電気柵の製作

電気柵の製作

電気柵用の電源はどう考えたって電気柵用の電源だ。
電気柵というのは柵に電圧を印加したものであるから、柵そのものを表すのだ。
しかし巷では電気柵電源のことを”電気柵”と呼んでいる。
つまりこれは、電気柵用電源の製作ではなく、”電気柵の製作”になる。

コイツの回路は”電気柵の回路”になるわけで、柵の回路?と私自身は思うのだが世間が電気柵と呼んでいるのだから仕方がない。
タイトルの”電気柵の製作”をそのまま読めば、柵を張り巡らす作業を言う。
だが世間では電気柵用電源の製作の意味になるそうだ。

現在使っている電気柵用電源は、シグナスX用のCDIとして作ったものの流用である。
中華HIDのトランスを使って作ったもので、今のところ問題なく動作している。
しかしこれが壊れると鹿の侵入を許すことになってしまうので、予備を作っておく事にした。

中華HIDのトランスを使って作り直しても良いのだが、安価な中華DC-DCコンバータが売られているので、それを使う事にする。
市販のパーツを使って、手間をかけずに機能を実現することにする。

回路は以前に書いたものを基本とする。
DC-DCコンバータの改造は、出力平滑用コンデンサ部分と両波整流化する事だけだ。
両波整流にしなくても動作はするが、せっかく2巻き線あるので両方使ってやろうと思っただけである。

なおDC-DCコンバータは無改造でも使える。

電気柵回路(その1)

今回最初に製作する回路図は以下のものだ。
DC-DC ConverterTimerも中華市販品である。
トランスには自動車用のイグニションコイルを使う。

C1は耐圧400V以上で容量4μF~6μFのフィルムコンデンサ
Q1は600V/25AクラスのSCRなら何でも良い
R1/R2は1/4Wか1/8Wのカーボン抵抗
C2は0.01μF/16V以上のセラミックコンデンサ
C3は0.1μF/50V以上のフィルムコンデンサ

中華HIDのトランスを使って同様のものを作るのも一つの方法だが、前回回路図を書いたように市販品の組み合わせをやってみようか。

DC-DCコンバータには中華市販品を使う。

前回リンクしたものは1,899円だったが、同じものが860円だったので注文した。

マイナス側の整流器とコンデンサの付いていないものは760円である。

これでも良いと思うのだが、マイナス側のダイオードをひっくり返して両波整流にしてみる予定なので±出力のものを注文した。

最大出力電圧は390Vで、足りないようなら+/-両側を使う。

https://fnf.seesaa.net/article/476661760.html

一次高圧発生用DC-DCコンバータ

やたら長い納期が書かれていたのだが、注文後2週間ほどで配達されてきた。

フラックスの洗浄にアルコールを使っているのだろうか。
半田面が汚い。

スイッチングコンバータのデバイスはUC3843Aだ。

スイッチングを停止させる端子があれば、SCRのトリガタイミングでDC-DCコンバータを停止させたい。
しかし簡単にできる端子がない。
基板上にはON/OFFのジャンパがあるが、うまく行かなかった(後述)。

実際に動作させるとSCRがトリガした時、瞬間的ではあるが消費電流がかなり増えるので、この点は何とかしたい。
直列コイルなどで対策する手もあるが、出来ればDC-DCコンバータの動作を止めたい。

DC-DCコンバータの検証

DC-DCコンバータはフライバックトランス式で、トランスの二次側はセンタータップがGND、巻き線の両側に整流器があり10μF/400Vの電解コンデンサで平滑している。
その電圧を分圧してオペアンプに入力し、定電圧化を行っている。

電気柵用としてはSCRでDC-DCコンバータの出力をショートさせるので、この平滑用のコンデンサは、本来は不要だ。
不要というか、付けたままではSCRに大電流が流れ込む。

しかしこのDC-DCコンバータはスイッチングノイズの漏洩が大きく、多少コンデンサを付けておかないと制御がうまく行かない。
仕方がないので0.47μFを付ける事にする。
しかしここにコンデンサを付けると、SCRはコンデンサをダイレクトに放電しようとしてSCRに過大な電流が流れる。

出力側は±出力となっている。
トランスのセンタータップがGNDで、巻き線の両側を半波整流している。
電気柵用として±電源は不要なので、ダイオードの向きを反対にして両波整流にする。
マイナス側にも10μFのコンデンサがあるのでこれも外す。

コンデンサが全くないとDC-DCコンバータの電圧制御が効かなくなるので、0.47μF/630Vのコンデンサを入れておく。
片側だけを使う場合は0.47μFを入れた側の端子から、両側を使うならば1番と3番端子を短絡して使えば良い。
本来ここにコンデンサは入れられない(SCRが壊れる)ので、SCRとの間に200Ωの抵抗を入れる事にする。

DC-DCコンバータとSCRの間に220Ωを入れれば、10μFの電解コンデンサは外さないままでも動作させることが出来る。
ただSCRがONになった時に10μFのコンデンサの電化が殆ど抜けるので、チャージに時間を要する。
DC-DCコンバータの電源直列抵抗は後述するが、これがないとオーバーシュートで壊れる。

DC-DCコンバータを止める事にする

DC-DCコンバータを止めなくても動作はするのだが、SCRで出力を短絡するために大きな電流が流れる。
キャパシタディスチャージ方式は、SCRによってDC-DCコンバータの出力を短絡させるように働く。
SCRがONの時間は短いのだが、DC-DCコンバータの出力がショートされるのだから消費電流は増える。

DC-DCコンバータに1つのジャンパピンがある。
シルクはON/OFFと書かれている。
この品物の説明にはなかったのだが、他のものを見るとリモートON/OFF端子だと書かれている。
だったらここを使えば良いではないか。
この端子をLowレベルにすると動作、オープンにすると停止する。
オープンで約0.7Vの電圧が出て来ている。

この端子をスタティックにテストすると、確かにDC-DCコンバータのON/OFFが可能だ。
しかし実際に動作させると反応が遅く、SCRのONにDC-DCコンバータのOFFが全く間に合わない。

仕方がないのでDC-DCコンバータの電源を切ってしまうことにした。
何とも美しくない方法である。
パワー系というか電源をON/OFFするなど、エレガントとは言えないが仕方がない。

電源を切っても、DC-DCコンバータには電解コンデンサがあり、その電荷分だけDC-DCコンバータは動作し続けることになる。
細かく言えばSCRのONは速いがDC-DCコンバータのOFFは少し遅れるので、その間にもDC-DCコンバータの消費電力は増える。

スイッチ用トランジスタのベースにC/Rで時定数を持たせているが、DC-DCコンバータの電源に電解コンデンサが入っていて、これによる突入電流を軽減するためだ。
電解コンデンサはDC-DCコンバータのON/OFFごとに充放電を繰り返すわけで、ESRが大きいので発熱する可能性がある。
なので、多少の時定数を持たせておいた。

回路を作れば何でも出来る(余談)

本来であれば、DC-DCコンバータを停止し→SCRをトリガし→DC-DCコンバータを動作させるというタイミングを組むのが正しい。
こうしたロジックを組めばタイミングに余裕が出来るので、DC-DCコンバータ基板のON/OFF端子を使う事が出来る。

ならば中華タイマーを使わずにNE555で1秒のタイマとワンショットを組めば良いとなってしまう。
回路図中のインバータはトランジスタにするとしても、部品点数と組み立て工数を我慢すれば何でも出来る。
更に部品コストはNE555の方がずっと安く、DC-DCコンバータの消費電流も減らせる。

いや、だったらDC-DCコンバータも作ってしまった方が…
となるのだ。
だが今回は出来るだけ市販のもので簡単にがコンセプトなので、ここまではやらなかったという話である。

NE555を並べるならばPICなど、ワンチップコントローラを使えばもっと簡単だ。
ソフトウエアコントロールならば設定自由度も大きくなる。
しかしマイクロコントローラは暴走の危険がある。
ウォッチドック回路を付けるなど、安全対策が必要になる。

PICを使えば回路は簡単(余談)

自作の場合はPICの書き込みに関するものなど、多少の機材も必要だし開発ソフトのインストールなども要る。
これらを既に持っている、或いは準備することが気にならないならPICは簡単だ。
PICで作ればDC-DCコンバータも含め、回路はかなり単純化出来る。

PICの開発環境を準備して何に使うかと言われると困る。
PICを使ってみるためだけにPICの開発環境を用意するみたいになる。
まあ、それでも安いものだからやってみようか。
PICのデバイス単体だと100円位で買えるのだから。
この辺りは又別の記事で紹介する。

しかしマイクロコントローラは、高圧放電パルスなどのノイズで簡単に暴走してしまう。
柵線が接続されて一定の負荷があればノイズはそう大きくはないが、柵線に草が触れるなどして放電が起きると盛大なノイズがまき散らされる。
それが柵線に乗ってくるのだから、ノイズと暴走対策は厳重にする必要がある。

今回の中華DC-DCコンバータでは、放電用キャパシタのチャージ時間が遅いので連続放電する可能性は低いとは言え、実はDC-DCコンバータの駆動周波数をそのままイグニションコイルに印加するとイグニションコイルがDC-DCコンバータのスイッチング周波数でドライブされる。

整流用ダイオードがショートモードで壊れSCRがオープンモードで壊れると、柵線には(通常より電圧はかなり低いとは言え)電圧がかかりっぱなしになる。
(触れば刺激を感じる)

市販の電気柵用電源の多くがハードロジック構成なのは、マイクロコントローラの暴走による事故を回避しにくい事情があるのかも知れない。

以下はPICを使った場合の回路だ。

DC-DCコンバータのMOS-FETドライブもPICから行う。
DC-DCコンバータの出力電圧をモニタし、規定電圧になったらDC-DCコンバータを停止させる。
1秒に1回、SCRをトリガして高電圧を発生させる。
高電圧をモニタし、柵線の異常などを検出する。
ピークホールドを行わなくても、PICのADCが数マイクロ秒で変換出来るので、二次高圧波形の取得くらい出来そうな気がする。

波形取得が出来ると、波形を解析してリークやショートの状態を推定出来る。
また一次高圧と二次高圧の比較でも、柵線のリークや短絡或いは断線を検出出来る。
I2C接続のLCDでも付けておけば、各ステータスの表示が出来る。

この回路には書いていないが、PIC用の電源回路やウォッチドッグが必要だ。
PIC内蔵のウォッチドッグもあるが、それ自体も動作しなくなることがあるので外部に回路を設けておいた方が安心出来る。
さらに複数回リセットをかけても正常動作に至らない場合は、アラートを出して動作を完全に停止させるなども必要だ。

PICのインストラクションを少し見てみた。
fレジスタというヤツがアキュムレータみたいなものか。
しかしアセンブラの資料は余り無く、多くの人がCで書いているようだ。
この手のビット処理とか簡単なリアルタイム処理はアセンブラの方が効率的だと思うんだけど。

処理は難しいものではなく、DC-DCコンバータはハードウエアタイマの出力を使えば(そう言う機能があれば)良い。
周波数はトランス依存なので、中華HIDのトランスを使うなら数十KHzになる。

5msごとにタイマ割り込みを入れて、その中でDC-DCの電圧チェックとタイマー出力のON/OFFを行えば良いだろう。
割り込みの19回目でDC-DCコンバータ用MOS-FETをOFFにし、割り込み20回目でSCRをトリガし、柵線電圧ADC(変換値をDMA)をスタートさせ、割り込みカウンタをゼロにリセット。
割り込み1回目で柵線電圧ADCを停止し、DC-DCコンバータ用MOS-FETをイネーブルにしてDC-DCの電圧チェック開始。

DC-DCコンバータ用MOS-FETのドライブ波形が制御出来れば、電圧上昇をPID制御っぽく出来る。
メインルーチンは暇なのでADCの数値をチェックしたりの、時間に関係のない処理を行う。

綿密なDC-DCコンバータの電圧制御を行うには、ADC割り込みでも使ってDC-DCコンバータ用MOS-FETの駆動パルスを調整する必要があるが、このDC-DCコンバータはディスチャージ用コンデンサを充電した後は(殆ど)無負荷になるので、5msごとの制御で行けると思う。

電気柵回路(その2)

SCRのトリガでDC-DCコンバータの電源を切る回路を追加した。
DC-DCコンバータとSCRの間に220Ω/5Wの抵抗を入れた。
DC-DCコンバータに平滑用コンデンサを入れたためで、この抵抗がないとSCRが壊れる。

電気柵回路

二次電圧立ち上がり時間

電圧がゼロに下がっている部分(立ち下がり部分)がSCRのトリガ点だ。
中華タイマーのリレーがON時間分だけDC-DCコンバータが休止し、その後動作を再開する。
二次電圧の立ち上がりは0.47μFを付けた時が最も早く、設定値である360Vまで上がる。
コンデンサがない場合、10μFの場合は休止時間の1秒間の間に360Vまで上がらない。
10μF接続時は時定数のため、コンデンサがない場合はピークが設定電圧に達してDC-DCコンバータの稼働率が低下するためだろう。
DC-DCコンバータの電源直列抵抗に関しては後述する。

測定条件
コンデンサ:なし
DC-DCコンバータとSCRの抵抗:なし
DC-DCコンバータの電源直列抵抗:10Ω

測定条件
コンデンサ:0.47μF
DC-DCコンバータとSCRの抵抗:200Ω
DC-DCコンバータの電源直列抵抗:10Ω

測定条件
コンデンサ:10μF(オリジナル回路のまま)
DC-DCコンバータとSCRの抵抗:200Ω
DC-DCコンバータの電源直列抵抗:10Ω

オーバーシュートが問題だ

元々電源に付いていた10μFを外す或いは0.47μFに交換して、長時間に於ける無負荷時の電圧変動を見てみた。
DC-DCコンバータの電源に直列抵抗は取り付けていない。

電圧は低く設定してある。
DC-DCコンバータ基板の半固定VRによって電圧は調整出来る。
コンデンサを接続しない場合はスイッチングノイズが観測出来る。
DC-DCコンバータが稼働すると出力電圧が上昇しすぎ、DC-DCコンバータは停止するが、無負荷なので電圧が中々下がってこない。
ようするにオーバシュートが過大なのだ。

電圧が下がるとスイッチング動作を開始するが派手にオーバシュートする。
負荷を重くすればリップルは少なくなる。
コンデンサを10μFにしてみると…

スイッチングノイズがなくなり、周期が変わった。
しかしリップルは多い。
このオーバーシュートは問題だ。

無負荷で使っているために、スイッチングコンバータが一瞬でも動作すると電圧が上がってしまう事がリップルの原因だ。
制御レスポンスや誤差増幅部分の時定数の問題だろう。
かといって、無駄に負荷を加えるのは電力の無駄だ。

それでも基板上ではブリード抵抗があるので、完全な無負荷というわけではない。

キャパシタディスチャージユニット

次にSCR周りを作る。
何故細い基板に作ったかというと、この基板の切れ端があったからである。

SCRは600V/25A品である。
現在SCF25C60は秋月では売られていないが、他の品番で同規格のものがある。
このクラスのものであれば何でも使える。

SCRが1個付いて、ダイオードとC/Rだけなので簡単なものだ。
これをDC-DCコンバータ、そしてイグニションコイルと接続する。

コンデンサは(実験用として手元にあったもの)2μFと小さい。
DC-DCコンバータに付いていた10μFは電解コンデンサなので使えない。
電解コンデンサではESRが大きく、エネルギを効率よくコイルに送り込めない。
また繰り返し使うと発熱して特性が劣化する。
ディスチャージ用コンデンサはフィルムコンデンサを使う。

下の写真はこの電気柵用電源に使うために購入したコンデンサだ。
モーター用進相のコンデンサで、インダクションモータの回転方向を決めるためのものであり、力率改善用コンデンサではない。
力率改善用コンデンサはもっと大容量のものが使われ、オイルコンデンサが多いと思う。

電気柵を1秒に1回トリガするために、中華タイマーを使用した。
トリガモードやワンショットモードなども選べるが、インターバルタイマとして動作させれば良い。
ノイズなどでの誤動作は見られないが、電源端子には一応0.1μFのコンデンサを入れておいた。

ケースに入れる

今回購入した部品の中で最も高額なものがケースかも知れない。
穴を開けてスタッドを立てる。

仮に基板を乗せて干渉などがないことを確認する。
ケースの寸法に対してコンデンサの高さはギリギリ、数mmしか余裕はない。

配線を完了して動作チェックをする。
電源の線とイグニションコイルに行く線はどうするかなぁ。
コネクタにするまでもないというか、コネクタにするなら防滴のものでないと。
陸端が付けられている電気柵用電源は多いが、アレは圧着端子を使って接続しないと、線を絡めてネジを締めただけだと外れやすい。

タイマーユニットはP-2がインターバルタイマーモードだ。
一番左側のスイッチの長押しで動作モードを決定する。
中央のスイッチが時間の設定モードに入れるもので、一番右のスイッチで時間の数字をインクリメントする。
小数点の位置でデクリメント時間の単位が変わる。

小数点を一番左の桁と中央の桁の間にした時に、最小桁が10msでデクリメントされる。
従って設定を”1.00″にした時に休止時間が1秒になる。
青いLEDが点灯している時がリレーが動作する時間で、リレーなので100ms位にしておくのが良い。
トータル1秒にするには休止時間を”0.90″にして動作時間を”0.10″にする。

DC-DCコンバータの電源制御部分はラグ板に配置した。

このほかに10Ωのホーロー抵抗(手持ちの関係)と220Ωのセメント抵抗(同)の配置も考える。

イグニションコイルへの電流を測ってみた。
電流検出抵抗に0.33Ωを使ったので、ピーク電流は約7.6A程になる。
イグニションコイルの二次側をオープンにした時には、コイルの一時電流のピークは80A近くになった。
SCRは60Hzの半サイクル時間において275Aを許容しているので規格内である。

イグニションコイルと放電時間の関係はこちらに書いている。
ホンダのカブ用イグニションコイルは非常にインダクタンスが小さく、SCRの電流が過大になる可能性がある。
閉磁路コイルとしては、大きな点火出力の必要なロータリーエンジン用が良いのではないかと思うのだが、未だ実験したことはない。

電源トランスに関しても実験してみた。
2次側に電気柵用電源を接続し、一次側(本来のAC100V側)の電圧を測った。
一次側の電圧が6kV~8kVならば線間などでの放電はなかった。
電圧が8kVを超えると線間やコアとの間で放電が起き始め、10kVを超えると常に放電していた。

電圧を下げれば使えそうな気もするが、インダクタンスが小さいので放電時間が極めて短い。
イグニションコイルでは数百μsの放電時間が得られるが、電源トランスではその1/10以下の放電時間だった。

電気柵は日中は通電を止めるタイプのものもある。
本回路ではこれを考慮していないが、ソーラーパネルとバッテリーから電源を取るのであれば、チャージコントローラに光センサやタイマー機能の付いたものがあるので利用出来る。

DC-DCコンバータが壊れた

ケースに入れた状態で連続動作させておいた。
しばらくしてチェックすると定電圧電源の電流が異常だ。
DC-DCコンバータのトランスが発熱している。
何が起きたのか?

チェックしてみるとDC-DCコンバータの高圧整流用ダイオードが壊れていた。
SCRで出力を短絡しているのは事実だが、そんな電流で壊れるだろうか?
とにかく壊れたものは仕方がないので、手持ちのファストリカバリダイオードに交換した。

そしてまたしばらく動作させておくと、又々電流が異常に多い。
ダイオードは壊れていないし、ジャンパでON/OFFが効くのでトランスをドライブしているFETが短絡したわけではなさそうだ。
というか、短絡であればもっと電流が流れるはず。

どこが壊れたのだろう?
何か異常発振しているような感じだ。
壊れたものは仕方がないが、直せるものなら直してみたい。
と言うことでケースから外して電源を加えると、動作するではないか。
何度か実験すると、デバイスが温まると異常発振するようなのだ。

オシロを接続したまましばらく動作させていると、恐ろしいことが判明した。
DC-DCコンバータの出力電圧制御が効かなくなり、900V以上の電圧が出ることがある。
電圧調整VRで電圧を下げていくと、だいたい250V位の所で制御が効くようになる。
そこから徐々に電圧を上げると(冷えている時は)300V位まではVR回転角と比例的に電圧が上がるが、それ以上VRを回すと900Vになってしまう。
そして温度が上がってくると900Vのままになる。

ダイオードが壊れた原因はこれだろう。
過大電圧が印加されて逆耐圧を超えた。
基板に実装されている電解コンデンサでさえ400V品(DC-DCコンバータの定格出力電圧は390V)とギリギリなのだ。

SCRは壊れなかったがターンOFF出来なくなり、電流が流れっぱなしになっていた。
コンデンサが良く耐えたなと、いや、もしかしたら容量が減っているかも知れない。
フィルムコンデンサは内部で破壊が起きるとオープンモードで壊れていき、静電容量が減少する。

電圧が上がってしまう原因だが、DC-DCコンバータをOFF→ONにした時に(最初は電圧がゼロなので)フルパワーで動く。
負荷が接続されていれば、負荷電流が流れるので電圧は落ち着くのだろうが、この方式の場合はディスチャージ用のコンデンサ(6μF)をチャージする電流だけなので負荷が軽い。
予備実験の時にも派手にオーバシュートしていたが、更に激しいオーバシュートが起きることが分かった。
電圧制御は、この二次電圧を分圧してオペアンプに入れている。
それは900Vにもなるとラッチアップ的な状態になって制御不能になるのではないか?

ブリーダ抵抗を付けて電流を流してみた。
33kΩを入れると300V位までは安定するようになった。
しかし33kΩに300Vなので9mAも流すことになる。
3W近くも無駄に消費させるのはダメだろう。

オーバーシュート対策と安全策

電源電圧をゆっくり立ち上げるとオーバシュートしない。
電源電圧が低ければ、オーバシュートするほどDC-DCコンバータにパワーが与えられていない。
そこでトランジスタによるDC-DCコンバータの電源スイッチ回路に時定数を持たせてみたが、これはうまく行かなかった。
そこでDC-DCコンバータの電源端子に直列に10Ωの抵抗を入れた。
抵抗による疑似定電流駆動だ。
これによって二次電圧の立ち上がりは遅くなった。

DC-DCコンバータの電源電圧を見てみると、休止時間にも0Vまで落ちるわけではない。
ある程度電圧が下がるとDC-DCコンバータ自体が動作しなくなり、電力を消費しないので、電源に入っている電解コンデンサの電荷が減らないのだ。

さらに安全対策として、トランスの二次側巻き線と並列にZNR(ちなみに東芝はTNR)を入れた。
電圧が上がろうとするとZNRに電流が流れて阻止する。
ZNRの電圧を適切に選べば、その電圧までは上げることが出来る。

電気柵回路図(最終版)

ディスチャージ用コンデンサは6μF/450V以上のフィルムコンデンサ
SCRは15A以上/600V以上のものなら何でも良い
10Ω/5Wと220Ω/5Wの抵抗はセメント抵抗を使う
それ以外の抵抗は1/4Wか1/8Wのカーボン抵抗
0.01μFは16V以上のセラミックコンデンサ
0.1μFは50V以上のフィルムコンデンサ
100μFは35V耐圧の電解コンデンサを使う。
イグニションコイルは開磁路型が良い。

イグニションコイルは中古価格によるが、他のパーツを新品で集めたとしても3千円くらいで出来る。
ケースは(屋外に置くのであれば)防水のものに入れる。
完全密閉は結構難しいので、下面にあえて穴を開けるなどして通風性を確保しておいた方がトラブルが少ない。
ハヤコートをスプレーしておくと湿気などによるトラブルを回避出来る。

ZNRは221Kとなっているので380Vではないかと思う。
これはたまたま手持ちがあったからこれにしただけだ。
ZNRの物理的大きさは許容電力なので、大きい方が安心出来る。

開磁路型イグニションコイルを使った場合、電気柵電源の出力電圧が350V前後で柵線電圧が15kVに達する。
閉磁路コイル(シグナスX用)の場合は400V近くまで上げないと、柵線電圧が15kVに達しない。
従って新規に用意するのであれば241K(415V)が良いと思う。

DC-DCコンバータの電源に入れた抵抗も、同様に10Ωがあったから10Ωを入れた。
充電はかなり時間がかかり、1秒サイクルの終端まで充電が続く。
感覚的には3.3Ωとか4.7Ωで良いと思うのだが、手持ちの抵抗がなく実験出来ない。

DC-DCコンバータの出力側のコンデンサをオリジナルの10μFで使う場合は、10Ωの抵抗ではチャージ時間が間に合わない。

回路の追加などでスペースがなくなってしまった。
ケースに入れた状態で数時間稼働させたが、異常はなかった。
中華タイマーの消費電流が50mAくらい、DC-DCコンバータの平均消費電流が200mA程度と大食いだ。
電源電圧が10Vまで下がると動作しなくなった。

DC-DCコンバータの出力電圧は300V~350V位が適切ではないかと思うが、これはイグニションコイルの巻き線比によっても変わってくる。
最終的には柵線の電圧が10kV~12kV位になるように、柵線電圧計で測って調整するのが良い。

製作を終えて

中華DC-DCコンバータを甘く見ていたというのが本当のところである。
電圧制御が正しく行われていれば何ら苦労はなかったのだが、オーバシュート対策が必要だった。
ただ、それを行えば手軽に使えて丈夫(実験中にダイオード以外の部分は壊れなかった)で安価だ。

中華タイマーは他の機器でも使っているし、水槽の水流ポンプ要としても実績がある。
最も信頼性のない部分がリレーで、ウチにあるいくつかのタイマー基板はこのリレーをPanasonic製に交換して使っている。
Panasonic製はピンコンパチなのだが、物理サイズが少し大きいので端子に干渉する。

その後この基板に付いているものと同じ中華リレーを入手して交換してみると、そのリレーは信頼性が高かった。
この事から、このタイマー基板に使われているリレーは検査落ちの不良品なのではないか?とも思った。
不良品を格安で仕入れてきて製品に使ってしまうのは、中国では良くある事だ。

高圧発生用に、一般的な50/60Hz用の電源トランスを使ってみたがダメだった。
10kV以下でもリークし、トランスのあちこちで火花が飛びまくる。
しかも放電時間が短く、電気柵用としてはエネルギが少ない。
手軽なことから電源トランスを使った製作記事を見かけるが、エネルギの少なさとリーク問題があるので実際問題としては使えない。
定格100Vの端子から数kV以上を取り出そうというのだから致し方ないが、信頼性が低いのでやめた方が良い。

メーカ製の電気柵電源を見ると、出力は10kV程度となっている。
8kV以上あれば良いとされ、猪などは鼻先で柵線を触ってくれるので3kV程度でも効果があると言われる。

本回路での最大のデメリットは消費電流が大きいことだ。
放電エネルギも大きいが、DC-DCコンバータに効率の良いものを使うなど、改善の余地はある。
消費電力が大きい代わりに安価だと思えば良いか。
自動車用のバッテリーで駆動したとして、日中だけに制限しても2週間程度しか持ちそうにない。
ソーラパネルとの組み合わせが良いだろう。

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