○山モリブデンの宣伝を見ると、「ブレーキローターやドラムにコーティングすると表面積が増えブレーキダストの軽減、鳴きの制御、片ぎきの防止、ブレーキタッチの向上などの効果が得られます。」と書かれている。 摩擦低減剤をブレーキに塗るのか…
他にATFに混ぜるとか二輪車に使うと良いと書かれているが、やめておいた方が良い。
ATFにしても二輪車の湿式多板クラッチにしてもオイルの剪断力を使うものなので、摩擦低減剤によって剪断力(或いはフリクションプレートの動摩擦抵抗)の減少が起きると、本来の性能が発揮出来なくなる。
ちなみに○山モリブデンは卸販売はせず、Amazonなどの通販では一切売らないと言っている。 モリブデン系添加剤は打音を小さくする効果があるので、タペットノイズが大きな車などには効果がある。
モリブデンの粒径は1μm程度、エンジンオイルフィルタは高性能なもので10μm前後、一般的には30μm程度とみられるので、フィルタに詰まる可能性は低い。 ガソリンタンクに入れるものもあるが、たぶん沈殿すると思うので入れない方が良い。
またモリブデンが水分を保持し、タンクの錆にも影響するという。
昔は二硫化モリブデン配合のエンジンオイルが売られていたが、やがて消えていった。
オイルの色が黒っぽいから嫌だとか、耐熱性の問題だとか、色々あったのだろう。
では現在のオイルにモリブデンが入っていないかというとそうでもなく、環境問題で使いにくくなった亜鉛の代用として、液体チタンと共に有機モリブデンも活躍している。 有機モリブデンは黄褐色でオイルが黒くなることはないが、モリブデンとして摩擦低減作用が期待出来るのは二硫化モリブデンだ。
オイルの中の有機モリブデンはブローバイガスやオイル中の硫黄分と一定以上の温度で結合し、二硫化モリブデンとして金属摺動面の摩擦抵抗を軽減する。
今でも存在しているのがマイクロロンだ。
これはPTFE系の添加剤で、かなり昔から売られている。
PTFEは基本的にオイルには溶けず、マイクロロンでは金属部に定着すると言っているが、PTFEはそう簡単には金属には付着しない。
例えばテフロン加工のフライパンは、バインダ(プライマみたいなもの)を塗り→焼成し→PTFEを塗り→焼成し→バインダを塗り→焼成し→PTFEを塗るという、面倒な工程で作られている。 こうしていかないと、十分な厚さのPTFE皮膜が作れないからだ。
基本的にPTFEは金属面にくっつかないので、サンドブラスト処理をした金属面にプライマを塗り、その上にPTFEを塗って焼き付ける。
PTFEはモリブデンより安価なので、モリブデン並みの摩擦低減効果があればPTE含有オイルが出来ても良さそうなものだ。
モリブデンのようにオイルが黒くなってしまうこともないし、沈殿に関してはモリブデンと同じようなものだ。
しかしPTFE含油エンジンオイルがないのは、高温安定性の問題や極圧性能の問題があるからだ。
またPTFEに含まれているPFOAの人体への影響が指摘されているので、PTFEのエンジンオイルへの添加の規制が行われるかも知れない。
エンジンにPTFEは殆ど効果はないと思っているが、軽負荷の摺動面などには摩擦軽減効果がある。
例えばX-Yステージのような可動テーブルとか、小型アクチュエータのシャフトなど、ただし表面にくっつくことがないので摩擦低減効果は一時的なものになる。
Youtuberが添加剤などの検証をしていて、実験の内容としては中々面白いものもある。
ただ知識が伴っていない人もいて、せっかくの実験の信頼性が低くなってしまっているのが残念だ。
実験時の条件が一定ではないなど、基本的なところが全く分かっていない。
○○を投入したから結果は次回の動画でというものもあるが、ライブ配信ではなく動画なのだから編集すれば良いだけである。
こうした動画に限って結果の報告動画がかなり後だったりして、これも信頼性を失わせる。
○○を入れて走ったら、燃費がスゴい事になった!
○○を入れたらまさかの事態に!
閲覧注意!プロが語る真実!○○添加剤の全て
オイル添加剤を入れたら驚きの結果に!
みたいなタイトル詐欺が氾濫している。
オイル添加剤を入れない時の燃費が13km/lで、添加剤を入れたら18km/lになったなんて動画もある。
添加剤を入れるとノッキング耐性が上がるので(何故?理由は語られていない)、ハイオク指定車がレギュラーガソリンで走れるとか、ハイオクを入れればパワーが上がると解説しているものもある。 安いオイルにワコーズの添加剤を入れると、最高級オイルと同等の性能になるよと言っているYoutuberもいる。
昔これを使ったことがある。
明確にブローバイの量が減るので、シール性の改善効果が高いのだろう。
結構ドロドロした、水飴風の添加剤だ。
粘度が多少上がるからか、タペットノイズも減少する。
KUREから液化チタン添加剤も発売されていて、特に低粘度オイル指定車に有効なのだとか。
液体チタンは摩耗防止剤、油膜強化の目的で入れられる。
従来は亜鉛やリンが配合されていたが、触媒やDPFへの影響で今は使うことが出来ない。
低粘度オイル全盛になり、燃費向上を謳う添加剤は減った。
反対にエンジンの長寿命化を狙うものが増えた感じがする。
ボルボのディーラだったか、今のエンジンは40万kmとか50万kmは持ちませんよと言っている。
フリクション低減、燃費向上の為の低粘度オイルはどうしても各部の摩耗が早まるからだそうだ。
ボルボも今は0W-20や0W-30(Castrol EDGE Professional Vかボルボブランドのオイルのみ)が指定されているが、5万kmを超えたら5W-30に、10万kmを超えたら従来車種同様の10W-40を使った方が良いと言っているディーラもある。
Castrol EDGE Professional VはCastrol EDGE ProfessionalともCastrol EDGEとも異なる。 データを見てもCCS粘度が異なる位なのだが、ACEAのデータに出てこない部分が違うのか?
なおランドローバの指定オイルはCastrol EDGE Professional ECとなっている。
一部トヨタディーラやマツダディーラはメーカ純正オイル以外にCastrol EDGE Professional Cを推奨している。 0W-20/0W-30粘度では、純正オイルより性能が良いのだとか。
ただこれ、基本的には一般市販されていない。
メルカリやヤフオクに、横流し品と思われるものが出品されることがあり、20リットルで2万円〜4万円の値が付く。
オイルは成分がバレてしまえば同じものが作れる。
なので○○オイルの偽物、みたいなものが作られる訳だ。
オイルは(食べ物の)カレーみたいなもので、ベースオイルの出汁の中に各種添加剤というスパイスを加えていく。
ベースオイルは牛肉の出汁だったり、豚肉だったり、鶏肉だったりする。
そこに数々の添加剤を入れて味を決める訳だが、その添加剤だけを瓶詰めして売るのがオイル添加剤だ。
二硫化モリブデンと同等以上の摩擦低減効果と、モリブデン以上の化学的安定性を誇る二硫化タングステン添加剤も売られている。
これも二硫化モリブデン同様真っ黒なので、それが嫌でなければ使う価値はあるかも。
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