ダイソンのバッテリーは復活するか?

家電製品

ダイソンのハンディー掃除機のバッテリーは寿命が短い。
ダイソンでは1.5年から2年で交換した方が良いとも言っている。
実際に使ってみても2年くらいすると、突然モータが停止するなどが増えてくる。

国産ハンディークリーナーの多くはバッテリーが5年~8年もつとされているが、ダイソンは短命である。
DC68の消費電流を測ると、通常モードでは5.7Aと上品な値を示したがMAXモードでは19Aを超える電流が流れた。
DC74は同5.8Aと19.7Aだった。
DC35は5Aと12Aとなった。

ダイソン掃除機の場合はバッテリー電圧が下がるとモーターパワーが低下するわけではなく、突然止まる。
モーターパワーが低下すると吸入空気量が減少し、それは渦を作るパワーが減る事であり、ゴミと空気の分離が出来なくなる。

通常でもゴミ分離が出来ずにフィルタに頼る部分のあるダイソンの掃除機なので、吸気量が減ると酷いことになってしまう。
そこでバッテリー電圧の減少でモーターパワーを比例的に小さくするのではなく、停止するような制御になっていると考えられる。

徐々に劣化するバッテリーだが、やがて充電が出来なくなる。
完全に壊れたわけだ。
海外の掲示板などを見ると、バッテリーセルが使えるのにエラー表示になること、一度エラーになるとそれを回復する手段が見つからないこと、これによって未だ使える大量のバッテリーがゴミとして捨てられていることが書かれていた。

バッテリーケースを開けてセルを取り出し、懐中電灯用などとして使えば十分に機能を発揮する。

もしかしてダイソンのバッテリーユニットのエラー表示は、バッテリーそのものの寿命を見ているのではなく、充放電回数か何かで判断しているのだろうか。
そこで、そのバッテリーを開けてみることにする。

DC35とDC58以降ではバッテリーが違う。
DC35はネジを外すことなく本体からバッテリーを外して交換が可能だが、DC58以降はバッテリー交換のためにネジを2本外す必要がある。

バッテリー自体も当然異なっている。
DC35のバッテリーケースはネジ止めなどで固定されているところがないが、DC58以降のものはネジがあるので、一応分解が可能(接着はされていない)に見える。
分解は可能なのだが、分解は考慮されていないので無理してこじ開ける感じになる。

バッテリーを分解する為に外すネジは2本、まずはその1本目を外す。
ネジを外したからと言ってパカッと取れるわけではなく、爪で嵌合している。
ここをコジりながら外していく。
ネジで止められていた辺りからコジって行くのが良いだろう。

筐体は柔らかいので割れることはないが、嵌合は強力だ。
何カ所かの爪が外れれば後は楽だが、ここまでが大変。

底面部も中々外れない。
薄い金属プレートなどを入れながら、押しながら外す。

前方と後方に分離が出来ると、マイクロスイッチを押す銀色のプラスチック製パーツとそれを抑えているスプリングが外せる。
このスイッチは、本体のトリガスイッチからリンクで押すようになっているので、いわば電源スイッチだ。
スイッチを押すとLEDが点灯或いは点滅する。
赤色の点滅→バッテリー不良
黄色の点灯→温度異常かバッテリーエラー
黄色の点滅→温度異常か充電不足
緑色の点灯→低電流エラー
青色の点滅→充電不足
青色の点灯→正常

爪による嵌合を外すとこの程度まで開ける事が出来る。
この先は2本目のネジを外す必要がある。

このネジを外さないと電極部が外れない。
なお電圧の残っているバッテリーをショートさせると危険なので、金属製工具を使う場合は十分注意する必要がある。

端子部が外れれば、バッテリーを引っ張り出すことが出来る。

基板にはコーティング剤が盛られている。

バッテリーは18650で、セルバランスを取っているかのような配線になっている。
実際の電圧はどうなっているのか?
各セルの電圧をチェックしてみた。

6本が直列になっているのだが、端の2本の電圧がおかしい。
片方は約1V、もう片方は0.76Vしかない。
他の4本は4.1Vと正常な電圧だった。

セルバランスは取っていると思うのだが、セル電圧が一定以下になると制御自体をやめてしまうのだろうか?
或いは18650が不良になったのではなく、バッテリマネジメントデバイスが壊れたのか。

このバランスの崩れたバッテリーを個別に充電してみることにする。
と言ってもセルを外したわけではなく、このセルのみに電圧を加えただけだ。
安定化電源の電圧を4.1Vに、電流を1Aにして充電することにした。

Li-ionバッテリーは定電圧・定電流充電が出来るので楽だ。
Ni-MHバッテリーは満充電検出が難しいので、定電圧電源での充電はお勧めしない。
なおLi-ionバッテリーは端子電圧が4.2Vを超えられない(破壊モードに突き進む)ので充電電圧には注意する必要がある。
正確な電圧計、少なくとも10mV単位まで精度良く測れるものがない場合は、まずはそれを入手するところから始めなければならない。

充電を開始後1時間程で電圧は4Vを超えた。
1Aの定電流に設定してあるので0.5C程度の充電電流となり、2Ahのバッテリーであれば充電電流が減少し始めるまでに100分程度かかるはずだ。
それが早いという事は、実容量が減少していると見て良いだろう。

充電が完了したのでスイッチを押してLEDの状態を見てみる。
すると赤の点滅であり、バッテリーエラーだ。
赤が30回点滅した後に緑が1回だけ点灯する。
バッテリー使用不能は赤が32回点滅だったような気がする。

制御ロジックにEEP-ROM的なものがあって、一度エラーが検出されると二度と元に戻らないとか?
揮発性メモリなら電源を切ればリセットされると思うわけで、18650セルからの7本の端子全てを外し、そして再度それを付けてみた。

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黄色い線は温度センサである。
温度センサは基板に半田付けされていて、実装時にそれが18650セルに接着されるようになっている。
ここに温度センサがあると分かっていれば良かったのだが、分からなかったので基板を剥がす時に温度センサの足が切断される形となった。
仕方がないので組み立て時には線で接続したというわけである。

こうして再度組み立てたのだが、残念ながら赤色LEDの点滅のままだった。
少なくとも18650セルの電圧は約4.1Vで6本とも揃えることが出来た。
しかし再びこのバッテリーでDC74を駆動することは出来なかった。

ダイソンタイマーなのか?
バッテリーの状態ではなく、使用時間で見ているのか?
セル交換でも生き返らないと言われている理由は何なのか?

純正のBMS基板には4つの端子がある。
海外ではここに電圧を加えたりして挙動を見ているが、これはプログラム書き込み用の端子やシリアル通信用と見た方が合理的だ。

基板の配線の行き先はPIC16F1874となっている。
ただQFNパッケージなので綺麗に剥がすことが出来ず、ピン番号までの解析は出来ていない。

非同期シリアルか何かで、何かの文字をおくったらプロンプトが返ってきたりしたら面白いんだけど。

普通に検索しても、ヘッポコGoogleはおかしな結果しか返さない。
検索語を除外して何をしようというのか。
2番目の検索結果など、マッチしているのはダイソンだけだ。

純正バッテリーが使えないので互換品を買うことにした。
この手の商品は保証が大切であると、数々の中華製品を買った経験から感じている。
で、買ってみたのが↓である。

>

購入したばかりなので当たり前だが正常に使えている。
寿命や経年変化に関してはBlogAの方で報告したいと思う。

さて、純正のバッテリーだが、せっかくセルが使えるのに捨ててしまうのはもったいない。
そこで中華方面を検索してみると、BMS(Battery Management System)基板が売られているではないか。
価格は千円以下のものから2千円くらいまで色々ある。
少なくともダイソン純正品のような複雑な回路はなく、単なるセルバランサーとチャージコントローラだけだろう。

当然買うでしょう。
BMS基板交換の記事は、これが入手でき次第書く予定である。

おまけ
なな何と!98Ahのバッテリーである。
容量2.1kWhというすさまじさ。
当然理論限界を超越した四次元パワーである。

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コメント

  1. ビレル より:

    参考になりました。同じ様に分解した所、端のが液漏れして3.7vでした。
    入れ替えましたが、赤点滅は残っており、何らかのマイコンのリセットが必要な様です。
    結局再生は断念。リセット法が有るのか知りたいですね

  2. FnF より:

    非分解構造だし、安全上一度使えなくなったバッテリーはダメという設計は分からなくもないですが、純正バッテリーの値段を考えるとセル交換したくなりますよね。

  3. ひで より:

    はじめまして。

    バッテリーのROMにエラー履歴が書き込まれ、一度エラーになると使用不能になる仕様らしいです。
    機械を接続して書き換えるとリセットできるようです。
    https://www.youtube.com/watch?v=3h2KMvbenrk&t=785s

  4. FnF より:

    情報ありがとうございます。
    次回純正バッテリーが駄目になったら実験してみますかね。

  5. ひまわり より:

    はじめまして。ダイソンのバッテリーはそういう仕組みになっていたんですね。とても参考になりました。
    リセット不可能はしょうがないとして、
    エラーが出る前に、例えば3年とか4年経ったのを目安に、
    とか
    充電して使える時間が短くなったとかをトリガーにセル交換するってのはどうなんでしょうね。

    • F&F より:

      使用時間ではなく、セルの異常を見てエラーで使えなくするのであれば、異常が起きる前にセルを交換してしまえば延命出来ますね。
      バッテリーが弱ってくると、MAX(吸引力:強)にするとモータが断続的に動く状態になりますので、このあたりを目安に交換すると良いのかも知れません。

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