ワックスやコーティング剤の皮膜はどのくらいの厚みなのだろう?
こちらのページによればワックスの厚みは10μmにもなると書かれている。
(下のグラフは同ページより)
塗膜などの厚さを知っている人ならおわかりだと思うが、10μmは相当な厚さだ。
余程透明で自動車塗装のクリア層と屈折率が近いものでなければ、そして表面がかなり平坦でなければ、車全体が曇って見えることになる。
更に言うと10μmもの厚さで自動車全体を塗る?となれば、1kg以上のワックスが必要になる。
と、ちょっと考えれば分かりそうな事なのだが、このページをコピーしたと思われるヘッポコページには、ワックスの厚さは10μmだと書かれていたりするのが面白い。
では本当のところはどうなのだろう?
ウチには光学式膜厚計がないので、たぶん測れないと思うがやってみる。
使ったのは新潟精機の厚みゲージである。
まずはワックス(Gガード固形)とコート剤(太陽光コート)を顕微鏡で使うカバーグラスに塗る。
塗っただけで拭き取らない状態なら、何とか測れそうな気がするが…
多少でも膜厚を稼ぐために、ガラスの両面に塗布した。
何も塗っていない部分の厚みが0.941mm位だ。
ただ塗った部分と塗っていない部分のガラスの厚みのばらつき(平坦性)もあるし、温度による誤差も考えられるので、1μmの精度は相対値であるとしても厳しい。
Gガード固形をガラスの両面に塗った部分の、ワックス皮膜厚は1μm位だ。
太陽光コートを塗った部分は少し厚く1.5μm位ある。
次にワックスやコート剤を拭き取り、ガラスが透明に見える状態にして再度測ってみる。
何も塗っていない部分はもう一度計り直した。
最初に測った時より少し針が振れているので、0.9415mmと読んでおこうか。
Gガードを塗り、拭き取ると残ったワックス膜厚は…… 測れなかった。
太陽光コートは少し針が振れているので0.5μm位は残っている?
ただガラスの平面度の問題もあるので、測定誤差に埋もれていると考えるのが自然だ。
光干渉膜厚計でも0.3μm前後の分解能なので、果たしてワックスの膜厚は測れるのかどうか。
光学式膜厚計の場合は光の波長がリミットになる。
例えば10nm幅の線が引かれていたとして、ここに可視光線を当てても線の幅が可視光波長以下なので見ることが出来ない。
海外でもワックスの厚みはどのくらいなのかと議論されていたりするが、連続性がなくなるのでこれより薄く塗る事が出来ない厚み以上で、容易に計測が出来る厚み以下、みたいな事が書かれている。
具体的には数十~数百nmくらいではないかと。
なお拭き取らないタイプの、床用液体ワックスだと10μm~20μmの厚みに塗る事が出来る。
ダイヤルゲージも持ち出してみたが、ダイヤルゲージの先端は細いので皮膜に力が加わってへこむと思う。
一応測ってみたが、皮膜の厚さは測れなかった。
ミツトヨのディジタルタイプもあるが、分解能が10μmなので当たり前ながら測れない。
ガラスを移動させながら測ってみたが、少なくとも10μm以下の平坦度である事は分かった。
まあ何をやっても測れないものは測れないのだ。
硬化型のコート剤であれば塗り重ねることで膜厚を増やすことが出来るのだが、そもそもコート剤は汚れなどを付着しにくくする効果があるので、塗り重ねたコート剤と予め塗られていたコート剤が上手く密着せず、剥がれやすくなる。
非硬化型の場合は、新たなコート剤を塗る時に予め塗ってあったコート剤が溶けるので、膜厚があまり増えない。
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