ヘッドチューンって何だ?



ヘッドチューンとか、ポート研磨なんて言葉を聞いたことがあるだろう。
ここで言うポート研磨、ロータリーとレシプロでは大きく意味が異なる。
ロータリーのポートチューンはレシプロで言うカム交換にも近い作業だからだ。
ここでの話題は、レシプロエンジンのポートを削るお話。


ターボ全盛時代の今、ポート研磨は余程のハイチューンでなければ行われなくなった。
逆に言うと、NAの場合のポート研磨はパワーアップの常套手段なわけだ。
常識的に考えても、径の細いポートより太いそれの方がパワーが出そうだよね。
空気が流れる上で、超えられない壁..それは音速だ。
径の細いポートに沢山の空気を流すと、自ずと流速が上がる。
しかし、音速に近づくに従って流入抵抗は増大するから吸入損失が増えるわけだ。
従って、ポート径を拡大すれば吸入抵抗が減ってパワーが出ることになる。
しかし..だ、最高出力は上がるけれどアイドリングや低速時には必要以上に流速が落ちてパワーが出なくなってしまう。
空気ってのは、粘性気体だから慣性吸入が行われる。
周りの空気に引きづられて多くの空気が流入するのだ。
流速が落ちると、ちょろちょろ水を流すようなものでエンジンの充填効率が下がるのだ。


これは、カムの作用角にも言えること。
作用角を増やすと言うことは、圧縮行程に入ってもバルブが開いているという事だ。
なんで吹き返してこないのか?これも慣性吸気があるからなのだ。
さて、NAでは常識的に行われていたポート研磨がターボでさほど重要視されないのは何故だろう?ターボの場合の吸気温度は、NAのそれより高いし圧力も高いのだ。
圧力と温度が高ければ、音速は上昇する。
従って、同じ質量の空気はNAより低抵抗で吸入される仕組み。
エンジンをバラしたことのある方ならご存じだろうが、吸気バルブの方が排気バルブ面積より大きいよね。
ポートにしても、吸気の方が太い。
..つまり、そう言うわけ。



ポート内部をツルツルにする効果は有るのか?勿論ある。
ざらざらの面を空気が流れれば、細かい渦が無数に発生して抵抗となるからだ。
では、単純にピカピカのツルツルに磨いてしまえばよいか?単純にそうとも言えない。
インジェクションエンジンの場合の、インジェクタから噴射されたガソリンは思った以上に気化しにくいのだ。
当然ポート壁面にも付着する。
いわゆる壁面流ってヤツだ。
ザラザラポートの場合は、そこに発生する渦がガソリン気化に役立つのだ。
壁面流は、空燃比を狂わせて息付きやノッキングの原因となることがある。
また、気化しにくい状態だとその分多めにガソリンを噴射しなければならず燃費悪化につながる。


ポート研磨するには、空気の気持ちになって??加工することだ。
インテークマニホールドからポートに向かって、流速が上がるように..すなわち徐々に細くなるようにしていくのが良いだろう。
また、バルブガイド付近のような抵抗になりやすい部分の空気流をスムーズにしてやる事。
アルミ粉が目に入らないように、気を付けて作業してくれ。


ついでにインジェクタについて触れておこう。
まず、動作電圧。
インジェクタには、高抵抗型と言う12Vそのままでドライブできるタイプがある。
もう一つは直列に抵抗を入れて使うもの。
なんでわざわざ抵抗を入れるのかというと、インジェクタはコイルでありインダクタンスがある。
コイルには急に電流は流れない。
でも、急に流れてくれなければ無効噴射時間が増えてよろしくないのだ。
で、6V用のインジェクタに12Vを加える。
インジェクタの動作初期は、インジェクタ電流が流れていないから12Vが加わる。
(抵抗での電圧ドロップがない)高い電圧でドライブするから、インジェクタの動作は速くなる。
完全にインジェクタが開いた状態で12Vを加えていたら、インジェクタは焼損してしまう。
そこで、抵抗が入っているわけだ。
まあ広い意味では定電流ドライブと言うことになるのだろう。
インジェクタ抵抗値と、外部に取り付ける抵抗値はメーカ毎にまちまちだ。
普通に使うなら、5〜6Ωの抵抗でよいと思う。


大容量インジェクタは、霧化が悪い。
太いホースから水を出すようなもの。
小容量インジェクタは、シャワーで出すようにガソリンが出ていく。
レーシングカーでツインインジェクタを使うのは、無効噴射時間による制御の難しさもさることながら、霧化を良くして燃費を向上させるためでも有るわけだ。