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探偵(3)


  • Posted by: F&F
  • 2010年9月 4日 20:02

「100人くらい使っているそうよ」
え?何が100人?
「由美子のね、事務所って100人くらい人が居るんですって」
本当かよ、俺はさ小さな汚い個人事務所かと思ったんだよ。名前も聞いたことがないし。
「あたしも名前は聞いたことがなかったけど、父の関係の方で調べて貰ったらそれなりに実力のある探偵社なんですって」
へー、すごいな三ノ輪も。

保子は助手席からナビを操作すると、手慣れた感じで探偵社の位置をセットしながらその先の交差点を右折した方が良いかもねと言った。
俺は少々驚いた。
何だよこの探偵社は、こんな高層ビルに家賃を払っているのか。
とりあえず地下の駐車場にマセラティを突っ込む。
駐車スペースは幅に余裕があるのでこの手の車を止めるには良い。
俺は助手席のドアを開けて保子をアシストし、近くのエレベータで40階のオフィスを目指した。

夕方と言うより夜に近い時間だったので事務所に残っている人は少なかったのか、それでも受付の人が応接室に案内してくれた。
少しすると濃色系のパンツスーツを着た三ノ輪が入ってきた。

「おひさしぶりです」
と落ち着いた声で言う。
ショートカットでアクティブな感じ、やり手という印象だ。
「石川さんは未だ来ていないのだけれど、突然連絡して来ていただいて済みません。実はあるクライアントから調査員指名で依頼を受けて、その指名された調査員というのが坂巻さんや石川さん、佐々木さんなのよ」
調査員って、調査員じゃないでしょ、俺は。
「確かにウチの調査員ではないんだけど、クライアントの希望は飲みたいし、それにちゃんと報酬もお支払いするわ」
いや、そう言う問題じゃなくて…
俺はそう言いかけてやめた。
なんだか話が面倒な方向に行きそうだからだ。
どうせやる気はないし、このまま何も聞かずに帰るのが一番良い。
下手に話を聞いて足を突っ込む事になったら面倒だ。
「報酬なんだけどね、たぶんお仕事は3ヶ月くらいはかかると思うの。それでね、調査経費とか色々含んで5百万円出すわ」
…金額は魅力だったが、その分怪しさは増す。
俺は何も答えられなかったが、保子が言葉を発した。
「20年ぶりに会って、早速仕事の勧誘なの?それに何よ5百万って。由美子はあたしのこと調べたんでしょ?一桁違うんじゃないの?あたし帰るわ」
そう言ってケツがめり込んでしまういようなソファーから立ち上がろうとした。
「いいわ、3ヶ月で5千万にするから、まあ落ち着いてよ」
何だよ何だよ、いきなり5千万円って、こいつらどんな世界で生きてるんだ。
由美子は俺たちの前に紙袋を持ってきた。
中には4千万円の固まりが1つと100万円の束が10個入っている。
それを俺と保子の前にポンと置いて話を続けた。
「保子は良いとして… 坂巻さんは山岸電研の会社員よね。しばらく会社を休んでも大丈夫なようにしておいたわ。」
おいおい、何で俺の勤務先の…
「これでも結構顔が広いのよ。山岸電研の舟山社長に連絡しておいたから、3ヶ月の休暇扱いでお給料も出るそうよ」

   

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