J436エンジンをバラす(2)



CJ43AのエンジンであるJ436をバラした話はこちらに書いた。
ピストンはコンロッド小端部部分がカジっていて、腰下もバラす必要が生じた。
しかし腰下をばらすにはSSTが必要になり、たった一度の解体のためにこれらを仕入れるのは無駄だ。
汎用のクランクケースセパレータやインストーラ、オルタネータの磁石を外すにもSSTが必要になる。
と言う事で、もしもバラすならば外注が良い。

ヘッドの方は無事なので、まずはここに手を付ける。
最初はカーボン落としだ。
カーボン落としはケミカルを使って行った。
実は途上の写真を撮っておいたのだが、後でチェックしたら無い…
SDカードがそろそろダメなのか…

再度カーボンを付けてやり直しというわけにも行かないので、ここは説明メインになる。
最初に、バラした時の写真をご覧頂こう。
カーボン除去の必要があるのはヘッドなのだが、カーボン除去がどの程度出来るのかの実験としてピストンも一緒に入れた。





使用したケミカルはKMC-500である。
これはアルカリ系の洗剤で、粉末で販売されている。
反応を促進させるために80℃程度の湯に溶かして使用する。

と言ってもヒータがあるわけではないので常に80℃に保つ事は出来ず、徐々に温度が冷えてくる。
洗剤溶液温度が室温に近づいたら溶液を鍋に移して加熱する。
これを何度か繰り返しながら12時間ほど溶液につけ込んだ。

ヘッドは、表面のカーボンは短時間のうちに溶けて消えた。
取れにくかったのはポート内部やバルブシート付近だった。
ここは真鍮ブラシなどでこすって取ったが、窪みに入り込んだカーボンは無理には取らなかった。

ピストンは上部を真鍮ブラシでこすった。

余談ではあるがこの洗剤は結構強力なのでエンジンルームの洗浄などにも効果を発揮する。
かなり前にあるショーに出す車のエンジンルームをこれと似たような洗剤で洗った。
これが驚くほどの効果というか洗浄力で、水垢落とし研磨剤で磨く手間が省けて大助かりだった。

アルカリ洗剤ではあるが皮膚が溶けるほどのヌルヌルさは無く、pHこそ計ってみなかったが素手で扱える。
感覚的にはマジックリンと同程度のpHではないかと思う。





カーボンは安定で丈夫な物質であり落としにくい。
しかしケミカルがあればつけ込むだけでこの程度の綺麗さになる。
ピストンは囓りとキズはあったがリングなども含めて他の異常は見られなかった。

ヘッドの方はカムとロッカアームはかじりが見られたので再使用が出来ないが、バルブは無事だったのですりあわせてみる。



バルブコンパウンドを付けてタコ棒でコンコンだ。
バルブコンパウンドはサンドペーパのペーパのない状態な感じの研磨剤である。
エキゾーストバルブ側はカーボンと共に、もっと固い白い物質が付着していた。
バルブはそれを電気ドリルに付け、サンドペーパで異物を落とした。
ピカピカにする必要もないので適当に処理したに過ぎない。

ポートも同様に特別な加工はしていない。
ポート研磨の是非論は他のページに譲るが、高回転高出力エンジンを作るならばポート内の抵抗低減は必要になる。
ではCVTのスクータや中低速回転を使う自動車ではどうか。
ポート内の凸凹というか砂目はポート内壁に小さな沢山の渦を作り、それが吸入抵抗になる反面霧化を促進するわけだ。

通常のポート噴射インジェクションの場合、インジェクタの向く先はバルブの傘になるのだがポートにも当然燃料は付着する。
その壁面流などを考えた場合にポート内をつるつるにした方が良いのかどうか。
ポート研磨を行う人によっては、いったん鏡面に仕上げた後で特定の部分だけリュータの刃でザラザラを付けたりする。

バルブガイド付近の削り方も、ガイドの分だけポート面積が減るのでそれを外側方向に太くする方法がある。
ただしこれも気流の剥離などが起きる可能性があるので形状には注意を要する。
そんなわけで、今回はポート内部はいじっていない。
高回転高出力を狙うエンジンではなく、単気筒のスクータ用エンジンだからだ。

と言ってもバルブのすりあわせは必要だ。
密着が悪いと吹き抜けが起こる。
一通りすりあわせが終わったら、燃焼室内に灯油を入れて漏洩をチェックする。

最初はどの程度すりあわせればいいのか解らなかったので軽く、そうだなぁ、1バルブ5分程度コンコンやってみた。
ら、エキゾースト側から灯油が漏れてきたので再度コンコンやった。
インテーク側もそれに合わせてもう一度軽くコンコン、たぶん300回くらいやってみた。
そして灯油を入れると今度は漏れもなく、これで完成とした。

エキゾースト側は接触面が少し荒れていたのでコンパウンドは中目→細目で行った。
インテーク側は荒れが少なかったので細目だけですり合わせた。
すりあわせが完成したら当たり面を計測する。
当たり面に朱肉を塗って幅をチェックすると約1mmで、基準値(0.9mm〜1.1mm)内なのでOKとした。

カムとロッカーアームはどうしようか。
新品部品を買うのも一つの手だが、今あるエンジンのヘッド内の使える部品を使ってしまうのも手だ。
腰下も、今積まれているエンジンが特にトラブルがないようであればそこにこのヘッドを組み合わせるのが簡単だ。

ピストンは使えないにしても、シリンダはハンドホーニング?で回復させられるかも知れない。
単車のピストンやシリンダのかじりは珍しくないようで、ホーニングツールを使って自力修正なんて記事も見かける。
そうか、その程度で良いのか…

外れにくかったピストンピンにしても同じような状態だったという記事を見つけた。
その方はピストンピンを金属ハンマーでたたき出したと書かれている。
その後サンドペーパでコンロッド小端部を修正したそうだ。
そうか、その程度で良いのか…

ピストンピンが抜けないのは特に珍しいことでもないようだ。
中古エンジンをバラしたときには抜けるものだと思っていたので、それが抜けなくてさんざん苦労した。
だが世の中にはピストンピンプーラなるものもあるし、鉄パイプや塩ビ管や私がやったようにソケットレンチの改造で自作も可能だ。
たぶん自作すれば千円以下で、買ったとしても2千円以下なので高いものではない。
というか筒とねじだけだし。

現在スカイウエイブに載っているシリンダやピストンがどの程度の状態なのかは解らないが、手修正で組み直すのもありだなぁ。
永久に不具合無く動けという話でもなく、駄目ならまた組み替えればいいや程度の気軽さで行っても良いのかも知れない。
何せその為の予備エンジンで、共食いしながらいいとこ取りも可能なのである。

シグナスをいじりにくいのは実用車だから。
スカイウエイブの方はイジリをメインに出来る訳なので、気軽に行ってみよう。
各パーツの計測や使用限度のチェックなども、バイク屋がお金を取って整備するのとは訳が違うので許容度が大きくなる。
パワーを求めたチューニングと言うことでもないし、それこそF&F流にやっていくわけだ。

スクータなどはエンジンの放熱があまりよくないので、温度上昇による膨張によってピストンとシリンダが接触するケースがあるらしい。
水冷エンジンでもこれは同様らしく、全開連続走行などを繰り返すと抱き付きを起こすのだとか。
他に冷却水不足によるオーバヒートなどでも同様にピストンスカートに傷が付く。

傷が付いたピストンをサンドペーパで補修?するなんて記事もあった。
面白そうなので、このガリガリのピストンで試してみることにする。

400番のサンドペーパで削ってみたが、もっと激しく削らないとキズは消えない。
ピストンの反対側はランド部までかじりがあったので修正は不可能というか、どちらにしてもピン穴が駄目なので使えないんだけど。



修正ついでにシリンダの方もやってみたくなった。
以前に車のエンジンの中古シリンダを使うときに、サンドペーパでハンドホーニングしているチューニング屋さんがあった。
さすがにサンドペーパでうまく削る自信はないので、ホーニングマシンを使ってみる。
これは砥石がくっついた三脚風な外観のもので、ドリルにくっつけて回すだけだ。
回すと遠心力で砥石が広がり、シリンダ内面を削ってくれる。

シリンダはかじりのあとが大きいので使えないかなと思っていたのだが、考えてみるとピストンスカートが当たって傷ついている部分はランドが当たるわけではないので多少削ってしまっても良いような気がする。
しかもそのあたりはスカートがこすれていない部分はしっかりホーニング痕が残っているわけで、以外に再使用出来ちゃうかも。

実はシリンダやピストンは新品交換する予定だった。
経年変化が起きるものに関しては全部取り替えようかなと。
しかし色々調べてみるとエンジンって結構適当でも動いちゃう感じがして、もちろん極限のパワーを求める向きは別なのだが、走ればいいレベルのスクータならあまり気を遣わなくても良いのかなと。
それに数万キロも走ればまた同じ事になるわけで、ならば最小の手間とコストで最大の効果を狙った方が良いような気がする。

これがパワーやレスポンスを求めたり、許容回転数を上げていくようなチューニングだと話は別だ。
各部のクリアランスなどにしても街乗り用のエンジンとは違った設定を行わなければならない。
多気筒などだと重量バランスを取ることも必要になるだろうし、クランクなどにしてもダイナミックバランスを取るのだろう。

ピストンなどのコーティングがある。
フリクション低減などと説明されているものもあるが、多くは初期なじみの改善がその目的だと思う。
単なるコーティングとWPCなどと組み合わせた含浸のようなものがあるが、コーティングはすぐにはがれる。
はがれることによって(つまりそこな接触したと言うこと)相手側の金属を守るとも考えられる。
含浸の方はアルマイトチックな感じでピストンを覆っているが、これもやがてははがれる。

某チューニング屋さんで実験していたが、初期なじみを良くする程度の効果があるとの結論だった。
ただレース用などは長時間の慣らし運転などはしないので、出来る限りのことをするという意味でこられの加工を施すと言っていた。
メーカ製のピストンでもモリブデン加工されているものもあり、フリクション低減や初期なじみの良さがあるのは確かなのだろう。

モリブデン膜が、クリアランスの厳しいところは削れクリアランスの広いところは残る。
これによって最適なクリアランスが早期に実現出来るという考え方だ。
なお塗装タイプのコーティングはクリアランスが変化するのでどこにでも使用出来るわけではないし、耐久力がない。
含浸タイプはほとんど太らないのでクリアランスに気を遣うこともなく、比較的強い数μmの膜が形成される。

WPCと組み合わされる含浸は、ピストンをWPCによってミクロ的部分ごとに熱で融解し二硫化モリブデンの超微細粉末を投射して表面から約5〜20μmの深度迄二硫化モリブデン層を形成する。
この場合は塗装などと違ってバインダがないので剥がれるときにバインダ層のみが残ることがない。
なおこれによる摩擦低減効果は最大で数パーセントだと言われる。

高回転域を多用する単車用のエンジンは、低回転域を使う自動車用エンジンとは異なった処理が必要だと言われる。
WPCなどは高回転時に抵抗が増える傾向にあるそうで、なかなか難しいものである。

話がそれてしまったが、ハンドホーニングに挑戦してみる。
ツールは3千円以下で買える。
構造は簡単なもので、3本のワイパーがバネで開くような仕組みだ。



これの小型版はブレーキのシリンダホーニングなどに使われる。
コイツの砥石部分にエンジンオイルを付け、シリンダの中に入れて回す。
回すには電動ドリルを使った。
砥石の最高許容回転数は2千回転と表示があった。

磨く前のシリンダはこんなキズになっている。
ピストンのアルミがシリンダにくっついた風で、指で触ってもハッキリと段差が解る。



どの程度磨いたらいいのか解らないが、2分ほどやってみた。
砥石がかなり削れてシリンダ内が砥石とオイルの混ざった灰色になる。
砥石は結構柔らかいようだ。
そしてシリンダはこうなった。



キズが小さくなった。
触れば解るので数十μmの段差だと思われる。
おそらく後数分砥石を回せばキズは消え去るだろう。
全体的に曇っているのはホーニング痕が付いたためだ。
シリンダのキズはそこが出っ張っている感じなので、そこだけが良く削れるのだと思う。
それでも深い傷故まだこんな感じだ。



当然沢山削ればボアは広がる。
まあ焼き付きにくくなるから多少は我慢と言われればそうなのだが、オイル消費やピストン首振りは増えそうだ。
どの程度修正して使うのか、それとも使わないのかはそれぞれの判断だろう。

ピストンピン抜き工具を作ってみた。
現在スカイウエイブに搭載されているエンジンの状態も不明で、ピストンピンが抜けなくて苦労するのはイヤだからだ。
と言っても大げさなものではない。



引き抜く側は塩ビパイプを使っている。
ピンの太さは19φなのでVP20(内径20mmの塩ビ管)かVP16(外径22φ)のソケットが適当だ。
ピストンに接する部分はピストンに合わせて塩ビソケットの一部を削ってあるが加工は簡単である。
塩ビは粘りけのある材質なので変形はするが割れて吹っ飛んでくることはない。
この筒の部分を金属パイプで作る手ももちろんあるのだが、ピストンに傷が付く。
ピン側はM8のフレアナットがピッタリなのだ。



同じ手法でクランパと塩ビ管でバルブスプリングコンプレッサを作ろうかと思った。
塩ビ管の一部を切り抜いてクランパに付けるだけで良い。
塩ビ管はパイプではなくキャップを使えばクランパも安定する。
が、意外に安く売られている事が分かったので買ってしまった。
送料はかかったが本体価格は千円ちょっとだった。

クランパは100円ショップでも売られているし、ホームセンタで買ったとしても5百円程度のものである。
構造的にはこれと同じようなものなので、バルブスプリングコンプレッサも中国製なら安いのかも。
って、これがどこ製かは不明だが日本製でないことだけは確かだ。



工夫すればクランクケースも割れるかも。
そんな事を考えはじめた。