コンダクタンス方式の中華バッテリーテスタ

自動車&バイク

中華バッテリーテスタを買ってみた。
Amazonでも売られているが、Aliexpressで買った方が安い。
購入のきっかけとなったのは、内部の写真を掲載している人(海外の方)がいたためだ。
内部には抵抗があるように見えた。
通常バッテリーの内部抵抗測定はインピーダンス法で行われる。
インピーダンス法は1KHz~5KHz程度の交流によって、バッテリーの内部インピーダンスを測定する方法だ。

もう一つはコンダクタンス法と呼ばれるもので、バッテリーに負荷抵抗を接続して1A~5A程度の電流を流し、その時の電圧降下から内部抵抗(コンダクタンスなので内部導電率)を測定するものである。
コンダクタンス法はミドトロニクス(フランクリンエレクトリック)社の特許であり、他社に使用許諾していなかった(OEM/ODM販売はしている模様)と思う。
しかしそこは中華の世界であり、特許なんか関係ないよとばかりに使ってしまう。
結果としてミドトロニクス(フランクリンエレクトリック)社のバッテリーテスター(4万円前後)の1/20の価格(2千円前後)で売られるという訳だ。

これが本当にコンダクタンス方式なのかどうか、早速購入してみた。
開けてみると確かに抵抗が付いている。

表側はスイッチが付いているのみだ。
液晶パネルはフレキシブル基板で接続されている。

中華ものの常ではあるが、ケーブルの外径は太いが導体は細い。
これはバッテリーテスターなので未だ良いが、ブースタケーブル(ジャンプケーブル)などもこの調子で、線の外形は1cmもあるのに内部の線は細く、容易に溶断してしまうものもある。

またバッテリーテスターでも誤差が大きいもの、何を測っても同じような数値しか出ないものなどもある。

コンダクタンス方式では、負荷抵抗を接続したり切り離したりしながらバッテリー電圧を計測し、そこから内部抵抗を推定する。
この負荷の断続が低周波帯で行われるため、誤った説明では「低周波電流を流す」などと書かれているが、意味合いが全く異なる。
バッテリーテスター屋やSnapOnですら誤った説明をしている。

実際に電流が流れているのかどうか、バッテリーの端子電圧を計測してみた。
電圧降下が明確なように、AV4L-BS(12V/3Ahの原付用バッテリー)を使用した。
公称CCAは50A前後だと思うのだが、バッテリーテスターには91Aと表示された。

8ms(8192μsかも)ごとに負荷の断続が行われ、開放電圧と負荷接続時の電圧を計測している。
負荷の断続と測定は410ms(409.6msかも)の間行われる。

ゼロボルトラインがノイズっぽいのだが、それには理由がある。
オシロは最初はACカップリングで見たのだが、そうすると410msの間に電位が変動する。
仕方がないのでDCカップリングにするが、そうするとバッテリー電圧の12Vに対して変動電圧の100mVが小さく分解能が足りなくなる。

垂直軸分解能の高いオシロや、アナログオフセット値が大きく取れるオシロならなんと言う事はないが、手持ちのオシロでは観測が難しかった。
そこで定電圧電源からバッテリー電圧と同じ逆極性の電圧を出し、バッテリー電圧から12Vを引いた。
その定電圧電源系のノイズが少し見えているのである。

負荷抵抗で放電させるので、時間と共にバッテリー電圧は下がっていく。
そこで断続を繰り返してサンプリングしていく、これがコンダクタンス方式だ。

内部インピーダンス測定とコンダクタンス方式の計測差を見てみることにする。
内部インピーダンス測定はバッテリーが満充電でなければ誤差が増えると言われる。
またインピーダンス法では虚数分が誤差になる。
その為バッテリーの開放電圧で計測値に補正を加えているものもある。
今回は単純な交流計測による微小抵抗計と比較した。

最初に比較したのはスカイウエイブに2年ほど使用しているSUPER NATTOのバッテリーである。

インピーダンス測定では7.73mΩとなった。

コンダクタンス法では9.27mΩと計測された。

次に原付に使用している3Ahのバッテリーを測ってみる。
これは中古の原付に付いてきたもので、使用年月は不明だ。

インピーダンス計測では18.46mΩだった。

バッテリーテスターでは26.6mΩと計測された。

自動車用バッテリーは、中古のジムニーに付いてきたものである。
中古で購入してから5年が経過しているので、バッテリーとしてはそれ以上使い続けられていたはずだ。
多少セルが重いなと思うこともあったが、特別不具合はなかった。

インピーダンス法では7.39mΩとなった。
SUPER NATTOの10Ahのバッテリーと大差がない。

コンダクタンス法では9.57mΩとなった。

Panasonic caosはUPS用に5年ほど使用している。
常にフル充電状態なので傷みは多くはない。

インピーダンスは7.46mΩだった。

コンダクタンス法では7.98mΩと表示された。

4つのバッテリーに於いて、いずれもコンダクタンス法の方が内部抵抗が高く計測された。
状態が ×Poorとなっているが、単にイニシャル設定を無視しただけの話だ。
イニシャル設定は記憶してくれないので、毎回そのバッテリーのCCA値を入力する必要がある。

中華バッテリーテスターの精度は不明だが、いずれもその測定方式における正しい値だという事は出来る。
インピーダンス法ではバッテリーの充電率に敏感だそうで、コンダクタンス法は比較的ブロードだと言われる。
このため最近の充電制御車(ブレーキング時に充電電流を増やす)では、コンダクタンス法でない場合は、いったん満充電にしてから計測するなどの手間がかかるそうだ。

今回の測定ではPanasonicの60B24のみはUPS用として常に満充電近くになっていて、他のバッテリーは満充後数日が経過している。

バッテリーインピーダンス法コンダクタンス法計測数値比
ST12A-BS 10Ah7.73mΩ9.27mΩ83.4%
SV4L-BS 3Ah18.46mΩ26.6mΩ69.4%
G&Yu 60B24 36Ah7.39mΩ9.57mΩ77.2%
Panasonic 60B24 36Ah7.46mΩ7.98mΩ93.5%

インピーダンス法、コンダクタンス法に関する記述は誤っているものが非常に多い
誤った記述をコピーしてページを作っているとしか思えない。
正確な説明はHiokiの鉛蓄電池ハンドブック、古河電池テクニカルニュースなどを参照されたい。

バッテリーテスター自体の誤差を測ってみたいのだが、機材の関係で実現していない。
十分な安定度(過渡特性)を持った定電圧電源と、値の分かっている抵抗(例えば10mΩ)があれば測定が出来る。
このあたりは追って実験してみるかも知れない。

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