オイル上がりのその後

10万km以上走ったダイハツタントがオイル上がりで、1,000kmでオイル1リットル位を食っているという知人の話を1ヶ月半ほど前に書いた。 廃車にしてしまおうかと言っていたので、安物エンジンオイル(固めに限る)に灯油を混ぜてフラッシングしてみたらどうかと教えた。 車は通勤に使っているようで、毎日80km位走るようだ。
じゃあ毎日オイル+灯油を交換(出来ればオイルフィルタも)して、何回かそれを試したらどうかと。
ピストンリングの固着が原因だとしたら、それで改善されるかも知れない。

オイルは20W-40の20リットル缶を4,980円で、上抜き手動ポンプ1,980円を買ってきたと言っていた。
さすがに毎日はオイル交換出来ない(やる気が起きない)事もあったそうだが、オイル交換数回目には廃オイルがあまり汚れなくなったそうだ。 それでも灯油混合オイルは続け、3週間位すると白煙も減った、ミラーで見ても白煙は出ていないようだという。
なので、灯油混合は中止して普通に乗って良いんじゃないかなと話をした。
今後は安物オイルで良いから、20W-40を使った方が良いよとも。

灯油入りエンジンオイルを使ってエンジンは傷んだのかと言うから、傷んでいたエンジンが直ったって事でしょと言ったら笑っていた。 しばらくは5,000kmごと(指定は1万kmかな?)にオイル交換した方が良いだろう。
タントはどのくらい乗れるかという話になり、ジムニーは20万km以上走ったよと。
ただ今度はオイル下がりが起きると思うから、そうしたらステムシールは交換しなければいけない。
その時に車を捨てるかどうか考えれば良いが、灯油混合でゴムが膨潤してくれれば寿命が延びたかも。

ステムシール交換は5万円〜10万円かかると思う。
部品代は安いものだが、FFのワンボックスとなるとフロント周りをバラバラにしないとヘッドが外せない。
カムカバーだけを外して作業出来るかどうかは、工場次第である。

自分で直すのであればヘッドを剥がして、ステムシール交換とピストンリングを交換する。
こうすれば又10万km位は安心して乗れるはずだ。
ただ修理工場に依頼するとなると、新たな車を買った方が安いとなってしまうかも知れない。

私は使った事がなくて、ジムニーで実験してみれば良かったかなと思うものに、ワコーズのエンジンパワーシールドという添加剤がある。 これは固くなったシール類を復活(膨潤)させるものだ。
添加剤自体はダイラタンシー特性だそうで、高速摺動部に対して粘度が上がる事で気密性を確保する。
ただこれを今の段階で予防的に入れるのが良いのかどうか。
即効性のあるものなので、オイル下がりが起きてからでも良いのではないだろうか。

このエンジンパワーシールドは、古くなったOリング(代替品が入手出来ないようなもの)に塗って復活させるとか、ウエザーストリップに塗って雨漏りを防ぐなど、古い車にはエンジン以外にも有効だ。 ゴム製のシールが原因のオイル漏れも直せる可能性がある。

タントは年式によるのかも知れないが、オイル消費対策ピストンとか、ステムシールの対策品とか、オイル消費に関する問題がいくつか起きている。 カタログ燃費最優先主義が生んだ悲劇、アイドリングストップの次はオイル消費問題か。
過度に柔らかいオイルを使った事にも原因がある。

摺動抵抗を減らすのにピストンリングを薄くするとか張力を弱めるとかする。
するとシール性が犠牲になり、柔らかいオイルが燃焼室内に入りやすくなる。
吹き抜けたガスはピストンリングの隙間にカーボンを溜め、水分がエンジンオイルを加水分解していく。
こうした事が重なり、性能劣化が顕著になる。

自動車各社は0W-8を一部車両で使っている。
エンジン温度が上がりにくい&始動と停止を繰り返すハイブリッド車では、オイルの粘度が燃費に影響する。
トヨタによれば0W-16に対して0W-8を使うと、モード燃費が0.7%良くなるという。
一方でオイル屋は0W-16を0W-8にすると数パーセント摩耗が早くなると言っている。

0.7%の燃費の為に寿命を犠牲にするのかとなるが、自動車メーカのカタログに寿命は書かれていない。
例えば0W-8と5W-30で比較すると、同一エンジンに於ける燃費の差は5%を超えると言われる。
例えばアクアのカタログ燃費は約34km/lなので、固いオイルにすると2km/lもカタログ数値が悪化してしまう。

低粘度オイルによるカタログ燃費の向上策は、日本のメーカの研究によるものだそうだ。
低粘度オイルは油膜が薄いので、高回転・高負荷運転が出来ない。
しかしハイブリッド車であればそうした部分の多くをモータがカバーすること、油温が上がりにくい事から低粘度オイルが使える。

一部自動車用品店では、高粘度のオイルを入れると燃費が大幅に悪化するとして、0W-8/16を推奨している。
アイドリングストップ付き車では、高粘度オイルを入れるとセルモータが壊れるみたいな事も言われるそうだ。
確かにオートバックスなどに行くと、オイル売り場のメインは低粘度オイルだ。

0W-8のオイル缶には、外気温15℃まで適用の文字が…
しかもこのオイル、PCVバルブが新品に変身するというスペシャルな魔法付き(写真)である。

トヨタやホンダの一部ターボ車は0W-16や0W-20が指定だそうだ。
スズキはNAでこそ0W-16/0W-20が使えるが、過給器付きは5W-30が指定されている。
ミニは5W-40(寒い時期・地方なら5W-30)という、現在の日本車のレベルからすれば固いオイルが指定されている。

低粘度オイルを最初に使い始めたのがトヨタだが、それから約7年が経過している。
そして低粘度オイルによる問題、まあそればかりとは言えないが、オイルとフリクション低減による問題とでも言えば良いのかな、そうした車が増えてきた。

現状で出来る事は極端な低粘度オイルを使わない事と、エンジン温度の変動が激しい車はエンジンオイル交換インターバルを短めにする位かな。 ミニはヒートエクスチェンジャで油温の安定化を行っている。
非アイドリングストップ・非ハイブリッド車の油温は80℃〜120℃位に管理される。
ハイブリッド車だと40℃〜60℃程度と油温が低く、オイルに混入する水分やガソリン分が蒸発しにくい。

ブローバイガスの多くは二酸化炭素と水分なので、これがエンジンオイルのエステルを急速に加水分解する。
一般車であれば水が液体にならないままブローバイガスとして排出されるが、エンジン温度が低いハイブリッド車やアイドリングストップ機能付き車は、結露によってオイル中の水分が増加する。 するとエステルはカルボン酸とアルコールに分解され、より水を多く含むことになり乳化する。
湿度が高く気温の低い時期だと数ヶ月で潤滑性能がかなり低下すると言われる。
オイル管理センサ(誘電率センサ)の付いている車だと劣化が分かるのだが、そうでない場合は早めのオイル交換しか方法がない。

鉱物油の時代には余り問題にならなかったが、低粘度オイルの多くはエステルベースだ。
低粘度化学合成オイルでも一部のメーカはPAO(グループ4)のオイルを販売しているので、そうしたものを選ぶのも一つの方法かも知れない。

WTLCモードテスト時の油温
アイドリングストップ機能付き車の油温

コメント

  1. 読者 より:

    似たような話でプジョーの1.2ピュアテックエンジン、
    欧州エンジンオブザイヤーにも輝いたエンジンですが
    湿式タイミングベルト、つまりエンジンオイル漬けのタイミングベルトで
    10年19万キロだったかな、新型ベルトで高耐久性を謳ってました。

    当初はNAポート噴射だったので負荷が低く問題もなかったんだと思いますが、
    直噴ターボ付き仕様になってトラブル多発リコールも発生。
    現在では5年9万キロで交換推奨になったw
    現地の最新モデルではタイミングベルトは廃止しタイミングチェーンに
    変更した模様。

    今の日本ではプジョーやシトロエンだと車に関心低い女性が
    オシャレだからと乗る場合があり、
    そうなるとオイル管理がいい加減でこのエンジンが不調の個体があるみたい。

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