アタッシュケースにアンテナを付ける(2)


アタッシュケースアンテナ,その1はこちらで紹介したとおりだが、その後の度重なる?改良を経て2号機が完成した。
今回はアタッシュ内部の,携帯電話との結合部を分布定数回路である逆F型アンテナではなく、集中定数回路(平たく言うとコイル,ね)に変更した。
この結合性能向上分で出来た余裕(って、本当は極限性能を追求するべきなのかも知れないが)は、アタッシュ外部に取り付けるアンテナの小型化で打ち消される?事になる。
携帯電話のアンテナのさきっぽには樹脂に固められた,ちょっと太くなっている部分がある。
これは何かというと、アンテナを引っぱり出しやすくするための細工でもなければ、アンテナを縮めた時に,アンテナが携帯電話の中に落ちてしまうのを防止する仕掛けでもない。
この部分はホイップアンテナとは全く独立した,別のアンテナとして機能しているわけだ。
アンテナを外してテスターで測って見れば分かると思うが、ホイップアンテナ部とさきっぽの部分は絶縁されている。
高周波的には完全に絶縁されているとは言えないかも知れないが、だからといって結合が深いわけでも無さそうだ。
このさきっぽの部分は(メーカによって違うが)ヘリカル構造のアンテナになっている。
ヘリカル構造とはコイルのようなもので、コイルはアンテナのようにエネルギを外部に放出するのが目的ではないが、ヘリカルアンテナはアンテナとして機能する。
アンテナをコイル状にすることによって、電気的長さを確保しながら物理的寸法を短くすることが出来る。
もちろんアンテナとしての性能は、物理的寸法が小さくなる分悪くなってしまうのは仕方ないことだ。


まずは携帯電話のアンテナとの結合部を考えてみる。
最も高効率な方法は、携帯電話の外部アンテナ用コネクタを使用する事だが、これではヒモツキになってしまって都合が悪い。
そこで、携帯電話のアンテナを縮めた状態,すなわちヘリカルアンテナが働いている状態で、出来るだけ密に結合するようにコイルを取り付けた。
コイルに関しては巻き数や共振回路,50Ω同軸に対するマッチングセクションなどの実験もしてみたが、部品点数が増える割にはメリットが少なかった。
そこで銅板で作ったワンターンのコイルに直接同軸ケーブルを接続する方法にした。

これがそのコイル部分だ。
銅板を丸めて、極細の同軸ケーブルを接続しただけの簡単な構造。
コイツを携帯電話のアンテナのさきっぽにかぶせて使用する。

携帯電話のアンテナを取り外して、これをSG(Signal Generator)でドライブし、このコイルに誘起される電力を測定してみたところ、ヘリカルアンテナと結合によるロスは約6dBとなった。
もっとも、携帯電話にして見れば本来は自由空間上にあるべきヘリカルアンテナに変なコイルを被せられるわけで、VSWR(電圧定在波比)は悪化することは間違いない。
一方のアタッシュの外部に付けるアンテナだが、これは携帯電話のアンテナそのものを使用した。
とは言っても実はさきっぽだけである。

近寄りすぎてピンぼけだが、この程度の大きさならさほど気にもならない。
これを取り付けるために、アタッシュには直径約7mmの穴を開けた。
当然の事ながらアタッシュとアンテナは絶縁しなければいけない。
その為、アンテナ下部には不要になったプリント基板を加工して,それをアタッシュ内部から両面テープで貼り付けている。
アースはアタッシュに取れば問題ないわけだが、今回は長めの銅箔テープをアタッシュ内部に張り付けて、これをアースとして使用した。


アタッシュの中で携帯電話が呼び出し音をならしていても気が付かない場合が多い。
そこで「リモートぶるぶる君」を作ってみた。
ぶるぶる本体は携帯電話から外したもの。

3Vも電圧を加えれば景気良く振動してくれる。
回路の方は光るアンテナの時とさほど違わない。
アンテナから出る高周波を整流した後、トランジスタで一段増幅後,パワーMOS-FETを駆動している。

回路図中,NPNトランジスタを2SC945としているが、同クラスのチップトランジスタを使用し、電池には(釣りの)浮き用リチウム電池が使用できるのではないかと思う。
アンテナは、携帯電話のアンテナに結合させる。
あえて余り感度が良くならないようにしているのは、他人の電話に反応しないようにするためだ。
振動モータの代わりにセラミックブザーを使用すればピーピー鳴るが、アタッシュケースのグリップ部近くに振動モータを取り付ければカバンを持っている限り着信は関知できる。