フェラーリ テスタロッサ


テスタロッサに乗る機会があった。

少々旧いモデルではあるが、せっかくなので短時間試乗させてもらった。
ボディーサイズやエンジン出力など、この時点では全く把握しておらず、左手前が1速であるギアとサイドブレーキのリリース方法だけを聞いて一般道に出てみた。
エンジンは比較的低速からトルクがあり、扱いにくいとは言えないクラッチと共にスタートは難しくはない。
冷間時にはエンジンの回転上昇がスムーズとは言い難いが、ある程度暖気が進めば問題はなくなる。
エンジンレスポンスは常識的なそれで、犬の吠え声のような「ワンッ」という吹け上がりは期待できない。
エンジンノイズは盛大にキャビンに侵入し、低速域では12気筒とは思えない振動も容赦なく車体を揺らす。
エンジン特性はピーキーではなく、アクセルの踏み込み量に応じてトルクが発生し、低いギアではすぐにレブリミットに達する。
この時点での加速感から、エンジン出力的には360〜370馬力かなと思った。
ギアはストロークは長いが気むずかしくはない。
年代的にシンクロが強力とは言い難いのでシフトダウン時には積極的に回転数を合わせてやった方がいい。
ちなみにカタログによるエンジン出力は380馬力だそうだ。
4千回転を超えると振動も治まるというか、振動周波数が高くなるので不快感は減る。
全体的にハイギアードと言うこともあって40Km/hでの走行は2速か、加速しなければやっと3速に入れられる程度である。
タコメータの針が1200を超えていれば何とか加速体勢に移れるほどのフレキシビリティは持っているが、こんな乗用車的ドライビングをテスタロッサは好まないだろう。
速さ的にはR230(SL500)よりは速く、R129(SL600)よりは遅いと思う。
加減速時の荷重移動は凄く大きい。
サスペンションセッティングによるものなのか、或いはミドシップによるものなのか不明ではあるが、コーナーでパワーをかけると明確に前輪荷重が減少するし、アクセルを閉じれば後輪の荷重は一気に前方に飛びかかってくるかのようだ。
これだけの姿勢変化を起こす前後方向なのだが、左右方向のいわゆるロールはうまく押さえられている。
だからと言って乗っていられないほど固い足ではなく、タウンスピードでも充分実用になる。
ステアリングは重くキックバックも強い。
トルクアクションはFFではないので激しくはないが、片手で押さえる程度を想像すると裏切られる。
ステアリング切れ角が小さいので、全長4.5mちょっとのボディーサイズから想像できないほど小回りはきかない。
私の身長だとヘッドクリアランスは最小で、しかも目の位置が高くなるためにサイドミラーがAピラーに隠れてしまう。
車幅は2m近いが、サイドミラーで後部フェンダーがよく見えるので感覚は掴みやすい。
が、後方視界は最小だ。
試乗車は整備されている状態のものだったが、一旦トラブルが起きれば苦労は避けられない。
しかしそんな苦労を伴ったとしても、この車を所有したいという気にさせる何かがあるのだろう。
メータ類は古典的なもので、見やすくもなければ見にくくもない。
写真はほぼ目線の位置から撮っている。

ペダル類は盛大にオフセットされている。
タイヤハウスを避けるための策で、ABC3つのペダルはその間隔も最小である。
だが踏み間違えるような事はない。
トリップメータなどはセンターコンソールにある。
夏場は暑そうなシフトレバーのトップはアルミ製だ。

写真ついでに、フェラーリミュージアムで撮ったものを載せよう。