--- まず自己責任原則 ---


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SPEEDER : 車速パルスでリレーをオン・オフする仕掛け.


これを作った動機

安売りされていたユピテル製レーダー探知機を購入しました(3千円台).しかしこの探知機というシロモノは誤検出が多いというか,本来の目的であるネズミ捕りレーダー以外の高周波にも反応してしまうようです.レーダ用の電波には10.5GHzぐらいの高周波が使われているそうなのですが,電波式自動ドアにも同じような周波数を使っているものがあるようです.そのため,商店街の決まった場所を通るたびにレーダ探知機がピーピー鳴ってくれます.実際のところ誤検出のほうが100倍ぐらい多いんじゃないでしょうか.しかも渋滞中や停車中など,速度違反でつかまるわけがないような速度で走行しているときにもピーピー鳴ります.これほどまでに誤検出が多いと,オオカミ少年よろしく「またかウルセエな」ぐらいにしか思わないようになり,しまいにはピーピー鳴っても速度をゆるめようとしなくなります.それでたまたま張っていたK察にあっけなく捕まったりするわけで,これじゃレーダー探知機の意味がありません.

いまどきのレーダ探知機はずいぶん進化していて,GPSレシーバを内蔵しているものもあるようです.こういうタイプのものだと,オービスの場所を記憶していたり,いつも鳴る自動ドアの座標を記憶させて警報を抑制させたりということができるようです.さらに走行速度をGPSで計算して,時速30km 以下ではピーピーならないようにしているものもあるようです.レーダー探知機としてはこのようなGPS式が理想形なのですが,3万円前後といかんせん高価です.私は10万キロ乗っても速度超過で捕まったことは一度もないため,警察に捕まって速度税を払う確率とレーダー探知機のコストを比較考慮すると,高価なレーダー探知機に経済合理性が見出せないでいます.

そこで,安いレーダー探知機でも,せめて低速走行中にピーピー鳴らないようにできれば運転中のストレスはだいぶ減るだろうと思い,走行速度を検知してスピーカをオン・オフする仕掛けをつくろうと試みました.たいていの場合,K察が隠れて張っているのは時速50Kmか60Km制限の道路ですから,およそ時速 70km 以下で走っているときにはめったに捕まることはない,と考えます.最初はスレッショルドレベルが70km/h 固定のスイッチを作ったのですが,あとで思い直して DIP SW で速度設定を変更できるようにしてみました.このような,自動車の速度を検知してリレーをオン・オフする仕掛けを一度作っておけば,レーダー探知機以外にもなにか用途を思いつくことがあるかもしれません.そのためにもレーダー限定というわけではなく,少しは汎用的な用途に使えるように作ってみました.




予備実験,

FIU (Fuel Injection Unit) から出ている車速パルスを利用すると,高い精度で自分の車の走行速度を測定することができる,ということをF&F掲示板で教えてもらいました.そこで予備実験としてこの車速パルスがどんなものかを調べてみました.以下のHPで車種ごとの車速パルスを引き出す方法が書いてあるので,これを参考に助手席の足元からコードを引っ張り出してきました.

http://www.mobile.sony.co.jp/fit/fit.html


助手席に乗せたオシロスコープにこのコードを接続し,車を走らせて車速パルスを観測してみました.



この波形は40km/h で定速走行中にストアしたものです.パルスは 0V-5V の矩形波で周波数は 25.6Hz でした.デューティー比は必ずしも 50% ではないようです.車速パルスの周波数は車の速度に比例している様子で,停止状態では,ハイ,ローいずれかの状態で止まることがわかりました.さらに詳しく調べると,車速パルスの周波数(Hz)に 1.6 を掛けると,だいたい車の速度(km/h)になることがわかりました.この 1.6 という値はどうやら時速1マイル=1.609Km/h の意味ではなかろうかと思っています.ここまでわかれば,どういう仕掛けを作ればいいか明確になってきます.

注意:うちのロゴの場合,この車速パルスの信号線を GND や電源にショートすると,エンジンチェックランプが点灯したり,オートマチックミッションの「D」ランプが点滅したりします.このような場合にはショート状態を解消していったんエンジンを再始動すれば表示は消えるようです.あとでホンダのディーラーの方に教えてもらったのですが,「D」ランプの点滅はミッションコントロールユニットの異常を意味するのだそうです.車速パルスをどこかにショートさせると「車速パルス異常」のステータスがちゃんと残るようですが,車の走行には特に影響はないみたいです.





SPEEDER 仕様

車速パルスがどのようなものかわかったところで,以下のような仕様に決めてみました(というか作ってみたらこのような仕様になりました).

・電源は12Vを供給.消費電流はリレーオン時で約30mA.
・車速パルスは 33KΩの抵抗を介して入力する.
・基板の大きさは 4cm x 4cm 以下.
・DIP-SW で速度を設定し,車速がこの設定値を越えるとリレー接点が切り替わる.

以下のようなブロック図で表されるような動作をする回路を作りました.




DIP-SW でスレッショルド速度を設定し,その速度を超えるか超えないかでリレーが切り替わるようになっています.
「車速パルスカウンタ」と「比較器」は実際にはワンチップマイコンでプログラム的に実現しています.ブロック図にリレーの絵が書いてありますが,これは必ずしもメカリレーである必要はなく,目的に応じた回路をくっつけてもかまいません.

スレッショルド速度は 8ch DIP-SW で設定します.DIP-SWの 0〜5 ビットで速度を設定し,7 ビット目でヒステリシスモードを設定します(走行中にディップスイッチを操作しないほうがいいです).

DipSW bit
0
1
2
3
4
5
6
7
SP値
5
10
20
40
80
160




スレッショルド速度(km/h) = 5 + Σ(各SP値)

例1. bit 2,3 のみ ON  ---> 65km/h を超えるか超えないかでリレーが切り替わる
例2. すべてオフ     ---> 5km/h         ・・
例3. 0,1,2,3,4,5 をオン ---> 320km/h        ・・

bit6 は現在のところ空きビットです.
bit7 を ON にするとヒステリシス制御が入ります.ヒステリシス速度は 2km/h です.

例1. bit 1,4,7をON ---> 加速中は97km/hでリレーオン,減速中は 93km/h でリレーオフ.
例2. bit 1,4 のみON ---> 加速中は95km/hでリレーオン,減速中は 95km/h でリレーオフ.

なお,実験用の発振器を車速パルスの代わりに使って320km/h を模した動作確認をしましたが,実車では時速145km までしか動作確認できませんでした.実車に取り付けた様子を以下に示します.ダッシュボード上のレーダー探知機の上に両面テープで SPEEDER を貼り付けています.







製作編

基板は2.54mmピッチの片面です.感光基板でもユニバーサル基板でもOKです.実態配線図とプリント板イメージを載せておきます.



実態配線図を見るにはここ↓をクリック

実態配線図



基板イメージ. 600dpi のBMP ファイルはこちら↓.

基板イメージ(600dpiのBMPファイル)

これをファイルとして取り込んでOHPシートかなにかに印刷すれば感光基板用のマスクになります.平田和貴氏のページにプリンタの解像度そのままにBMPファイルを印刷するツール(SFO)がありますので,プリンタの解像度に合わせて上記「基板イメージ」を拡大,縮小し,SFO に取り込んで印刷するとうまくできます.なお同ページの kban はフリーの基板イメージ作成ソフトです.アマチュア用途で使うには充分な機能をもった基板CADです.

平田和貴氏のページ



SPEEDER 部品表


部品名
規格名
メーカ
数量

マイコン
PIC16C84
microchip
1

リレー
G6A-234Pなど
OMRON
1

レギュレータ
7805
LT
1

8接点DIP-SW

-
1

PNP トランジスタ
2SA1015など
-
2

クリスタル
10.24MHz
-
1

1/8W 抵抗
3.3K
-
3

1/8W 抵抗
10K
-
1

1/8W 抵抗
33k
-
1

セラコン
30pF
-
2

セラコン
0.1uH
-
1

セラコン
0.01uF
-
1

タンタルコン
2.2uF
-
1

フューズ
0.5A
-
1

基板,配線など

-





回路図

回路図を見るにはここをクリック


マイコンのプログラム.

本機で使用しているワンチップマイコンはプログラムを書き込まないと動作しません.プログラムのソースファイルは以下にあります.

プログラムはここここをクリックしてダウンロード


コンパイルには幾島康夫さん製作のPIC開発環境を使っています. 以下のページでPIC開発環境一式に関する情報が入手できます.フリーです.

いくしまさんちのホームページ(の中のPIC関係)



なお,PICの書き込み器をすでに持っている方であれば,以下のオブジェクトファイルを流し込むことでSPEEDER の PIC が焼けるかもしれません.

OBJ ファイル



雑感

この SPEEDER を最初に作ったのは2年ほど前だったと思います.当時 F&F 掲示板でレーダー探知機の話題が出たときにこれを作ってみようと思い立ちました.車速パルス引出し方法がわからなかったときに SONY のナビフィッティングページをF&F掲示板で教えてくださった方がいました.どなただったか失念しましたがありがとうございました.

単純に車速パルスでリレーを動かすだけであればマイコンでなく NE555 かなにかを組み合わせてやる方法もあるのですが,マイコンを使ったほうが,後でレーダー以外の用途を思いついたときに簡単に転用が効きそうなことから,このようなものを作ってみました.最初に作った SPEEDER はかなりテキトーなものだったのですが,使ってみるとレーダー探知機がめったに鳴らないようになり,普段はその存在を意識することがなくなりました.たまに鳴るとびっくりしてしまうほどです.なかなかいいものが出来たのですが,公開するにはもうちょっとちゃんと作らなければいけないと思い,基板レイアウトを変えし,車速の検出精度を上げ,DIP-SW もつけてみました.F&Fらしく(?)時速320Km/h まで計れるようにしましたし.

車関係が御趣味の方であれば,「車速を計ってなにかする」という用途を他に思いつかれるかもしれません.そのときにはぜひ F&F で公開してください.


以上, 27 May 2003 (こじ)