SUVブームからのクロカン4WD、パジェロ復活である。
トヨタデザインに比較すれば普通の感じというのもヘンだが、オラオラ感もそこそこで良いのではないだろうか。
リアサスペンションはリジッドになった。
車重のある車なのとフレーム構造なので、IRSにしようと思うとダブルウイッシュボーンやマルチリンクなど、強度の出しやすい形式が必要になる。
IRSでサスペンションストロークを稼ごうとすれば、各アーム長や取り付け位置の関係で車室内が狭くなる。
強度とコストと車室内への侵入を考えると、リジッドがお得と考えたのだろう。
ただし車室内への侵入を気にしてか、取り付け位置が低いのはオフロード性能をスポイルする。

フロントサスペンションは、これもフレーム構造なのでリジッド以外だとダブルウイッシュボーンになる。
エンジンは2.4リッターのターボディーゼル。
ボディ各部は遮音性に気を遣ったと言うから、車外騒音は大きめなのかも。
三菱と言えばカンガルーバー、安全性を無視した装備に人気が集まる。

ホンダは安全性確保のためにカンガルーバーを樹脂製にした。
衝突時に変形させることにより、歩行者保護性能を確保したのである。
当時はSUVという呼び方は(たぶん)存在せず、RVと呼ばれていた。

カンガルーバーの本来の役目は、動物の衝突から自動車を守るためだ。
オーストラリアや米国で動物に衝突して車が壊れれば、死につながる可能性もある。
何もない荒野で車が動かなくなり、さらに怪我をしたりすれば命に関わる。
対人安全性を考えると、轢き殺すよりもボンネットに跳ね上げる方が生存率が高いので、ボンネットに跳ね上げる方向で自動車は設計される。
しかしこれだと衝突した動物が跳ね上げられ、フロントガラスを突き破る可能性がある。
そこでカンガルーバーは動物を跳ね上げずに弾き飛ばす方向で設計される。
日本人がグリルガードを付ける99%は見栄えの為なので、樹脂製で何ら問題はない。
樹脂製であれば対人衝突安全性も確保しやすい。
こうして樹脂製グリルガードが登場し、それを最初に装着したのがホンダだった。

写真はこちらより
三菱車のカンガルーバーはパジェロのみではなく、デリカにも付けられた。
三菱は「メーカとしてはオプション設定を中止した、ディーラが勝手に取り付けたものだ」と主張、いかに凶暴さを演出するかみたいな方向に行くのは、現代のオラオラグリルデザインと同じだ。
カンガルーバー、グリルガード、ガードパイプと呼ばれたそれらの装備は金属パイプが使われていた。
そしてこの流れは今の時代にも受け継がれているのである。

カンガルーバーは自主規制されることになった訳だが、三菱は中々従わなかった。
自主規制は三菱イジメだ、パジェロ人気を潰すためだと。
クロカン4WDを所有すれば泥濘地を走りたくなる。
しかし日本にそんな道は余りない。
パジェロやランクル乗りは私有地や他人の畑をオフロードコース代わりに踏み荒らすなどし、社会問題化していく。
こうしてRVのイメージは急降下したのだった。

写真はこちらから
三菱は”シティーオフローダー”なる、訳の分からない言葉と共に、パジェロベースのチャレンジャーを発売する。
格好はゴツいけれど、車をピカピカに磨いてタイヤに泥一つ付けない都会派4WD乗り、みたいな層をターゲットにする。
こうした流れは三菱だけではなかった。
トヨタは”無骨な4WDではない、スタイリッシュな若者に向けた”としてRAV4を発売した。
納車時にディーラから「スタイルはクロカン4WDですが、悪路を走る車ではないですから(車を壊さないように)気をつけて」と言われた。

実際足回りを壊してしまう人が多く、見せかけの4WDだと言われたのだった。
これは他車のクロカン4WDが強固な構造を採るのに対して、RAV4は乗用車ベースのモノコックボディだったからだ。
カンガルーバー同様に若者は本物を求めているのではなく、本物っぽさがあれば良いというのがトヨタの回答だったのである。
本物志向からの乖離というわけでもないだろうが、パジェロやランクルは売れなくなっていく。
パジェロ人気にあぐらをかいていた、パジェロが売れなくなったら売る車がなくなったと語った三菱は、更にリコール隠しだとか不正隠蔽などが発覚して状況は悪化する。
RVブームの次はオデッセイから始まるワンボックスブームの兆しとなる。
三菱は商用車のデリカ(デリカトラックもあった)を乗用車に格上げする作戦を採る。
パジェロよりも実用的で、スキーに行くにも最適とのイメージ作りだった。

そんなデリカディーゼルは、燃料増量改造で黒煙を吹きながら走る車が増えた。
この頃の高公害ディーゼルエンジンは改造が簡単で、パワーアップ効果もそれなりにあった。
黒煙を吹こうが排ガスが臭かろうが、乗っている人間は関係ない。
なので、こぞって燃料増量キットを取り付けたのだった。
こうしてデリカのイメージも悪化、デリカ乗りはこれだからと言われた。
今で言う所のDQNアルファードみたいな感じである。
カンガルーバーなくして三菱車に非ず、そんなイメージは今に語り継がれているのだろうか。

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