ECOモード搭載USB充電ケーブル

スマートフォン

スマートフォンのバッテリーを100%まで充電するのではなく、80%~90%で充電を停止させるケーブルがある。
アウトレット品として売られていて、522円と安価だったので買ってみた。
GALAXY A7でもHUAWEI Nove lite2でも上手く動作した。
写真は右がA7で左がNova lite2である。

原理としては充電電流を見ていて、充電電流が減少すると充電をカットする仕組みだ。
おそらくタイマーだと思うが、定期的に充電を再開して充電電流をチェックする動作が行われるため、充電がカットされたままバッテリー残量が減っていく事もない。

しばらく実験していると充電停止時の充電率が変動することが分かった。
たぶん室温に影響されていて、室温が高いほど充電率が上がるのではないかと思う。
勿論単なるドリフトかも知れない。

Li-ionバッテリーは、充電率が80%程度まではフルパワーで充電が出来るが、それを超えると(充電電流を減らさないと)端子電圧が規定を超えてしまう。
規定以上の電圧を加えるとLi-ionバッテリーは壊れてしまうので、規定電圧以上にならないように充電電流を制御する。
具体的には充電率80%位までは定電流充電を行い、その後は定電圧充電に切り替える。
この充電電流の減少を検知して、充電を止めようというのがこのケーブルである。

電流を検出して充電を止めるものなので、スマートフォンはスリープ状態にしておく必要がある。
画面が常時点灯していたりすれば、電流が減らないので充電は自動停止しない。

スマートフォンでは上手く動作したが、Xperia Z2タブレットでの動作は限定的だった。
全てのアプリを終了させておけば90%前後で充電は止まるのだが、アプリが動作していると100%まで行ってしまう。
ほんのわずかな電流差で充電が止まるか止まらないかのギリギリ、みたいな感じなのだろう。

下の写真は全てのアプリを終了して実験したときのもので、93%で充電が止まった。

Xperia Z2タブレットが少しでも電流を消費する状態だと充電が止まらないので、充電停止の設定電流値を変更してみようかと考えた。
ECOモード搭載USB充電ケーブルの、microUSB端子側のケースを開けてみる。
このケースは超音波溶着か何かで着けられていて、開けると言うより破壊に近い。

カッターで切り、ニッパーでこじるようにして引き剥がした。
基板は両面で、いくつかのデバイスが実装されている。

LEDやスイッチが搭載されている面に、電流検出用と思われる抵抗がある。

乳白色のカバーも破壊しないと外す事が出来ない。
カバーを外すとLEDや抵抗等が見える。

3端子のデバイスはスイッチ用のFETだろうか。
その横に抵抗がある。
抵抗値は47mΩと小さい。

20mΩ位の抵抗があれば良いのだが、そんなものは持っていない。
一般品なので売られているのだが、わざわざ抵抗だけ買うのに送料を払うのもねぇ。

と言うわけで、抵抗の代用品を考える。
目に付いたのはイヤフォンだ。
この中のボイスコイルは細い線が使われているのではないか?
細い線なら抵抗として使えはしないか?

さっそくSONY製のイヤフォンをバラしてみる。

振動用のフィルムを剥がす。

そしてボイスコイルを取り出す。

凄く細い線でもないなぁ。
むしろイヤフォンのコードの方が細い。

撚り線になっているが、これの1本を取り出すと相当細い。

約6cmに切って抵抗を測ると、約600mΩもある。
意外と抵抗が大きい。

そこで約5mm程に切って再度抵抗を測ると50mΩ、こんなものか。

これを基板の47mΩと並列にする。

この状態でテストしてみると、アプリ起動中でも97%で充電が止まった。
今は死語かも知れないが、タスクキラー的なものでも使ってスリープ時にアプリの動作を止めておけば93%で充電は停止する。
しかしバックグラウンドでアプリを動かしていると97%まで行くのは、アプリが電力を消費し続けているからだ。

もう少し抵抗を小さくしたい所なのだが、余り小さくすると充電が行われなくなる。
改造前と改造後で充電速度が異なっているが、これはUSBケーブルを延長したために充電電流が減少したからだ。
充電電流が減少すると、充電時の電流と定電流充電完了時の電流差が少なくなる。
電流差が少ないと、充電のカットがうまく行かなくなる。
でも実験してみよう。
線の長さを半分、推定25mΩにして半田付けしてみた。

抵抗値の調整としてはこの位が限界だと思われる。
ボンディングなどが出来れば良いが、半田付けをしている以上半田の抵抗値が問題になる。
半田の比抵抗は大きく、一般的な銅線の10倍程度(溶接協会編集:標準マイクロソルダリング技術)と言われる。
具体的な数値がないのだが、共晶半田で銅線の約8倍、鉛フリーで約6倍と書かれているものもあった。
これよりも抵抗値を小さくすることは出来ても、実測以外で抵抗値を推定しにくくなる。

この状態で実験すると、約93%の充電率で充電が停止した。
今回は延長ケーブルを使わずに充電したので充電が早い。

Xperia Z2タブレットのバッテリー容量は6Ah、標準充電時間は5.8時間が仕様だ。
充電電流は書かれていないが、ピークで2A弱だろう。
これはバッテリー容量に対して充電電流が小さい事になり、充電率およそ80%以下に於ける充電電流と、それ以上の時の充電電流の差が小さい事になる。
充電電流差が小さければそれの検出は難しくなり、充電制御がうまく行かなくなる。

ここまで抵抗値を小さくすると、銅線や半田の温度傾斜、温度により基板が変形して抵抗値が変化するなど、クリチカルになりやすい。
抵抗値を小さくするなら線を2パラにすればいい話ではあるが、安定動作するだろうか?

この状態で上手く動作させるためには少々コツがいる。
画面輝度を上げ、画面点灯時間を長くしておくとバッテリー充電率が上がって行ってしまう。
充電が開始されると画面が点灯し、電流が増大するので充電が開始される。
充電が開始されれば充電率が上がる。
画面が消灯すると充電は停止するのだが、その時既に充電率は上がってしまっている。
これが繰り返される事で、やがて充電率は100%になってしまう。

ダメかも知れないが、線を2パラにして更に抵抗値を下げてみる。
推定抵抗値は15mΩ程度だ。
47mΩの時の検出電流が350mA(他の製品の仕様)だと仮定すると、15mΩだと約1.1Aになる。

これで実験してみたが、余り変化は無かった。
抵抗のPADまでの抵抗などが支配的になっているのではないだろうか。

Xperia Z2タブレットは7年も前に発売されたものだ。
これは新品で入手したものではなく、当時新品で購入したd tabが不調となったのでリプレイス用に中古を買った。
充電器につなぎっぱなしにしていた時間も長かったし、充電器をつながずにバッテリー切れ状態で放置していた事もあった。
しかし、それにしてはバッテリーは余り傷んでいない。

今回は実験のためにバッテリーを放電させる必要があり、連続動画再生を行った。
仕様では13時間の連続動画再生が出来るとなっているが、それに近い時間は動作すると思う。
今後は老体をいたわる意味でも、(充電率は上がり気味だが)この充電ケーブルを接続しておこうと思う。

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