埋め込み型プロジェクタヘッドライト


H4バルブ交換型HIDに関してはこちらで調べた。
グレアを減らそうと思うと暗くなり配光が狭くなる。
一般的にグレアが多い中国製に比較してレイブリックのものはグレアは少ないが明るくはない。

そこで今回はH4バルブ交換型プロジェクタヘッドライトユニットを試す。
実はこのような、笑っちゃうようなシロモノがあるとは知らなかった。
見た感じというか、ようするにLED電球みたいなものだ。
H4バルブのようにヘッドライトユニット後方から差し込むのではなく前面のカバーを外して取り付ける。
いやぁ、発想が凄いというか何というか、やっぱり笑っちゃう。

本体は結構デカいので小型というか奥行きのないヘッドライトユニットには内蔵出来ない。
いわゆるバイキセノンと言われるものでハイビームとロービームの切り替え機構をもっている。
構造は内部の遮光板をソレノイドで移動させる方式である。



いわゆるイカリングも付いている。
青っぽく見えるのは内部にも青イカリングが付いているためだ。
デコりまくりのワンボックスカーみたいで何かとっても下品なのだが、イカリングインバータを接続しなければ点灯しない。
視認性という面で外側の白いヤツはまあ良いとして、内側の青いのはコネクタ引っこ抜いておかないと。
※と思ったら、抜かなくても点灯時は全く青い色が見えないので心配なかった。



レンズ後方には隙間があり光が漏れている。
この光がノーマルヘッドライトのレンズに反射して明るく見せる仕組みなのか、あるいは放熱用か。



開けたら保証しないからねと書いてあるシールを無視して開けてみる。
どうせ開けなくたって保証なんか無いくせに。
ハイ/ロー切り替えはソレノイドで遮光板を開閉する仕組みだ。
配光パターンを変えたければ遮光板の形状を変えればいい。



バルブは規格品ではなく専用品だそうだ。



配光はほぼ中央より右が低く左が高い"Z"型のパターンになっているが↓のような感じの方が良いと思う。
左端を少し高くすると共に、光量がかなり低下する外側を斜めにカットする。
この斜め部分は光量が余り出ない領域なので斜めに切っておいても良いだろう。
というか、元々の形状だと左端が右側と同じ高さになってしまう。
つまり可動式の遮光プレートは切り取られているのに固定側は切られていないからだ。



この遮光板の形状というか配光形状は、国産車の多くが同じように中央から左を高くしている。
ブルーバードシルフィーなども同様の配光のバイキセノンで、大きなソレノイドで遮光板を移動させている。
信頼性はともかく、構造的あるいはコスト的にみると中国製の方が良く考えられていると言える。

と言ってもそこは中国製、全体的に作りは悪い。
取り付け用のネジ、ナット部分はそのままでは外れずバルブを外さなければならない。
ネジは緩んでいて、増締め無しではやがて外れてくるかも知れない。
反射鏡は曇っていてティッシュで拭いたらクリアになった。

レンズの直径は約50φで大きくはない。
たまたま入手したものがこれだったわけだが、他にも70φや80φレンズのものもある。
一般的には大きいものの方が配光的にも光量的にも有利なのだが設計による差もあるので一概には言えない。
いくつかの中国製大サイズ品も見たが、大きくても配光が疑問なものもあった。
また大きいものは当然重くなるのと、レンズが付いている先端部が特に重いのでノーマルヘッドライトの強度が心配だ。
シグナスはすぐに壊れる的な弱さは感じられないが、ヘッドライトによっては揺れたり割れたりゆがんだりする可能性がある。

配光はリフレクタ設計にもよる。
無駄に捨てられている感のある下半分(遮光板側)の反射鏡を乱反射加工したものなどもある。
このプロジェクタは周囲に明るい部分は出来るが配光はそう悪くはないと思う。

質量を測ろうと電子天秤に乗せたら振り切った。
仕方ないので体重計で測ると0.4kgと出る。
結構重い。
ヘッドライトユニットが壊れるんじゃないのかなぁ。



参考までに、各HIDユニットを装着した時およびハロゲンバルブ装着時の配光だ。
これは以前に実験した時のものである。



これはノーマルヘッドライト+レイブリックHID装着時の配光である。
いつもの場所とは違うところでテストしているので再掲する。



プロジェクタヘッドライトの場合はこうなる。
実際にはまだ装着しておらず、ノーマルライトの横に並べて配光を確認したに過ぎない。
何せ組み込むためには殻割りの必要があり、かなり手間なのである。
まずは配光チェック、使えそうなら組み込んでみようというわけだ。

中国製らしい、緑っぽい発光色が安っぽさを演出している。
色温度は公称6000Kで、これはレイブリックと変わらないが緑っぽい。
プロジェクタユニットのレンズの透過性やその色の問題もあるだろう。
透過率が高く透明度の高いレンズは値段も高いからだ。
また上の方にグレアが見えている。
これはハイビーム/ロービーム切り替え用のソレノイドの上端、およびそれと遮光板をつないでいる金属板で反射があるためだ。
ソレノイド上端は黒色メッキされているがつや消しではない為か反射が起きる。



国産純正でマトモな設計のされているものだと、プロジェクタユニットのリフレクタもマルチリフレクタになっていて遮光板の不要な部分への配光を制限したり遠方(つまり遮光板ギリギリの所)ほど明るく照射するような配光になっていたりする。
逆に余り手をかけていないものは、この中国製ほどではないにしても光量のムラがある。

社外品でもっとも酷いものはPIAAの999CXだろう。
スポット的配光でしかもとんでもなく暗い。
PIAAに言わせると『世界最高で最強のランプマシン』となるようだが、買って幻滅した人も少なくはないはずだ。
PIAAだから仕方ないと、今だから言われているが… ランプマシンは程なくして市場から消えた。

プロジェクタ型でなくても同じだが一般的には物理サイズが大きい方が配光設計がやりやすい。
H4交換型のプロジェクタライトでも、今回実験に使ったものより更に小型のものもある。
そちらは手元にないので実験していないが、ヘッドライトユニットのサイズが許すならば大型のものの方が良い。

プロジェクタユニットの上面に穴を開けるとノーマルのライト反射鏡も使える事になる。
このユニットはダイキャストなので穴を開けてみる実験はしなかったが、工作機械が使える環境ならば出来ない話ではない。
自動車メーカ純正設計でもプロジェクタユニットに穴を開けて光を取り出し、別のリフレクタで配光補正をしているものがある。

殻割りは多くのページで紹介されているので書くまでもない。
最初はお湯割り?湯に浸けてブチルゴムを柔らかくする作戦を採ったが、湯の温度では柔らかさが足りずうまく行かなかった。
この時の給湯器の設定は最高湯温の60℃であり、この温度ではブチルゴムはさほど柔らかくはならない。

そこでヒートガンであぶりながら徐々に剥がしていく作戦に変更した。
ヒートガン温度だとブチルゴムもとろとろになるので剥がれやすい。
ちなみにこの温度でもヘッドライトユニットが溶けるとか変形する事はなかった。

殻割り後は組み込みを行う。
これは特に面倒な事はないが、CCFLやソレノイドの配線を通す穴を開ける必要があった。
ヘッドライトユニットによっては隙間から通るのかも知れないが、シグナスはダメだった。
プロジェクタユニットはかなり重いのだがヘッドライトユニットは大丈夫だろうか。
ネジを締め付けて取り付ける方式なのでガタガタはしないが、多少の心配はある。
セメダインスーパーXでも使って反射鏡との接触面を固定した方が良かったかな。

なおシグナスの場合はH4バルブを少し傾けて取り付ける(左右ハンドル用で傾け方が違うものもある)ようになっているので、H4アダプタの爪を削らないと水平が出ない。
水平は後からでも動かす事は出来るが、出来る限り殻付け前に決めておきたい。

見た目が変わるのを余り好まない私なのだが、こんな感じになった。
CCFLは点灯させているが余り目立たないかも。
元に戻す時は再殻割りは行わず、ライトユニット買ってこようっと。
1万円しないし。



消灯時



組付けが終わったのでいつもの場所に持って行って写真を撮る。
日が長くなってきたのと夕方から雨が降り始めたので周りがまだ少し明るい時間に撮った。
まずは配光特性。
Z型に左が上がっているが、中央から上げる事はないだろうと思う。
左端の方だけ上げるならまだしもという感じ。
なので左が上がっていると考えるより右が下げてあると見た方が良いか。
レンズの収差なのかカットラインが水平にはなっていない。
左端が下がっているのは上に書いたように、可動部の遮光板は左が切り取られているのに固定されている板は切り取られていないためだ。



ロービーム
照射範囲は劇的に広がったが反面暗くなった。



ハイビーム
ハイビームは周囲のカットラインは変わらず、中央部だけカットパネルが下がる。
よって横方向の光はロービーム時と余り変わらず、前方のみカットラインが上がる感じになる。
マルチリフレクタのハイ/ロー切り替えでは照射パターンそのものが変わるのだが、バイキセノンでは中央部だけが変わるので変化が解りにくい。
ハイビームは遠くを照らすためにペンシルビーム的にエネルギを集中させた方が良い。
しかしプロジェクタの場合は、そもそも広域配光になっているのでハイビームが暗くなる。
そのためバイキセノン搭載車でもハイビームを別途ハロゲンバルブで実装しているモデルも多い。

配光特性はバルブへの投入電力ではどうにもならないが、明るさを上げるには投入電力を増大させればいい。
例えば通常は35Wだが、ハイビーム時は50Wにするなどだ。



アニメ-テッドGIFを作ってみた。



レイブリックより右側が特に暗く写っている。
デジカメの露出は、感度=ISO400,絞り=F2.8,シャッタ速度=1/3.2秒で同一だ。



分かりにくいだろうか?
ではビームの先端付近のみ切り取って表示してみよう。
ハロゲンバルブは光軸が下過ぎていてマンホールまで照らしていない。




広範囲を同じエネルギで照らせば単位面積あたりの照度は下がる。
又照度ムラがないので部分的に明るくなる事もない。
明るさに関してはレンズの透過性の問題もあり、純正のプロジェクタヘッドライトでも高色温度のバルブを付けると極端に照度が低下するものがある。
石英ガラスでも使えば話は別だが、一般的なガラスを使ってレンズを作ると波長がおよそ500nm以下では急激に透過率が下がる。
緑がおよそ550nm、青は400nmあたりであり、この領域ではガラスレンズの透過率が一気に落ちる。
色温度と波長は関係がないというか、色温度は各波長のエネルギの合成された結果のようなものだ。
ただ色温度が高いと言う事は3原色で言えば青の成分が大きい事になり、逆に言うと緑と赤が少なくなっている。
ガラスの透過率は緑や赤が高く青が低いので、青成分の多いバルブは暗くなると言う理屈だ。

このプロジェクタユニットにはいかにも中国製チックな、緑っぽい発光のバルブが付いてくる。
これを普通の、4300k程度のものに交換するだけで照度はかなり上がると思う。
何よりいかにも中国製ですよみたいな緑っぽさから解放されるのが良いかも。
手持ちのバルブの照度テストはこちらで行っている。

バルブはオリジナル形状ではあるが構造は簡単だ。
円筒状の部材に穴を掘る加工をしても良いし、例えばセメダイン耐熱パテ(耐熱温度1100℃)のようなものを充填硬化させても良い。
予め薄いプラスチックや紙で型を作り、その中にバーナを入れて周囲にパテを入れて硬化させるわけだ。



もう一つはバラストの出力を上げてしまう事。
発熱や寿命のリスクは当然あるが、まあ手っ取り早いとも言える。
ちなみに中国製HIDバラストは55W品と言っても表示だけで35W品と何ら変わりないのは実証済みである。
しかも効率がかなり悪いので消費電力が多く発熱も大きい。
また中国製のバルブの場合はそもそも設計がギリギリなのでオーバドライブすると寿命が極端に短くなる。
55W品と称されるものも出回っているが、発光部に35W品を使いながらガラス管だけ少し太いものにして見た目を55W品にしているものもある。
もちろん35W品をそのまま55Wと称して売っている所も多いが、国内メーカが中国に作らせた本物?の55W品は発光部が大きくガラス管も太いために最近ではそれに似せた姑息な売り方が始まっているのだ。

中国製55Wバラストに35Wバーナを使うのは何ら問題ない。
だって55Wバラストの出力が35Wにも満たないのだから。

下の写真は35Wのノーマル状態と50Wにした時の差だ。
オーバドライブするとバーナの色温度が下がるので、レンズの透過性アップにも寄与すると思う。
なお撮影は色温度が下がる前に(色温度が下がりきるまでには時間がかかる)行ったので照度が多少低い。
以下の写真は同一絞りになるようにした。
日暮れの時間が遅い季節故、空がまだ完全に暗くなっていない。



下は自動絞りで撮ってもので、35W時がISO400,F2.8,1/3.2Sであるのに対して55W時はISO400,F2.8,1/5Sとなった。
マルチリフレクタ+HIDの時にも1/5のシャッタ速度にはならなかった事を考えるとその明るさが分かろうというものだ。
シャッタ速度を考えると、照度は2倍近くになっていると考えて良い。
データ的に見ても照度が約1.5倍、レンズの透過率を考えればそれ以上明るくなっていると考えられる。



50W化は効果抜群なのだが、街中で明るくしても無駄だ。
それこそ明るい都会の街角でフォグを点けているアホと同じになってしまう。
スイッチを付けるのも面倒だし、ハイビームだけ50Wにしようか。
あるいはライトスイッチを使おうか。
日本ではライトをオフにして走る事は出来ないので、このスイッチで照度を切り替える事は現実的だ。
車の場合は気軽にスイッチを増設出来るが、単車の場合は防水を考えないといけないのが面倒である。
と言いながら、実験用には単独スイッチが良いかなと言う事で小さなトグルスイッチを下向きに仮設した。
そのうち防水のものに取り替えよう。
しかし一々切り替えるのは面倒なので、ハイビーム時には自動的に50Wになるようにした。

実際に走ってみると広範囲を照らすプロジェクタの方が周囲が見やすい。
直前部分が明るいので不安感が少ないし、町中などでは光の広がりが大きいので歩行者などを早く認識出来る。
またコーナなどでは照射範囲の広さがものを言う感じで、バンクさせた時も周囲が比較的明るい。
逆に長い直線で速度を上げたような場合は前方照度の高いマルチリフレクタの方が適していると言えるが、50W化で照度はほぼ2倍になるのでさほど不満はない。
プロジェクタユニットの大きさ故に揺れるかなと思ったのだが、走行中のビームの揺れはレイブリックが最も大きかった。
これはレイブリックのハイロー切り替え機構がかなり大きく重く、H4バルブの止め金具付近を支点に頭を振るからだ。
この大きな後ろ側を金具で支えてみたが、揺れは余り変わらなかった所を見ると、機構自体の剛性が不足しているのではないだろうか。
そもそもハイビームとロービームの切り替えは7mmの前後移動(レイブリックは5mm以下)とわずか1.2mmの上下移動であり、ほんのわずかな位置のずれが配光を大きく変える。
軽く小さく安くと言う事を追求した中国製バルブ、は揺れの点ではレイブリックよりずっとマシだ。
というかレイブリックが酷すぎるんじゃないかなぁ。
プロジェクタはH4コンバージョンバルブよりずっと大きく重いのだが、揺れに関してはレイブリック製よりずっと少ない。

シグナス用としてプロジェクタユニットを組み込んだアフターマーケット品も売られている。
だが配光は右上がりになっていて、そのまま使うと問題がある。
プロジェクタユニット自体にしても右上がりビーム品が何の躊躇いもなく売られているのが現状であり、使う側が注意しなければならない。

さて、ここまでやったら次なオートレベライザとAFSだろう。
レベライザ付きの、つまり自動車用の純正プロジェクタを埋め込む事も出来るが大げさだ。
ならば…
ライトの光軸調整ねじをラジコン用のサーボモータで動かしたらダメかな。
ラジコン用の大型サーボだと30kg・cm以上のトルクを出してくれる。
光軸調整用のねじはたぶん20kgcm程度のトルクで動くと思うので、これなら直結も可能か。
ただ動作速度が速すぎて制御が難しいかも。

サーボではなくギアヘッドでも良いかもしれない。
これもラジコン用だと戦車用のものが使えそうだ。
ただしトルクなどが良く分からないので調べてみる必要がある。
ラジコンに詳しい人ならおそらくは分かるのだろうが、何の何分の一のモデル用に何のモータが付いているとか書かれていても私にはさっぱり分からない。
ヘッドライト後方にはスペースがあるし、何ならコグドベルトを使っても良い。