Reduces phosphate with lanthanes chloride.

珊瑚・魚・猫

リキッドフォスフェイトリムーバーの効果と使い方に関してである。
リキッドフォスフェイトリムーバーの成分は塩化ランタンであり、塩化ランタンを水槽水に加える事によって、水槽水内のリン酸塩がリン酸ランタンとして沈殿し、リン酸塩値が低下する。
これは化学反応によるものなので、生物濾過などとは異なり結果はすぐに現れる。

例えばNO3:PO4-Xのような炭素源の利用によるリン酸塩の低減では、炭素源によってポリリン酸蓄積細菌の活動が活発になる事から起きる。
ポリリン酸蓄積細菌は嫌気層で蓄積したリン酸塩を吐き出し、好気域では吐き出した以上のリン酸塩を蓄積する。
このポリリン酸蓄積細菌をプロテインスキマーなどで排出する事により、水槽水内のリン酸塩値を低減させる。
これは化学反応ではなく生物反応なので、炭素源の投与からリン酸塩の減少までには10日前後かかる。

一般的に炭素源を添加すると、リン酸塩より先に硝酸塩がゼロになる。
硝酸塩がゼロの状態で炭素源を添加し続ければ、白点菌や原始細菌などの異常繁殖により水槽崩壊を招く。
従って炭素源の利用時には、硝酸塩がゼロにならないように適宜硝酸カリウムや硝酸ナトリウムを添加する必要がある。

一方で塩化ランタンによる反応では、そうした危険な状況は起こらない。
唯一考えられるのは、リン酸塩値が高い状態で塩化ランタンを過剰に添加すると、急速にリン酸ランタンが生成されて水槽水が白濁する事だ。
更にはこのリン酸ランタンが魚類の呼吸を妨げる事になり、魚類は酸欠に陥る。
またキイロハギはリン酸塩の急変によるショックで死亡する。

塩化ランタンによるリン酸塩の低減

テストはスタティックに行ったものである。
グラフのオレンジ色のラインは飼育水に塩化ランタンを加えてリン酸塩濃度を測ったものである。
ブルーのラインは飼育水を試験管に取り、塩化ランタンを加えたものだ。

phosphate with lanthanes chloride

これを見て分かるように、リン酸塩値が下がるに従って塩化ランタンの”効き”が悪くなる。
塩化ランタンでリン酸塩値を下げられる限界は0.01ppm前後と言われていて、これ以上に下げようとすると、水槽水のKHが下がってしまう。
リン酸塩と結合できない塩化ランタンは、炭酸塩と結合しはじめるからだ。

逆に言えば、KHが下がらない範囲であれば塩化ランタンを添加し続ける事が出来る。
上のテストでもリン酸塩値が0.009ppmまで下がった所で、KHは7から6.5に落ちた。
更に塩化ランタンを添加し、リン酸塩値がゼロ(0.003ppm以下)に下がった時のKHは6だった。

リン酸ランタンの除去方法

生成されたリン酸ランタンを取り除かなければ、水槽水のリン酸塩値は再度上昇する。
これはリン酸ランタンが分解されてリン酸塩濃度が上がるからである。
海外の記事などを見ると10μmメッシュの物理フィルタを使用してリン酸ランタンを分離するとある。
しかし10μmのフィルタは詰まりやすく、実用的とは言えない。
10μmのフィルタを使うのであれば、表面積の大きなフィルタに加圧水を通すなどが必要だ。

そこでプロテインスキマーによる実験を行った。
飼育水を一定量取ってリン酸ランタンを多く加えて水が白濁した状態にする。
一方はプロテインスキマーを通し、もう一方は何もしない。
この状態で比較すると、プロテインスキマーを使用した方は10分程度で濁りがほぼ無くなった。
プロテインスキマーを使用しない方は、濁りが取れなかった。

この事から、完全ではないにしてもプロテインスキマーでリン酸ランタンを除去できる事が分かる。

写真のように、塩化ランタンを加えるとプロテインスキマーには薄い色の廃液が沢山溜まる。

実際のリン酸塩値の変化

塩化ランタンを水槽水に添加すると、即座にリン酸塩値は減少する。
しかしそのまま放っておけばリン酸塩値は再び上昇する。
理由は取り除けなかったリン酸ランタンが、リン酸塩に戻るからだ。

これは完全なフィルタリングが出来ない以上仕方がない。
海外の文献のように10μmのフィルタが良いのかどうかは分からないし、リン酸ランタンの針状結晶の大きさは5μm程度だと言われるので、物理フィルタで取り切るのも難しそうだ。

廃液処理などでの塩化ランタンによるリン酸除去では、沈殿槽などで分離している。
サンプ槽以外に沈殿槽を設けて、そこに塩化ランタンを添加して沈殿したリン酸ランタンを分離するような仕組みの方が合理的だ。

実際の水槽では物理フィルタを使わずに、プロテインスキマーのみを使っている。
リン酸ランタンの添加とリン酸塩値の変化は以下のグラフを見ていただきたい。

塩化ランタンの添加は29日目(オレンジ色の線)から行っている。
それ以前はGFOのテストなどを行っていた。
塩化ランタンの添加開始でリン酸塩値は急激に下がる。
この時の添加量は0.26ml/Day(30分ごとに5.42μl)である。
しかしその後はリン酸塩値の減少量が低下したため、34日目からは添加量を0.4ml/Day(30分ごとに8.33μl)に増やした。

ドージングポンプで添加するのは、ゆっくり添加した方がプロテインスキマーでリン酸ランタンを除去しやすいのではないかと思ったからであり、また急激なリン酸塩値の変化を起こさないようにでもある。

更に50日目には、ドージングポンプによる0.4ml/Dayに加えて0.5mlをスポイトで添加した。
この時のリン酸塩値は約0.07ppmだった。
添加10分後のリン酸塩値は0.01ppm程度に下がるものの、翌朝には0.06ppmにまで戻っていた。
その状態から更に0.5mlを手動添加すると、その翌日には0.05ppmになった。

水槽水のリン酸塩値が下がると、塩化ランタンによる効率的なリン酸塩除去が出来なくなる。
その為に塩化ランタンを多く添加する事が必要になる。
塩化ランタンの添加に関して、微量を時間をかけて行うのが良いか?一定の量をいっぺんに入れた方が良いかは未だによく分かっていない。

もう一つのリン酸塩除去方法

リン酸塩をリン酸ランタンとして沈殿させるのではなく、リン酸鉄として沈殿させる方法もある。
いくつかの鉄系添加剤を使用して実験したが、水翠の二価の鉄(商品名)がもっとも効果が高かった。
リン酸塩値の多い水槽に二価の鉄を添加すると、リン酸鉄が生成されて水槽水が白濁する。

二価の鉄を添加する時には微量から開始する必要がある。
約240リットルの水槽水のリン酸塩値が0.1ppmの時に、二価の鉄を20ml添加するとリン酸塩値は0.06ppmに下がった。
鉄濃度は添加直後には0.07ppm程度を示すが、リン酸塩値の低減と共に鉄濃度も減ってゼロになった。
この程度の量を一度に添加すると、水槽水は多少白濁する。

同じ鉄系の添加剤でもFERRIONではリン酸塩値の減少はなく、鉄濃度も減少しない。
二価の鉄はリン酸塩と結びつくが、FERRIONはリン酸鉄にならない事が分かる。
すなわち市販の鉄系添加剤の全てがリン酸と結びつくわけではない。

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