アンテナ分配機を作る
AM/FMチューナにFM VICS,それにTV搭載となれば、車のアンテナを何らかの方法で分配しなければいけなくなる。
通常売られている分配機(ブースター)は2分配なので、3台の機器にこれを接続する場合には、必然的に2段入れなければいけない。
2段入れればゲインが倍になって感度がより上がる,と考えるのは間違いである。
ゲインも上がる代わりにノイズも増えてしまい、ノイズを増幅しているような事になってしまう。
こうなると電界強度が強いにも関わらずTV画面にノイズが見えたり、FMラジオにノイズが混ざったりする。
アンプなどのノイズの発生量をNFで表すが、この値が大きいほどノイズが多いことを示している。
複数段アンプを接続する場合には、このNFを単純加算ではないものの1段目のアンプのノイズを2段目のアンプが増幅することになる。
アンプの総合NFは初段のアンプまでのロス+初段のNF+次段のNF-1/初段のゲインになるから、1段目のアンプのNFとゲインは重要なのだ。
NFだけを見るとゲインは大きいに越したことはないが、システム全体で見ると必ずしもそうではない。
FMチューナにしてもTVチューナでもダイバシティ方式になっていると思うが、これは電界強度のみを見てアンテナを切り替えている場合がほとんどだ。
無闇に高いゲインのアンプを入れると、ノイズレベル自体が高くなるのでダイバシティ機能が正常に動作しなくなる。
これらをふまえて、ゲインを2〜3dB(実測),NF5dB(実測)の分配機を作ってみた。
上が全体の回路,下がアンプの回路だ。
L1とC1は27MHzのトラップである。
これがないと違法CBなどのブロックを食らう。
このほかにも強電界用の保護回路をショットキーダイオードで作って取り付けてある。
出力は抵抗で分割した。
コイル(トランス)分割を行えばロスは少なくなるが、その代わりアイソレーションが悪化する。
アンプの裸のゲインが高いので、今回は抵抗分割で十分と判断したわけだ。
ナビのVICS受信メンテナンス画面で電界強度が表示される。
これによって実使用時における動作確認が出来るのである。
回路は市販の分配機(カーナビを買うと付属してくる)の中身を取り去って組み込んだ。
制作は基板を起こしたわけではなく、金メッキ(たまたま手持ちがあったから)のベタ基板をカッターで切ってパターンを作ったに過ぎない。
当然の事ながら長いラインはストリップラインとしてインピーダンスの乱れを防いでいるが、TVやFMラジオ程度の周波数では気にしなくても大丈夫だ。
回路が沢山あるように見えるが、これには上記回路が2チャネル分(メインとサブアンテナ用)とAM周波数帯のスルーパス回路(緑の基板)を取り付けてある。
赤と黒の帯の入ったガラス管状の部品は強電界用の保護回路である。