メタハラ比較(2)


メタハラ比較は以前にも行った事があるが、今回はもう少し客観的にデータを取る形で行ってみたい。
今回テストするのはアストロビーム、コーラルグロゥ、スーパークール115(マリンブルー散光球)、TFW サンライトH70 のブルー球と、同灯具に入れるHIT10000Kの70Wだ。
なおコーラルグロゥとスーパークールは、約1.5年使用した球との照度比較も行ってみる事にしよう。
最初に各バルブの、メーカ公表スペクトル分光図から。
アストロビーム

ハイラックスカラー(参考,一般市販のブルー球)

スーパークール115マリンブルー

スーパークール115サンホワイト

スーパークール115アクアブルー

スーパークール115ディープブルー

スーパークール115ネオンカラー

(たぶん)HIT10000Kの分光図

Giesemann MEGACHROME marine 12,500

Arcadia 14000

アストロビームとハイラックスカラーは似たようなスペクトルで発光色も似ている。
420nmあたりのスペクトルのパワーは異なるようだが、確か以前公表されていた分光図を見ると420nmあたりの出力はピークの40%位、つまり岩崎や東芝の一般用ブルー球と同じになっていたはず。
やはり仕様が変更されたのだろうか。
コーラルグロゥはスペクトルを公開していないが、メーカに聞くと『アストロビームと類似、どこが作っても青系ランプのスペクトルは似たようなもの。
ただし全光束はコーラルグロゥが一番で、サンゴ育成に必要なのは照度です。
』と言われたらしい。
なお本件は私が直接確認した訳ではない。
スーパークールはマリンブルーが(いわゆる)10000Kに近い感じで、マリンブルー→アクアホワイト→アクアブルー→ディープブルーの順に青くなる。
アストロビームとアクアブルーでは、アクアブルーの方が若干青い感じかも知れない。
ネオンカラーは青と赤(紫?)が混じったような光で、誤解を恐れずに書くならばPG2みたいな感じである。
実際に光の色というか、その光に照らされたものを見てみると、分光特性では物の見え具合の予測が難しい事に気づく。
例えば音のスペクトルを見て、それがバイオリンの音であるのかギターの音であるのかを判断するようなもので、経験という土台があればまだしも、理屈だけでスペクトルを見ても実際の音は予測出来ないだろう。
光スペアナでもあれば実際の分光特性を測定する事が出来るのだが、測ったから何?と言われればそれまで。
もしかしたらプリズムを通してみるだけでも面白いかも。
でもプリズムなんて持ってないし…ん、プリズムと言えば回折格子、回折格子と言えばCDではないか。
と言う訳で(無理矢理)CDを使ってみた。
平行光線を作ってから行えばいいのだろうけれど、面倒だからやっていない。
【アストロビーム】

【コーラルグロゥ】

うーん、何かよく分からないな。


スペクトルがどうであろうと、色がどういう風に見えるかが鑑賞上は重要だと思う。
いくらサンゴに良い光だと言っても、3000K程度の黄色というかオレンジ色の光で無脊椎水槽を照らす人は居ないだろう。
(補正用途は別として)そこで手製のカラーチャートをプリントしたものを、各ライト下で撮影してみる事にする。
デジカメはEOS KissDIGITALを使用し、ホワイトバランスは日陰モードの色温度(7000K)に固定した。
日中太陽が当たっている場所だと5200K程度と言われているから、7000K設定が高すぎるようにも感じるが、ブルー系ライトを写すという事でもあるのでこの設定で行った。
撮影は(今は水槽修理中なので)水槽台の上にカラーチャートを置き、その上約80cmからライトを照射する。

カラーチャートは約45°の角度として、カメラから水平な位置になるように調整した。
光源の明るさに左右されないように、露出はオートでカメラに任せる事にする。
写した写真はリサイズは行うが、色調整などは行っていない。
なお点灯後光色と輝度が安定するまで15分ほど待ってから撮影した。
【室内光+ストロボ撮影↓】

【コーラルグロゥ↓】

【スーパークール115マリンブルー↓】

【サンライトH70リーフ↓】

【アストロビーム↓】

【HIT10000K(70W)↓】

何か、解ったような分からないような、違いがあるような無いような感じだ。
もしかしたらホワイトバランスをオートにして写した方が、違いが分かりやすかったのだろうか。
いずれにしてもカラーチャート撮影では違いが旨く表せない。
ブルー系のコーラルグロゥとアストロビームを並べてみる。
ちなみに左がコーラルグロゥだ。

カラーチャートの見え方は同じように感じられる。
肉眼で見ると、アストロビームの方が赤と青が強いかなと言う感じ。
なのだが、アストロビームは以前のものから変わったようだ。
(上がコーラルグロゥ、下がアストロビーム)

確か以前はコーラルグロゥよりアーク長が短く、寿命を犠牲に照度を稼いでいるのかなと思った記憶がある。
が、今回使用したものはコーラルグロゥと変わらぬアーク長である。
仕様が変更されたのだろうか。
久しぶりに見る(つまり、水槽修理中で照明点灯していなかったから)ブルー系ライトはずいぶん青い感じがした。
水槽のない状態では10000Kでも青く感じ、スーパークール115 マリンブルー(あぁ、長ったらしい名前だ)は10000Kより青い。
だがブルーライトを見慣れてしまうと、そのスーパークールでさえ色温度が低いように感じてしまう。
つまり人間の目のホワイトバランスが15000K位に調整されたと言う事だろうか。


カラーチャートではよく分からなかったので、アストロビームとコーラルグロゥのみ別のテストを行ってみた。
【アストロビームAWB EOS】

【アストロビームWB=7000K EOS】

【アストロビームAWB Nikon】

【アストロビームWB=5200K Nikon】

【コーラルグロゥAWB EOS】

【コーラルグロゥWB=7000K EOS】

【コーラルグロゥAWB Nikon】

【コーラルグロゥWB=5200K Nikon】

AWBはオートホワイトバランスの略だが、自動設定の上限が10000
程度なのでブルー系メタハラには合わせられないようだ。
このような高色温度撮影は通常のデジカメでは想定されていないと思う(海中撮影ならあり得るか?)ので、EOS KissDIGITAL
Nikon COOLPIX950でそれぞれ撮影した。
AWBの他、EOSはホワイトバランスを7000Kで、COOLPIXは5200
で固定し撮影したものを加えている。
被写体はガリレオ温度計を寝かせたもの。
これは4種類の色(左から青、赤、橙、緑、青、赤、橙)の液体の入ったガラス球が入っている。
Nikonの場合は木製水槽台まで青く写ってしまっている。
コーラルグロゥとアストロビーム、点灯し始めの挙動に差がある。
アストロビームは白っぽく点灯してから徐々に青さが増す感じ。
コーラルグロゥは逆に青っぽく点灯して、時間が経つにつれて白っぽくなってくる。
スーパークールも最初青く、徐々に白く明るくなる。


色合いの次は明るさの測定を行う。
明るさは照度計で測定するが、照度計は標準比視感度に近似するような特性になっている。
(簡易型など標準比視感度に関係ない、フラットな特性に近い物もあるようだ)

標準比視感度とは人間の目の感度で、緑色付近が最も感度が良く(明るく見える)赤と青は暗く見えるという訳だ。
ブルーメタハラの照度が低いというのはこの為もある。
全光束をmW表示で表せば、意外に強い出力がでているのかも知れない。
lm(ルーメン)は、その発光体が発している光の全量を表したもので、1Luxとは1m2の面積に1cd(カンデラ)の光が照射されている時の照度を表す。
従って狭角照明灯具のような、狭い範囲に光束を集めるような物の方がLux値は大きくなる。
1cd=4πlmである。
1cd=π/170Wである。
※ただし波長が555nmの場合。
1lm=1/683Wである。
※ただし波長が555nmの場合。
可視光線ではない紫外線(UltraViolet)は照度計の感度範囲外なので、一般的にはmW/cm2とかW/m2で表す。
(10W/m2 = 100mW/cm2) 今回はUVメータも入手したので、可視光領域の照度と共に紫外線量の測定も行う事にする。
UVメータはタニタ製の簡易型(定価\5,000)で、ヤフオクで\500程度(笑)、これでもUVAとUVBが測定出来る。
取説によれば、精度は±10%が確保されているようだ。
既に製造中止なので、見つけたら「買い」である。
バルブの交換時期もこれで計れば分かってくる。
なおOEM品と思われるものは\12,500で入手可能らしい。

測定の条件は以下の通り。
250Wバルブはアストロビームライトに取り付け、灯具ガラス面から約20cmの位置、ランプの真下あたりの最大照度の部分 で測定する。
スーパークール115は球のガラス面から約20cmの位置の最大照度の部分で測定する。
70WバルブはFTWサンライトH70に取り付け、ガラス面から約20cmの位置、最大照度の部分で測定する。
光束を測るのであれば灯具や灯具までの距離は関係ないが、光束なんてそう簡単に測れるものではない。
照度の場合は距離の二乗に反比例(面積で広がる)なので、測定位置などを規定する必要がある。
余談だが、ランプと灯具の効率を測定する場合、灯具から出る光全ての積分値を求めなければいけない。
ま、こういった用途の測定器もあるのだが、十分広い面積を持ち一部分だけ光を当てても電圧を発生する(一部分が影になっても良いタイプ。
最近多い)ようなダイオード入りの太陽電池板に、灯具からの光を当てて照度を判断するという事は出来そうである。
同じバルブでこれを行えば、灯具やそれの反射板の性能を比較する事が出来る。
照度と紫外線量の測定結果を以下に示す。
太陽光以外はランプ(或いは灯具)と測定器間の距離は20cmである。
バルブ 照度(Lux) UVA(W/m2) UVB(W/m2) 備考
アストロビーム
250W
30.0K  ?
?
0.0 新品
コーラルグロゥ
250W
45.7K 10 0.0 新品
コーラルグロゥ
250W
44.8K  ?
?
0.0 約5,500時間使用
スーパークール
マリンブルー150W
41.16K 30 0.0 新品
スーパークール
マリンブルー150W
34.30K 20 0.0 約5,000時間使用
TFW リーフ70W 20.65K  ※6 ※0.0 新品
HIT10000K 70W 19.60K ※15 ※0.2 約5,000時間使用
直射日光 109.4K 55 0.5 4月下旬の快晴時
曇天 11.3K  ?
?
0.0 4月下旬の曇天時
ブラックライト   0.0 15W蛍光灯型
※保護ガラスを外した場合の値。
 ガラスを付けるとUVAは2割減に、UVBは0になる。
 TFWのガラスは通常の軟質ガラスである。
 紫外線カットガラスでなくてもUVA減衰量は20%程になり、UVBはほぼ遮断される。
 これはアストロビームライトの保護ガラスでも、スーパークール115の保護ガラスでもほぼ同様の特性だった。
 なお自動車のガラスは紫外線UVAを殆ど遮断してくれる。
 直射日光UVA値52W/m2の時に、車両内でこれを測定すると表示値はゼロだった。
 保護ガラスによる可視光減少率は2%程度だった。
紫外線の水中透過率はどの位なのだろうか。
360nm辺りの波長で95%(おそらく可視光に比較して)という話しもあるのだが定かではない。
パイプにでも水を入れて測ってみれば良いではないかと言われればそれまでなのだが、屈折や反射もあるから精度的に意味あるデータになるかどうか。
実際に水槽内に紫外線計を(袋詰めにでもして)入れてみて、そこでの紫外線量を量ってみるのが現実的かも知れない。
照度測定を行ってみて気が付いたのだが、アストロビームとコーラルグロゥでは同じ灯具であっても最大照度点が違うと言うこと。
そしてアストロビームライトは直下が最も明るい訳ではなく、むしろ灯具のエッジに近い所の方が明るかった。
これは直接光に反射光が加わるためだと思われる。
コーラルグロゥにしても、スーパークールにしても、経年変化を見ると紫外線量の減少ほど可視光は減少していない。
なお、経年変化を見る場合には、本来同じ球でテストを行うべきだと思う。
製品間のバラツキなどは無視出来ないはずなので。
これはまた追って検証しよう。


250W球の測定に使用した灯具は広角照明のアストロビームライトだと言うことは上にも書いたとおりだが、照度という点で見ればビームを絞った方が当然ながら数値は大きくなる。
全光束と違い照度はその場所の明るさを表しているので、例えばレンズを使用して光を一点に集中させれば照度は非常に大きく測定される。
同じように高々3mW出力のレーザポインタの光だって、細いビームに助けられて5,000Lux以上の測定値が得られる。
メタハラの照度を測定している他のサイトを探してみると、ここここが見つかった。
灯具はMTらしいので、アストロビームライトよりは狭角だがMEよりは広角という感じだろうか。
測定値に関しては(比較出来るデータもあるので)各自ご覧頂きたい。
灯具に関係のないスーパークールの照度測定値のみ比較してみる(たまたま全サイト共に20cmの距離でのデータがあった)と、F&Fが39KLux,こちらが23KLux(共に散光)こちらは110KLu
なのでおそらく集光だろうと思われこちらの集光データの85KLu
に近い。
MarineCreaturesさんでの測定値はF&Fでのそれより少し低めのようだが、F&Fでは最高照度点を探しまくった結果を載せているので、例えばランプ直下中央付近というような測り方をするとMarineCreaturesさんでの計測値により近づいた値であるところの31KLUXが計測された。
スーパークールにしても中央が最も明るく測定される訳ではなく、おそらくダイクロイックミラーや色温度の関係だと思うが、中央より若干外側の方が測定値が高かったのである。
MarineCreaturesさんにはMT+コーラルグロゥ250Wのデータもあり、測定値は40cmの距離で73KLuxとなっている。
daradara.comさんでの、MT+コーラルグロゥ250Wで40cmの距離での照度データは236KLuxと高い。
ちなみにMarineCreaturesさんの同灯具の20cmに於ける照度測定値が173KLuxだ。
もしかするとMTは光のムラがアストロビームライトなどよりもが多く、測定ポイントによる差異が大きいのかも知れない。


メタハラ比較、如何だっただろうか。
アストロビームとコーラルグロゥ、PL14000辺りは良く比較される球なのだが、価格的にはコーラルグロゥが一番安く(1.6万円前後か?)アストロビームが最も高価(3万円近い)だ。
結局私はコーラルグロゥを使用している訳だが、青系のミドリイシの色揚げ効果はアストロビームの方が上ではないかと思っている。
この実際の飼育にあたっての効果というのは非常に判断が難しい。
いくつかのミドリイシを分割して両方のライト下に置き、長い時間をかけて観察でもすれば良いのだろうが。
スーパークール115は余り悪い評判を聞かないが、ブルー系メタハラと違って広域に渡るスペクトル(ブルー系は往々にして特定波長のパワーのみが突出している)がサンゴ育成に良い結果を生み出しているのかも知れない。
HIT10000K球よりも色温度が高く、紫外線量も多めだ。
両口金タイプ(250WはFC2,150WタイプはRX7s)のバルブは国産品に多く、海外では余り見かけない。
Giesemann MEGACHROME marine はドイツ製の両口金タイプだろうか。
12,500Kの250Wで14,000lmですよと宣伝している。
価格は日本円換算で1万円程度だと思う。
アルカディアの球は日本でも売られているが、14000Kモノは国内では売られていないのかな。
紫外線放出量の多いab10000Kは製造中止らしいので、選択肢も狭まってきた感があるが、逆に紫外線カット無しのアストロビーム球なども登場してきてはいる。


広角照明、狭角照明どちらが良いのかという話は良く聞くのだが、私は広角照明灯具を使用している。
上にも書いたように照度は単位面積あたりの光束だから、狭い範囲を集中的に照らした方が、その部分は明るくなる。
レンズや反射鏡で集光するようなものだ。
所が水槽内で一点に光を集中させようと重うと、どうしても影が出来やすくなってしまう。
影とまでは行かなくても、ミドリイシの裏側などには光が当たらなくなる。
このコントラストが良いのだよと言う向きもあるのは事実だが、影になった部分は白化しやすくなる。

また集光型灯具に250W或いは400Wのバルブとなると、光の当たる部分の照度は相当大きくなり、浅場のミドリイシでさえも焼けてしまう事があるので注意が必要だ。
逆に散光型灯具の場合は水槽と灯具の距離が離れていたりすると、浅場のミドリイシに必要な照度が得られないというケースもある。