ワクチン保管用冷凍庫が売られている

TWINBIRDのSC-DF25WLは新型コロナウイルス用のワクチン保管庫として使われていたものだ。
これがリサイクルショップなどに大量に流れ、うまくすると1万円台で買える。

仕様的には消費電力が48Wでヘリウムガス使用となっているので、スターリングコンプレッサによる冷凍機と考えられる。
スターリングコンプレッサは対向ピストン・シリンダみたいなもので構成されている。
作動解説はこちらのページ(下の図も同様)が実際の構成を示している。

その9 フリーピストンスターリング冷凍機の動作原理_e0245507_12352216.gif

オレンジ色のピストンが左に移動すると、オレンジ色のピストンと緑のピストンで挟まれた空間容積が減少して圧縮が起きる。
圧縮熱はシリンダからも放熱されるのだが、冷媒自体は蓄冷材を通って緑のピストンの左側の部屋に集まる。
緑色のピストンの左側に集まった気体は、緑のピストンが右に移動すると断熱膨張が起きて温度が下がる。

緑のピストンが左に移動すると、低温の冷媒は蓄熱材を通って緑のピストンの右側に移動する。
この時に蓄熱材が冷えるので、次のサイクルの冷媒冷却の準備が出来る。
放熱がゼロの場合は温度平衡になるだけだが、最初の断熱圧縮時点で発生した熱をシリンダ外に放熱することで、その分だけ冷却部が冷える仕組みだ。

こちらの説明の方が分かりやすいかな?

スターリングコンプレッサは冷却部の温度をかなり下げることが出来るので、超伝導にも使われている。
ただ往復運動による音と振動が大きいとか、大型化(熱容量の大きなもの)が難しいなどがある。

販売されているものは消費電力が最大で48Wなので、冷却能力は20W位ではないだろうか。
ただ冷凍庫の中に入れるもの自体が発熱しなければ、冷凍庫の断熱性能との平衡点まで温度は下がる。
例えば1リットルの水(25℃)を-40℃に冷やすためには、150Wh程度が必要になる。
この冷凍庫の出力が20Wだとすると、7時間以上かかる。

この冷凍庫は-40度までしか下げられないが、コンプレッサ型冷凍庫でも-60℃以下まで冷やせるものがある。
スターリングコンプレッサの神髄は-100℃以下への冷却ではないだろうか。
スターリングコンプレッサはシリンダ冷却が要なので、シリンダ部をコンプレッサ型冷凍機で冷やすタイプもある。

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