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ケータイ料金は半額になる?


  • Posted by: F&F
  • 2008年11月12日 10:43

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山崎潤一郎氏の「ケータイ料金は半額になる!」は講談社から出版されている書籍だ。
最初にこのタイトルと接したとき、経済屋の言うようなもっとも論を書いたものだと思った。
孫さんは携帯事業参入時に日本のケータイ料金は高すぎると言った。しかしサービス開始後の今はEMよりも割高な料金体系を維持している。

米国の2G事業者に比較して日本のケータイ料金が高いと言ったところでシステムが違うのだから始まらない。
米国と日本では土地代も電気代も回線代も違うのである。
更に償却の終わったGSM設備を使用する事業者は、新たな積極的投資が必要ない。

この設備投資負担は通信事業者に重くのしかかり、実際YBBのADSL事業でも設備投資の停止が利益を生み出した。
ただしこうした先行投資の停止は未来を捨てることにもなりかねない。
働き蟻型経営ではなくキリギリス型の経営になる恐れがあるのだ。

実は本書も机上の空論や、都合の悪いところは棚に上げてケータイ料金その一面だけを題材にしたものだと思った。
しかし目を通してみると、意外に深いなというのが率直な感想だ。
おそらくF&Fをご覧の皆様には抵抗無くと言ってはおかしいが、興味を持って文字を追うことが出来ると思う。
本当は各章に関して書きたいくらいなのだが、広範な考察がなされているので読む以外に理解の手はない。

最初の方にも後ろの方にも登場する加入者情報(単純な契約情報ではない)と絡めたサービス構想は、まさにドコモやauが始めようとしているコンシェルサービスを予感させる。
こういった情報はクレジットカード会社も持っている。
すなわち、誰がどこで何を買ったか。
ドコモやauは金融にも手を出しているわけで、この部分は誰しも気になるはずだ。

MVNOに関しても多くのページが割かれている。
この中でドコモと日本通信のバトルの様子が興味をそそるだろう。
通話コストに関しても触れられているのだが、この中でauとドコモの接続料の差がある。
ドコモはスケールメリットが出ているのでauより更に安くても良い(現状は6%だけ安い)とされているが、これはauとドコモの無線・有線ネットワークの余裕度や信頼性が同一とした場合だろう。
例えば平均トラフィックに対するピークトラフィック余裕度を2割と見るか5割と見るかでも相当な差が出ると思う。
特にCDMA方式の場合は同時利用者によるセル半径縮小もあるので単純ではない。
こうした面も含めてMVNO料金を算出するのが確かに理想であるが、それは相手が国営の場合だと思う。
民間企業に対してそこまで丸裸にするのが果たして良いことなのか。
もちろんドコモが国営の端くれだというのならば話は分からないでもない。

いわゆるiモードクローズドネットワークの解放にも触れられているが、EMが言うような何が何でも解放しろ的な理論ではない。
全体的に、それはインセンティブモデルに関してもそうなのだが頭からそれを否定するような構成にはなっておらず、考察を交えているところが文章を分かりやすくしているのではないかと思う。
おそらく各取材などを通じて山崎氏自身も業界の複雑さや、逆に危うさを認識しているのだろう。
これが理想でこうするべきだとやってしまうのは簡単である。
例えばF&Fでもよく書く、公務員の給料を一律下げろ論みたいなヤツだ。
しかしそれは単なるほざきにしかならず、まあSBMな人がメチャクチャ理論を振り回しているのと似ているかも知れない。
逆に色々な事情を知るが故の歯切れの悪さもあるのだが、実際業界の歯切れが悪いのだから仕方がない。

F&Fでは何度か書いているが、日本の事業者は技術開発を担っている。
これは日本独特のもので、新技術の開発は新技術開発屋がやると言うのがグローバル標準だろう。
この部分に莫大な金がかかっている訳で、結局はその負担が通信料金に跳ね返ってきている部分は無視できない。
本書でも何度か登場するが水平分業を推し進めるためには、通信事業者を通信事業だけに絞り込むことが出来るのかも鍵になる。
しかしそうなると次世代開発はどうなるのだろうか。

システム開発から退却すれば、ベンダの言うとおりの基地局を買ってそれを建て新サービスにも消極的になる。
いや、この路線はSBMそのものなのかも知れない。

インセンティブモデルや世間で言われている官製不況と言われる状況に関して、書では否としている。
ただ私に言わせると自由経済に制限を設けた、つまり規制撤廃の逆を行った事による端末販売台数の縮小やそれによるコストメリットの低下は問題だと思う。
正確には、新規加入者優遇のみが目立つ事業者のばらまき体制には一言文句を言いたい。
おそらくMVNOや水平分業を論ずるのと同じくらい重要なのが、この新規格得一辺倒の業界スタイルではないだろうか。
何故事業者は新規加入者獲得に必死になるのか。
資金調達やその背景などにも触れられていれば、更に内情を理解することが出来たと思う。

在庫の少ない書籍のようだが、見かけたら手に取ってみると面白いかも知れない。
http://shop.kodansha.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=282101X

   

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