キセノンヘッドライトって何だ?


日本でもキセノンヘッドライトが認可された。
キセノンヘッドライトを使い始めたのはBMWでは無かったかと思う。
当時の7シリーズに装着されていたが、その頃我が国では正式には使えなかった。
認可された今、大型トラックを中心に普及し始めている。
トラックは車幅が広いため従来のヘッドライトでは十分な範囲を照らせなかったのだという。
キセノンヘッドライトを使用すればランプ自体の輝度が高くできるから、照度自体は従来のまま広範囲に光を分散させることが出来る。
さてそのキセノンランプだが、もっとも身近にあるモノだとカメラ用のストロボだろう。
厳密には少し違うが、まあカメラのストロボを連続発光させたモノと思えばいい。
ちなみにカメラ用のストロボを連続発光させると、ランプが溶けてしまう。
(実験済み)キセノンランプにフィラメントは存在しない。
放電管なのだ。
カメラ用ストロボのようなトリガのための端子もない。
白熱電球に比較して蛍光灯の発光効率が高いように、フィラメントを使ったハロゲンランプの1/2〜1/3の消費電力でキセノンランプは同等の輝度が得られる。
また、フィラメントがないから寿命が非常に長い。
デメリットは、12Vでは点灯しないこと。
高電圧を発生させるためのユニットが必要だ。
(発光効率がもっとも高いのはナトリゥムランプらしい。
あの、トンネルなどに使われているオレンジのヤツだ)放電開始電圧がどの程度か?定かではないが、おそらく数KV〜10KV位では無かろうか?残念ながらこの電圧を測ることの出来るテスターを持ち合わせていない。
一度放電が始まってしまえば、数百V〜数KV程度の電圧に下がるだろう。
放電管は定電圧デバイスだから、駆動電源は定電流になっているはずだ。


SLのヘッドライトは配光特性がよろしくない。
元々BENZは良くないのだ。
ドイツ車が皆良くないかというと、それは間違い。
Vitaは良好だ。
明るさを補うだけなら、ハイワッテージのランプに交換する手がある。
しかし、配光特性が良くないところにバルブだけ明るい物に交換すると、他車に迷惑がかかるだけだ。
私の知人でトヨタ車乗りが、ライトが暗いからと言って100W級のバルブに交換した人がいる。
その人はライトをかなり下向きに調整したのだが、対向車から良くパッシングされると言う。
結局彼は元に戻してしまった。
SLもプロジェクタタイプのフォグランプを使えば、そこそこ広範囲を照らしてくれる。
しかし町中で霧も出ていないのにフォグランプをつけるのは、頭の悪そうな兄ちゃんか,付いてるものは何でも点けるオヤジだし、やはり他車に迷惑だ。
そこで、今年のモデルからオプション設定されているキセノンランプに交換してみた。

これが裏側から見た図,向かって右側がキセノンのロービームユニットだ。
(高圧注意のシールが貼ってある)写真では見にくいが、シリコン被服のコード(赤/青)で接続されている。
ヘッドライトユニットの中に高圧ユニットがあり、それをドライブする回路が手前に見えている金属製の箱だ。
残念ながら完全防水で開かない..従来はバキュームによって光軸調整をしていたが、このユニットはステッピングモータ仕様。
BENZは、トランクに重い物を乗せたりして光軸が上がって、対向車に迷惑をかけないように車内から光軸調整できるようになっている。
ちなみに私のSLは、オートレベライザで車高を一定に保っているからそれは不要。
ステッピングモータの位置がデフォルトで最適であることを望む..
ロービームはプロジェクタタイプになっている。
キセノンランプは光源が点に近いからプロジェクタタイプに向くようだ。
しかも発熱が少ないので、無理なく小型化できる。
ちなみにハイビームの方は普通のH1(ハロゲンランプ)だ。

コイツがキセノンランプそのものだ。
両端の電極径は目視で0.5mmほど、ギャップ(中央の玉状になっているところ)は5mm程度だ。
どうやらこれを外すには専用工具が必要な模様。
もちろんF&F式に外してしまったが..フツーの人は外さない方が良い(外すヤツなんていないか?)H4バルブみたいに簡単な構造ではなかったから。


交換作業は難なく終了した。
いや、正確には若干難があったと言うべきか?どうやらキセノンライト装着車には、ヘッドライトワイパーが付いていないのではないかという感じなのだ。
正しい位置にキセノンランプの電源ユニットを取り付けようとすると、ヘッドライトワイパーモータに干渉する。
じゃあヘッドライトワイパーを外したかというと、そんな事はない。
正しくない位置に取り付ければそれでOK,30分ほどで取り付けは完了した。


それではノーマルライトの配光特性からご覧頂きましょう。

これが運転席から見た、ノーマル(ハロゲン)ライトの状態だ。
赤みがかって写っているのは、フロントガラスの赤外線吸収作用の為か?
車外に出て、目の高さ(私の身長は177cm)から写すとこうなる。
平らな壁が近所になかったので分かりにくいが、場所によって照度の差があるし上方にも光が分散している。

光軸から外れた部分(目の高さ)から写したもの。
雨が降っていたので路面が黒く濡れている。
光軸外でも結構光は漏れてくる。

向かって右側のライトの光軸内に入って撮ったもの。
デジカメのせいで青っぽく写っている。
どうも赤外域は青−>緑に写るらしい。
これはこちらの実験でも証明済み。
カメラが自動露光してしまうため、明るさの具合は分かりにくいと思う。
中央上方に写っているのは街路灯だ。
これと比較してみてくれ。


さて、問題のキセノンヘッドライトの写真だ。
撮影位置は上記写真とほぼ同じ。
ライトを点灯直後はかなり青っぽい光だが、すぐに白色光に近くなる。
ライトスイッチONから、実用照度に達するまでに時間はほとんど気にならない。
冷えている状態からの点灯直後は、空間放電に近い青色,温まっているときには紫がかった色で点灯し始める(一瞬だが)運転席からフロントガラス越しに写した写真がこれ。

右側上方(対向車側)の光がうまくカットされている。
左右への光の広がりもかなり大きい。
右側手前のコンクリートブロックまで照らしている。
車外に立った状態だとこんな感じになる。

フロントガラス越しでも、車外からの撮影でもデジカメによる色の違いがあまりない。
赤外域のスペクトルが少ないと言うことだろうか?5m程離れて、立った状態の目の位置から写したもの。

光束から外れると、さほどまぶしく感じない。
ビーム内で写すとこうなる。

デジカメの自動露出機構が邪魔をするのだが、ハロゲンランプよりはかなり明るい。
CCDが飽和して入っている縦線と、バックの蛍光灯(街路灯)の相対輝度で確認できるかな?絶対照度はともかくとして、配光特性の改善効果は大きいはずだ。
おまけ?に、プロジェクタフォグランプだけを点灯させたのが下の写真。

かなり下向きに調整してある。
バルブはH1(ハロゲン),55Wだ。
これでもハロゲン(ノーマル)ヘッドライトに比べれば、かなり配光特性は良いと思っていたのだが..フォグといえば、近くを幅広く照らす目的なのだが、写真右側のコンクリートブロックはビームの外になってしまっている。


私は目が余り良くない(免許は眼鏡使用になっている,普段はメガネを使用していない)のと、一日中仕事でCRTの前にいるわけで、帰宅時の夜間や雨天時の運転は非常に疲れる。
夜間の一般道の長時間運転では、肩が凝って頭痛に悩まされる事も..実はVitaに乗っている方が、夜間の疲労が少ない気がしていたのだ。
何よりライトが明るくて見やすい。
(でも、それに慣れてしまった妻は暗いと言うが)キセノンヘッドライトが夜間の運転疲労軽減に役立つことを期待したい。


後日消費電流を測定してみた。
フィラメントタイプの電球より、低消費電力というのは本当なのだろうか?H4タイプの55Wノーマルバルブは実測電流約5Aだった。
キセノンは点灯開始時こそ10A程の電流を消費するが、点灯後約1分で4Aまで低下した。
H4バルブをテストしたときに撮った、ハロゲンランプとの比較写真がこれ
写真右がキセノンランプである。
(肉眼で見るより青っぽく写っていうる)