ダイソンV10分解掃除&スイッチ修理

家電製品

ダイソンV10はそれまでと外観を変えた。
ダイソンは吸気通路がストレートになるから効率的だというのだが、評判は今ひとつだ。
ダイソンのイメージ図はストレートっぽく見えるのだが、実際の吸気通路は複雑になっている。

クリアビンとサイクロンユニットの向きを従来と90度変えたため、吸排気を90度曲げる必要が生じた。
またモーターの入り口に付けるプリフィルタと、モーターの出口に付けるポストフィルタを同一部品にした事で、モーターの吸気経路も少々複雑になった。

今までで最も長時間動作する

と、ダイソンは言った。
長時間動作させるために吸い込み仕事量13Wという、スペシャルに吸わないモードを追加した。
紙パック式掃除機では500W~640Wの吸い込み仕事量になる。
ダイソンの各モデル共に標準モードでは28W(V7は21W)で、V10も標準モードでは28Wになる。
MAXモードは130Wで、これはV7(100W)やV8(115W)よりも大きい。
ただし連続稼働時間は5分程度と短くなってしまうし、バッテリーは急激に劣化が進む。
そこでダイソンは考えた。
連続動作時間だけをカタログに謳うための非実用モードを付けようと。

2つのフィルタを一つにまとめた

2つのフィルタを一体化した事で、プリフィルタの表面積を大きく出来ず詰まりやすくなった。
フィルタに関しては初期型のDC35などが最も集塵力が高く、その後のDC6xやV6~V8では円筒形になってフィルタは薄くされた。
DC35のプリフィルタはフィルタ能力が高い。

DC6x~V8のプリフィルタの厚さは2mmと薄く、水も抵抗無く通る。
DC35のフィルタは厚さ約8mmであり、水は余り通らない。
円筒形フィルタではフィルタ能力が低下し、モーター部の汚れはDC35よりも明らかに増加した。

これを補うのがポストフィルタで、フィルタ能力の低下したプリフィルタを抜けてきたゴミを、ポストフィルタで阻止する仕組みだ。
ポストフィルタは排気騒音低減にも効果があるのだが、排気抵抗が大きい。
フィルタによる抵抗増加を補うため、モーターパワーを上げるしかなかった。

これら2つのフィルタを定期的に清掃する必要があり、メンテナンス性が悪化した。
そこでこの2つのフィルタを一体化したのがV10である。

下の写真は上側がモーター吸気側にあるプリフィルタで、ブルーのプラスチック部分に入っているのがモーターの排気側のポストフィルタだ。

DC35の草履型フィルタは青い側から白い側に空気が流れ、DC61~V8の円筒形フィルタは白い側から青い側に空気が流れ、V10/V11/V12は青い側から白い側に空気が流れる。
なおV10のフィルタは月に1度は水洗しろと書かれている。

吸気経路が複雑になった

同軸上に吸気通路と、サイクロンユニットからモータまでの通路を設けなければならないので、中央の管は二重化されている。
また掃除機の吸気(ゴミ)は中央からダストボックスに入るようになるので、そこで一次渦を作る必要があり、吸気抵抗が増える。
サイクロンユニットは水平に近く置かれることになり、水平では重力でゴミを下に落とせない。

直線的に見えることと、内部の空気通路は全く違うのである。
そもそも排気を真後ろに噴射するモデルは一つも無い。
V6やV7のポストフィルタを外せば真後ろに噴射するけど。

吸気抵抗増大とゴミ分離能力低下を補うため、更にモーターパワーを上げ、その結果バッテリー電圧も上げなければならなくなった。
それでも400Wにもなる放電電力で、バッテリーは5分ほどしか持たない。
(MAXで使用していると、1年ほどでバッテリーが駄目になってしまう)

複雑な構造とバッテリーの大型化(18650×6本→7本)により、本体が重くなった。
持ち手の位置に対して前方が長くなったため、支点と力点間の距離が開き余計に重く感じる。
これを持って長時間掃除をするのは苦痛になるが、早々に掃除を終わらせて貰わないとバッテリーが持たないよとダイソンは言うかも。

ゴミ捨てが不便になった

実際に使う上での不便さはここにある。
普段はノズルや回転ブラシヘッドを付けて使っている。

ではゴミを捨てるときにはどうするか。
クリアビンの開くべく部分にはブラシが接続されている。
これでは開かない。

クリアビンの容量が大きくて、中々ゴミが溜まらないのなら我慢しよう。
何故か日本仕様のクリアビンは容量が少なく、海外版は1.5倍くらいある。
さすがに日本人の体格には大きすぎると判断されたのか。
しかしこの容積ではすぐにゴミが溜まり、ゴミが溜まると渦が阻害されてしまう。
そのたびにノズルを外して、パカッと開けて、ゴミを捨てるのが面倒なのだ。

某サイトには「ダイソンのゴミ捨て方法はワンタッチで簡単。最新のV10・V11でもパイプを外してスイッチを押すだけと非常に簡単になっています。」とあった。

何で一々パイプを外す必要があるんだ、V8だったら付けたままでOKなのに。
それに、V8迄よりメッシュフィルタとクリアビンのクリアランスが狭いので、綿埃などはそこに挟まってしまって出てこない。
で、仕方がないから指でゴミを引っ張り出す。

ダイソン掃除機のクリアビンを開けるのは屋外で、自分が風上に立った方が良い。
何故ならゴミが飛び散って悲惨な目に遭うからだ。
某サイトには「ゴミ捨ての際は、ホコリをまき散らさないようにゴミ箱の奥までしっかり入れ込んでからフタを開けるようにしましょう。」と書かれているが、掃除機ごとゴミ箱に突っ込んで蓋を開けると、飛び散った埃で掃除機自体が汚れて酷い目に遭う。

では屋外でゴミを捨てれば良いのかと言えばそうでもない。
蓋を開けると吸入パイプ挿入口の周囲からゴミが落ちる。
落ちたゴミは当然吸入パイプ挿入口に接触し、そこが汚れる。
ダイソンマニア氏のページにも、ゴミを捨てた後は吸入パイプ挿入口を掃除しましょうと書かれていた。

またクリアビンは本体から外れやすくなる(ラッチ部分の摩耗?)ようで、ゴミを捨てるつもりがクリアビンごとゴミ箱にダイブする、なんて事も起きるそうだ。

ゴミの分離が悪くなった

V10/V11/V12では自分の腕の位置より高い場所の掃除は出来ない。
高い場所を掃除しようとして上を向けると、サイクロンで分離されたゴミが全てモーターに吸い込まれてしまう。
サイクロンユニットよりモーターの方が下になるのだから仕方がない。
どうしても高い場所を掃除したいのであればこれを使うしかない。
掃除機の先端は常に下を向けておかなければいけないからだ。
尚普通に使っていても、V8までよりゴミ分離は悪い。

家電WATCHより

ダイソンマニア氏も、今までのモデルのどれよりもフィルタが詰まりやすいと書いている。

赤矢印はサイクロンで分離された細かなゴミが溜まる場所だ。
上がV10、下はV7である。
V7の方は十分な大きさがあるが、V10は吸入パイプがあるため、その周囲しかスペースがない。
その狭いスペースには回転ブラシヘッド用の電源コネクタも配置しなければならない。
だからといって、サイクロンで分離されたゴミの溜まる場所がこれでは狭いでしょ。

更に、このゴミが溜まる部分が太くなることで、クリアビンのゴミは下方に落ちにくく、上の方に引っかかる。
クリアビンと中央パイプの直径差を見て頂ければよく分かる。

そんな失敗作と言われるV10を分解清掃することにした。
ダイソン掃除機にとって大切なのはフィルタである。
サイクロンはゴミ分離能力が低いので、フィルタがないとゴミが排出されてしまう。

従来型の場合は比較的素直な空気通路だったのだが、V10では至る所で曲がりが発生する。
同軸上に2つの経路を設けなければならないので、どうしても90度の曲がりが増える。
寸法的余裕もないのでクリアランスが狭く、ゴミが詰まりはじめると気流が阻害されて更にゴミが蓄積される。

分解するよ

モーターユニットは小さい。
元々ダイソンのモーターユニットは小型で、通常の掃除機と異なり小型のファンを高速回転させる方式だからだ。

これは掃除機の吸気部分である。
中央部分からゴミを吸い込み、その外周が2次サイクロンのゴミの出口になる。

一次渦を作るのは、この同軸中央の吸い込み経路から入ってきた空気が、メッシュフィルタの所から出てくる。
中央に見える穴が掃除機の吸入口につながっているもので、ここからゴミが入ってくる。

モーターによって吸引されるのは、下の写真で少し見えているメッシュフィルタ部分からだ。
V8まではゴミが入ってくる部分はクリアビンにあったので、メッシュフィルタは360度全てが使えた。
しかしV10ではメッシュフィルタの一部をゴミが入ってくる口に使うので、メッシュフィルタ面積が少なくなる。
そこで直径を大きくして面積を稼ぐのだが、この為クリアビンとのクリアランスが狭くなった。

モーター部分とサイクロンユニットはネジで止められている。
DC35のように、サイクロンユニットとモータの間にプリフィルタがあれば効率的なのだが、V10では吸気インペラーをモーターの後ろ側に配置するように変更して2つのフィルタの同一パッケージ化を実現している。

モーター背面のネジと、底部を固定している2本のネジを外せば取れる。
ここの分解性は悪くない。

モーターの駆動回路部分はこの白い樹脂カバーにおおわれている。
コネクタは回転ブラシ用だ。
吸気は筐体(グレー)と白いカバーの隙間を通る。

サイクロンユニットのモーター側、本来ここにゴミがあってはいけない。
しかし実際にはサイクロンユニットでのゴミ分離がうまく行かないので、細かなゴミが沢山溜まる。

ダイソン掃除機のデザインとも言える、サイクロンの吸気配管チックなもの。
これはV8までと同じくデザイン上のダミーで、穴自体はほぼ直線で開いている。
というかまっすぐな穴にしないと型抜きできないかも。

メッシュフィルタにもゴミが溜まる。
メッシュフィルタははめ込みになっていて、V10で最も分解しにくいところだ。

メッシュフィルタの前側というのか、二次サイクロンのゴミが落ちてくる部分もネジで外せる。

外して分かるゴミのすごさ。
ここは二次サイクロンより”ゴミ側”なので埃が溜まっても良いのだが、本来このゴミはここに溜まらずサイクロンで分離されるべきものだ。
吸気経路の複雑さと幅の狭さ、これは同軸構造を採るために各所の寸法が厳しくなったからだ。
その為、従来モデルにも増してゴミがあちこちに付着し、悪臭を放つ。

ゴミに耐えきれず、軽く水洗することにした。
それでも未だゴミが取れないが、分解を進める事にする。

分解行程の中で一番面倒なのが、メッシュフィルタを外すところだ。
メッシュフィルタを、吸気通路の外側に押し広げるような感じで外す。
ドライバーなどを突っ込んでメッシュフィルタを外側方向に広げなければならない。

嵌合が外れると、こうしてメッシュフィルタを引き出すことが出来る。
ここは何度やっても苦労するところだ。

はめ込みは簡単、取り外しは大変。

二次サイクロンユニットはネジで止まっているので、これを外すと分解できる。
V8までとは違い、回転ヘッド用の配線がサイクロンユニット横を貫通している。

二次サイクロンのモーター側も外れる。

メッシュフィルタの内側にある、吸気で一次渦を作るための部品だ。
中央の広いところから、吸気がダストボックスに吹き出す。
その右の小さな口が二次サイクロンへの吸気口になる。
ここでも吸気は90度向きを変えて吸い込まれ、抵抗が大きそうだ。

バラバラにして洗浄した各パーツである。
赤いガスケット状のものは臭いが取れにくいので、塩素系漂白剤などに浸けておいた方が良い。

風量切り替えスイッチはホール素子?

さらにモーターユニットを外す。
大電流に耐えるために太い線が使われている。
赤黒の線は小さな白いコネクタで基板に接続されている。
カッターナイフの刃などで慎重に外さないと、基板側のコネクタが曲がってしまう。

ここを分解するにはL字型のトルクスレンチがないと苦労する。
電源線の下の2本の細い線もバッテリーから来ているものだ。
バッテリー情報をモーター制御回路に伝えているのだろうか。

ダイソンと言えば+側の線に黒色を使っていた。
イギリスでは+側の配線は黒にするしきたりなのだろうか。
しかしV10ではグローバルスタンダードの赤・黒の線に変更された。

スイッチ部分を外すには、バッテリーが刺さる部分の奥の1本のネジを外す必要がある。
グリップ部分を懐中電灯で照らせばネジが見える。
そのネジを外して引っ張るとバッテリーとの接続コネクタやトリガボタンの部分一式が抜けてくる。

電源(トリガ)スイッチの修理

何故ここまで分解したかというと、トリガスイッチが折れているからだ。
V10/V11の故障は圧倒的にここが多く、半年から1年使用すると折れてしまう。
保証期間内であれば掃除機ごと新品交換されるが、保証期間外だと修理費用(2万円弱)に泣くことになる。
修理費用が高額なのは、本体ごと交換になるからだ。

かろうじてつながっているので、一応動作はする。
このスイッチからのリンクによってバッテリーのボタンを押し、バッテリー側のマイクロスイッチが入って電圧が共有されてくる仕組みだ。
このリンクが折れている。

折れる理由なのだが、力の逃げ場がないからだ。
バッテリー側にはプラスチックのパーツがあり、それがマイクロスイッチを押す仕組みだ。
プラスチックのレバーとマイクロスイッチは剛結合されていている。
いっぱいまで押し込めば、それ以上は押し込めなくなる。
これはV10でもV6でも構造的には同じだ。

V8まではトリガボタンに掃除機の重さが加わることはなかったが、V10以降はトリガボタンで掃除機をぶら下げるみたいな持ち方になり、力が加わり続ける傾向にある。
それでも壊れないようにするのが正しい設計なのだが、つまりこれは正しく設計されていない。

材質が何だか分からないのだが、試しに塩ビ用の接着剤で留めてみた。

多少溶けるかな?とも思うのだが…

バッテリーに装着してトリガボタンを引いてみると、一発で壊れた。

仕方がないので熱で溶かしてくっつけることにする。
強度を増すために細いステンレスワイヤーをコの字型にし、補強することにした。
そもそも半年や1年で壊れてしまうのだから、補強無しではそう長くはもたないと判断した。

ホチキスの針でも良かったかも。
これを加熱して樹脂に押しつける。

更に別のプラスチック(ABS)を溶かし、一体化するようにしながら盛っていく。

余り厚くすると他の部品と干渉するので、元々入っているリブの高さよりは低くしておいた。

これでバッテリーを装着して操作してみる。
今度は大丈夫そうだ。

自分で直すのが面倒な場合は、Aliexpressで対策品を買おう。
ただし2コで1,557円(セール価格)は高いんじゃないかなぁ。

壊れないようにする

このまま組み立てれば正常に動作はするが、又壊れる。
力の逃げ場がないので、一番弱い部分が折れる。
バッテリー側のストローク以上に押そうとするのだから当たり前だ。
バッテリー側のスイッチ部分のストロークは、約5mmだった。

このレバーを1mm押し込むとスイッチが入る。
掃除機本体側の赤いトリガボタン側を削るか、バッテリー側を削るかだが、簡単に調整できるバッテリー側を削ってみることにした。
この黒いレバーを約1mm削ると、トリガボタンは最後まですっと押し込めるようになる。
削らない状態だと、最後が少し固くなり、これが無理矢理押している状態だ。
最後まで押した感を得られる点では良いのだが、それで壊れたのでは意味が無い。

リンク機構が少し複雑(パーツが2つに増える)になるのだが、最後まで押すと少しレバーが戻るようなリンクにするとクリック感が出る。
こういう所の大雑把さがダイソンなんだよなぁ。

ボタンを削らず、赤いレバーが押し込まれすぎないようにストッパーを付けた方が良いかなとも思う。
赤いレバーの、押し込む部分の後ろ側に消しゴムでも加工して詰め込む。
すると押し込んだときに、後ろの黒いパーツに当たって止まる。

下の絵だと既に当たっちゃってるから押し込めないけどね。
消しゴムの長さを調整して、押しすぎないようにする。

モーターユニットと制御基板

外したモータユニットはこれだ。

非常にコンパクトに仕上がっている。
以前にも書いたが、ダイソンが紙パック式掃除機を作ったら、結構高性能なものが出来ると思う。
サイクロンユニット互換の紙パックユニットでも作ったら売れそうだけど。

回転ブラシに行くシロクロの線は基板に直に半田づけた。
ダイソンだから黒が+で白がーかと思ったら、ここも黒がマイナス側になっていた。
心を入れ替えたのか…
これはコネクタの方を引っ張ると、白いカバーから抜けてくる。

ブラシユニットに行く電圧はV8までとV10は同じで約16Vだ。
ダイソンにしては珍しく、V7/V8用のパーツをV10で使うことが出来る。
V6はオスメスが逆(電源コネクタではなくパイプの接合が)なので使えない。

制御基板は従来より更に部品が少なくなった。
モータ制御はワンチップでいけるとしても、モータードライブ用のFETは要る。
更には回転ブラシ制御、ブラシが接続されると電圧が出て、ブラシ電流が過大になると出力を止める制御などもこの基板が行っている。

回転ブラシヘッド用の電源はシリーズパスなのだろうか。
スイッチング電源であればコイルが必要になるが見当たらない。
基板の裏側にあるのか?
シリーズパスだと損失が大きくて、発熱もするだろうし電力がもったいない。

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