ヘアドライヤーとイオンの関係

家電製品

今はヘアドライヤーにイオン発生機能が搭載されているのは当たり前みたいになっている。
2005年頃に発売されている各社のヘアドライヤーは、マイナスイオン、マイナスイオンと謳われており、おそらくこの頃から流行し始めたのではないだろうか。

上の図はPanasonicの説明である。
PanasonicによればマイナスイオンなりOHラジカルの効果は、髪表面の水分量とpHであるとしている。
もっともこれはナノイーの能書きで、ナノイーのメリットを水分量であるとする所から来ているものだと思う。
ナノイーはペルチェ素子を使って空気中の水分を結露させ、その結露水表面から無声放電させることによりOHラジカルを作るとある。
つまり、非常に少ない量ながら水も蒸発するのとOHラジカルが空気中の水分を必要とすることから、水分量が多いのだよと言っているのではないだろうか。

水の1滴は約50μl程度であり、ドライヤーの風量は毎分1m3を超える。
例え毎分1滴の水が蒸発したとして、どれだけの効果があるのかは甚だ疑問だ。

プロはどう見ているのか?

毎日ドライヤーを使う理髪店や美容室のオーナーはどう見ているのか。
プロ用のヘアドライヤーにもイオンの波は押し寄せたみたいな話もあり、主に美容室を中心に使われるようになったそうだ。

当然ながらメーカの売り込みは大げさで極端なものだったそうで、髪のつやが違うだとかセットしやすいだとか、このドライヤーがあれば美容師の技術なんか要らないぞ位の勢いだったという。

そんな能書きへの反発もあり、半信半疑と言うよりも全疑くらいの気持ちで使い始めたのが10年くらい前だそうだと、理容店主は話す。
使い始めた当時はマイナスイオン付きドライヤーと、そうでないドライヤーを併用していたという。
毎日何人ものお客様の髪にドライヤーの風を当て、そこで感じたのは「イオンの効果はあるのかも知れない」だったそうだ。
確かにセットしやすい、髪が絡まりにくい。

ある時店主は言った「ほりこしさん、イオンと静電気は関係あるの?」と。
イオンドライヤーで髪がまとまりやすいのは、静電気が起きにくいからではないかというのだ。

イオン発生器とはどんなもの?

イオン発生部は非常に簡単なものだ。高電圧を発生させるユニットに針状電極が付いているだけである。Panasonicではイオンの有無はオゾン臭で確認が出来ると書いている。

Panasonicの高価格ドライヤーはナノイーを搭載している。ナノイーはシャープのプラズマクラスターのPanasonic版みたいなものだ。
しかしプラズマクラスターよりオゾン発生量が多く、脱臭や殺菌効果をオゾンに頼っている風ではある。
プラズマクラスターやナノイーは、いわゆるマイナスに帯電した状態ではなく、空気中に於いては中和された状態になる。

もしも効果が静電気除去であるとするならば、プラズマクラスターやナノイーよりも、無声放電によるイオン電極方式の方が効果があるのではないのか。
しかし、それではプラズマクラスターやナノイードライヤーが売れない。
そこで水分という話を持ってきたと考えるのは無理があるのか?

画像はシャープより

シャープのプラズマクラスター搭載ヘアドライヤーの効果を、同社は水分量だとしている。
冷風を当てた場合に毛髪の水分量が16%増えたそうだ。
その時の室温や室内湿度などは書かれていない。
ドライヤーは髪をセットする時や乾燥させる時に使う訳で、冷風のまま使うケースは希だと思う。
ヘアセットの時などは、温めた髪が冷える時に形状が決まるので、温風と冷風を交互に使う事はある。

シャープのキューティクル引き締め効果は、毎日2回、それぞれ7分間冷風を当て続けた14日目のものだそうだ。
14日間冷風を当て続けなかった場合はどうなるのかが示されていない。

Panasonicのイラストよりも、実際の写真の方が説得力があるのと、シャープの方が地味目に書いているのは、プラズマクラスタに対する消費者庁による不当表示判定問題を気にしたのだろうか。

工業用帯電防止器

イオン発生器が工業用として利用されているのは帯電防止器だ。
工場内などで発生する静電気は厄介で、時に製造製品を静電破壊してしまう場合がある。
そこで帯電防止用の電荷発生器を使用する。
一般的にはマイナスイオンではなく、針状電極にプラスの電荷を与える。
これによって帯電したものを中和する。
エアーノズルと除電器を組み合わせたものや、扇風機のような構造になっているものなど様々で、帯電した風を製品に当てることで除電を行う。

図は静電気除去.comより

またSSCD(Steady Slate DC)型という、まさにプラズマクラスターやナノイーと同様の構造を持った除電器もある。
これはプラス電荷とマイナス電荷の発生器を持ったもので、空気中で中和されて無電荷となる。

SSCD型や、針状電極にACを加えるタイプは残留電荷が少ないというメリットはあるものの、イオンの到達距離が短い(自己中和が起きる)など、使いにくい点もある。

実際に使ってみてどうなのか?

ウチにはマイナスイオン機能無しドライヤー(日立製)、Panasonicのマイナスイオン機能付きドライヤー、Panasonicのナノイー搭載ドライヤーがある。

実はこれらの違いを私自身は感じることが出来ない。
そう言われればそうかなくらいの感じはあるが、明確な違いが分からない。
しかし髪の長い女性の感覚は異なるようで、マイナスイオン付き或いはナノイー付きのものは明らかに髪のまとまりが良いという。

なおナノイーのポンコツぶりは以下で書いているが、このドライヤーに内蔵されているナノイー発生器は、ポンコツナノイーとは構造が異なった。
使用し始めてしばらくしてから分解してみたのだが、ナノイーユニットに腐食は見られなかった。

F-VXF35:ナノイー加湿空気清浄器分解(3)
F-VXF35:ナノイー加湿空気清浄器分解(4)

ではマイナスイオンドライヤーとナノイードライヤーに違いを感じるかと聞いてみたが、これは「違いがあるような気がする」レベルだった。
マイナスイオン無しと有りの違いほどの差はないという。

従来のマイナスイオン発生機能付きドライヤーは、イオン発生の有無を確かめることは難しかった。
しかし最近購入したものは、乾燥大気中で使用するとかすかにオゾン臭がする。
湿度が高いとオゾンは発生しにくいので、夏場には感じられないかも知れない。

ドライヤーの寿命はモーターの寿命?

従来使用していたドライヤーが不調になったこともあり、今回ドライヤーを買い換えた。
メーカによればドライヤーで壊れやすいのはモーターで、その寿命は4~5年だそうだ。

不調になったドライヤーはPanasonicのもので2006年製造のイオン機能付きだ。
不調はバイメタル式過熱防止スイッチが頻繁に切れてしまうことである。

以前に一度内部清掃はしたのだが、猫を乾かす用途に使っていることもあり、細かな猫の毛が内部に付着する。
猫の表面の毛は太いのでフィルタに引っかかるが、いわゆる下毛は非常に細い、まるでフェルトの繊維のようなものなので内部に引っかかる。

毛が引っかかって風量が落ちれば温度が上がる。温度が過剰に上がればバイメタルスイッチが動作してヒータが切れる。
何度もバイメタルを動作させていると、動作点が正確ではなくなり切れることが多くなる。
と言うわけで人間用のヘアドライヤーを別途購入した。
猫用としては内部を清掃して使う訳だが、ヘアドライヤーは総じて分解しにくい。

Panasonicのドライヤーの場合は、吹き出し口近くにある小さなネジ1本を外して、吹き出し口のパーツを反時計方向に回すとロックが外れる。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA
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モーターはDCブラシモーターなのか、モーターの底部にダイオード4本でブリッジが組まれている。
イオン発生用高圧電源は上の写真中央右寄りの下にある金属の箱だ。
高圧用の線はさほど被服は厚くはなく、余り電圧は高くないのかも知れない。

埃を綺麗に取り去って、過熱防止バイメタルの動作はなくなった。
しかしモータもそれなりに傷んでいるのか、風の温度はかなり高い。
新品とはモータの音も明らかに異なり、やはり古さは隠せないと言う事だ。

最近のドライヤーの傾向

この2006年製のドライヤーを選ぶ時に、コンパクトで軽量で風量がそこそこある事を条件とした。

新たに購入したドライヤーとの違いで、最も感じるのは温度だ。
古いものはかなりの温度になる(過熱防止バイネタルスイッチが動作する位なので、仕様上の最高温度よりも上がっている可能性はある)が、新たに購入したものの温度は低い。

従来は100℃~120℃の風を出すものがあったそうだが、現在では60℃~80℃になっている。
温度が高い方が乾燥には有利だが、一方で髪が傷みやすくなる。
美容室などで使われるものも温度は低めで風量を多くする傾向だそうだ。
このPanasonicのドライヤーも大風量モードでは温度が低く、温度を上げたい時には風量を抑えたセットモードに切り替える必要がある。

ヒーターの電力が有限(最大でも1400W程度はコンセント容量に制限される)なので、風量を多くすれば温度は下がる。
従来品が毎分1m3程度だったのに対して、最近のものは毎分2m3を超えるものもある。

風量が増えれば温度は下がり、イオン密度も低下する。
Panasonicではこの対策としてイオン発生器を2個搭載するなどしている。
しかしナノイーユニットはコスト的にも複数個の搭載が難しいようで、ナノイーヘアドライヤーは風量が少ない。

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