レーダ探知機を科学する。



みんなもご存じのレーダ探知機。
普段何気なく使っている探知機だが、中身はどうなっているのか?メーカ・値段もピンキリだが、どれを買ったらよいのか?F&Fが科学してみた。
インプレッションと性能比較こちら フィールドテスト結果こちら


左はサンヨーテクニカのλ583XK(実売価格2万円程度)右はセルスター工業のALPHA935(実売価格1.6万円程度)だ。
私は、個人的にサンヨーテクニカ製品が好きで3台ほどバラしている。
サンヨーテクニカを好きになった理由は、今から10年くらい前に購入したモデルの性能が良かったからだ。
この製品、某ディスカウントショップで¥2、700で売っていた。
たぶん、¥27、000の間違いだと思うが..しっかり¥3000円でお釣りを貰ってきた。
この当時、レーダ探知機からの漏洩電波が問題になった時期でもあり非常に手間のかかった作りになっていた。
しかも、高周波増幅(アンテナから入ってきた10GHz帯を増幅してからミキシングダウンすると宣伝されていた)器が付いていたのだ。
そのモデルも、だいぶ古くなったので購入したのがλ583XKだ。


これがその中身。
スキャナーで撮ったから色がヘンなのは勘弁してくれ。
右半分に見えるところがホーンアンテナと1stローカルやミキサ回路だ。
コイツの感度、全然良くない。
(以前のモデルに比較して)サンヨーテクニカに聞いてみると、「感度を求めるならλPRO970XKがいい」と言う。
そうかあ..そんなに違うのならと970を買ってみた。
(3.5万円前後)当然すぐバラすと、何と中身は583と同じではないか

コレを見た時点で、私のサンヨーテクニカに対する信頼性はゼロになった。
ケースが違うだけのものを新製品と言って、高く売るなんて!許せないのだ。
しかし、感度は970の方がよい。
以前使っているものとさほど変わらないレベルだ。
じゃあ583の感度は??サンヨーテクニカに修理に出すと「調整不良..再調整」で帰ってきた。
(970と同じになった..当然!)このモデル、10.525GHz(Xバンド)と、24.2GHz(Kバンド)が受信できる。
さて、そのメカニズムは?

内部はこのようになっている。
ホーンアンテナに入ってくる電波は10.525GHzと24.2GHzだ。
1stローカルの発振周波数は、約11.5GHzから11.6GHzだ。
10.525GHzを受信した場合は11.5GHz-10.5GHz=1GHzになる。
では、24.2GHzの場合はと言うと,1stローカルの2倍高調波を使って24.2−23.2=1GHzとなり、何ら回路の変更無しに2つのバンドが受信できるのである。
10GHz帯と24GHz帯ではヘテロダインが逆になるので、1stローカルのスイープに対するFM検波後の電圧を見れば、どちらの周波数を受信しているか分かる。
これで、警報音を変えているわけだ(誤動作する)

このλ583/970は、CPUを使用していない。
全部ハードロジックで組まれているのだ。
レーダ探知機以外の製品を見てもそうなのだが、サンヨーテクニカはソフトウエアが苦手と見える。
あるいはコスト最優先なのかも知れないが..このモデルは、警報が鳴らないか鳴っているかで中間値があまりない。
町中ではピーピうるさいし、高速道路のオービスを最高感度でディテクトすれば約1500m手前から警報を発する。
一方Hシステムには弱く、肉眼で見えているのに直前まで行かないと鳴らないケースもある。
なお、相互干渉(他のレーダ受信機から発射される漏洩電波で誤動作する)は多い。


これが、ALPHA935XKの中身

CPU搭載(部品面)だから、デバイスの数は少ない。
CPUは、NECのμPD75006が使用されている。
10GHz/24GHz受信のメカニズムはサンヨーテクニカと同様だと思われる。
高周波部(アンテナ付近)が小型に出来ているのは、基板上にミキサやらローカル発振用の誘電体共振器を乗せて一体化しているためである。
(MMIC)このモデルに関しては、まだ実使用上のデータが取れていない。
カタログスペックを見ると、「ブザーが3段階に変化」ってのが気になる。
電界強度に応じて連続的に変化して欲しいよね。
しばらく使ってみたら、このページで報告する。


どうやってスピードを測定しているのか?
通常のレーダと言われるヤツは、CW(連続波)ドップラレーダだ。

ステルスと言われているものも同じ。
ただ常時電波が発射されていないだけだ。

ドップラとは、近づいてくる物に対して周波数が高い方向にシフトする現象だ。

これは、電波に限らず音でも起こる。

救急車のサイレンを思い出して欲しい。

ドップラ周波数の計算式と、その理屈はその手の本を見ていただくとして(面倒
がって済まないねえ..)とにかく自分の発射した電波と、車両に反射して戻ってき
た周波数の差を速度に換算しているわけだ。

ここで言う速度とは、レーダのアンテナに対する速度であって対地速度ではない。

3車線の道路で、最左車線走行中にレーダのアンテナを発見したら最右車線まで移動
すると、レーダに対する速度は低下してスピード表示は低くなる計算だ。



最近流行の(?)Hシステム。

実は私も詳しくは知らない。

Hシステムの近くまで行って、スペアナででも観測すれば分かるのだろうが..
で、ココからは予測。

Hシステムの電波がパルス状であるらしいことは分かっている。

なぜパルス状に発射しなくてはいけないのか?
これは、ドップラレーダではなく電波そのものの遅延時間で測速度しているのか?
そんな精度は出るのだろうか?
例えば、単位時間当たりの車両移動距離が3mだとすると、その3mの差による電波
伝搬速度の差は10nS(計算間違ってないよねえ)だ。
10nSは100MHzだから時間としてではなく位相だとか周波数だとかであれば検出出来る。

時間を計るとすると結構精度が必要だから、何かしらの工夫があるのだろう。





こいつがHシステムだ。
四角い板状の物がアンテナ。
形状からしてダイポールアレィでは無いだろうか?三菱電機製の物は、投射角〜10度/ビーム幅約2度/出力50mWとなっている。
アンテナの両側は、赤外線投光器とCCDカメラ。
このカメラ、1500×1500=225万画素と言う分解能だ。
そんじょそこらのデジカメとはケタが違う。
画像データは(たぶん)圧縮されFEAL8による暗号化の後INS64回線で伝送される。
測定可能最高速度は220Km/hらしい。


Hシステムのついで?に、代表的CWドップラレーダのスペックを書いておく。

日本無線製 三菱電機製 松下通信製
送信出力 50mW 50mW 20mW
投射角 0〜10度/27度 0〜10度/25度 0〜10度
測速度上限 199Km/h 199Km/h 160Km/h
方向識別 近接のみ 近接/遠去 近接/遠去
*周波数は各メーカ共通10.525GHz±12MHz〜15MHz程度。
投射角とは、測定物(君の車だよ!)にどの位の角度で電波を照射するかだ。
0〜10度は、ほぼまっすぐ反射して帰ってくる電波を拾うわけで特別な補正は要らない。
25/27度だと実車速より遅く計測されるので、内部で補正している。
25/27度だと、アンテナは測定物の方向より中央車線よりに向くから、レーダ探知機では探知しにくい。
また、25/27度補正をかけたままほぼ水平(0〜10度)で測定するとプラス誤差(実車速より速いデータとなる)が発生する。
上記表のデータは、各メーカの代表的機種を表したもの。
三菱電機などはかなりの機種を発売していて、アンテナもホーンアンテナ/パラボラアンテナ/スロットアレイ等のモデルがある。


サンヨーテクニカ製ラムダ970XKとセルスター製アルファ?
坑械毅悖砲糧羈?

サンヨーテクニカ製ラムダ970XK
セルスター製アルファ?
坑械毅悖?

まだ使いはじめたばかりなので、不満点が少ないが...

LSCについて
ロースピードキャンセラ機能である。
ロースピードといっても車速ではなくエンジンスピードだ。
探知機の電源から、オルタネータノイズを拾ってエンジン回転数が低いときに警報をカットする機能。
SLの場合だと、50Km/h走行時でもエンジン回転数は1000回転前後だから設定は700回転付近とした(アイドリング回転数は約500回転)停止中に警報がカットされるだけでも有り難いか。
(最近は、ちゃんと車速センサの信号を元にして車速感応型もある)

その他
レーダ探知機の代表的メーカと言えば、ユピテルが有る。
残念ながらF&Fでは、バラしていない。
いらない探知機をお持ちの方がいたら送ってくれ。

片っ端からバラしてやるゾ!


走って調べた、フィールドテスト
実際のレーダ取り締まり機に対する感度を調べるために、関越自動車道でテストを行った。
練馬から新潟までの間に、4カ所の自動取り締まり機がある。
また新潟からの上り線には2カ所、うち1カ所はHシステムだ。




テストの概要
サンヨーテクニカの970XKと、セルスターの935XKを運転席/助手席のサンバイザに取り付けた。
両方の感度設定だが935XKは最高感度に、970XKは中間の感度設定とした。
970XKを最高感度設定とすると、935XKと干渉して鳴りっぱなしになるからだ。
もっとも中間感度といえども、すれ違う車や前後を走る車にレーダ探知機が付けられていると、敏感に相互干渉を起こして鳴りっぱなしになる。
当初は「これも感度がよい証拠か?」と思っていたが、その真の実力はフィールドテストで明らかになった。
なお、下り線で生きていたオービスは2カ所のみであり、上り線は2カ所とも生きていた。


テスト結果
970XK 935XK
見通し直線のオービス 2カ所、双方とも差はない 約800m 約1000m
連続カーブで見通せない 上り関越トンネル手前 約600m 約900m
直線上のHシステム *注 約500m
*注:相互干渉で鳴りっぱなし、計測できず

考察
970XKも最高感度設定にすると935XKなみか、それ以上になると思われる。
(約1500mの距離から反応した実績あり)従って、両機種の感度差はほとんど無いと言えるだろう。
ただ、970XKは異常に相互干渉を受けやすく車の多いところでは鳴りっぱなしになるケースもある。
田舎の一本道を走る分には良いのだが、混雑気味の高速道路では誤報が多くてホンモノがどれなのか?全く分からない。
(でも、今までずいぶん助かっているが..慣れるまでは注意が必要)935XKも相互干渉は皆無ではない。
殆どの場合は「ステルスアラーム」と称する、急激な電界強度上昇時用アラームが鳴動する。