわけではない。

最近ではチタンメッキ(蒸着)処理なども流行っているようだ。
ドリルなどにも使われている金色のTiNは表面硬度が高いのがメリットだ。
しかし摩擦係数は大きく、クロムメッキの2倍から3倍もある。
実際にはゴムのシールとの摩擦なので表面の摩擦係数を気にする程の差にはならないと思われるが、内部のシールリングとの摩擦は増えるだろう。
表面硬度はクロムメッキのHv1000程度からTiNだと2000以上となる。

部品待ちの間にホイールベアリングを抜く。
予め作っておいた治具の出番である。



ディスクブレーキ側から外してみる。
アンカーをベアリングの中止穴に突っ込んで裏から叩き固定する。
そこにボルトを接続してスペーサ代わりの塩ビソケットを介してネジを締める。
するとコンッとショックがあったあとするするとベアリングは抜けた。



ベアリングと中心に入っているスペーサが一緒に抜けた。
ベアリングの表側にあるシールも一緒に抜いた。
反対側のベアリングはたたき出しても良いのだが、せっかくなので同様に治具で抜いた。
ベアリングはグリス切れではなかったがグリスは劣化している。
回転させるとざらざら感があったが、これはベアリング単体で回してみて解る程度でありホイールごと回しても異常には気づかない。

ベアリングは純正部品で6百円程度、ベアリング屋で200円前後、ホームセンタで400円くらいだ。
中心穴に力を加えて外したベアリングの再使用は出来ないので潔く交換しよう。



整備書によればベアリングにグリスを塗るとある。
ベアリングメーカが入れたグリスでは不足するようだ。
だがベアリングメーカが入れたグリスと同じものなど持っていない。
グリスの混合は良くないと思うので、一旦洗浄してグリスを抜く。
これは新品ベアリングのシールを外した写真だ。



その後グリスを入れる。
べたべただ。



ベアリング挿入時も塩ビ管を使う。
挿入時はベアリング外形にマッチするTS20(VP20用の継ぎ手)を使う。



だがまっすぐに入れるのが結構大変で、せっかくなので古いベアリングを使ってみた。



ベアリング挿入時は注意が必要だ。
最初にブレーキロータ側、すなわち左側のベアリングから入れる。
左側のベアリングはホイールに突き当たるまで突っ込んで良い。

次に右側のベアリングを入れるがこちら側は最後まで入れきってはいけない。
ベアリング間(ホイールの中)に入っているスペーサをベアリングが押さえつけない辺りまでの挿入にする。



ベアリングの中心穴から見えるスペーサが少し中心からずれているのが解るだろうか。
拡大したのが↓だ。



このくらい隙間を空ける。
たぶん1mm程度で、隙間が多いとスペーサが傾く。
隙間が少ないとスペーサとベアリングが接触してしまう。

最後にダストシールを打ち込んで完成だ。



部品が来たのでフォークを組み立てる。



青い部品はシリンダに付けられているピストンリング(名称が??だがメーカはそう呼んでいる)で、交換の必要は無かったのかも知れない。
結局の所何を交換して良いのかよく分からなかったので、シールっぽいものは全て交換する事にした。
価格は以前にも乗せたがこちらを参照されたいが、この青いプラスチックのリングは283円だ。



シリンダをインナーチューブの中に入れ、インナーチューブの下方にプラスチックのオイルロックピース(内側にバネが入っている)を入れたあと、これらをアウターチューブに入れて底面からネジで留める。
シリンダが共回りして締めにくいのでインパクトを使ったが、バネまで仮組すればテンションがかかるのでインパクト無しでも締め付け可能だと思う。
なお底面からのキャップボルトにはネジロックを塗れと指示されているので従う。
締め付けトルクは30N・mだ。

アウターチューブとインナーチューブを固定しているのがこの2つのリングだ。
一方はインナーチューブの下端にあり、一方はアウターチューブの上端にある。
純正品はアウターチューブの上にあるものをスライドメタル、インナーチューブの下にあるものをピストン(パーツリスト上の呼び名で整備書上はスライドブッシュ)と呼んでいる。
スライドメタルはその内側をインナーチューブが動くのでメタルの内面が摩耗する。
スライドメタル自体はアウターチューブの最上部にはめ込まれている。

スライドブッシュはインナーチューブ下端に位置する。
スライドブッシュ自体はインナーチューブにはめ込まれていて、インナーチューブと一緒にアウターチューブ内をスライドする。
従ってスライドブッシュは外側が摩耗する。
スライドブッシュもスライドメタルもテフロン加工みたいな感じになっている。
純正部品の価格はそれぞれ500円以下だ。

このメタルはアウターチューブとインナーチューブの位置決めをしているだけで減衰量を得ているわけではない。
減衰力を発生させるのはシリンダと呼ばれる部品に付けられたピストン(青のプラスチック部品)とインナーチューブの内側、そしてそこを通るフォークオイルの抵抗だ。

アウターチューブ上端のリングはたたき込むのだが、ここではVU40の塩ビ管が役に立つ。
リングの上にワッシャのオヤブンみたいなものを乗せ、その上にVU40をかぶせて叩く。

写真は左が新品で右がこれまで使われていたもの。



これがオイルシールだ。
外周には金属が入っていて固いがインナーチューブに接触する面はゴムでしかない。
インナーチューブのエッジで傷が付くといけないのでインナーチューブにラップを巻いて挿入する。
滑りをよくするためにシリコンスプレーを吹きかけた。
シリコンスプレーが床にも付いてしまい、ネコが滑って転んだ。



これもアウターチューブに打ち込むのだが、VU40では径が少し小さくて不安がある。
シールの外周ギリギリを押したいのだがVU40ではそうならないからだ。
そこで不要になったシールの内側のリップを切り取って治具を作る。



これを打ち込むシールにかぶせて、その上にVU40を乗せて上から叩くわけだ。
結構叩かないと規定の位置まで入っていかない。
ちゃんと入ったらクリップで留めて完成である。

次にオイルを入れて油面を調整する。
オイルの量は284ml、油面はインナーチューブを最圧状態にしてインナーチューブ上面から96mmである。
この時バネは入れない。
最圧状態と言ってもインナーチューブをたたき込むほど押し込むと、インナーチューブの先端に位置するロックピースにはまり込んで抜けにくくなる。
意識して押し込まなくてもシール打ち込みの際の振動などではまってしまう。
抜けにくいときはインナーチューブを持ってアウターチューブをハンマーで叩けばいい。
最圧状態とは、ここまで行かない押し込み具合を言うのだと思う。

油面調整は真鍮パイプを使って行う。
フォークオイルを入れた後インナーチューブをスライドさせてエアを抜く。
そのまましばらくフォークを立てておき(気泡などを抜く為)、その後油面確認を行う。
真鍮パイプの端から96mmの所に印を付け、その印をインナーチューブの上面と揃えた状態で真鍮パイプを減圧し余分なフォークオイルを吸い込む。
私は専用品として真鍮パイプにフックを半田付けしてインナーチューブに引っかけられるようにした。



スカイウエイブは96mmでシグナスXは125mmだったかな。
真鍮パイプは安いので各車種専用品を作るのが良いだろう。

インナーチューブの油面が高すぎる場合はこのパイプを通して余計な分を吸い取るのだが、実際に作業してみるとオイル缶から直接インナーチューブにオイルを注いだとしても入れすぎる事はなかった。
この治具は単なるスケールとしての役目を果たしたに過ぎず、実際にこれを通してオイルを吸い取ったり入れたりする事はなかった。
シグナスなどはインナーチューブが細くて油面が低いので中が見えにくいかも知れないが、少なくともスカイウエイブであれば目視で油量を調整出来る。



このあとスプリングを挿入してステムと三つ叉の金具に取り付け、そしてトップキャップを閉める。
バネの反発力が結構強いのでキャップを閉めにくい。
今回はステムごと外したからまだ良いが、フォークだけを外して作業した場合は組み付けが結構大変だと思う。
ショップなどのようにプレスでもあればそれで押さえながら作業出来るのだが、手のひらで押さえつけながら回さなければいけない。

手のひらで押さえつける事は出来るが、手のひらを使って回すのでは角度が足りない。
指でキャップを押さえつけるのは辛いが、指で押さえつけていれば回して締め込む事は出来る。

電動工具で押さえつけと回転をとも思ったが、斜めに入ってネジを壊すのもイヤだし。
結局両手の両指を使いながら力ずくで入れた。
フロント周りの分解整備で一番汗をかくのがこのフォークキャップを締める所だ。