猫砂は洗って再使用が出来るのか?

珊瑚・魚・猫

ウチでは猫トイレとして、いわゆるシステムトイレを使っている。
これは砂に固めて糞尿を取るのではなく、尿は猫砂を通して下方に敷いたペットシートに吸収させるものだ。
糞は吸湿性のある猫砂に水分を奪われて乾燥し固まる。

システムトイレのメリットとして猫砂が比較的長期使用できること、鉱物系の猫砂にありがちな砂の粉塵が少ない事がある。

ウチでは5匹の猫に対して大型の猫トイレ(ユニチャーム 快適ワイド)を3台使っている。
この中に猫砂2袋を入れ1ヶ月程度で交換するので、総量としては1ヶ月ごとに猫砂6袋になる。
猫砂自体は色々試したが、消臭作用や猫の好みからするとデオトイレ消臭サンドが良いのかなと思っている。
ただし軽い粒なので猫トイレから外に出てしまう可能性が高く、デオトイレ・抗菌消臭サンドなどの重いものを混ぜて使っている。

デオトイレ消臭サンドはセラミックボールみたいな感じなのだが、主要成分はシリカゲルだそうだ。
いわゆる半透明のシリカゲルも使った事があるのだが、水分(尿)によってシリカゲルが割れてしまい、メッシュの下に落ちてしまう事があった。
そのため現在はデオトイレ消臭サンドにしている。
デオトイレ消臭サンドも割れるものがあるが、粉々にはならずに2つに割れるものが多い。

システムトイレ用の猫砂は、基本的には尿を吸収しない。
しかし防臭性能を確保するために、シリカゲルやセラミックあるいはゼオライトなどの多孔質の吸着剤を使う。
シリカゲルは水分を吸収するが、飽和点に達すれば吸収しなくなる。
しかし猫トイレの中でそれが乾けばまた尿を多少吸収する。
これによって猫砂は徐々にアンモニア臭がするようになり、これが交換時期だ。

ではシリカゲルからアンモニアを取り去ればまた使えるのか?
今回は猫砂再生実験をしてみる。

シリカゲル系の猫砂は「洗って使える」と明記されているものもある。
以前は再利用などは推奨されていなかったのに、最近では洗える事が売り文句にもなっている。
ただし鉱物系のものは綺麗には洗えない。
これは固まらない砂(つまり、単なる砂)なので洗って使えるが、臭いを取り去る事は難しい。

ゼオライト系の猫砂は再生方法が異なり、次亜塩素酸ナトリウムと水酸化ナトリウムの混合溶液中で再生を行う。
また塩(NaCl)でも再生が出来るはずで、ゼオライト系猫砂を飽和塩水に浸けておくとゼオライトが吸着したアンモニアを塩水に放出するはずだ。

ゼロライトはイオン交換を行うので、陽イオン交換優先順位からするとアンモニアを吸着する時に、ゼオライトはナトリウムを放出する。
再生するには高濃度の塩化ナトリウム中に浸ければ良いというわけだ。

まずは予備実験をする

十分に臭くなった猫砂を用意する。
普段なら交換してしまう時期を延長し、臭いがきつくなるのを待った。
システムトイレ+シリカゲル系猫砂の場合は臭いが外に漏れにくいのだが、この実験のために部屋が臭くなるくらいまで頑張った。
一部のネコは臭いが嫌なのか、このトイレに入らなくなった。

尿中の成分としてのアンモニアは体内でいったん分解されるのだが、排泄された後にウレアーゼ産生菌などの微生物などにより再びアンモニア化が進む。
猫の尿の独特の臭いはコーキシンというタンパク質で、これが触媒となってフェリニンというアミノ酸が生成される。
(コーキシンは2003年にネコの尿中より発見した新規タンパク質)

使用済み猫砂を洗面器に移し、水洗した。
猫砂の中に茶色っぽいものが混じっているが、これは飛び散り防止の為に混合した木製猫砂(ニャンとも清潔トイレ)である。
これは水洗時に可能な限り取り除いた。
この重い砂の原料は木質で、水を含むと膨らんで柔らかくなるが水に溶ける事はなかった。

水洗する事により糞の残りなど比重の軽いものが浮き、そのまま除去する事が出来る。
ある程度洗浄が進むと、それ以上汚れが落ちなくなる。

アンモニアを除去するのに使うものはサンポール次亜塩素酸ナトリウムだ。
アンモニアの分解には塩素(塩酸)注入法などがあり、まずはサンポールで洗浄する。

サンポールを200mlくらい入れると、反応して泡が出る。
塩酸とアンモニアで塩化アンモニウムが出来、これは水に溶ける。

サンポールの洗浄成分により、猫砂表面の汚れも落ちる。
水洗いでは落ちなかった成分が落ちるので、洗浄水が濁る。

長時間浸けておいた方が良いとは思うのだが、実験では10分程度の放置とした。
シリカゲルが水を含んでパチパチと音がして割れる。
古いものは割れにくいが、新しいものははじけ飛ぶようにして割れていく。

その後流水で洗浄する。
これも暫く水に浸けておけば良いのだろうが、今回は洗浄のみで次工程に行く。

次にサンポールの中和と消臭をかねて、次亜塩素酸ナトリウムを入れる。
キッチンブリーチ業務用なら5kgで千円以下とお得だ。

キッチンハイターと洗濯用ハイターでの差は感じなかったが、ハイター臭の残留という点でキッチンハイターの方が少なかった感じがする。
なお次亜塩素酸濃度はどちらも同じで、キッチンハイターには洗浄成分が含まれているだけの違いだそうだ。

次亜塩素酸ナトリウムにも10分ほど浸けておいた。
アルカリ性なので手に付くとヌルヌルする(皮膚が溶ける)が、サンポールの残留酸によって洗浄液のアルカリ度が下がり、ヌルヌルを感じなくなった。

洗浄後に水を切り、天日で干した。
乾いた部分が白い玉で、湿っているのが黄土色の玉だ。

湿っている状態では多少アンモニアの臭いがするが、さほど強いものではない。
2日ほど外に置いておくと、ほぼ白い玉になった。

問題の臭いなのだが、アンモニアの臭いと言うよりもサンポールの臭い?それとアンモニアが混じった感じ?そんな感じのわずかな臭いが、鼻を近づければ感じられる。
再生品としては十分ではないだろうか。

吸着した臭気は過熱する事で放出させる事が出来るが、さすがにこれをオーブンに入れる気はしなかった。

改善点として、サンポールに浸けておく時間を長くする事、漂白剤に浸けておく時間を長くする事がある。
サンポールに浸け、良く洗った後に漂白剤に30分くらい浸けておけばさらに残留臭は減らせると思う。

実用編

実験結果を元に、砂の再生を行う。
これはデオトイレ消臭サンドデオトイレ・抗菌消臭サンドを混ぜて使っているもので、大型のネコトイレに入っていた全量である。

さすがにバケツに入りきれないので、2つに分けて洗浄する事にする。
1つめを洗浄し、浸けている間に2つめを洗う。

洗浄時にザルは使っていない。
バケツに移したりざるに移したりするのが面倒だからで、バケツで水切りをして再びそのバケツで洗浄する。
従ってザルで洗うよりも”すすぎ効果”は低い。

まずは砂を湯で洗う。
湯は給湯器の設定最大温度の60℃とした。

白い粉が少し飛び、シリカゲルが水分を吸ってパチパチ音がする。
その後水を取り替えながら、あるいは流水で何度か洗う。

この砂は実験で使った砂ほどは汚れていないので、何度か水洗いすると水は透明になってくる。
ある程度汚れが取れたらサンポールを入れる。
10リットルのバケツに対して150ml位を入れた。
前回の実験からするとサンポールの分量は少なくても良いと思ったからだ。
サンポールを入れたら20分~30分ほど放置する。

放置後に水洗いする。
サンポールは薄い緑色の液体だが、それが濁っている。
サンポールを入れた事によって白濁沈殿物が出来る事、抗菌消臭サンド(茶色の方)が若干砕けて水に混じる(沈殿物は砂の砕けたものだった)。
またサンポールに含まれる界面活性剤などにより、猫砂表面の汚れが剥離する。

実験時にはアンモニア臭よりもサンポールの臭いが残ったので、念入りに洗う。

水が澄んできたら塩素系漂白剤を入れる。

塩素系漂白剤は200mlほど入れた。
この位入れても10分程度で酸性化する事から、サンポール(塩酸成分)は意外に残っている事が分かる。

pH試験紙でも大まかには分かるが、多くのものは古くなると変質して使えなくなる。
中華pHメータは一定の値しか表示しないものだとか、ランダムな値を表示するだけとか、いい加減なものが多い。

このまま20分ほど放置し、再度洗浄して200mlの塩素系漂白剤を入れた。
中和に関してはアルカリ物質なら何でも良いので、重曹(炭酸水素ナトリウム)や水酸化ナトリウムでも代用出来る。

ここでも再び水が黄土色になる。
汚れが取れている部分もあるとは思うのだが、デオトイレ・抗菌消臭サンドの砕けたものも多い。

バケツの底にも溜まっている。

洗浄を前提とするのであればデオトイレ消臭サンドのみを使った方が良い。
今回は洗浄後に於いて、殆ど臭いが感じられなかった。
デオトイレ・抗菌消臭サンドは水に浸けて洗うと細かな粉が出る事、乾きにくい事、臭いが取れにくい。

しかしシリカゲルベースのデオトイレ消臭サンドは、水洗時に割れてしまう。
デオトイレ・抗菌消臭サンドは割れる事はないが、徐々に砕けて行く。

汚れた砂の場合はサンポールを多めに、そうでない場合は少なめにするなど調整すれば良い。
漂白剤投入時に酸性かアルカリ性かは、手を入れてヌルヌルするかどうかでも判断出来る。
ヌルヌルが感じられない場合は洗浄や中和が足りていない事になる。

漂白剤ではなく弱アルカリ性の洗濯洗剤を使っても良い。
洗濯洗剤は界面活性剤が含まれているので、残留物などを落とす効果が高い。
サンポール洗浄した砂を取り分けて、弱アルカリ性洗濯洗剤で洗ってみた。
中性洗剤では中和が出来ないので念のため。
分量は水10リットルに対して洗濯洗剤付属のスプーン半分程度だ。

洗濯洗剤ではすすぎが面倒かなと思ったのだが、そうでもなかった。

そこで3回目の洗浄では、サンポール→アルカリ性洗濯洗剤→漂白剤の順で使った。
この方法で行うと中和が早い感じがする。
部屋干しトップは99%除菌と書いてあるので、それなりの殺菌効果もあるだろう。

洗剤を入れても余り泡が立たなかったので、それなりに汚れが取れたのかも知れない。
4回目の洗浄では洗剤の量を付属のスプーンに1杯としたら、すすぎが面倒だった。
洗剤で洗っただけでも臭いは気にならなくなったが、一応塩素系漂白剤処理もした。
洗濯洗剤で洗浄後の漂白剤投入でアルカリ性が維持出来た。

酢酸でもアンモニアを分解出来る。
動物の尿の臭いを消すのに酢を撒けば良いと、昔から言われるのにも根拠がある訳だ。
アンモニアは酢酸と反応して酢酸アンモニウムになる。
なお酢は酢酸濃度が4%程度と低いのと、臭いがきついので再生には向かないと思う。

アンモニアは酸と結合するので、例えば硝酸と反応させれば硝酸アンモニウムになる。
クエン酸と反応させるとクエン酸(鉄)アンモニウムになる。
今回は入手性と価格の面からサンポールを使用した。

乾燥工程は大切である。
乾燥していないシリカゲルはシリカゲルに非ずという訳で、陽に当てて十分に乾燥させる。
冬場なら3日~4日くらい、夏場でも2日くらいは陽に当てて乾燥を促す。

乾燥は使っていないネコトイレをザル代わりにしてみたり、段ボール箱に入れて段ボールが水を吸うことを期待した。
初期段階の乾燥では段ボール箱に入れた方が早いが、段ボールが水を吸ったあとでの入れ替えが面倒だった。

多孔質物質は臭いを吸着するが、温度を上げると吸着したものを放出する特性がある。
臭いを放出させるには200℃以上の温度が必要なので、天日に干した程度ではダメだ。
しかし日光中の紫外線は殺菌や脱臭作用があるので、良く干す事は大切である。

現在までに合計4回の洗浄&再使用を行ったが、残留臭に関しては全く気にならなかった。
アンモニア臭はほぼ無くなっていて、サンポール臭も洗濯洗剤で洗うことで気にならなくなったし、洗濯洗剤を使わずに漂白剤処理だけのものでも(実際にネコトイレに入れてしまうと)臭いは感じられなかった。

他の記事を見ると、多少臭いは残るが水洗いだけで十分だと書かれているものもあった。
天日干しを十分に行えばそれなりに臭いは取れるとのことだ。
どうせネコが糞尿をすれば同じ事なので、多少の臭いは我慢する、みたいな。
そうした洗浄法に比較すると、ウチで行っている洗浄は”やり過ぎ”なのかも知れない。
節約のために猫砂を洗って使うとすれば、その洗浄のコストも考慮すべきだからだ。

水洗だけでもアンモニアの除去はある程度は進む。
水中のアンモニア濃度と猫砂のアンモニア濃度が等しくなるまで、浸透圧によって水中にアンモニアなどが溶け出す。
従って何度も水洗を繰り返せば、アンモニア濃度は低くなるが理屈の上ではゼロには出来ない。
化学反応による除去では、理屈の上でゼロに出来るがそれは100%反応が進んだ場合だ。

こうして不要成分を除去した猫砂だが、洗浄を繰り返せば無限に使えるのかというとそうでもない。
一つの理由として、シリカゲルが割れてしまうので物理的に使えなくなる事がある。
この点に関してはデオトイレ・抗菌消臭サンドは殆ど割れる事がない。
割れる事はないのだが、わずかずつ周囲が削れて小さくなる。
また臭いなどが落ちにくい(ちゃんと洗えばほぼ無臭になる)傾向もあり、難しい。
デオトイレ消臭サンドの割れる率は、全量の5%(重量)程度だと思う。
どうやらこれ、中空構造みたいで2つに割れると空洞が観察出来る。

割れを防止するには、急に水で洗わずに水をスプレーするなどで徐々に湿気を吸わせる方法がある。
まあ手間をかければ割れ率は減るが、そこまでする価値があるのかという話になってくる。

割れると(それを捨てるので)猫砂が減ってしまい、洗浄した猫砂に新しい猫砂を足しながら使う方法になる。

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