新車のならし試運転について考える


新車を購入すると、まず行うのが慣らし運転だ。
最近の車では不要論もあるが一体どうなのだろう。
経験も交えて考察してみる。


ならしを行うことによって、摺動面などの“あたり”を付けるのが目的と言われている。
では“あたり”とは何か?クリアランスが明確に変化するためには数万キロ以上の走行が必要だから、そう言う意味ではない。
製造時や組み立て時に付いた傷(数十μm程度の物)や、洗浄が不完全で内部に付着している微ゴミをオイルで洗浄するのが目的である。


国産車に関すると、現在の車は新車時でも1万Km走行時でも大して性能が変わらない。
組立精度が上がったとの意見もあるが、正確なところ私にも分からない。
その性能は3万Km以上まで維持され、その後徐々に性能は低下してくる。
外車に関しては、国産車と少し違うようだ。
新車時の性能より、1万Km程度走行したときの方が一般的に優れている。
振動などに関しても明確に差が出てくる場合がある。
1〜2万Km走行でピークに達した性能は5万Kmあたりまで維持されるケースが多く、その後徐々に低下するわけだ。


以前某H社で自動車設計を行っているエンジニアに聞いた話なのだが、国産車が軽量低燃費なのは、国内の高速道路の最高速度が100Km/hで有ることに助けられていると言っていた。
つまり、常用巡航最高速度の設計値として100Km/h+αとしているからだそうだ。
従って、そのままのスペックでヨーロッパなどに輸出すると問題があるという。
また、180Km/hのスピードリミッタに関しても「これによって駆動系の設計が非常に楽になり、コストダウンに貢献した」との事。
日本車の寿命(?)は、7年程度と言われている。
一般の人の年間走行距離が平均1万Km程度で、7年間乗っても10万Kmに至る人は少ないだろう。
もちろん短期間に多くの距離を乗った方が痛みは少ない。
(タクシーなど)一方ヨーロッパでは、一台の車に長く乗ることで「ゴミの排出を防ぎ環境維持に貢献する」との見方が一般的だ。
ボルボやメルセデスは、20万Km以上乗り続けると記念品をくれる。
風土の違いが車の違いになるのは当たり前、従って日本車と外国車ではならしの効果も違って来るのでは無かろうか?

では実際の慣らし運転とはどの様にするのか?ベンツのマニュアルによれば「走行1500Km程度までは、許容回転数の2/3迄の回転に抑えて,また長い上り坂では余り低回転/高負荷にならないようにシフトダウンすべし」と書いて有る。
SL600の場合だと、気合いを入れて踏まない限り2000回転を越すことは少ないから意識せずとも慣らしになってしまう。
Vitaの場合も低速トルクが結構あるから、町中走行では3000回転前後を維持できるが高速道路などでは回したい衝動に駆られるね。


慣らし運転の実際だが、高速道路などを一定速度で走るより町中など、いろんな状況がミックスされた運転状態の方がよい。
エンジンのみならず、ミッションやデフやサスペンションにも慣らしは必要だからだ。
乗り始めの数百Kmは、回転数を最大許容回転数の1/2程度に抑え、その後2/3程度まで使うようにすれば良いのでは無かろうか?私の実感として、さほど神経質になる必要は全くないと思う。
慣らしが終わる頃エンジンオイルオイルフィルタを交換しよう。
エンジン内部のゴミなども一緒に出てくるはずだ。
フラッシングは気分の問題だと思うが,私はやらない。
オイル交換後も一気にレッドゾーンまで使わずに、いたわりながら距離を重ねればそれが自然では無かろうか?

エンジンは、使っているとカーボンやらがたまってくる。
たまに高回転/高負荷運転を行うことで、バルブからマフラーにまで付着したカーボンを吹き飛ばすことが出来る。
SL600では、高負荷(3速以上)で高回転(5000回転以上)となると法定速度を大幅に上回るので簡単には出せない。
低負荷(1/2速)ではカラぶかしと大して違わないから、エンジンにとっては余りよい状況ではない。
無負荷運転時と高負荷運転時では、ピストンにかかる負荷が(当然)違ってくるから、シリンダとの摺動面が変わるのだ。
また低いギアだとすぐ吹けきってしまうから、そこそこパワーのある車だと高回転が維持できない。
90年の500SLに乗っていた頃、毎週のように某所に出かけては高回転/高負荷運転を行っていた。
93年の500SLは、もっぱら町中専用車と化していたのだが実感として高回転/高負荷運転を行っていた方が、高回転域でスムーズに回るような気がする。
理論的にどうなのかは??だが、おそらくカーボンの付着やブローバイの溜まり方等に変化が出るのだろう。