エコ・バンドを試す(2)


新型エコバンドのスタティックテストはこちらをご覧頂くとして、今回は実車に装着してのテストである。
テストはまずノーマル状態で燃費計測を行うが、利用する道路は保土ヶ谷バイパス(国道16号線のバイパス)でアップダウンもそこそこあり、いわゆる定地定速走行とは少し異なる。
制限速度は80Km/hなので、その辺りをキープするが他車の邪魔になりそうなときにはその限りではない。
片側3車線で比較的交通量も多いので、燃費計測は3回行って平均を取ることにする。
次にエンジンブレーキテストを行う。
メーカの話やノズ・コレ氏によれば、エンジンブレーキが効かなくなるとの事だからだ。
これにはビデオカメラで速度計を撮影して、コマ数から時間を計る方法を採る。
ここまでがノーマル状態でのテストだ。
その後すぐにエコバンド類を装着し、エンジンブレーキテストを行った後で燃費計測を行う。
ちなみに「フィーリングの変化が感じ取れるはず」との主張もあるので、エンジンブレーキテストの時には加速や定速走行なども繰り返してフィールに変化が現れるのかどうかもテストしたい。
メーカの方ではフィーリングテストだけでも良いから使ってみませんかとの事で今回のグッズ提供を受けたのだが、さすがにフィーリングチェックだけで終わらせては申し訳ないというかデータの信頼性に欠けるというか、テストの意味が無いというわけで色々な検証を行う事にしたのだ。
このエコバンド類の原理はメーカでもハッキリとは語っていない。
(イオンとか放射線とか赤外線という言葉は出てくる)要するに「燃費が良くなるのだから良いではないか」という感じで、確かにそれはそうなのだが定価で買えば結構なお値段のこのグッズなのだから、何かしらの理論説明は欲しいところ。
データにしても自社測定データは公開していないというか、CAMP(HKS製の燃費等が測れる機械)を導入したのも最近の事らしいのでデータを取った事がないというのが本当の所かも知れない。
或いは景品表示法違反を回避するために、雑誌などでのテストデータのみ載せ「弊社では具体的燃費改善数値を載せていません」と言う為なのかも。
その雑誌なのだが、2割近い燃費向上のデータが出ているものがある。
2割と言えばかなりの効果で、一体どうやったらそんな数値が出せるのか疑問だ。
そもそもガソリンの発熱量は決まっているから、どんなに燃焼させたって上限はある。
逆に不完全燃焼が多ければ触媒が加熱したり、そもそも排ガス規制に適合しなくなる。
年々厳しくなる排ガス規制をクリアするためにはエンジンの燃焼状態改善は必須であり、元が汚いといくら触媒を通したところで駄目なのだ。
と言うことは、現在の排ガス規制適合車はかなり良好な燃焼状態を作り出している(少なくとも10・15モードテストパターンでは)と考えられる。
そこに更に燃焼を改善する(クラスタ論などはこれ)余地など残されているのだろうか。
排出CO濃度が例え5%あったとして、これを2%にまで低減出来たとしても燃費への貢献度は皆無に等しいだろう。
それは熱効率が(仮に)上がったとすると、その分だけスロットルバルブを閉じる(閉じないとパワーが出過ぎる)必要があり、スロットルバルブを閉じると言うことはエンジン損失の中でも多くの割合を占めるポンピングロスを増大させる方向に働くからだ。
次に燃焼改善ではなく吸排気の抵抗軽減がその効果だと仮定してみるとどうだろうか。
スタティックテストでは効果を実証できなかったが、もしも実車で吸気抵抗が減っているとしたら燃費は良くなるのだろうか。
吸気抵抗を語る前に、通常走行時の運転パターンを考えてみよう。
常にフルスロットルで走り続ける人などまず居ないはずで、スロットルバルブという弁によって吸気制限された状態で運転している。
もしも吸気管抵抗が軽減されたとすると、その分だけスロットルを閉じる事になる。
スロットルを閉じても同じパワーが出るのだから燃費は良くなるはずだなどという言葉のトリックは通用しなくて、スロットルの位置がどうであろうと全吸気量の割合に応じてガソリンは噴射されるのだ。
スロットルで吸気が制限されようが、エアクリーナで制限されようが関係はない。
もしも吸気抵抗低減が燃費に貢献してくれるのなら、エアクリーナなどを外したら燃費が良くなるという話になる。
吸気管抵抗云々を語る場合は、フルスロットル運転時のピークトルク(パワー)を語らなくてはいけない。
この辺りにも言葉のトリックが隠されているのだ。
言葉のトリックついでにもう一つ。
『燃費が○○%、パワーが△△%向上します。
向上したパワーを活かす走りをすれば燃費は従来と変わりませんが、そのパワーを抑えた走りをすれば燃費は向上します』みたいな文章をよく見かける。
そして燃費改善効果がなかった場合、「それは知らず知らずのうちにパワーを満喫した運転をしてしまったからでしょう」とか言われる。
しか〜し!パワーが上がると仮定すれば、その分だけスロットルバルブを閉じる必要があるわけで、そうするとポンピングロスが増えてエンジン効率が下がる。
つまり燃費は悪化するわけだ。
これに対して萩口キルトさんは「加速が良くなれば加速に有する時間が短縮できて効率が上がる」と主張されていたような気がする。
この理論は特定条件下では誤りとは言えないが、通常のタウンスピード走行では説得性に欠けると言わざるを得ない。
何故ならば、フルスロットル加速を常時行っている人は希で、多くの人は"加速度一定"或いは"前車に合わせて"運転をすると考えられるからだ。
するとここでもポンピングロスの影響を受けて燃費は悪い方向へシフトする。
エコバンド排気管用は排気を引っ張り出す力を発揮するのだそうだ。
装着位置をマフラーの前にするか後ろにするかでフィールも変化するのだという。
排気を引っ張り出す効果があるとしたら、エンジンを停止した状態でもマフラーからは空気が出てくるのだろうか。
エコバンドの装着方向を反対にしたらマフラーから空気を吸い込んでしまうのだろうか。
ま、仮に(仮にばかりだが)マフラー背圧を減らすような効果があったとしよう。
するとバルブオーバラップによる吹き抜け率が高くなるので高回転時には出力向上が望めるが低回転時には燃焼状態が不安定になって燃費が悪化する。
では逆にどうしたら燃費は良くなるのだろうか。
そんな簡単に燃費が良くなったら自動車メーカは黙っていない訳だが、自動車メーカのやっている事は気筒休止でパワーを下げる(スロットル開度を上げる)とか、筒内直噴で希薄燃焼させパワーを下げる(スロットル開度を上げる)、バルブトロニックでミラーサイクルっぽい事を行いポンピングロスを低減させるなど、いずれもパワーを下げてスロットルを大きく開かせポンピングロスを減らす事を行っている。
これと同じ事が行える、つまりパワーを落とせるグッズが存在すれば燃費は良くなるのかも知れない。


実車テストである。
交通量が少なくなる22時過ぎを狙ってテストを開始した。
まずは保土ヶ谷バイパスの往復走行燃費テストから。
ここはアップダウンも多く、下り坂で80Km/h維持だと殆どアクセルは放した状態になる。
バイパスから一般道に出たところでUターンするが、右折信号待ちの確率が高く、右折後は次の信号に必ず引っかかる。

このような状態なので燃費にばらつきが出るかと思ったのだが、意外とそうでもなかった。
平均速度のばらつきは信号停止時間の差だと思う。
ノーマルテスト時の燃費は、14.8Km/l,15.0Km/l,15.1Km/lの平均は14.97Km/lだった。
【ノーマルテスト3回目】
エコバンド、エコシール類を取り付けて再度テスト開始。
こちらの燃費は15.1Km/l,14.9Km/l,14.9Km/lの平均は14.97Km/
と、ノーマル状態との差が全くないという結果だった。
【エコバンドテスト1回目】
エコバンド類の取り付けは夜間現地で行ったわけで、決して丁寧な取り付けとは言えない。
取り説を見ると「装着後300Km走行後に効果を発揮」みたいな一行が…空気抵抗は徐々に減少していくのだろうか。
でもそれは一体何故??燃費テストの妨害以外に意味があるのか?燃費向上理論は「不明」なのに。
効果を発揮するまでの時間は既知なのだろうか。



エアクリーナ内外にエコシールを貼っているのだが、これはそれ以外に簡単に付ける場所が無かったからだ。
エアクリーナの下にはスーパーチャージャがあり、そこからの配管は下の方を通ってインタークーラにつながっている。
と言うわけで、エアクリーナボックスの集中攻撃みたいな貼り方になってしまった。
張り方が悪いから効果が出ないのだとか言われそうだが、だったら車種別取り付け法でも出して貰わないと。
あ、そもそも燃費節約理論が不明なのだから、どこにどう付けたら効くかも解らない訳で、実際に自分で試しなさいと言う事かも知れない。
でも、排気管用は付ける場所によって効果が変わってくるとのこと。
これは全車種でそうなのか、特定の車種でそうなのかは不明。
ちなみにC180はマフラーエンドが2本になっているため、マフラー手前(燃費向上効果が大きいポイントらしい)に装着した。
装着後神経を集中させてフォーリングチェックを行ったが、私が鈍感なためか全く違いは感じられなかった。
音の変化も走行性の変化もまったく感じられない。
加速に違いはないし、減速時にも違いは感じられない。


次にエンジンブレーキテストを行う。
実はこのテストを気軽に考えていたのだが、実際にテストを行おうとすると道路がないのである。
住宅街では直線路が短くてダメ、幹線道路は交通量が多くて他車の迷惑になってしまう。
結局信号が赤になって車が遮断された時を狙い、若干の上り勾配を利用して速やかに速度の落ちるポイントで測ってはみたのだが、エンジンブレーキをかけ始めるポイントが道路事情もあって一定に出来ない。
一定に出来ないと道路の勾配のためにエンジンブレーキ特性が変化してしまう。
逆に言えば、エンジンブレーキフィールは道路事情によって燃費以上の変化を見せると言うことだ。
かなり意識しても一定の条件に揃えられない。
人間の感じ方は前車のあるなしでかなり違ってくる。
前方に車があって、その差が詰まってくるような場合と、全く何もない状態では感じ方が全然違う。
ブレーキがフェードを起こして全く効かなくなった時、ブレーキペダルを踏んでいるのに加速しているのではないかという錯覚に陥ることがある。
これは、ブレーキペダルを踏めば速度が落ちるはずだという意識があって、それに反する現象が起きた場合には速度が多少落ちているにもかかわらず、期待値に達しないために意識としては「速度が上がっているのではないか」と勘違いするわけだ。
「エンジンブレーキの効き具合のチェック」これは心理のうまい所を突いていると思う。
おそらく今後燃費向上グッズメーカの合い言葉になるかも知れない。
何とか80Km/h→60Km/hデータが取れる用に頑張り、ビデオに取ったのが次の映像である。
ノーマル時
エコバンド装着時
この画像を解析してみたのだが、有意な差はなかった。
もっと長い距離で、色々速度を変えながら実験が出来ればいいのだが少なくとも横浜周辺でそれを行うことは道路事情が許さない。
これでエコバンド系燃費節約グッズ3度目の試験を終了するが、残念ながら効果の方は見られなかった。
フィーリング改善や燃費8.9%アップを謳うノズ・コレ氏や、燃費17%アップのデータを掲載した雑誌は一体どのようなテストを行っているのか。
夜中に何時間もかけてテストをしているのだから、少しくらい燃費向上データが取れてくれたって良いのに。
いや、燃費が悪くなってくれても良いから変化が欲しいのである。
F&F以外のページでも厳密なテストを行っている方のデータは(エコバンドに限らず)効果が出ていない。
しかし雑誌のテストなどは厳密(な、感じを受けるように)書かれている。
私は以前自動車雑誌に記事も書いていた関係から、この手のグッズテストと結果に関して記者に聞いてみた事も実はあるのだが、ま、ここに書けるようなことではないな。
早く言えば「インチキ」だからである。