バーダルD-A-Cを加圧注入する

自動車&バイク

エンジンの吸気系洗浄剤ではRECSが有名だが、バーダルD-A-CはRECSよりも古くから使われているものである。
成分はキシレン(有機溶剤)、メチルイソブチルカルビノール(発泡剤)、PEA(清浄剤)、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン(有機溶剤)、2-プロパノール(有機溶剤)、エチレングリコールモノブチルエーテル(有機溶剤)などで、有機溶剤でカーボンを溶かそうという製品である。

一般的車両の場合はマニホールド負圧を利用して吸引させるのだが、BMWのバルブトロニックエンジンは負圧がないので自己吸引は出来ない。
マニホールド負圧で吸わせる方法では、点滴の流量調整器を使ってRECSの添加量を調整し、同じく医療用の点滴器具であるエア溜め(たこ管)を利用して霧化させるというもの。
本来のたこ管はエア溜まりなのだが、RECS用の器具では底に穴を開けてエアミックス構造にしている。
RECSの注入キットは結構高額だが、医療用品を買えば極めて安価である。

しかしバルブトロニックエンジンは、吸気バルブのリフト量を可変してエンジン内への吸気制限を行う為、マニホールド負圧が(殆ど)発生しない。
従って洗浄液をマニホールドに吸い込ませる事が出来ない。

バルブトロニックエンジンには補助的なスロットルバルブが付いている。
バルブトロニックメカニズムが故障した時に、エンジンが全開運転になる事を防ぐ為だ。
従って、バルブトロニックを殺してしまうと普通のエンジン同様に負圧が発生すると考えられる。
バルブトロニックを殺すにはバルブトロニック制御用モータのコネクタを外せば良いのだが、アイドリング時にそれを行ってもバルブリフト量が最小の状態(スロットルバルブ全開でもアイドリングする状態)で固定されてしまうかも知れない。

そこで加圧注入する事を考えた。
ポンプで洗浄剤(今回使用するのはRECSではなくバーダルD-A-C)を加圧注入する。
単に加圧してマニホールドにポタポタ落としても良いのかも知れないし、実際そうした施工を行っている業者もある。
ディーゼルエンジンなどへの施工業者は、ボトルを手で握って加圧し、RECSを注入していく方法だったり、重力を利用して滴下させる方法を採っている。
なおディーゼルエンジンのマニホールドは、これでかなり綺麗になるとの写真があったが、ワコーズ自体は自己吸引出来るエンジン以外での施工は推奨していない。

ディーゼルエンジンに可燃性の洗浄剤を使うと、量にもよるがノッキングが起きる。
RECSやバーダルD-A-Cは可燃成分が少ないので、ディーゼルエンジンで使ってもノッキングが起きないそうだ。

ポンプは手持ちの小型のものを使用した。
タイヤに空気を入れたりするコンプレッサを持ち出したが、さすがに圧力が高くて扱いにくかった。

このコンプレッサはダイヤフラム式、ようするに金魚のエアポンプの大型版である。
最初は金魚のエアポンプを使ったが、流量が少なくて霧化状態が悪かった。
金魚のポンプを使うのであれば、大型で大容量のものを使う必要がある。

またエアブラシ用のポンプも比較的吐出量の多いものが安価で手に入る。
流量調整は水槽用のエア調整バルブが安価で使いやすい。

ポンプの圧力ゲージを見て分かるとおり、圧力調整バルブを殆ど絞りきった状態で使っているので、これほど大きなダイヤフラムポンプは必要ない事になる。

ポンプの吐出口を2分岐させて、一方をガス抜きバルブ付き洗浄びんに入れる。

洗浄びんのガス抜きバルブの部分の穴を利用して、ここからエアを入れる。
私は洗浄びんのエア抜きバルブ部分を外し、金魚のエアホース接続用のニップルを突っ込んだ。
漏れがないように、半田ごてで溶かして溶着する。

ガス抜き洗浄びんが加圧されるので、洗浄液の出口からバーダルD-A-Cが出てくる。
これはかなりの量になるので、流量を絞る必要がある。
細い管でもあれば良いのだが、適当なものが見当たらず…
そうだ!注射針を使ってみようと思いついた。
最初は27G(内径0.13mm)を使ったが流量が足りなかった。

いくつか取り替えながら実験すると、23G(内径0.33mm)が丁度良かった。
注射針が入手出来ない場合は、模型用の細いプラスチックパイプを加工しても良いだろう。
注射針は一般販売禁止物なのだが、実際には入手出来る。
先の尖っていないものであれば、普通に売られている

注射針をエアのみの流れるホースの適当な場所に挿す。
ここでエアのみが流れるホースに、バーダルD-A-Cが注入される。
しかしそれでは空気とバーダルD-A-Cは余り良く混ざらない。
そこでホースの先端にノズルをつける事にした。

ノズルは注射針のカバー?未使用注射針が入っている保護用のプラスチックを利用した。
このプラスチックに画鋲でいくつか穴を開けた。
この小さな穴から空気とバーダルD-A-Cの混合物が噴射される。

写真はスローシャッタを切っているので噴射量が多く見えるが、これで毎分約8mlである。
穴はいくつか開けたのだが、液体は一番出やすい穴から出ている感じだ。
圧力を上げると霧化状態は改善するが、ホース内圧力とボトル内圧力の差が小さくなるので噴霧量が減少する。

RECSの霧化状態を再現した動画があるが、霧状にはなっていない。
霧状にならなくて良いものなのか?
だからマニホールドなどに溜まり、エンジン回転を上げると白煙が出るのか。

準備が出来たのでエンジンに注入する。

マニホールド圧力センサは、樹脂製マニホールドに付いている。

ネジを外し、上と右横のロックを同時に外して引き抜く。

ここから入れるのだが、シリコンホースを曲げなければいけない。
そこでホースの中に針金(銅線)を入れて、形を作れるようにした。

手持ちの銅線がFケーブルの中身だけだったのでこれを使ったが、もう少し細い方が良い。

バーダルD-A-Cを洗浄びんに入れ、注入を開始する。

ホースを入れた部分から、わずかにエアを吸っていたのでテープで留めた。

テープが外れないように、布で抑える。

排ガスは多少臭いがあるが、黒煙も白煙も出ていない。
なお業者によっては、黒煙が出る事を「エンジン内部のカーボンが出てきている」などと説明するが、単に不完全燃焼が起きているだけで、単位時間あたりの注入量が多過ぎではないかと思う。
もくもく煙が出る位カーボンが取れる訳はないし、ガソリンエンジンに黒煙が出続けるほどのカーボンは溜まらない。

RECSの場合は白煙になるので、炭化水素成分か水溶性溶剤によるものだ。
これも単位時間あたりの注入量が多すぎるか、或いはマニホールド内に溜まったRECSが一気にエンジン内に吸入された時に起きている現象である。

30分ほど経過し、この程度まで減った。

たまにエンジン回転数を少し上げてみたが、アイドリング回転数+α程度を基本とした。

そもそも全気筒に均一に入るのかという問題も、ちょっと不安ではある。
そろそろ完了に近づいた頃、注射針を挿したあたりからバーダルD-A-Cが漏れていた。
50ml程度無駄にしたかも。

揮発性はそこそこあるようで、意外に早く乾いてしまった。

写真は施工前にバルブの様子だ。
ステムにカーボンが付いているのが分かるが、直噴エンジンとしては全体的に綺麗だ。
この画像ソフト、有料なのか…
マイクロカメラはスタンダードなものなので、他の画像ビューワでも見る事が出来る。
カメラは1.3千円程度で買った安物なので、画質だとかフォーカスは今ひとつである。

バーダルD-A-C使用直後である。
本来は数百km走行する事で(柔らかくなった?)カーボンが落ちるそうだ。
確かにカーボンが湿っているようには見えるが、明確に除去されたかと言えばそうでもない。

傘部分のカーボン落としに関しては、以前にBlogに書いたようにキャブクリーナの方が効果的だとも思える。
写真が非常に見にくいのだが、下の写真はキャブクリーナをマニホールドに噴射した直後のものだ。

ステムのカーボンは取り切れていないが、傘の部分は綺麗になっている。

このカメラは1.3千円程度で買った安物なので、解像度があまり高くはない。
先端の向きが変えられるカメラ極細チューブを使えば、カメラで見ながらバルブやステムにキャブクリーナを噴射する事が出来る。
このキャブクリーナはカーボン溶解性能が高い。

エンジン洗浄剤でエアコンの効きが良くなったとか、ブレーキが利くようになったとか、エンジン音が静かになったとか、燃費が良くなったとか、レスポンスが良くなったとか、様々な事が言われるのだが、そんな事はまず無い。

ディーゼルエンジン位のカーボン量であれば、それを排除することによる変化が感じられるとして、通常のガソリンエンジンでそこまで違いが出ることはあり得ない。
ただし一部の直噴エンジンに関しては、吸気バルブやポートの汚れによるスワールの変化でノッキングが起きる可能性があり、それが改善される事によるフィーリングの変化はあるかも知れない。

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