東芝リブレットを解剖する

東芝のサブノート、リブレット30を入手した。
640×480ドットのTFT液晶+486DX4−100相当(5x86−133らしい)のCPUを搭載している。
B5或いはA5サイズのサブノートもあるが、A5より更に小さい外形寸法が魅力か?さて、ベンチにでもかけてみるか..電池が新品のうちにね。



電池はリチウムで、10.6V,1.2Ahだ。
10.6Vだから3セル分と言うことになる。
(リチウム2次電池の公称電圧は3.6V)電池寸法は小さい。
キーボード手前の部分より小さいのだ。
この電池でフルに使うと..1時間ほどでバッテリアラームが鳴動する。
さて、消費電流は?外部電源端子から15V(規定値)を加えて測定してみた。
なお、15Vでの消費電流だから10.6Vでは更に増えるはずだ(内部はスイッチング電源の様子、電圧を下げれば消費電流は増大した)*3DBenchはWin95のDOS窓*メモリは20MB実装
フルパワーでDisk アクセス中 700mA 3DBENCH
フルパワー/IDLE 600mA 37.0
ハイパワー/IDLE 600mA 37.0
ミディアム/IDLE 600mA 37.0
ローパワー/IDLE 480mA 13.5
これを見ておかしいと思わないかい?CPUパワーコントロールが4段階有るのだが、ローパワー以外は変化しないのだ。
これは現在東芝に問い合わせ中(11/28)クロック用ICの出力は、2種類有る。
設定周波数の2倍が出力されているのだ。
測定してみると、CPUクロックとして使用しているのは、その2倍出力の方だがローパワーにすると1倍出力の方に切り替わるのかもしれない。
(確証は持てないが)また、画面の明るさも制御可能なので調べてみた。
なお、CPUはフルパワー動作だ。
もっとも明るい 600mA
次に明るい 580mA
暗い 550mA
もっとも暗い 540mA
CPUをローパワー にしてもっとも暗い 400mA


これを見て分かるように、暗くしても結構電力は消費している。
15Vで600mAだと、9Wの消費電力だ。
ディスクが動いたときは、700mAだから、10.5Wになりカタログ値の10Wに近い。
これを電池電圧に換算すると、10Wで940mA程になる。
実測すると10.6Vで、970mAだった..計算合わないな..電源効率のためかな?ちなみに、フルパワーでアイドル状態(つまり、15V・600mAの時)の10.6Vに於ける実測消費電流は、800mAだ。
1.2A/hの電池が1時間でなくなる、実際値とほぼ合致するのだ。
テストは、フルパワー設定にして3DBenchを回しっぱなしにした。
ディスクはもちろんアクセスしていない。
結果は、1時間17分だった。
リブレットのカタログによると、連続動作時間は2〜3時間とある。
2時間持たせるためには、消費電流を500mA程度に押さえなくてはならないだろう。
(電池容量は10時間放電率..実際の充電完了時電圧は12.5V程有る)10.6Vの500mAだと、5.3W,15Vでテストした値に換算すると350mAだ。
CPUのスピードをもっとも落としてLCDのバックライトをもっとも暗くすれば400mAだから、2時間近く持つかも知れない。
一度もハードディスクをアクセスしない場合に限って..だ。
しかし上記の通りカタログには、フルパワーで2時間/ローパワーで3時間との記載がある。
一体どう計算するとこうなるのか?これも東芝に聞いてみよう。


ちょっと説明がわかりにくいので、再度。

電池の公称容量は10.6Vで1.2Ahだから12.72Wh
フルパワーでディスクが動いていない状態での消費電力は約9W
12.72を9で割ると、1.43だ。

2時間は持たないよね。

実測すると、1時間17分でシャットダウンした。

条件は、ディスクアクセス無しでフルパワー運転(3DBENCH回しっぱなし)だ。



ここで私は気がついてしまった!コイツはメモリが20MB入っていたのだ!標準の8MBにしてもう一度測定だ。
8MBで消費電流が15V時に350mAになったら2時間持つことになる。
早速メモリを外してテストだ。
でも..あれっ?大して変化が無いぞ!10〜20mAの変化だ。
メモリをガンガンアクセスするようなアプリだと、当然変化するかも知れないが今回のベンチマークテストでの差は誤差範囲と言うことだ。


東芝から返事が来た(11/29)それによると、クロック設定の件はアプリケーション非動作中にCPUにWAITをかけているとのこと。
従って、アプリ動作中のCPUパワーは変わらないそうだ。
(これに何の意味があるのか?)2点目の連続動作時間だが、東芝では特定のアプリで1分間隔でハードディスクにアクセスするテストプログラムを使用しているとのこと。
しかし、F&Fのテストはディスクアクセスゼロで1時間17分だ。
東芝のテストよりだいぶ軽いテストでだ。
東芝では上記テスト方法で、2時間以上をマークしているという。
私が聞いたのはダイアル3100と言う、サポートセンタなのだが技術的なことは社内で確認してから返答するようで時間がかかる。
これは、東芝が使用しているテストプログラムを入手するしかないかな?出してくれないだろうなあ..一応悪あがきはしてみるけどね。
−−その後mailで問い合わせたが、音沙汰無し。
どうやら無視されているらしい..

ACアダプタの出力電圧は15V,1Aだ。
車のバッテリで充電できないのか?外部電源端子の電圧を徐々に上げていくと、約13.5Vで充電開始となる。
下げていった場合には12.5Vあたりで充電電流が減少する。
エンジンがかかっている状態の車ならギリギリ可能か?なお、リブレットの電源を入れておかなくても5日で電池はなくなると言う。
10mA程のアイドル電流が流れているという事か..

内部はこんな感じ。
開けるのは簡単だ。
携帯電話やPHSより丈夫なケース。
開け閉めしても傷まない構造だ。

右側はハードディスクドライブ、HDD2114B / 5V 0.7A の印刷がある。
左側はPCMCIAカードスロット、その手前が電源部だ。
CPUはPCMCIAカードスロットの裏側。

苦労して開けるとこうなっている。
このフレキを外すのが大変なのだ。
右側の#みたいな金属部分が見えるデバイスがCPU,5x86P75ってヤツだ。
133MHzでドライブすればPentium75MHz相当なのだとAMDでは言っている。
AMD発表のベンチマークテストによれば、Pentium75よりパフォーマンスは高い。
(ただし、ライトバック動作を行った場合)中央部にドンとあるのがビデオドライバ(CIRRUS LOGIC CL-GD7584-85QC)..デカい。
左側は内蔵の8MBメモリ(KM416V1000AT-6)とメモリスロットだ。
肝心のチップセットはPCMCIAカードスロットの下に隠れている。
コイツはPentiumのTCPみたいな薄いデバイスだ。
もちろんワンチップ。
しかし、PCってこれだけの部品で出来ちゃうわけ?液晶部はバラしていないが、液晶ドライバやFL点灯用のDC−DCコンバータが入っているくらいだろう。
クロックドライバはW48C54Aだ。
その横に14.318MHzの水晶も見える。
どこかにCPUを4倍速モードで動作させるジャンパがあるのか?そいつが分かれば、いとも簡単に133MHz動作だ。


さてリブに使用されているHDDだが、いやあ小さく薄く軽いモノだ。
実は壊れた(らしい)HDDを入手する機会があったので中身をご覧頂こう。

このドライブ、リブ20用なのだがBIOSからも認識できなくなったらしい。
さっそくリブ30に入れてみるが、やはり認識できない。
モータは回っているようなので、インタフェース部分が壊れていると想像できる。
ならば..とリブ30用のHDDの制御基板を移植してみた。
結果は...ヘッドがカコンと動くだけで..ダメだった。
容量が違うからファームが違うことは容易に想像できたのだが..そんな訳で、この270MBのHDDはバラされる運命になったわけだ。
バラスのはトルクスネジ7本を外すだけ(うち、1本はシールの下)で簡単。
円盤1枚にヘッドが2個(両側)で、別に特殊な機構があるわけではない。
それでは、HDDフェチ(どんなフェチだあ??)のためにスキャナ写真をどうぞ


クロックアップに挑戦する
いよいよクロックアップだ。
Am5x86P75は4倍速モードがある。
現在が33MHzの3倍で動作しているとすれば、それを4倍速モードに変更するだけで133MHz動作となるわけだ。
さっそくココからデータシートを引き出してくる。
クロック倍率切り替えピンは11ピンだ。
データシートによると..「このピンは内部でプルアップされています。
このピンをオープンかVccに接続すると3倍速動作になります。
4倍速動作を行うときはこのピンをVssに接続すべし,なお、ピンの状態はリセット時に読み込まれます」と、書いて有る。
さっそくリブレットを開けて、問題の11ピンを調べる...と!Vssに落ちているではないか!コイツは元から4倍速動作だったのだ。
でも何で?33MHzの3倍にした方がパフォーマンスは上がるだろうに。
思うにリブレット20から、ハードウエア変更無しにCPUだけ積み替えたって事。
リブレット20は25MHzの3倍速動作だからだ。


そこで、ベースクロックアップに挑戦する。
どうやら、リブレット20を100MHz動作にするための変更方法がアチコチで紹介されているらしいのだが、今回は自力で挑戦だ。
クロックデバイスはIC ?
廝錚鬘襭鷦劼裡廝苅牽達毅苅舛澄?
残念ながらデータシートは持っていない。
とりあえずいじくり回して、16ピンをVccに接続することで33MHz出力が得られる事が判明した。
(ノーマル状態ではGNDに接続されている)ICの16ピンをパターンから浮かせて、Vccのピン(13ピン)と接続するだけだ。
基板とケースを分離する必要もなく作業できる。
無理に作業すると、ICのピンが折れてしまう。
私はその経験はないがFEXTなどでは良く報告されているぞ。
(折れた足の回りの樹脂を削って線を付けたとかね)電線は、ジュンフロン線(商品名)など熱に強く細い線を使うベシ。
間違っても模型のモータを配線するような「より線」は避けよう。
より線の中の1本でも、隣のピンに接触したら...危険だ。
作業に自信のない方はやめておいた方が無難。
壊したら133MHzどころかまったく動作しなくなる。
これだけしつこく書いても、ICのピンを浮かせずにジャンパして電源をショートさせたとか,ICが15ピンになっちゃったとか...有るんだよね。

コレが改造後の図。
何故線が2本かって?1本はライトバック改造のためサ!

上の方でも書いたが、このICには2倍の周波数を出力する端子があってCPUにはコイツが接続されている。
従って、(もしかしたら)66MHz迄出力周波数を上げられるのかも知れない。
もっとも66MHzの3倍速でも200MHzだから、CPUが動作するはずはない。
次に低いのは40MHz(だと思われる)から、この3倍速ならCPUは動作する。
もし、CPU以外がうまく動けば4倍速の133MHzよりパフォーマンスは高くなるだろう。


クロックアップの結果は以下のようになった。
DOSモードでの3DBenc
100MHz 47.6
133MHz 62.5
133MHz 71.4
DOS窓での3DBenc
100MHz 37.0
133MHz 52.6
133MHz 58.8
問題の消費電流だが、15Vの値で以下のようになった。
なおメモリは20MB実装だ。
100MHz 600mA
133MHz 640mA
約7%程消費電流が増大した。
この7%を多いと見るか?少ないと見るか?消費電力重視の向きには、外部電源接続時のみ133MHz動作になるように、トランジスタ1石で制御してやればよい。
体感速度はかなり向上する。
ベースクロックが上がったためだろう。
メモリスピードベンチマークは以下のようになっている。
−−100MHzEcache Read Time = 94ns/dwor
Ecache Write Time= 83ns/dwor
Memory Read Time = 94ns/dwor
Memory Write Time= 83ns/dwor
133MHzEcache Read Time = 70ns/dwor
Ecache Write Time= 62ns/dwor
Memory Read Time = 70ns/dwor
Memory Write Time= 62ns/dwor
−−以上、ベンチマークプログラムは第三京浜氏作のPFM_177を使用した。
最後に実動作時間だ。
条件は、フルパワーモードでWin95からDOS窓内で3DBenchを回しっぱなしにする方法だ。
100MHz 1時間17分
133MHz 1時間10分
意外に変わらないものだ。
消費電流の比率からしてもこんなものかな?

1時間フルパワーで3DBench回しっぱなしでも、異常はなかった。
ただし、カードスロットあたり(CPUが入っている部分)は結構温まっている。
電車の中で、膝に乗せて使っているとその心地よさに居眠りして..リブレット落としちゃうカモ!?ハードディスク側にさほど熱が伝わっていないようだから、ハードディスク(側)に放熱するような仕組みを考えれば良いかも知れない。
そうそう、CPUの近くにサーミスタらしきチップを見つけた。
ケース内温度上昇を検知して、保護(クロックダウン?)が働くのかも知れない。
だとすれば、壊れる前に保護してくれるだろう。
(それが保護ってモンだ)

かくしてF&Fのリブレット30は無事にクロックアップを果たせたわけだ。
クロックアップと言っても、規定以上のクロックでドライブしているわけではない。
CPUの規格内だ。
サブノートだから、電圧上げて−>でかいヒートシンク付けて−>ファンで冷やしてクロックアップまでしたくないよね。


放熱を考えておこう..
133MHzでドライブし、暖かい部屋の中でハードに使っているとサーマルプロテクトが働く場合がある。
コイツが働くと、再起動しない限りクロックは1/2に落ちっぱなしになる。
コレは、CPUのそばに実装されたサーミスタによって温度検出を行い一定以上の温度が検出されると保護のためにクロックを落とす仕組みだ。
コイツを外してしまう手もあるが!正当改造として?放熱対策を実施した。
キーボードの裏側には薄いアルミ板が使用されている。
このアルミ板に放熱するのだ。
CPUとアルミ板とのクリアランスは1.1mm〜1.2mm,この厚さの銅板を入れてやればOKだ。
その場合に、CPUに両面テープで貼って有るビニールシートは剥がすことをお忘れなく。
銅板が入手できない場合は、もっと簡単な方法がある(F&Fもこの方法)10円玉にシリコングリスを塗布して挟むのだ。
コイツが丁度良い大きさと厚さを持っている。
表面がガタガタで放熱が悪そうだからと言ってヤスリで削ったりしてはいけない。
お金を加工すると重ーい罪になる。
オリジナル?の10円玉でもそこそこ放熱出来るゾ!ただし、この放熱を行うとキーボードが暖かくなるが..放熱されている証拠ってモンだ。
10円玉がもったいないからと言って、5円玉で済ましてはいけない。
真鍮は熱伝導率が悪いからだ。
やるなら1円玉にした方がよい。
また、シリコングリス(シリコングリスと酸化チタンが混ざった、放熱用グリス)より、シリコンオイルに銅粉を混ぜたモノの方が、熱伝導性は高い。
金属銅粉が入手できるならこちらの方が良いだろう。

10円玉はこの通り...

最後に(重要)
このページを参考に改造を行うことは自由ですが、改造したためあるいはその工程上
であなたの大切なリブレットに何らかの異常が発生したとしても、私には何の補償も
手助けも出来ません。

高性能化と引き替えに多少の危険が有ることをご承知おきください。

このページではリブレットの改造を推奨しているわけではありませんし、25MHz
の4倍速動作でパフォーマンスが上がらない設計をしたエンジニアを責めているわけ
でもありません。