ベビーホイストを直す

ベビーホイストを直す

中華ウインチが壊れたので代わりを物色した。
工業用のウインチなど新品が買えるわけはなく、中古をあさる。
所がこれ、中古でも意外に高額なのだ。
そこで修理前提でジャンクに手を出す事にした。
直せればラッキー、直せなければ粗大ゴミである。

ジャンクの能書きはスイッチ不良となっていた。
このベビーホイストは有線接続のリモコンスイッチで操作するのだが、そのスイッチが不良らしい。
販売店は他にも多数のベビーホイストを扱っているので、常識的には他のスイッチを使ってチェックすると思う。
スイッチは壊れているのかも知れないが、それ以外の部分が正常かどうかも(ジャンクなので)分からない。
動作品なら4万円前後は覚悟しなければならない物なので、直ればお買い得だったねと喜べる。

配達されてきたベビーホイストを見る。
スイッチのケーブルに補修痕がある。
とりあえず動かしてみようか。
ブレーカ付きテーブルタップを使って電源を供給し、リモコンのボタンを押した。
テーブルタップの途中に15Aのブレーカーを入れたもので、怪しい機械を動かす時にはこれを使う事にしている。
ボタンを押すと、ブレーカは落ちずに普通に動く。
しかし何度か動作させていたら巻き取り方向には動かなくなった。
上ボタンを押しても下ボタンを押しても下になる。

これがスイッチ不良の正体なのか。
スイッチは、メカニカル的に両方は押せない仕組みだ。
更にテストしていると、コンセントのブレーカは切れないのだがUPSが異常を知らせる。
電源電圧が落ちるようだ。
この程度のモータの突入電流でAC電圧が落ちるとも考えにくい。
スイッチを押すと何がどう動くのか、本体の回路収納部分を開けてみる事にする。

内部と電気配線図

内部には巨大なリレーが二個と小さなリレーが2個入っている。
リモコンを操作するとリレーから火花が散る。
両方のリレーが一瞬同時に動く。

リレーは片側がUP用でもう片方がDown用、同時に動く事がないような回路にはなっている。
ただしリレーには動作時間が存在するので、一瞬同時に動いて短絡状態になる。

短絡状態になっても整流器が壊れないのは凄いなと思った。
メーカでも短絡状態になるテストは繰り返しているだろうが、何とも野蛮な感じだ。
リレー(コンタクタと呼ぶらしい)は200Aの耐電流があるので、そう簡単に壊れるようなものではない。

Up/Down両方のリレー(MC)が同時に動かないようにする回路は構成できないのか?
上の回路はUMCもDMCも対象になっている。
どちらかが優先ではなく、両方対等だ。
従ってスイッチの同時押しでは一瞬両方のリレーが動作する。

2個のリレーをUp用とDown用にするのではなく、1つにリレーはUp/Downの切り替えでもう一つのリレーはモーターのON/OFFのスイッチとして使えば原理的にショートはしなくなる。
リレーの接点数、リレーの個数、電気ブレーキ制御、リミットスイッチなど、制御の都合もあって現在の構成になっているのだろう。

リミットスイッチの所にあるリレーがこれだ。
配線図には示されていない。

Up/Down両方のリレーが同時に動かないように、リミットスイッチが入ったらパワーリレーを動作させないAND回路である。
リレーは24V用で、抵抗でドロップさせているのだろうか。
リレーはコイルものなので、直列抵抗を入れて疑似定電流ドライブをした方が動作速度が速くなる。

この小さなリレーと基板はプラスチックケースに充填剤で固定されている。
パワーリレーが同時に動くのが、この小さなリレー回路の不具合だとするとバラすのが面倒だなと思った。

パワーリレーは動作が目視できるようになっているのだが、同時に動作したあとで片方のリレーが元に戻る。
大型リレーはNC接点とNO接点が別にあるタイプなので、タイムラグがある。
パワーリレーを手動で動作させると、巻き上げ側も引き出し側も正常に動作した。

リミットスイッチ

リミットスイッチは2つ付いている。
片方は巻き過ぎ防止、もう片方は逆まき防止だ。

これはブレーキ用の抵抗だ。
メカニカルブレーキ・電気ブレーキ併用になっているらしい。

モーターは正転・逆転を行うためにDCモータが採用されている。
従って内部は全てDCで動作している。
DCラインに入れられた申し訳程度の電解コンデンサ…

パワーリレーもDC100Vで動作している。
共立のPT-3X型で、開閉容量30Aのモーター用コンタクタとなっている。
短時間(10秒)では200Aも電流を流せるのだそうだ。
部品価格は1万円前後である。

有線リモコンスイッチ

リモコンのコネクタを外すと3端子だった。
コモンと各スイッチの接点と見られるのだが、ボタンを押さなくても2本の線は導通している。
単なるモーメンタリーのスイッチではないのか?
リモコンを開けてテスターでチェックしてみる。

線を外してチェックすると、普通のモーメンタリーだ。
スイッチ部分のみは中華ものが安価だ。
メーカ純正品を買うとケーブル付きで1.5万円前後になる。

スイッチ自体は正常、しかし短絡が見られるので補修してある線の所でショートしているのか。

ビニールテープをほどいてみると、線をつないだ跡がある。
一応テープは巻いてあったが、どうやらここが短絡していたようだ。

圧着した部分から銅線がはみ出し、短絡したものと思われる。
単線の場合は圧着端子でも良いのだが、撚り線の場合は十分注意する必要がある。
圧着端子を使うのであれば、リンクのJST端子のようななもの(コネクタの中身みたいな形状)で接続して、熱収縮チューブをかぶせる方がスマートだ。

この線はやたら長いので、ここで切断して使う事にする。
ベビーホイスト本体に接続するコネクタにも補修痕がある。

テープを剥がしてみるとこんな感じになっていた。

他にも線が痛んだ場所がある。

コネクタのハウジングを外すと、半田付けした部分にビニルテープを巻いてある。
線をつないであったところは補修痕ではなく、電線自体を延長したのだ。
仕様ではリモコンの線は15mなのだが、簡易的に測ると約30mあった。

市販されている純正の延長ケーブルを使わずに、安易に線を延長した為のトラブルだった訳だ。
なおこの線にはあまり電流は流れない(リレーの駆動電流のみ)ので、線抵抗は無視できる。

どうにも出来が悪いので、線を短く切って半田付けし直した。

ブーツは破れていたので、短く切って再使用した。

出品者の能書き通りスイッチ部の不良だったが、スイッチ自体の不良ではなかった。
本体に異常はなく、異音もせずスムーズに動作している。
不思議遊星歯車はその構造上ガラガラと音がするが、このウインチはヘリカル歯車などの組み合わせだそうで、かなり静かに動く。

この手の機械なので補修部品の入手性は悪くないと思うのだが、パーツリストが見つからない。

リミットスイッチも正常だ。
ガイドローラーもベアリングのゴロゴロ感は無く、未だ使えそうである。

粉もの工場で使われていたようで、小麦粉のようなものが付着している。
あとで掃除をして注油もしておこうと思う。

最近のモデルはオイル交換用ドレンプラグがあるようなのだが、これには付いていない。
ギアケースごと開けるのか?と思ったのだが、ネジが固くて緩められない。
インパクトを使えば開くと思うのだが、オイルがドバッと出て来そうだ。
オイル交換が必要なのかどうか、どこかに情報があるか調べてみる。

整備記録のシールが何枚も貼られている。
最も日付の新しいものは平成26年なので、少なくとも7年前には整備がされている。
他の製品の取説では3年ごとにオーバーホールしろとなっている。
製造は1996年と書かれているので、実に25年も前のものなのだ。

中華ウインチは耐荷重公称約900kgでワイヤーは4.8mm、モーターは800Wで毎分約0.9mの巻上速度だ。
BH-815は耐荷重公称250kgでワイヤーは6mm、モーターは580Wで毎分12mの巻上速度となっている。
滑車で1/4の速度、毎分約3mの速度にすると牽引力は1tになる。

重さは19kgあり、運べないほど重くはないが気軽に運べる軽さでもない。
20リットルの灯油ポリタンクを運ぶようなものである。
形状的に持ちにくくはない(吊り下げ用フックの所が持ち手風になっている)が、地面に置く時に(置き型形状ではないため)気を使う。
材木か何かでガードを造っておいた方が良さそうだ。

実際に使ってみた

一通り整備が出来たので、中華ウインチが壊れる前にやっていた片付けを再開した。
中華ウインチでは引く事の出来なかった木があるのだが、これを引いてみる。
木の重さは数百kgだと思うが、これを持ち上げるのではなく水平に移動する。
枝などがあるのでそこそこ抵抗がある。
中華ウインチではモータがストールし、引く事が出来なかった。
そこで滑車を使い、牽引力を2倍にして引いていたところで中華ウインチは異音を発しはじめたのだ。

中華ウインチは推定400kgの牽引力があり、BH-815は250kgなのだから木を引く事が出来ずにオーバトルクリミッタが作動すると思った。
しかし何のことはなく木を引く事が出来た。
負荷がかかると多少モータの回転数がドロップするが、その程度でスルスルと木は動いた。

中華ウインチの牽引力の推定誤りだったのか。
モータが徐々に弱るとは考えにくいし、ギアが傷んだからと言って牽引力が低下するわけではない。
BH-815の定格は250kgだが、余裕度が大きいとか?

では引けないものを引くとどうなるのか。
切り倒した時に、他の木に引っかかった木がある。
中華ウインチに滑車を組み合わせ、力を4倍にしても引けなかった。
この木を引っ張ってみると、引っかかって絡まった部分は外れなかったが、幹は完全に地面から浮いた状態まで引く事が出来た。
ウインチのモータ回転数はドロップし、やがてワイヤーが巻かれなくなった。
オーバトルクリミッタが作動してクラッチが切れたのだ。
オーバトルクリミッタのクラッチは徐々にスリップするものかと思っていたのだが、カチッと音がしてモータとリールが切り離された感じになった。
モータは巻き取り方向にも繰り出し方向にも動くが、リールはブレーキが利いた状態でロックされている。

このロック状態を解除するには負荷を下げなければいけない。
そうは言ってもリールが動かないのだから負荷を切り離せない。
と言う事で、その引っかかった木の幹をチェーンソーで切断して負荷を切り離した。
負荷を切り離すとクラッチは元に戻った。

モーターの電流を監視すれば負荷の状態は推定できる。
LEDレベルメータか何かで電流値(負荷)を表示すると便利だ。

未知の荷重のものを引く時には、ターンバックルを入れて置いた方が良い。
ステンレス製ターンバックルだとM10ネジサイズのもので1.4t位まで耐える事が出来る。
(ターンバックルの構造、ネジの構造、材質によっても異なる)
ウインチの取説には、当然のことながら定格荷重のものは引くなと書いてある。

ホイストがあると何かと便利だ。
中華ウインチは引き上げ作業には使うなと書かれていた(ギアが壊れると荷が落ちて危険だから?)が、ホイストは荷吊り用の機械なので、荷揚げや荷下ろしに使える。
ホイストを吊す場所などを考える必要はあるが、セメントや砂利など買ってきたものを斜面に下ろす時などにも使えそうだ。

他に気になる部分

ワイヤーは16m長で、これは結構長い。
中華ウインチを使っている時にはワイヤーの長さが足りずに虎ロープの使っていた。
しかし15mあると虎ロープを使わなくても済んでしまう事が多い。
ワイヤーロープを引き出して点検すると、若干ダメージの見られるところがあった。
すぐに切れるような深刻なものではないが、交換しておいた方が良いだろう。
適合の麻芯入りワイヤーロープは2種類あり、径が5mmのものと6mmのものだ。
適合品は5mm径のもので品番は5X16MIWSC6X19BHN、耐荷重250kg/破断荷重1800kgとなっている。
6mmのものは耐荷重230kg/破断荷重1785kgだが長さが適合しない。

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