福井県JAの宮田会長によれば、米の価格が下がると農家は廃業せざるを得ないという。
JAなので流通コストの見直しなどに触れることは出来ず、JAの米買い取り価格にのみ焦点を当てる。
米価が上がるとJAに米を売る農家が少なくなり、JAが儲からなくなる。
結局の所米農家云々ではなく、自分たちの組織だとかシステムの為の発言だろう。

福井県は全国で平均22位の米生産県なので、余り目立たない存在ではある。
米の生産は2014年からの10年間で微増している。
米の生産者価格はどうかというと、60kgあたり1.2万円~1.6万円位だ。
この価格において生産量は微増しているのだから、宮田氏による”米価が下がると農家は廃業に追い込まれる”のは嘘だと分かる。

現状では60kgあたりの価格は2.6万円位なので、例年の1.7倍位になっている。
生産者は例年の1.7倍の価格で米を売るが、消費者は例年の2.8倍の価格で米を買う。
だから流通の透明度を上げれば良いのだが、JA的には利益の分散システムなので公にはしにくい。

2022年頃の米の小売価格は10kgで3千円~4千円だった。
5kgだと多少割高になり、1.7千円~2.2千円位だろうか。
これでは生産者は儲からない、もっと価格を上げろという。
生産者の出荷価格は2.2万円がリミットだ、それより下がると赤字だとJAは言っている。
まあJAの言う事なので話半分以下で聞いた方が良い。
米農家が10年以上も赤字続きで米を作り続けているのはおかしな話で、ボランティアではないのだから従来の生産者米価で儲けは出ている。
ではJAの言うとおり60kgあたりの出荷額を2.2万円に、つまりこれまでの1.5倍にしたとする。
流通の仕組みを現在と変えなければ、消費者米価は10kgあたり4.5千円~6千円になる。
ざっくり現在の半値なのだが、この位であれば許容できるかも知れない。
公益社団法人 米穀安定供給確保支援機構によるとご飯1膳の価格は44円なのだそうだ。
これは総務省 小売物価統計調査(2024年)のデータが元になっていて、米の小売価格を5kgあたり約2.9千円で計算している。
現在の価格ベースで行くと1膳あたり60円弱になる。
だったら米食ではなくパン食の方が安い?
パンの価格も様々なのだが、8枚切り2枚だと30円~50円位ではないだろうか。
ちなみにパン1斤の大きさは決まっていない。
日本の昔の単位で行くと1斤は160匁(もんめ)なので600gになる。
でもパンって欧米からやって来たものだから、ヤードポンド法だよね、だったら450g?
じゃあ一応基準を決めましょうという事で「日本パン公正取引委員会」が、1斤の定義を340g以上と定めた。
340gではなく340g以上なら良いのだそうだ。
パンの話になってしまったのだが、価格競争力を考えるとJAの言うような米価格では消費は落ちる。
そうでなくても米の消費量は年々下がっている。

人口の減少も勿論あるのだが、食べ物の多様化による米消費量の減少は明確なのだ。
生産者がものを高く売りたいのは当たり前で、牛乳だって現在の価格ではなく1リットル1万円で売りたいに違いない。
しかし需給のバランスというものがあるので好き勝手には出来ない。
米だって決して例外ではなく、高値安定となれば更に米の消費量が減る方向しか見えてこない。
コメント