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エネルギ密度より安全性(1)(12/12)
◆ Li-ionバッテリーの登場によって、電子機器や電池動作の動力系機器の設計は大きく変わってきた。電動工具やEVなどもそうだが、従来はバッテリーで動作させる事が現実的ではなかったものが、商用電源利用機器よりもハイパワーを発揮するようになった。
◆ これはLEDと従来型の電球との関係にも言える事で、白熱電球では実現出来なかったような明るさ(密度)のものがLEDで実用化されている。電動工具も従来のNi-MHバッテリーを使ったものの数倍のパワーを発揮する訳だし、携帯機器やスマートフォンの動作時間延長や軽量化にも役立っている。
◆ Li-ionバッテリーなくして現代の電子・電気機器は成り立たないと言って良いほどなのだが、発火リスクがある。携帯機器でもEVでも、スマートフォンも発火する。一度燃え始めると正帰還的に火炎が広がるので消火が難しい。
◆ リチウム系バッテリーの商用化はカナダのメーカの技術をSONYが使って行ったのだが、この時にも発火の事故がありリチウム系バッテリーはすぐに姿を消した。その後金属リチウムからリチウムイオン系となり現在に至っているものの、潜在的に発火リスクはある。
◆ 安全性を取るかエネルギ密度を取るかの話でもないのだが、安全性のためならエネルギ密度は我慢する、と言うと聞こえは良いがコストが安いという事もあってLFPがEVにも使われ始めている。LFPも燃えるのだが、正帰還的な燃焼になりにくいので安全性が高いと言われる。
◆ もう一つはナトリウム系電池で、リチウムの代わりにナトリウムを使ったものだ。リチウム系に比較するとエネルギ密度は低いが、量産すれば価格が安く抑えられるという事で開発が進む。
◆ ナトリウム系というと日本ガイシのNAS電池があった。ナトリウム硫黄電池で、従来の鉛バッテリーに変わる大電力貯蔵用として販売されていた。エネルギ密度が鉛バッテリーの3倍程度になる事で、電力バッファとして使用された。ただし常温では動作しないので大規模な設備が必要になり、管理などの手間もかかる。ナトリウムも反応性が高いので、火災事故も起こしている。
◆ 日本ガイシがNAS電池を作り始めたのは1990年頃で、その後大容量化を行っている。2002年には商業化を行い、メガワットクラスの容量の設備を作った。安価な深夜電力を貯蔵して日中に使うなどしたわけだが、太陽光発電の実用化により必ずしも夜間の電力料金が安くはなくなってしまった事、電力貯蔵用としてリチウム系バッテリーの価格が急速に下がった事で事業は終了している。
◆ バッテリーは進化しないものの代表格みたいに言われていたのだが、リチウム系の登場によって大きく変わる事になった。トヨタは2017年に全固体電池を作ると発表し、2020年頃にはEVに搭載するとした。しかしその後全固体電池は出来たがEV用としては問題が残されているので、ハイブリッド車用として使うよと言い換えた。
◆ 2023年には出光興産と一緒に量産するよと言うも、結局の所は投資家対策のアナウンスみたいなものだった。同時期にソフトバンクは重量エネルギ密度が300Wh/kgの全固体電池を試作したと発表した。数回の充放電に耐える性能だった。当時トヨタはハイブリッド車こそ正義だ、EVなど普及しない、充電設備に投資すべきではないと声を張り上げ、これが日本のEV開発を停滞させた。
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