線量計の需要が急増したのは福島原発のメルトダウン以降だ。
関東地方にも放射性物質が降り注ぎ、千葉県などでは高い線量のエリアがあった。
東京電力はその後の裁判で、放射性物質に東京電力と書かれているわけではなく、東京電力がまき散らしたものだとは言えないと主張した。
もちろん却下されたけど。
放射線量の測定にはGM菅などが使われる。
GM菅に放射線を当てると電子が飛び、線量が分かる仕組みだ。
放射線にはα線、β線、γ線やX線がある。
α線は紙を通過することも出来ず、空気中での減衰量も多い。
β線は紙を通過するが、金属では大きく減衰する。
γ線の遮蔽は難しく、遮断するには鉛板などを必要とする。
GM菅以外で簡易的に放射線を計測する方法としてフォトダイオードを使用するものがある。
福島原発事故当時に発売されたシャープ製携帯電話には、PINフォトダイオードによる線量計が内蔵されていた。
PINフォトダイオードに放射線が入ると、それによる電流変化が起きるのでそれを増幅して表示する。
GM菅ほどの感度は得られないが、小型で低消費電力だ。
GM菅は真空管のようなものだがヒータは付いていない。
内部には不活性ガスが入っていて、電極には数十ボルト~数百ボルトを加える。

β線はプラスチックで減衰されるので、GM菅を筐体内に入れると感度が低下する。
この線量計がプラスチック筐体での減衰量を含めた値として正確なのかどうか、カタログには±15%の誤差が謳われている。

机の上の空間線量を測ってみる。
10μSv/h~11μSv/hを示している。

マントルその1の上に線量計を乗せてみるが表示に変化はない。

マントルその2も同様に、放射線を発していないようだ。

現在売られているマントルに、放射性物質は使われていないのかも知れない。
2002年頃、未だ燃費向上グッズを勝手に売ることが出来ていた時代に、放射線などの効果により燃費が向上するとしてSEVなるものが売られていた。
その後実際に効果のないものは売ってはいけないという法に従い、SEVは燃費グッズの世界から姿を消すことになる。
このSEVから本当に放射線が出ているのか測ってみたのがこちらだ。
さらにマントルには放射性物質が含まれているという事から、マントルも測ってみた。
計測器は借り物で、γ線が測れるものだった。
β線を遮断してγ線のみを計測する為に、GM菅に放射線シールドが付いている構造だと思う。
計測用のガイガーカウンタは、GM菅の陽極面を放射性物質の方に向けて計測する。
GM菅は感度や暗電流の点で大型のものが使われていて、価格も数十万円になる。
GM菅の前面にシャッターがあり、それを切り替えることでβ線とγ線を(正確にはβ線+γ線と、γ線のみ)選択的に計測出来るものもある。
今回もマントルを量ってみようと思ったのだが、最近売られているものには放射性物質が含まれていないのだとか。
なおトリチウムキーホルダーを測ってみたが、線量計は反応しなかった。
殆ど光らないくらいまで線量が減っているのでダメか。
ラジウム温泉の元でも買ってくれば線量計も反応すると思うが、その為に買うのもなぁ。
トリウム入りのタングステン溶接棒(トリタン)はα線とγ線を出す。
半減期が141億年なのでずっと安定した線源として使えるが、これも欧州などでは輸出規制品目になっているらしい。
何か測ってみる機会があれば又記事にしてみようと思う。
コメント
今日は。
FEXT時代からの愛読者です。ほりこしさんの知識・見識・実行力には感服しております。私は産業用電子機器の設計をしておりましたが、とても及びません。車や日曜大工も好きです。
311の後、100京ベクレルの放射性物質が飛散したと言われ、気になって測定器を色々漁りました。当時は国内での入手は難しかったので、多くはeBayの中古でした。
・ガイガー計数管
・シンチレータ+サーベイメータ(周波数カウンタみたいなもの)
・ダイオード式
このうち、ガイガー計数管は
・SBM-20(ロシア製)
・LND-7311(アメリカ製)
が有名でしょう。
SBM-20は簡易型でもあり、バックグラウンド(残留ノイズ)が多く、手持ちのガイガーカウンターでは、0.8μSv/h程度を示します。LND-7311は、ガイガー計数管測定器の標準品では無いかと思います。
シンチレータは種類が多いですが、NaI(Tl)がγ線計測の基本だろうと思います。2~3インチの物を選べば、SBM-20の100倍以上の感度が有るでしょう。単位時間当たりのカウント数が多いので、反応が早いです。
ダイオード式は、エステーの物しかありませんが、感度がかなり低いです。
対象物は、クラシックレンズの一部にも放射線を出すものがあります。パンカラー、タクマー、放射能ズミクロン等ですね。海外製の古い陶器にもある様です。これらは、近づけば通常バックグラウンドの10倍以上の値がありました。
2004年にトリチウムキーホルダーのコラムを拝読したときは12年後なんて遠い未来の話だなぁと思っていましたが、気づけばその12年後も現時点からみればひと昔前になるんですね。
当時興味を持って購入を検討しましたが、いかんせん若造だったわたしのオモチャとしては少々値が張るため、迷っているうちに購入機会を逃してしまい、今になって悔やんでおります。
いつまでも色褪せないコラムやレポートを、今後も楽しみにしております。