屋根は弱い（１２／３０）
◆　自動車の衝突安全性は前面衝突試験に始まり、オフセット衝突、側面からの衝突や丈夫なポールに側面を打ち付けた場合などが規定されている。後方からの衝突規定もあるのだが、これは乗車人員保護という事ではなく燃料タンクの破損度合いを見るものだ。

◆　燃料タンクは3BOXの車ではトランクの下かトランクと後席の間にある。2BOX車ではリアシートの下辺り、1BOX車では2列目シートの下辺りに搭載されている。この事から3BOX車では後席は安全、2BOX車では後席も少し危険、1BOX車だと3列目シートは危険となる。

◆　衝突力と搭乗人員の安全性に対して規定がないのが上面からの衝撃だ。上からものが落ちてきた場合の安全性となるが、普通は上からはものが落ちてこないので規定されていない。しかし1BOX車では側面からの衝突で横転が発生する。比較的大型のワンボックス車でも、50km/hで軽自動車が側面から衝突すると横転する。横転したまま何かにぶつかると、これは屋根側からの衝撃となる。

◆　1BOX以外の車でも横転するが、1BOX車はトレッド幅の寸法より車高が高く不安定になりやすい。10月の終わりか11月の初め頃に愛知県で小型車とワンボックスカーの右直事故があった。ワンボックスカーは小型車との接触で横転し、そのまま電柱に激突して運転者が死亡した。

◆　横転しなければ運転者が助かった可能性があるが、電柱に激突してルーフは深くへこみ、生存スペースが残されなかった。日本を含む東南アジアではワンボックスカーを乗用車として使う文化があるのだから、ルーフの衝撃規定くらいあっても良さそうな気がする。

◆　衝突規定の強化とか安全装備の義務化は自動車メーカが嫌う部分なので、日本が世界に先駆けて衝突規定を強化するのは難しい。海外の基準に合わせて日本の規定を変えることは出来るが、一般的に海外の規定よりも甘くなる。その理由として日本は小型車が多いとか平均走行速度が低いからだというのだが、諸外国並みの安全性テストでも良いと思うんだけど。

◆　メーカに言わせれば安全性を確保すると価格が上がるとか、車両重量が増えて燃費が悪くなるとかとなる。この辺りは自動車の安全性をどのように見るのか、安全性のプライオリティはどこにあるのかという話だ。

◆　EuroNCAPで毎回評価が低いのがスズキの車で、豪州(ANCAP)では星1つとなって問題を起こした。一方でトヨタと協業で作ったビターラはスズキとしては最高得点に近い星4つを獲得した。トヨタの元モデルも同じく星4つである。☆の数が5つでなかったのは、乗員保護性能で劣る部分があったからだ。

◆　フロントシートの乗員に関しては側面衝突時に体の移動が大きかったことで、これはセンターエアバッグを装着すれば改善出来る。もう一つは後部座席の乗員の体の移動量が多かった為で、プリテンショナの移動タイミングや締め付け量がベストではなかったことになる。この辺りのセッティングも単にここをこうやれば良いという話ではなく、アチラを立てればコチラが立たず的なバランスの問題やコストの問題が絡んでくる。

◆　特にコストの問題、それも修理コストの問題は重要だ。プリテンショナが作動するとシートベルトを交換することになり、修理代が嵩む。BMWは対人衝突時にボンネットを浮かせ衝撃吸収力を増大させる機能があるが、これも一度可動させてしまうと修理費が嵩む。で、この機構が作動しないようにするキャンセラが売れている。