日産リバティー乗る


日産リバティーに数日間乗る機会があった。
この車はワンボックスほど背が高くはないが、普通の乗用車よりは背が高い、2000ccの7人乗りの車である。
最大出力147馬力/20.2KgmはC180と似たようなもの(リバティーの方が少し最大出力が大きくC180の方が少し最大トルク値が大きい)で、私が乗ったモデルはFFベース4WDのベース価格約243万円のものだった。
最初にシートに座って感じた事は、シート幅がやけに狭い事。
おそらくウォークスルーを実現するために、フロントシート幅を狭くすると共に、左右いっぱいにオフセットして取り付けたに違いない。
もちろんシートに足りないものは横幅ばかりではなく、座面の前後長も切りつめられている。
この辺りはコストとの兼ね合いだろうが、C180 とから乗り換えてすぐに分かる違いだ。
一般に日本車のシートがチャチなのは、欧米人に比較して日本人の体格が小さいからなのかも知れないが、これって時代錯誤ではないのだろうか。
今や女性の平均身長だって立派な数値になっている時代、ちょっとシートは情けない。
アクセルを少し踏み込むと、力強く発進する。
おそらくアクセル開度10%でスロットルは50%以上開いているのではないかと思うほど。
それが証拠に、それ以上アクセルを踏んだ所でより強い加速感は得られないのだ。
この軽いアクセルペダルはほんの数センチのストロークがリニアな範囲。
と言うか、ほとんど1か0かの世界に近い。
この車をゆったり走らせるには微妙なスロットルコントロールが必要になり、かなり疲れる。
もちろん乗っていれば慣れてくるが、不自然感をぬぐい去るまでには至らなかった。
慣れにくいのはブレーキの方だ。
ブレーキもわずかな踏力で強い制動力が得られる。
最初に踏むと弱く効き、もう少し踏むとグッと効き、更に踏んでもそれ以上は制動力はなかなか上がってこない。
ブレーキペダルの方もリニアな範囲はほんの数ミリのストローク範囲ではないかと思えるほど。
平坦な道でのブレーキングは何とかなるとしても、車が揺れていたりGを感じながら微妙なブレーキ操作というと、これは不可能に近い。
しかも路面状況はペダルに全く伝わってこないので、そこが滑りやすいのかグリップしているのかも分からない。
おそらく、ちょっと踏んだだけでグッと制動力が立ち上がるフィールを"良く効くブレーキ"だと思っているのだろう。
まさかエンジニアがそう思っている訳ではないだろうな。
客がそう言ったフィールを好むから、仕方なしにセッティングを出しているのだろうな。
もし本当に自信を持ってこのブレーキを設計しているヤツが居たら、そいつは大馬鹿者だ。
しかしトヨタ車と比較すると日産車の方が総じてブレーキフィールは良い(これでも)。
トヨタの場合は多少リニアな範囲が広いのだが、どんどん踏み足していかないと一定の制動力が得られないような感じなのだ。
外国人ジャーナリストはこれを「作られたブレーキフィール」だと言い、「一見良くできているが作り物には限界がある」と評していた。
これに比較するとC180の方は踏力自体は余り変わらないものの、遙かにリニアな範囲が広い。
踏めば踏んだだけ効く、踏力を弱めれば効きも弱まる、普通のブレーキなのだ。
アクセルにしても同じ事が言える。
C180はSL程リニアではないのだが、踏み込み量と発生トルクの比例範囲はリバティーの比ではなく広い。
ただしSLから乗り換えるとCのアクセルフィールは不満に感じてしまうのだが。
エンジンノイズは3,000回転以下では比較的静かだ。
それ以上回せばがさつな振動と騒音が室内に充満する。
たぶん低回転域でC180より静か、3000回転以上ではC180よりずっとうるさく、高回転域での頭打ちも早いと思う。
4気筒エンジンの振動もそこそこ抑えられている。
アイドル中はボディーやステアリングに振動が伝わってくるが、そのレベルは縦置き4気筒の
と余り変わらない。
ちなみに燃費は悪く、市街地で6Km/l程度だろうか。
おそらく同条件下でC180ならば8Km/lは走ると思う。
10・15モード燃費はリバティーの方がずっと良いのに。
サスペンションはとりあえず評価しておこう。
いや、あくまでもワンボックス車に比較してと注釈が必要になるが、この手の車としてはリアサスの動きが自然な方だと感じた。
ワンボックス車がバウンド/リバウンドの度におかしな動きをするのとは対照的に、乗用車に近い感じでストロークしてくれる。
固さに関してもフワフワという事はなく、市街地速度であれば車高が高い割に怖さも余り感じない。
ただしハーシュネスは大きめだ。
サスの固さ自体はC180の方が上だと思うが、振動やノイズはリバティーが大きい。
リバティーは"柔らかいのにゴツゴツ感がある"
と言ったらいいだろうか。
丁度数年前のホンダ車みたいに。
その一つの原因としてボディーの弱さがあるだろう。
段差など、或いは首都高速の継ぎ目を乗り越えた程度でも、その振動は明確にボディーを震わせる。
これは不快だ。
目地の度にフロアパネルがワナワナと震えるのだ。
何故ここまで剛性がないのだろうか。
コストダウンの為なのだろうか。
車が新しい為もあって、車両全体がブルッと震えるような段差乗り越え時にも軋み音などは皆無だったが、この先何年も使っていたらきっと低級雑音が耳に付くようになるのではないか。
路面の状況急変の度にブルブルボディー全体が震えているのだから、各所で音が出始めても少しも不思議ではない。
このボディーの振動はパジェロよりはマシ、セフィーロよりは激しいといった所。
ユーザレポートなどを見ると「家族向けには固すぎる足回り」とか「固めの足でスポーツ走行もこなせる(F&F注:本当かよ?!)」などの評価がなされているから、やはり日本人的にはフワフワサスでないとダメだと言う事なんだろうな。
内装はごく普通で、3列目シートは子供用と割り切った方が良いかなと言う程度の広さ。
ちなみに3列目のシートを使うと、ラゲッジスペースは最小になってしまう。
全長4.6mに満たないサイズなのだから、これは仕方ない事だ。
逆にこのサイズで7人乗りを実現した事は(無理はあるが)この車のメリットではないのだろうか。
問題は3列目シートへのアクセスで、最初は一体どうやって3列目に乗り込むのか迷ったほど。
答えは2列目シートを前方に倒すという簡単なものなのだが、ワンボックス車より低い車高(163cm) なので3列目の穴蔵(着色ガラスなので余計暗く感じる)に入っていく感じ。
両側スライドドアは便利だ。
自動ドアにもなっているのでリモコンオープンも出来、両手に荷物を持っているような状況下では有り難い。
オートエアコンは真夏の炎天下でなければそこそこ効く。
吹き出し口が小さいために、どうしても局所的に温度が下がってしまい、車室内に暑い所と寒い所が出来てしまう。
ブロアノイズも大きめで、この点ではトヨタに完敗だ。
トヨタはブロアノイズや吹き出し音低減のための設計を細かく行っており、風量の割に静かなエアコンになっている。
BENZなどもブロアノイズというか風の音は大きめである。
最上級仕様の240万円クラスとしてみると、ちょっと安っぽい所も目立ちはするが、それでもC180よりは100万円以上安い。
廉価帯では100万円台で買えるモデルもあるから、それならば実用車としては我慢出来る範囲なのではないだろうか。
おそらく日本車を乗り継いできた方にはブレーキフィールも許容範囲内だと思うが、私はダメだな。
車から降りた後で足の疲れを感じたほどだから。