濾過槽サブシステムを考える


濾過についてはここここで述べたとおりだが、濾過槽に付随するシステムについて考えてみたいと思う。
まずは殺菌灯だ。
海水魚水槽ではこれが使われることが多いが、淡水魚水槽で使われることは余り無い。
理由は海水魚水槽の場合には頻繁な水交換を行わないのが普通であり、水交換頻度が低い状態で雑菌等を効率的に除去するのが目的だからだ。
従って海水魚水槽でも毎週水交換が出来れば殺菌灯は必ずしも必須ではないと思う。
しかし人工海水を作るのは手間だし、大型水槽では人工海水を溜めておく溜め水槽も必要になる。
人工海水の基にしても安くはないので、これを頻繁に行うには根性が必要だろう。
なお濾過槽などを極力簡略化したモナコ方式では、濾過槽も殺菌灯も使用せずプロテインスキマ程度の設備とライブロックに当てる水流で水槽を維持する。
もう一つは濾過バクテリアに関してだ。
淡水に比較して溶存酸素濃度が上がりにくい海水では好気性バクテリアの繁殖がなかなかうまく行かない。
濾過バクテリアが十分活動していない状態では、有害バクテリアなども繁殖しやすい。
そこで淡水魚水槽に比較すると大型の濾過槽やドライ濾過槽などが使用される。
これを持ってしても海水中の雑菌が防ぎきれない場合などに紫外線殺菌灯を使用する。
ただし紫外線殺菌灯によって死滅する細菌は居なくなるが、より強い細菌が生き残ると言うことはあるらしい。
コケ(藻)に関しても同様で、紫外線灯に強いコケが増えて来るという話もある。
では淡水魚水槽に殺菌灯は無意味なのだろうか。
おそらく殺菌灯を付けることによって水槽内の雑菌は減り、これに伴って水の透明度は上がるかも知れない。
しかし一般的に使用されるケースが少ないと言うことは、投資に見合う効果が得られないことを意味するのではないだろうか?次にタンパク質除去装置だ。
これも海水魚水槽では使われることが多く、淡水でもディスカス水槽などでは使われている場合がある。
タンパク質を除去して何が得かというと、最終的生成物である硝酸塩濃度が(タンパク質除去を行わない場合に比較して)上がりにくいのだ。
ディスカス水槽では水質維持のために毎日のように水交換をしている方も多い。
この水換え頻度をいくらかでも低下させるのがタンパク質除去装置の目的だ。
オゾン発生器というものもある。
これも海水魚水槽やディスカス水槽で使われるものだが、オゾンによる殺菌作用は殺菌灯と同じ考え方で、他に溶存酸素濃度を上げる働きもある。
海水や飼育水温の高いディスカス水槽では溶存酸素濃度が低くなってしまう。
溶存酸素濃度は水温に比例して少なくなるからだ。
そこでオゾン発生装置を使用してこれらを解決しようと言うわけだ。
ただし日本の高温多湿の夏にはオゾン発生装置が十分な能力を発揮しづらい。
従って空気乾燥機と共に使用するなど、システムは複雑となる。
またオゾン濃度を上げすぎると生体に悪影響が出るので、これを制御する装置も必要だ。
これらの機器を一般の淡水魚水槽に使用しても、正しく使えば害はないと思う。
しかしこれらの機器を使用するより基本的濾過能力を向上させたり、水交換の頻度を上げるなどして水槽を維持するのが正しい方法ではないだろうか?最近では海水魚水槽でも濾過能力の高い濾過槽を使用することによって、殺菌灯を使わない人も増えてきている。
この中で淡水魚水草水槽で使えそうなものと言えば殺菌灯くらいだろうか。
例えば細菌性の魚病が発生した場合、水草水槽では魚病薬を入れることが難しい。
こんな時に殺菌灯を1週間程度使用する,と言う使い方だ。
常時殺菌灯を入れっぱなしにしても通常は無害だとは思うが、前記の通り殺菌灯に強い雑菌が生き残る可能性も否定できない。
実際、魚病薬を使っていると魚病薬に耐性のある菌が生まれて来るという。
紫外線を直接魚に当てると害がある(魚が日焼けする?)かもしれないが、通常の照明用蛍光管を殺菌灯と交換するのも手かも知れない。
光が魚にあたらないように水中に紫外線非透過性の板でも入れておけば万全か? なお空気中で殺菌灯を点灯させるとオゾンが発生する。