5.5合炊きの炊飯器で1合の米は炊けるか?

家電製品

これまで様々な炊飯器を使用してきた。
直近まで使っていたのはPanasonicのSR-SPX104で、”日本で一番売れた高級炊飯器”などと呼ばれたものである。
高価格機種(と言っても7万円弱)ということで、NFCによるスマートフォンのインタフェースが付いている。

これを使用すると米の銘柄別の設定が可能になったりする(「銘柄炊き分けコンシェルジュ」機能)のだが、銘柄よりもむしろ収穫からの保存期間の方の影響が大きい気がする。
保存期間が長くなると水分が抜けたり、幾分酸化が進んだりする。

炊飯方式としては圧力IHであり、公称5.5合炊きだ。

5.5合炊きの炊飯器に1合の米を入れると、内釜の底が見える程度にしかならない。

この炊飯器で3合くらいの米を炊くと、それまで使用していた三菱製炊飯器に比較して、明らかに美味しいご飯になった。
三菱製は通常のIH型だったので、圧力云々は伊達ではないのかなと思った次第だ。
しかしさすがに1合では厳しく、炊き上がりにムラが出る。

圧力を加える仕組みは、蓋の密閉度を上げて蒸気を逃がさないようにして内圧を上げる。
スチーム噴射もあるのだが、これの仕組みはよく分からない。
水を補充する必要は無いので、結露水か何かを使うのだろうか?

蓋には金属球によるバルブが付いている。

自重だけで圧力を管理しているわけではなく、ソレノイドでこの球のポジションを制御する。

少し見にくいと思うが、ソレノイドと鉄球の関係はこんな感じだ。

内蓋の釜側はこんな風になっている。
スチームは一体どこから??

最近は少量の米を炊くことが増えたので、新たに小型炊飯器を購入した。
選んだのは東芝のRC-6PXRで、実売価格は2万円前後である。
炊飯方式はPanasonic同様の圧力IHとなっているが、圧力自体は東芝の方が高く120kPa程度だそうだ。
なお圧力を上げていくと(温度が上がる為もあり)炊き上がったご飯が多少褐色になる。

東芝製も加圧の仕組み的には同じようなものだ。

内蓋には金属球があるが、容量が小さいからか1個だけである。

この金属球をソレノイドバルブで制御するのもPanasonic同様だ。

内蓋の裏側はこんな風になっている。

この両方の炊飯器を使って1合の米を炊いてみた。
一般的(代表的)な設定による炊飯時間は、Panasonicも東芝もほぼ変わらなかった。
なおPanasonicの高速炊飯モードは、かなり早く米を炊くことが出来るが、圧力制御やスチーム制御が行われなくなる。
これにより炊き上がったご飯を食べて違いが分かるくらい味が変わる。

炊き上がったご飯を器に移す。
こちらがPanasonicで炊いたものだ。

そしてこれが東芝で炊いたものである。

見た目は特に変わらない。
Panasonicの方は釜の部位(釜のどのあたりにあるご飯か)によって固さが異なる。
1合はもはや限界と言うことになる。

味や固さだが、Panasonicで炊いたものは明らかに固い。
分量を変えて炊飯してみると、低容量で炊くと固めになる傾向が分かった。
米の分量をセンシングする仕組みでも搭載すれば良いのに。
米の銘柄設定より(手動でも良いから)分量を都度設定できた方が役立つ。

東芝の方も3.5合炊きで1合しか炊いていないので、分量的にはベストではない。
ただし芯があるような炊き方にはならず、普通に炊くことが出来た。
東芝で炊いた方が米に若干甘みがあるかなとも思ったが、凄く差がある風ではない。
凄い差ではないのだが、逆に同じ米を炊いて甘みに差が出るのかと思った。

少なくとも1合の米を炊いた時の出来映えは、明らかに東芝の方が良い。
1合では内側の目盛りでは水の量が正確ではなくなる可能性があるので、双方共に研いだ米の量と、水の量を一定にして炊き比べた。

Panasonicの方は一応高価格機種だし、と言うことで先入観があったのだが、東芝の方が美味しいご飯が出来た。
以前にも少し書いたことがあるが、新しい炊飯器は美味しく炊ける(都市)伝説があるし、私自身もそれを感じている。
新たに購入した炊飯器は(設計が新しいこともあり)炊き上がりが良く感じる。
でも次に又新しい炊飯器を買うと、それの方が更に美味しく感じる。

これって新しい炊飯器が良いのではなく、炊飯器は古くなると味が落ちるのではないかと思うわけだ。
もしかしたら今回の味の違いも、その伝説を証明しただけかも知れない…

ここは標高が500mほどで、気圧は50hPaほど低い。
ポテトチップスの袋が幾分膨らんだり、カップ麺の蓋が少し膨らむ程度の圧力差があるので、台風が接近した時のような気圧だと思えば良い。
従って水の沸騰温度は2度弱低くなり、その為に炊き上がりに差が出る可能性がある。
圧力制御は絶対圧ではなくゲージ圧(鉄球の重さ?)ではないかと思われるからだ。

テストに使用した米は普通に売られている”あきたこまち”だったかな。
少し固めの歯ごたえがあるという“ななつぼし”でも試してみた。
固く炊ける事と芯があるのは全く異なり、Panasonicの炊飯器での少量炊きでは少し芯が残っているかなと感じる部分もあり、では固めに炊ける米ではどうなのかと思った次第である。

「ななつぼし」はこれまで食べていた「あきたこまち」よりも少しコシがある(というのかな、うどんやソバじゃないけど)感じで、しっかりした歯ごたえがある。
Panasonicの方は2合以上の分量で炊くと、どちらかというと柔らかめに炊ける。
東芝の方はごく普通の固さというか、Panasonic製で2合を炊いたときよりも固い。
なので、多少固めの米の性質と東芝製炊飯器の炊き上がり具合のマッチングが良いように感じる。

ななつぼしでは1合炊飯と2合炊飯で試したが、東芝の方は小型という事もあり1合でも2合でも炊き上がりに殆ど差がなかった。
Panasonic製はさすがに1合は厳しくて、2合で炊くと柔らかめ、1合で炊くと少し芯が残ったような固さのご飯になった。

以前に東芝の減圧ポンプ付き炊飯器を使ったこともある。
これは内釜内部を減圧して、米に多くの水を浸透させるギミックだったかな。
ただし他の炊飯器で炊いた米と比較して、極端に美味しいとは感じなかった。
さらにはポンプが壊れて、そうそうに廃棄される目に遭ったのである。

このPanasonicの炊飯器が2014年に発売開始されたと言うこと(入手はもう少し後)で、いわゆる高価格炊飯器が衰退し始める頃のモデルだ。
高価格炊飯器ブームの時には、各社とも内釜に凝るなどしていた。
Panasonicのこれもダイヤモンド何とかという内釜でそこそこ重い。
東芝の方はごく一般的な薄手の金属製で、凄く軽いわけではないがずっしりするような重さはない。

他にも土鍋風のものであったり、何層にもなっているものだったりと、内釜競争みたいなことが起きていた。
その後内釜競争が一段落すると、圧力方式などテクニカルな面での競争になる。
しかし平成不況が深刻化する中で高価格帯炊飯器の市場は急速に縮小してしまい、各社共に新規開発を停止する羽目になる。

現在売られている高価格帯炊飯器は当時の高級炊飯器のリファインであり、新たな研究は余りされていないとのことだ。

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