ISMATEC ISM834を修理する

珊瑚・魚・猫

Ismatec ISM834は横浜時代に米国から購入した微量ポンプだ。
現在は日本に代理店があるが、当時はメーカから直接購入する以外に方法がなかった。
構造はモータでローラを回転させ、そのローラでチューブを押す事で定量を吐出する。
モータの回転数、回転時間、休止時間等の設定が可能だ。
モータ回転数を最低にしたときの吐出量は毎分3μl、最大時で31mlとなっている。

モータはコグドベルト2段で減速されている。

モータの回転数はロータリエンコーダによってセンシングされている。

このポンプが動作しなくなった。
電源を入れるとイニシャライズ後に、ディスプレイが”0″を示し点滅する。
操作は一切受け付けない。

以前にも直そうとした事があったのだが、修理は完了しなかった。
どこが壊れているのか全く分からなかったからである。
今回は更に調べてみようというわけだ。

最初に確認するのは電源電圧だ。
トロイダルトランスの出力は整流され、スイッチング電源によって安定化される。

電源部をチェックするが、特段異常は認められない。
リップルが多い事もない。

スイッチング電源の出力電圧は17Vで、そこからシリーズパスレギュレータで5Vと12Vにしている。
もしかするとモータの駆動電圧が17Vなのかも知れないが、測っていない。

シリーズパスレギュレータで作られる電源は、5V系と12V系である。
スイッチング電源用のインダクタはプラスチックケースに入れられたものが使用されている。

さすがに20年以上も前のものなのでEP-ROMが使われている。
コントローラは80C51である。
背面パネルにはRS-232Cの入出力があり、MAX232でレベル変換を行っている。
設定値はEEP-ROMに書き込まれる。

イニシャライズが行われて表示が出るので、80C51系は動作しているのではないかと思う。
しかし他に故障するような部品は見当たらない。
RS232Cのレベル変換デバイスが不良で、中途半端なレベルが80C51に入っているのかとチェックしてみたが違った。

前回はこの辺りでチェックを終了した。
今回はもう少しチェックを進めてみる事にした。

モーターやロータリエンコーダの線を外すが状態は変化しない。
“0”の点滅状態で動作しない事が殆どだが、しかし絶対に動作しないかと言えばそうではなく、しばらく放置すると動作する事がある。
しかし何をすると動作するのか、何をすると動作しなくなるのかが分からない。
ロジック部に冷却スプレーを噴射してみたが、動作状態に変化は無かった。

基板は2枚構成で、80C51の乗っているメイン基板と7セグメントLEDの乗っている基板だ。

基板にはドライバのICと7セグメントLEDが乗っている。
スイッチは薄型のものがパネルに貼られている構造だ。

スイッチパネルの導通をチェックしたが異常はなかった。
スイッチパネルはマトリクスではなく、パラレルで読まれている。
プルアップ抵抗は10kΩだ。

結局異常は発見できなかったわけだが、このスイッチパネルを接続せずに電源を入れたところ”0″の点滅にならなかった事で更にチェックする事になる。

スイッチパネル単体の抵抗を測ると、スイッチを押していないときの抵抗値が数kΩのものがあった。
スイッチを押すとほぼ0Ωになるので、ON時の抵抗は正常なのだがOFF時の抵抗値が低い。
スイッチは非分解構造なので直す事は出来ず、仕方がないのでプルアップ抵抗を小さくすることにした。

元々は10kΩなのだが、そこに5.6kΩを並列に接続した。
この状態でスイッチパネルを接続すると、スイッチを押していない時のポート電圧が電源電圧まで上がり、正常動作するようになった。
スイッチの絶縁抵抗を測ってみると、高抵抗になっていた。
電流を流した事で絶縁抵抗を下げていた何かが破壊されたのか。

スイッチの導通を先にチェックし、導通がOKだからスイッチが正常だと思ってしまった事で、本当の原因を見つけるのが遅れた。
スイッチパネルをメイン基板に接続した状態でレベルチェックを行っていれば、不良箇所は早く見つける事が出来た。

スイッチパネルとメイン基板はフレキシブル基板で接続されていて、長さにも余裕がない事からスイッチパネル単体でON抵抗のみを測った。
古い機械ではOFF時の抵抗のチェックも必要だなと感じた。

不良になったスイッチを交換するなどはしていないので、又不具合が起きる可能性がある。
その場合は別にスイッチを付けるくらいしか解決法がない。
勿論メーカに修理依頼を行えば良い(未だに修理対象モデルだ)が、スイッチはしょっちゅう操作するものではなく設定時だけなので、あえて交換しなくても使う事は出来る。

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