かなり前にJLCPCBに基板を発注した事がある。
今は有名になったが、当時は未だネームバリューも今ほどではなかった。
フリーの基板CADで作ったので不安ではあったが、想定通りのものが出来た。
話は私が中学生だった頃に遡るのだが、プリント基板を作りたくて大越電機製作所に依頼した。
手書きのパターン図を持っていくと、そこから写真製版で基板を作ってくれた。
最初はグラフ用紙に鉛筆でパターン図を書いたのだが、鉛筆だと光を反射してしまって綺麗な版が出来なかったそうだ。
それで大越電機の方が上から墨を塗ってくれて、基板を作って貰えた。
何故大越電機だったのか?
実は自宅が大越電機の近くで、自転車で行けたからなのだ。
何故基板を作ったか?
高周波関係の回路だったので、バラックで組むと特性が出ないかなと思ったからだ。
当時は技術的にも価格的にも両面基板のパターン図など書けなかったし、ストリップラインの概念すら分からないお年頃だったので、片面基板を作って貰った。
社会人になってからも仕事でも基板を作る、いや自分で作るわけではないので作って貰う事は多かった。
流れとしては回路図と部品データを基板設計屋さんに出して、基板設計屋さんがアートワークを行い、ガーバデータを基板製造会社に出して基板を作って貰う流れだ。
この工程は今でも変わっていないが、さすがに作業は効率的に行える。
アートワーク自体を自分でやった事もある。
高密度設計だと基板の配線ルールギリギリを攻める必要があったりするので、自分でレイアウト設計をした。
グラフ用紙に鉛筆で書いたものをアートワーク屋さんでガーバデータにして貰う事もあったし、CADで自分で設計してしまったものもあった。
今は基板の製造品質も良くなったが、昔は基板自体の不良があった。
断線や短絡、ようするにエッチング不良だ。
基板の不良があると製品は当然動作しない。
基板一枚の単価は安いが、それに部品の乗った製品は高額だ。
一枚の基板の不良のために製品が駄目になるので、不良率に関してはトラブルになる事があった。
基板屋は、チェッカを使って全数テストするからチェッカの製造代を寄こせという。
こちらとしては、品質管理の範疇なのだから基板屋がコストを負担すべきだと主張する。
結局その基板製造会社とは取引を中止したのだが、そんな事もあった。
ロジック回路は基板設計屋さんに任せっきりでも良いのだが、高周波回路やアナログ回路ではGNDの取り回しだとかインピーダンス設計もあるので指示が難しい。
それなりに経験のある設計屋さんだと話が通じるのだが、そうでない場合は細かく指示するよりも自分でレイアウトしてしまった方が早くて確実だ。
今はフリーのCADもあるので、両面基板程度であれば設計自体は個人でも出来るし、このあたりは慣れの部分も大きいのでやっていると上手になるものだ。
回路CAD連携で行くのなら、回路CADで回路図を書く→ネットリストを出力する→基板CADにネットリストと部品情報を読み込む→基板CADでレイアウト設計をする→ガーバデータを出力する→基板を発注するという流れになる。
ちょっとした回路で基板を作るのは(自分でやるので手間はともかくとして)コスト的問題がある。
いや、問題があったという方が正しいかも知れない。
で、最初に書いたJLCPCBに基板を発注した話になるのだが、当時としてはその安さに驚いた。
国内で基板を作ると結構な金額と納期が必要になる。
ガーバデータから写真を起こしてエッチングするわけで、その写真の段階で何万円かの費用がかかったからだ。
下はJLCPCBの例で、価格の安さと納期の短さは本当なのか?と思う程だった。
ここから新規登録すると$70のクーポンが貰えるそうだ。
結構大きな金額なので、今すぐ使わないにしても(期限があるかどうかは不明)登録しておくと良いかも知れない。

基板製造会社は一般的に量産基板を扱う。
試作専門の所もあるのだが、規模が小さいので価格が上がる。
量産基板屋さんは一部に試作ラインを持っているので、試作や枚数の少ない規模の製造はそのラインを使う。
そのラインが空いていれば製造はすぐに受け付けて貰えるが、混んでいると待ちが生じるので納期がかかる。
自動車用の燃料制御機器などを試作した20年くらい前は、両面基板で2週間くらいが標準的な納期だった。
これが4層や6層になると1ヶ月近くかかったのである。
だからJLCPCBの短納期がどういう仕組みになっているのか?試作ラインを多数持てば理屈の上では短納期が可能だが、ラインが空けば損失が生じる。
ホテルの満室率みたいなもので、満室になってもいけないしガラガラでもいけないという事だが、それをコントロールする事は事実上出来ない。
こうした工程に関しては聞いても教えて貰えないというか、企業秘密ではないにしてもトヨタの工程管理くらい重要なのだろう。
聞いたとしても「皆様の要求に応えるため、最善の努力をしております」みたいな答えが返ってくるに違いない。
昔の基板の製造工程というかコストを知らない人からすれば、JLCPCBの価格が普通だと感じるのかな。
時代が変わったと言えばそうなのだが、これでは日本の製造業が衰退するのは無理もない。
日本の製造業と言えば、これも以前に書いたかも知れないが、半導体の製造もある。
富士通やNECに半導体製造を依頼すると相当な時間がかかる。
セルベースでもフルカスタムでも、時間がかかって価格が高い。
同じものをTSMCに依頼すると、半分の価格で、半分の納期でやって貰える。
日本の大手企業の場合は手続き的な部分とか、代理店が間に入るとかで話が中々進まない。
これは部品でも同じ事で、国内メーカの半導体を買うのは事務的に結構面倒だ。
何にどれだけ使うのかとか、何ヶ月間使うのかとか、色々申請しなければいけない。
それに比較すると海外半導体は1個でも1万個でも発注すれば入ってくる。
国内の電子機器メーカが従来の部品商を使わず、インターネット発注するのはこのあたりの事情もある。
Panasonicはグループ内で半導体も作っているが、グループ内での発注は結構面倒なのだ。
なのでPanasonicの部品を使わずに他社の半導体を使う事があった。
JLCPCBのページを見ると3Dプリント代行事業も行っている。
金属3Dプリントも可能だそうで、スマートフォンくらいのサイズで1~2万円位らしい。
このあたりの話は機会があれば又後日。

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