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摩擦と摩耗は違うのか?(3/19)
◆ エンジンオイルとチムケンテストの話は何度か書いている。エンジンにおける潤滑とは金属間に油膜があり金属同士が直接接触していない流体潤滑が主になっている。油膜によって金属が保護されている状態なので、金属の摩耗が殆ど起きない。

◆ チムケンテストの場合はテストピースの摩耗状態を見ているので、これは流体潤滑ではない。油膜はあるのだが、油膜を破壊するほど強い圧力で金属同士が接触していて、境界潤滑状態になっている。この場合はオイルによって摩擦が低減されるが、摩耗は進行する。

◆ ギアなども強い力で押しつけられているわけだが、そもそも摩擦は少ない。極圧添加剤などはこうした金属同士の接触と油膜によるものの中間的な混合潤滑と呼ばれる状態で威力を発揮する。ギア同士の噛み合い、例えばトランスミッションでオイルが汚れて金属粉が混じるのは、混合潤滑時に摩耗が起きるからでもある。

◆ 摩擦を減少させるためには色々な方法があるのだが、金属表面を化学的に変化させてしまうものもある。硫黄系の添加剤は二硫化鉄を生成して摩擦を軽減する。鉄の表面自体を変質させる事で潤滑性能を上げようとするわけだ。硫黄系添加剤はPMを増加させる要因となるため、現在のオイルには使われていない。

◆ 塩素系(現在は環境問題で使用出来ない)添加剤は塩化鉄化による摩擦低減効果が大きく、エンジンオイルの添加成分として広く使われていた。塩化鉄は融点が低いのだが、通常のエンジンの内部温度より高い事、エンジンが焼き付くような高温になると塩化鉄部分が溶解して摩擦を軽減する事で、極限状態での焼き付きが防げる(その代わり塩化鉄が溶けるのでクリアランスは徐々に広がる)。

◆ 金属を変化させずに摩擦を軽減するものとして、モリブデンやタングステンがある。これらは極圧添加剤としてギアオイルなどでよく使われている。エンジンオイル用の添加剤としても売られているが、最近ではDLC問題もあるのでモリブデン系添加剤の使用を禁じているメーカもある。タングステン系は価格が高いので、現状では余り使われていない。

◆ 化学的な摩擦低減剤としてエステルなどがあるが、エステルにしても剪断性や吸湿性などの使いにくい面がある。固体潤滑剤のモリブデンやタングステンは、ギアオイルには使われるがエンジンオイルには余り使われない。他には窒化ホウ素とかグラフェンみたいなものも使われる。

◆ 電動工具にはモリブデン系のオイルやグリスが使われる。電動工具用のオイルをエンジンオイルに混ぜると極圧性能が上がるというのはこのためなのだが、そもそも用途が異なるのでベストとは言えない。専用のモリブデン添加剤より価格は安いのだが、粒径などが異なる。

◆ 油膜の厚みがどのくらいなのかは、オイルクリアランスがどのくらいなのかにもよる。常にオイルが供給されている部分であるメタルベアリングと、そうではないピストンリングとシリンダ間では油膜の厚さも異なる。メタルクリアランスは20μm〜60μm程度、いわゆるオイルによる油膜は5μm〜30μm位ではないかと思うが、これはオイル粘度によって大きく異なる。機械工具用のモリブデンオイルのモリブデン粒径は数μmとの事なので、油膜厚よりも大きな粒径になる場合がある。

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