SL500に乗る(納車〜R129との比較偏)


SL500が納車された。
横浜には年間4台の割当で、その中の1台が当たったというわけだ。
もっともこの不景気の時代である。
2人乗りの非実用的車を買おうとする人は少ないのでは無かろうか。
と思ったら、既に3年待ちなんて話もあって、どこまでが本当やら。
色については迷ったのだが、結局銀になった。
これは初期ロットが銀と白しか入ってこないと言う事で、他に黒(ほとんどソリッドの真っ黒)とか、薄い青紫(個人的には好きな色で、あと10歳若かったら乗っても良いかも)とか、ダークグリーンなどが選べるのだが、どれも乗りたい色と言うには程遠い。
では銀が好きかというとそうでもない。
最近は国産車も銀が流行っていて、それは汚れが目立たないなどのメリットはあるのだけれど、磨いても光らない(目立たない)色だし、ちょっとつまらない。
やはり濃色系のツヤには魅力がある。
でもソリッドの黒では余りに似合わない。
むしろ銀より白が良いかとも思ったが、1990年の500SLは白で(それしか選べなかった)濃色に乗りたくて次の車に買い換えたようなものだったし…結局1993年の500SLはブルーブラック(いわゆるベンツの黒)にして、1996年のSL600はエメラルドブラック(黒に近いくらい濃い青のメタリックという感じ)だった。
過去には茶色(RX-3)とか赤(コスモ)とか、銀と言うより少し金色っぽい銀(Z31)、白っぽい変な色(ソアラのパール塗装)などに乗ってきた。
当然ながら白い車にも何台か乗っている。
内装(シート)はカタログ上はブラックとなっているが、真っ黒ではなく濃いめのグレーという感じ。
ただこれが外装色とマッチしていて、R129の真っ黒より余程明るい感じなのだ。
ガラス面積自体はR129より少なくなっているので、ルーフクローズ時に室内が明るく見えて宜しい。
外観が丸みを帯びた為か、膨張色である銀色の割にはコンパクトに見える。
車体寸法自体は全長全幅共に若干拡大されている。
購入にあたって一応希望のオプションは聞かれるが、実際には輸入されてきた車で良ければ買うし、希望と違えば次まで待つという風になる。
私としては特別欲しいオプションもなかったので、出来るだけ裸に近いモデルを希望した。
オプションとしてはベンチレーション機能とマッサージ器の付いたシート、60GHzレーダ付きのオートドライブ、超音波センサによるバックアラームと言った所。
なおキーレスゴー(キー不要のシステム)やタイヤ空気圧モニタと言った実用的なものは電波法の関係で正規ものには付いてこない。
が、この辺りは並行車なら何でもありだ。
1990年にSLに乗り始めて以来、ディーラものを買うのはこれがはじめてである。
並行車に特別拘ったわけではないが、例えば4人定員登録は並行車でしか出来ない(頑張ればディーラ車でも改造申請で出来なくはない)し、オートレベライザなど正規ものには付かないオプションも並行ものなら自由に選択出来る。
色に関しても本国発注なら様々な外装色と内装色の組み合わせが可能だ。
今回ディーラものにしたのは、ナビ関係が日本専用仕様になる事に加え、並行車の価格がディーラ車より高い(但しオプション類は差異がある)という事になったからだ。
特にナビ関係は、DVDナビに加えてTVチューナも付くものなので日本仕様が必須となる。
たぶん並行車でも国内用の品番でパーツを取れば付け替える事は可能だろうが、現時点で売られているもののほとんどはナビ無しの様子。
もちろん純正ナビの機能に期待などしてはいけないから、社外品を付けた方がある意味良いのだがフィッティングの問題は残る。
そうそう、正規ものには18インチのタイヤが付いてくる。
フロントが255/40-18で、リアが285/35-18 なのだが、オリジナルの255/45-17でも良いような気がするけどね。
何しろブレーキディスクが17インチ用だから、隙間が開いて格好悪いのである。
AMGの8ポットキャリパーセットでも組めばいいのだろうけれど…17インチ→18インチでも気になるのに、世の中には元々15インチの車に18インチや19インチを履かせている人もいるのだからすごいと言うか格好悪い。


改良されたABCやSBC搭載と言うことだが、乗った感じは普通の車である。
12気筒に比較すると明確に振動が多いと思う8気筒はそれでも静かに回り、低速トルクは12気筒と同じくらいあるのではないかと思わせるほどだ。
メルセデスにしては排気音がチューニングされていて、それまでの低速でこもったような音質から乾いた音へと変化していて気持ちがいい。
これまでのSLはEクラスやSクラスの内装ほぼそのままだったのに、今回は随分力が入っているではないか。
アルミ製のペダルや排気音も含めれば、力が入り過ぎって感じがしないでもないが。
サスに関してはR129より明確に姿勢変化が少ないのだが、ハーシュネスの吸収はとても良く出来ている。
残念なのは高速走行時のタイヤノイズである。
これは振動と言うより"音"として室内に入ってくる。
ミシュランパイロットの宿命か。
出来る事なら静かなタイヤにしたいのだが、他の銘柄で285/35-18なんてあるのかな。
ABCのおかげでロールはほとんど感じない。
コーナに突っ込んでいっても、油圧アクティブサスが動作する領域であれば姿勢変化もほとんど見せずに曲がってしまう。
R129に比較すると回頭性が良好なので、いい気になってコーナーに突っ込んでいって痛い目を見そうな気がするくらいだ。
乗った感じは固いと言うかシッカリしているのだが、それでいてショック吸収能力に優れる不思議な感触なのだ。
メータパネル内のグラフィカル表示部には様々な情報が示される。
設定もこれを使って行われ、例えばルームランプの遅延消灯の時間まで設定出来たりする。
総燃費や平均燃費も表示出来て、平均速度20Km/h程度で周辺を走り回ると7.6Km/lと表示されていた。
おそらく燃費だけはR129(SL600)より良いのではないかと期待しているのだが。
その燃費も朝の通勤時間帯だと、平均速度が10Km/h程度になって自宅→会社までの約8Km区間の平均燃費は5Km/lを切る。
が、夜の帰宅時には道が空いているので表示燃費が良くなる。
燃費と共に運転時間や、燃料残量から計算した走行可能距離など、一昔前の日本車に装備されたドライブコンピュータみたいな感じ。
その表示はメータパネル内、スピードメータと回転計に付けられたLCDにグラフィカル表示され、操作はステアリング上のスイッチで行うと言った具合だ。
エレクトリカル制御はBMWが一歩進んでいる感じではあるが、最近のメルセデスも随分電気仕掛けが多くなったものだ。
これじゃ日本車と変わらないじゃないかとも思いたくなるが、日本車の場合はカタログを飾るような派手なものが多いのに対し、欧州車は日本で実装し尽くされた、或いはそれを発展させたような装備が多い。
バック時にミラー角度を変えるとか、キー(2つ付いてくる)によってシートやミラーやステアリングセッティングを変えるとか、暗い所で開錠するとスモールなどが点くとか。
この辺りの細かな制御は日本車のお家芸だと思っていたのに。
ワイパーも雨滴検出型のものが付いている。
私の記憶によれば、これを最初に使ったのは日産のZだったのではないかな。
Z31はウォッシャ液吹き出し口の辺りにマイク(雨音を検出する)が付いていて、何とも不格好な代物だった。
が、R230はどうやら光学センサらしく、インナーミラー付近のフロントガラスに小窓がある。
これは空気清浄機の埃検出装置のように、雨粒で反射されてくる光を検出するのだろうか。
インナーミラーが反射率可変型であるのは前モデルも同様だったが、R230ではドアミラーも反射率可変型になっている。
これによって単車などのハイビーム化したロービームを浴びせられても余り眩しくない。
なお雨滴(氷?)除去用のヒータ内蔵は前モデルと同様である。
一方で標準装備のナビは意外とボロなのだ。
カーメーカ純正のナビなんてロクなものではないと言う感じだが、(おそらく)松下製のDVDナビも機能的にはこれまで使用していたSONYのモデルに負ける。
でもプログラムが暴走しないだろうから、その点ではSONYより上かな。
地図画面の表示色などはSONYのものが気に入っていて、これは他社より見やすいと思う。
従って最初にこのナビ画面を見たときには色合いの地味さ(笑)に違和感を覚えた。
最も使いにくいと感じるのは3D表示(と称するモード)でのスクロール速度が激遅だと言うこと。
これは使いにくいなどと言うレベルを通り越している。
おそらく3D展開に時間がかかる為だと思うし、SONYのモデルもスクロール時には2Dモードに自動的に切り替わっていた。
が、このナビはスクロール時にも自動切り替えが行われず3Dのままスクロールしようとするからひどい事になるのだ。
TVチューナ、AM/FMチューナはいたって標準的であり、パーキングブレーキスイッチのみでTV画像制限を行っている辺りは改造の容易さを感じる。
VICSには対応しているが、FMラジオチューナと共用なので受信局によっては機能しない。
これは別売りのVICS専用チューナを買えば良いのだが、そこまで必要かどうか。
ただD-GPSを使う事を考えるとちょっと欲しいかも。
同様にビーコンユニットも別売りである。
VICSを使ったとしても、混雑時間帯の都市部では全部の道路に渋滞標示が出る。
どこを通れば空いているとかいないとかの話ではない。
夜間工事で局部的に渋滞していてそれを避けるなどの用途には使えるのかも知れないが、渋滞検知センサの所に違法駐車車両がいるだけ…って事も多いわけで、情報の信頼性が少しばかり疑問なのだ。
FM VICSはFMチューナ非使用時には自動選局をしてくれる。
GPS情報によって自位置が解るので、それに基づいたFM局のデータテーブルから周波数を設定するというもの。
実はこれ、簡単な機能だと思うのだけれどSONY製には付いていなかった。
(今のモデルには付いているかも知れない)

SBCは電気仕掛けのブレーキシステムだ。
ブレーキペダルはマスタシリンダを押しはするが、それは主に反力を得る為とエマージェンシー用に過ぎない。
ブレーキペダルに伝わる踏力はセンサによって検知されてABSユニットが油圧を発生させる。
これによってブレーキングが行われるのだが、ペダルの踏み込み速度やアクセルペダルを放す速度によってブレーキフルードの予圧レベルを変える。
ブレーキフィール自体は剛性感があって好ましいとは思うのだが、余計な仕掛けによって踏力対ブレーキの利き具合が変化する所は違和感が無いとは言えない。
ハードウエア的にはフロントが対向ピストンの4ポット+ドリルドロータ(おおげさ!)、リアはフローティングキャリパにドリル穴の開いていないベンチレーテッドディスクだ。
サイドミラーは例によって曲率半径の違うミラーを組み合わせたもので、R129よりミラー面積は小さい。
なので見にくいのは仕方ない所だろうか。
これはA-160でも同様なので最近は慣れてきたが、でもやはり気に入らない。
仕向地によっては単一曲面のミラーもあるらしいのだが…屋根の開閉は短時間に行われる。
スイッチ操作から公称16秒と言うことで、信号待ちの間にも軽々開閉出来る。
その屋根が格納されるトランクが広いとは言えないのは、国内仕様ではスペアタイヤが標準で搭載されている為だ。
屋根を開けなければ(つまり、トランクに屋根をしまわなければ)R129より体積的には大きいと思う。
ただし天地方向には狭いような気もする。
屋根は多くのリンケージで格納と展開を行う。
その為、室内にもリンクの一部が見えている。
この辺り、(ソアラは見た事がないのだが)トヨタだったらもっと上手く処理するのではないかと思ってしまう所だ。
R230の屋根しまい構造の特徴は、リアガラスを反転格納させる点にある。
屋根とリアウインドゥは共に曲面で出来ているが、そのまま二つ折り(ルーフとリアガラスの接点で折る)にすると曲がり方が反対になってしまう。
そこでリアガラスを反転させながら格納するというわけだ。
これならルーフの下側に、リアガラスの外側がくっつく形でしまえる。
当然の事ながらトランクリッドは前からも後ろからも開く。
なのでリッドの剛性感は低い。
ただ、ロック位置まで持っていくと自動的に引き込んでくれるので開閉は楽である。
ボディー剛性はR129のルーフ・クローズ時より上がっているかも知れない。
R129はオープンにすると明確にねじれ剛性の低下が認められた。
いや、1990年モデルではそんな事がなかったように思うのだが、96年モデルでは剛性低下が気になったのだ。
ただし、これは新車時から8.8万キロ走行後まで変わらない(解らない範囲で変わっているかも知れない)状態だったので、経年変化は最小限であると言える。
R230は屋根を開けても閉めても変わらぬ(屋根は組み立て式でしかもアルミだから、それ自体が剛性に貢献する度合いは低いのだろう)剛性感を持っている。
ついでに、空気抵抗係数は0.29だそうだ。
R129が0.32で随分頑張ったなと思ったものだが、R230ではその上を行っている。
丁度日本車が空気抵抗係数競争を行っている頃、メルセデスは「日本車には勝てない」と言っていた。
今や日本車は空気抵抗係数などカタログにすら出ていない。
何せワンボックスが流行っていて、空気抵抗係数がカタログに表示出来るような数値ではないのだから。
日本車がそう言う変化をしている中、メルセデスは空気抵抗低減設計をしていたと言う事だ。
その為もあってか、SL55AMG(476馬力)はリミッタレスで330Km/h以上の最高速を記録したという。


ヘッドライトはキセノンだが、最近は色温度を下げる傾向にある。
以前は6,000K程度だったらしいが、今は4,000K前後だろうか。
キセノン(メタハラ)は色温度を上げると暗くなる傾向にあるし、色温度の高い前照灯は雨の時などに見にくい。
おそらく色温度変更の理由は後者だと思う。
面白い事にアフターマーケットの世界では、交換用着色キセノンバルブを売っている。
そう、ハロゲンランプにブルーの着色をして色温度を上げるようなものと同じ。
キセノンバルブが青色に塗られているのだ。
ユーザは明るさや見やすさより、青さを求めているのだろうか。
ヘッドライトの配光特製はキセノン+プロジェクタ構造なので全く問題ない。
明るさも十分である。
ちなみにテールランプやメータ照明はLEDが使用されている。
(日本製より遙かに切れやすい電球ともおさらば出来た)R230はバッテリがエンジンルーム(と言ってもバルクヘッド部分の区切られた空間で温度的には過酷ではないはず)とトランクルームに付いている。
エンジンルームが35Ahでトランクが70Ahだ。
エンジンルームのものはエンジン電装品やスタータ用らしく、リアの70Ahがエレクトリカル装備品関係をまかなっている。
何しろ電池が無くなったら何も動作しなくなってしまう車である。
バッテリトラブルの確率を下げる意味での分散化だろうか。
定電圧デバイスを並列にするなんて充電システムが複雑になりそうな気がするが、その苦労より分散化のメリットが大きいと言う事か。
そのバッテリによるセキュリティシステムも強化された。
イモビライザは当然(欧州では義務づけられている)として、侵入警報や車両異常(傾けたりしてはいけない)警報など。
だからたぶんレッカー移動しようとすると警報が鳴り響くに違いない。
牽引もダメである。
キーを入れない状態で車輪が動くと警報が鳴る。
今やエンジンがかからないだけではダメで、車両そのものをそっくり持って行く盗難に対する保護も必要と言うわけだ。
ちなみにリモコンキーはドアの開閉から屋根のオープン・クローズ、サイドウインドウの上げ下げやトランク開錠が可能だが、残念ながら電波法の関係でキーレスゴーは使えない。
同様にタイヤの空気圧モニタもダメである。
これは433MHzを使用する為に、日本ではアマチュアバンドとかぶってしまう。
おそらく近年中には日本向け(380MHz帯か)を使用して来るとは思うけどね。
室内収納場所はR129から大幅に増えた。
ドアポケットは容量が拡大され、グラブボックスが付き、シート下にも収容ボックスがある。
センターコンソール(2シータモデルだと後部のボックス容量も)だけは内容量が減ったが、グラブボックスとセンターコンソールは空調(保温・保冷)機能が付いた。
これらほとんどの箇所はドアロックと共に施錠される。
空調と言えばエアコンの風切り音がウルサイ。
おそらく風の通路やフラップの抵抗によるものだと思うのだが、これは完全にトヨタに負ける。
トヨタは静かな室内空間を作る為に、低騒音型の自動車用エアコンの研究に余念がなかった。
エアコンは外気の炭酸ガス濃度や窒素酸化物濃度を測って内外気切り替えを行うらしい。
ディーゼル排気による健康被害対策であろうか。
その他湿度や日射量を元にエアコン能力を可変すると言うが、こればかりは夏になってみないと効果の程が解らない。
オーディオはBOSEのシステムが付いている。
最近の車はメーカ純正でもそこそこ(そこそこ、である)のパーツを使ってはいるが、しかしコストの壁は厚い。
国産各社はカタログを飾る為に、アンプの出力電力を上げたりスピーカの数を増やしたりしているが、スピーカなどは実にプアである。
R230に付いているBOSEのスピーカ、やはりメーカ純正の域を出ていないとは思うのだがR129の時よりは随分マトモになったという感じだ。
最近流行の音場変換なども備わっていて、これを切り替えれば確かに雰囲気は違ってくるのだが…こうして音をいじくり回すのが主流なのだろうか。


"アーシング"と言う、ボンディングが大流行の昨今、これの効果があるのかないのかという議論が白熱していた。
多く(一部?)の人は「実用域のトルクアップ」や「驚くほどの効果」(何を驚くの?)を体験している。
一方では効果無しのデータも出ている。
「とにかくやってみてください、必ず体感出来ますから」その言葉に誘われてR230がイケニエになった。

これはエンジンルームにあるエンジン電装系用バッテリである。
マイナス端子は太い線でボディーに落とされている。
そこから電線を二本引っ張り出して…

オルタネータ付近とエンジン本体に接続してみた。
試乗してみるとこれがビックリ!!となれば良かったのだが、何にも変わらない。
ヘッドライトの明るさも変わらない。
って、キセノンだから変わるわけはないか。
ならばと言う事で、

左右のカムカバーのネジで共締めしてみた。
でもやっぱり変わらない。
何にも変わらない…電線の数が少ないのかな?市販品みたいに5本も6本も付けないとダメなのだろうか。
それともブルーや黄色の電線でないと効き目が少ないのかな?ここら辺は2002年1月と2月1日付の雑記に書いてあるので、そちらもご覧頂きたい。