スピードメータのディジタルが254を指したとき、それは起こった。

いつものように深夜の湾岸を飛ばす。
オレの前を走るのは、TO4sを組んだソアラだ。
車高を極限まで下げたそいつは、ボトミングの度に路面とマフラーを干渉させ火花を散らす。

ノーマルエンジン+ブーストアップでは付いていけない。
前方に車を発見して、ヤツがアクセルをゆるめるときでもオレは踏み続けるのだ。
空力の悪いソアラでは、スリップストリームが効果を発揮する。
ヤツの燃調は決まっていない。
今日はブーストも上げられないはずだ。
加速の度にうっすら黒煙を吐いている..濃いな。
ターボチャージャってヤツは、規定の空気量以上の仕事をさせると急激に効率が悪くなる。
効率点で使う分には背圧がブースト圧よりちょっと高めなくらいだが、オレのブーストアップのように、ムチャをするとブースト1Kg/cmに対して背圧は3kにもなるのだ。

ふん詰まり状態だから、カムタイミングは見かけより低速よりになりパワーが出ない。
それでも、ヤツとのバトルでは無意識のうちに左手はVVCのつまみを回している。
普段走っていると直線にしか感じないこのコースも、240Km/hを超えると急なコーナだ。
フロントがリフトして手応えを失ったステアリングを汗ばんだ手で押さえつけながら3車線を一杯に使ってクリアしていく。
コーナ出口でヤツと並ぶ。
高速コーナリングは、クルマの差よりも根性の差が現れるのだ。
ヤツは最近装着したドライビングスポットに火を入れた。
ペンシルスポットが路面を照らす。
オレは、これでもかと言うほどアクセルを踏みつけ更にVVCをひねった。

ブースト計の針が小刻みに震える。
ヤツに離される..オレは禁断のツマミ、燃調のボリュームに手をやった。
薄くするのだ。
この速度ではノッキングは聞こえない。
ブースト計の振れ具合を頼りにわずかに左に回した。
エンジンもタービンも極限の仕事をしている状況では、燃調のわずかな違いでブーストが変わる。
最後の直線に入った。
橋を過ぎれば首都高の料金所だ。
ここからでは抜けはしない。
しかし、離されずに付いていくことは出来そうだ。
そう思った瞬間バックミラーが明るく光った。
マフラーから火を噴いたのだ。
そしてエンジンはアクセルに反応しなくなった。
....5気筒になったオレのソアラは、白みかけた空をバックに横羽線を足を引きずるようにオイル煙を吐き出しながら帰ってきた。
.....
ブッ壊れた以上直さなくてはいけない。
ここで、チューニングフリークなら3.1リッター+ツインターボにするところだろうが、オレは違法改造車に興味がないのでフツーの修理にした。
ピストンを思いっきり溶かしてしまったから、ボアアップしなくてはならない。
知り合いのチューニングショップに出向いてみると、なんとウンの良いことか!中古の鍛造ピストンが転がっていた。
何でも走行距離の出たチューンドカーをオーバホールしたカスだそうだ。
通常はピストンリングを組み替えて再使用するのだが、このピストンはリングだけの部品が出てこないから交換したとのこと。
500馬力以上を狙うのならいざ知らず、フツーの使用にならこのピストンでも耐えるだろう。

こうして組み上がったエンジン。
心配したオイル上がりも無く快調だ。
鍛造にしたことでピストン重量が増えたのと、膨張率の違いから必然的に大きくなったクリアランスで若干アイドリング振動は大きめだ。
3000ccに対して3100ccだから、それによるトルクアップは感じるほどではない。
そうそう、バラシついでに高圧側の燃料フィルタを見てみると真っ黒に詰まっているではないか!これじゃあ、燃圧落ちるよなあ..