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エネルギ密度より安全性(2)(12/13)
◆ 全固体電池の理論上のメリットはいくつもあるのだが、そこに到達するには時間がかかりそうだ。安全性や高速充放電の可能性、エネルギ密度の更なる上昇はEVやその他バッテリー搭載機器にメリットをもたらす。ただし開発には多くの時間とコストが必要になり、大容量バッテリーの実用化はまだ先だ。

◆ トヨタは2027年頃には全固体電池を搭載したEVを出すと言っている。トヨタの言う事も余りアテには出来ないので、トヨタの言う2027年が一体いつ頃やってくるのかは分からない。実際2028年以降に延期するとか?で、九州に建設する予定のバッテリー工場も2度目の延期宣言だそうだ。

◆ 中国でも固体電池の研究はされていて、2024年頃には実用的なものが出来てはいる。ただしEVに搭載出来るような性能には至っていないそうだ。中国のEV用バッテリーとしてはLFPに移行が進んでいて、2002年頃にはLi-ion系とシェアが逆転している。固体電池がシェアを取るためには、LFPよりも安く安全でなければならないと言われる。

◆ その価格の面で全固体電池は勝ち目がないとStoreDot CEOのDoron Myersdorf氏は語る。量産化技術の確立や材料の供給などを考えると、安定かつ安価になるにはこの先10年程度かかるのではないかと言う。小型電子機器用として使われる可能性はあるものの、EV用として考えると高価格なプレミアムカー用のバッテリーになるのではないかと。

◆ EVにとってのバッテリー容量は、ICEの燃費データに匹敵するセールスポイントだと言い、大容量バッテリー搭載車が安く販売されれば人々はそれに飛びつく。LFPの場合はNMCに比較して車重は重くなってしまうのだが、車重云々よりもバッテリー容量こそがカタログを飾るのが現状だ。

◆ 固体電池の場合はエネルギ密度が上がるので、車重を軽く出来る。車重が軽くなれば電費性能も良くはなるが、それで価格が2倍ですよと言われると魅力は半減するかも知れない。勿論固体電池が登場してみなければ何とも言えないのだが、一時期ほど開発ペースが上がらないのは価格の問題が大きいという事か。

◆ 固体電池にしろNMCにしろ充電時間の短縮に中国や欧米メーカは力を入れている。日本の場合は急速充電非対応のEVがあったりと、開発の遅れが目立つ。急速充電は充電設備にかかる負荷も大きくなる。トヨタの反対によって日本の充電インフラは遅れているわけだし、エネルギコストを考えると充電インフラを作っても儲からないと言われる。

◆ 高速充電を行う為にはメガワット級の充電設備が必要になり、数十台が同時に充電出来る設備を考えると現在の日本の送電設備では容量が不足する。しかもピーク電力が大きく閑散時間帯にはそれが使われないとなると、発電出力の可変が容易な発電設備が必要になる。

◆ それこそNAS電池のようなメガワットクラスの充電施設でもないと、EVの同時充電に耐えられない。そうなると発電電力をバッファにため込んで、それをEVのバッテリーに充電するという回りくどく低効率なシステムになってしまう。それこそ電力で水素を作り、その水素を燃料電池で燃やして電気を作るみたいな、それで何がお得なんですか?みたいな事だ。

◆ いずれEVの時代が来るのかも知れないが、EVにしても自動運転にしても現状で日本の技術が世界に太刀打ち出来るとは思えない。いったん後れを取ると、それを挽回するのには大きなエネルギがいる。

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