中華ウインチが壊れた

中華ウインチが壊れた

中華ウインチに関してはこちらに書いた。
木を切る時などに5回使用した。
ウインチのテストも入れれば6回目で壊れた事になる。

能書きほどのパワーは無いので、滑車を使って減速(増力)して使う事が多かった。
定格は約900kgだが、簡易計測で400kgは牽引出来た。
したがって常に定格以下で使っていたというか、定格までの力は出なかったのだ。
ワイヤーも低品質で、一部がほどけたように撚りが戻ってしまったところがあった。

切った木を片付けたり、他の木に引っかかった木を引っ張ったりしていたのだが、急にトルクがなくなった。
ガラガラと異音を立てるばかりで、プーリーは回ろうとしない。
その時はウインチのテンションが無くなっても大事に至らない使い方だったから良かったが、何かを引っ張っている最中だと危険な状況になったかも知れない。

動作音がおかしくなったのでギア系のトラブルであると想像は出来た。
どこかが外れたか緩んだかして噛み合いが悪くなったのか?程度に思っていた。
壊れたのでは仕方が無いので、その日はウインチを使う作業は中止した。

中華ウインチは安いのだが、これほど早く壊れるとは思わなかった。
数十回使ったとか、のべ数十時間使って異音が出るようになるとか、2年くらいしたら各所がさび始めたとか、そもそもモーターと減速機なのだから壊れるような場所はないと思っていた。
不思議遊星歯車なので、歯が減って動作音が大きくなるくらいの事はあると思っていたし、モーターは普通のブラシモーターなので、ダイソンの掃除機ヘッドのようにブラシがダメになる程度なら想像は出来た。
しかしガラガラ音がするばかりで全く牽引しなくなるとは、何がどう壊れたのか。

そこで分解してみる事にする。
分解はモーターとプーリー側を止めているボルト2本を外し、ギア部分のネジ4本を外すだけだ。
ワイヤーロープを巻いているプーリー側の歯車は特に異常はない。
ここの歯車を嵌合させたり外したりする事で、プーリーをフリーにする仕掛けだ。

元々は余りグリスは塗られていないのだが、購入時に分解してグリスアップした。
先人達同様にモリブデングリスを使用した。
ジムニーのキングピンベアリング交換時に使用した余りである。
このピニオンは、不思議遊星歯車側に嵌合する。

不思議遊星歯車のアウトプットギアも特別異常は見られない。
円周状に跡が付いているのは、ここがゴムのガスケット的なもので押さえられているからだ。
押さえられる事によって、このギアとプラネタリギアが外れずかみ合う。

アウトプットギア側も歯が減っているような感じはしない。
このパーツはアルミか亜鉛のダイキャストのように見える。
価格からすると亜鉛かも知れない。

金属摩擦が起こった風でもなく、無理な噛み合いとなる不思議歯車機構ではあるが、おかしな歯の減り方もしていない。
これも使用回数が増えればギアが多少は傷むのかなとは思うが、高々数回の使用なのでギアが減る事も無かった。

プラネタリギアは鉄で出来ている感じがする。
そこそこ重さがある。
不思議歯車なのだが、歯の形状は一般の歯車同様だと思う。
本来は歯数の違う2つのギアとかみ合うので、それに応じた歯の形状に加工しなければならない。

モーターのピニオン(サンギア)にも異常は見られない。

異常があったのはアウターギアだ。
不思議遊星歯車なのでアウターギア(内歯車)は固定されている。
プラネタリギアは固定されたアウターギアと出力軸のつながるアウトプットギアの両方にかみ合っている。
減速比は固定されたアウターギアとアウトプットギアの歯数比になる。
この固定されたアウターギアの、プラネタリギアとかみ合うべき所の歯が全てなくなっている。

下の方に歯車形状になっている部分があるが、これはプラネタリギアとはかみ合っていない部分だ。
本来はこの歯車形状が上の方にまであるはずなのだ。

購入時の分解写真を見れば分かるが、これが正常な歯の高さだ。
機械工学のプロが見れば、一目で強度不足だと分かるのだろう。
しかし私にはサッパリ分からなかった。

壊れたものは、かみ合うべき部分に歯がない。
そしてグリスの中からこんなものが…

歯車ってこんな欠け方をするのか。
外周のパーツに歯を埋め込んだ構造だったらそれが外れるかも知れないが、これは一体だ。
構造不良というよりは強度設計が不適切だったと見るべきだろう。

不思議遊星歯車は固定されているアウターギアとプラネタリギアに、出力トルクと同じだけの力が加わる。
出力トルクはアウトプットギアから取り出されるので、アウトプットギアと固定されているアウターギアには同一の力が加わっている。
説明が難しいが、固定されているアウターギアを支えにして、プラネタリギアがアウトプットギアを回すみたいな感じだ。
破損したのは固定されているアウターギアの方だけなので、部材の強度の問題か。

ギアの歯がなくなるとは思わなかった

牽引力が異なってもギア部分は同一だと思われるモデルがあるので、より強力なモータを搭載したものでは、より早く破壊が進む事になる。
牽引力が強いものはモーターが大型のものになり、不思議遊星歯車のギア比も多少異なる。
しかし写真を見る感じでは、不思議遊星歯車のギア幅はどれも余り変わらない。

ウインチを使おうとして、テンションがかかった途端ガラガラ音がして動かなくなったという記事は以前に見た。
ハイパワーなモーターを搭載したモデルでは、モーターのパワーでギアを即座に破壊出来る。
それら記事を読んだ時は初期不良かな?と思って余り気にしなかったのだが、なるほどこう言う事かと実感した。
こちらの動画でも、音はすれどワイヤーは引かれない。

モーターは使えるのだが、それが何かに使えるかというと考えてしまう。
モーターのパワー的にはエンジンのセルモータ程度だろうか。
100A以上の電流が流れるので、軽自動車くらいなら始動できるかな?
電動アシスト自転車用に使えるかも知れないが、ピニオンギアは抜けるのかな。

購入店では、保証は7日間だけですと言っていた。

怖くて使えない

ワイヤーの強度は調べた。
余裕はないが、切断強度を考えれば切れる事はなさそうだった。
そもそもウインチ自体の牽引力が仕様以下なので、モーターがストールするところまで力を加えても大丈夫だ。
万一それ以上の力が加われば、モーターが逆回転してワイヤーのテンションが下がる。
ブレーキ機構は無いので、いくらギア比が大きいとは言っても逆回転してしまう。

ウインチが壊れれば危険な状況にもなるので、ウインチを取り付ける位置やワイヤーのかけ方などにも注意した。
木を引っ張る時には、木に巻き付けたワイヤーがずれないように木に切り込みを入れた。

もしもギアの歯が欠ける可能性を知っていたら、とてもではないが怖くて使えなかった。
モーターよりギアが弱いなど、間違ってもあり得ないと思っていたからだ。
ギアが欠けてワイヤーがフリーになり、その反動で木が逆方向に傾けば電線に接触していたかも知れない。
家の近くの落葉樹は、家の方向に枝を張り出していた。
ウインチで引っ張って家とは逆方向に倒したが、もしもウインチで引けない状況になったら木は家を直撃した。
これはもう、考えただけで怖くなる。

自動車用ウインチとして使う場合も、牽引力が突然ゼロになったら危険だ。
斜面をひっぱっり上げている途中でリールがフリーになれば、ワイヤーの長さの限界まで坂道を落ちていく。
ワイヤーの長さの限界で止まれば良いが、速度が出ていればワイヤーが切れるかリールがもぎ取れる。
切れたワイヤーは反動で車を直撃し、フロントガラスが木っ端みじんになるかも知れない。
最近はワイヤーロープではなく樹脂製ロープを使うのも、切れた時の危険性の問題があるからだ。

新たなウインチを考える。

ウインチを使う事は余りないだろうと思っていた。
いや、チェーンソーだってそうだ。
木を何本か切ったらその後は使わなくなるのではないかと思っていた。
しかし実際には木は生長するわけだし、新たに切りたい木も出てくる。

そんな時にウインチが一つあると便利なので、何かと使いたくはなる。
切った木の移動など、軽い木であれば滑車を使う事もなくウインチだけで事足りる。
木を切る時にウインチを使わなくても、ウインチがいつでも使える状態にある事は安心感につながる。
切ろうとした木が倒したい方向以外に倒れそうになったとか、他の木に引っかかってしまった時などもウインチがあれば心強い。

そんな訳で、新たなウインチを物色中だ。
ただ普通の、つまり工業用のウインチは重量がある。
15kg~20kgとなると気軽には持ち運べない。
工業用ウインチだと耐荷重100kgのものでも15kg以上の重さはある。
DC12Vのタイプ(この中華ウインチは数kg)ならば軽いのだが、信頼性の高そうなものはかなりの重さと値段だ。
小型の12V用ウインチはさほど重くはないのだが、バッテリーも持ち運ばなければならず、合計重量は15kg以上にはなる。

自動車用ウインチ

自動車用だと本場アメリカでは各種販売されている
WARNなども日本に入ってきているのが製品のごく一部である事が分かるほど多くの種類がある。
価格は日本で買うよりずっと安いのだが、重いものなので送料がかかる。
構造は中華ウインチ同様に不思議遊星歯車を使っている(中華ウインチが構造ごとコピーした)ものもあるが、ギアの厚さが全然違う。
材質も鉄系のものではないかと思われる。

形状からすると、これは不思議遊星歯車タイプで、こちらは多段ギアタイプだと思う。

WARNのギアボックスは多段(3段が多いようだ)のプラネタリギアとなっている。
アウターギアが共通のものもあるし、各段で異なるのものある。
1段目のプラネタリギアが2番目のサンギアに連結、2段目のプラネタリギアが3段目のサンギアに連結され、最もトルクの大きくなる3段目のギアはかなり歯の幅が広い。
それでも歯車の欠けが起きるというのだから、小型ウインチの限界なのか。
なお12V(24V)車載用ウインチでは9t以上の牽引力のものも(米国では)市販されている。
これは約8tの牽引力で、12V/500Aで動作する。
ウインチの重量は約57kgと重い。

プラネタリギアは設計自由度が大きくはない。
インボリュート干渉、トリミング干渉、トロコイド干渉などを考えた場合の最大減速比は14位だと思う。
このため無理のない減速比に設定し、ギアを複数段にして1:100~1:200程度の減速比を得ている。
上でリンクした動画だと1:6のギアを3段で1:216の減速比を得ている。
遊星歯車を使うのは、大きさの割に強度を高めやすいからだろうか。

不思議遊星歯車は1段で大きな減速比が得られるため扁平に出来る。
しかし多段プラネタリギアは段数の分だけ厚みが増えるため、プラネタリギアタイプはモータの(プーリーを挟んだ)反対側にギアボックスを配している。

レバーホイストやチルホール

レバーホイストチルホールなど、手動の牽引装置も考えた。
1t程度の牽引力のものは重さが15kg以上もあるが、400kg位のものなら8kg程度と軽くなる。
ただ手動なのでレバー比が大きく、レバーを一度引いてワイヤーが3cm~8cm位動く仕様のものが多い。
木を切り倒す時にテンションをかけておく分には良いが、かかり木を引っ張って倒すような用途や切った木を牽引する用途では、3m~5mは引っ張るのでレバー操作が大変になる。
チルホールは長いワイヤーを使えば揚程は増やせるが、レバーホイストは揚程が1m~2mしかない。

チルホールは専用のワイヤーロープを使う。
ワイヤーロープは徐々にすり減る消耗品で、それなりの価格だ。
これも中華ものは安いのだが、中華ウインチのワイヤーは1度の使用で部分的に撚りがほどけた。

手動式のウインチなども中華ものなら3,000円程度で買える。
能書きでは500kgが引けると書かれているが、どうにも作りが貧弱である。
12V電動ウインチも貧弱だったのだが、一応はそれっぽいプラネタリギアだった。
ハンドウインチは板金みたいなギアだし、それを抑えている金具も強度が心配な感じがする。
ギアやストッパーが外れたら恐ろしい事になるわけで、どうにも手を出しにくい。
(下の写真は公称1t用)
中華ウインチの固定用に厚さ4.5mmの鉄製Lアングルを使ったのだが、400kg前後の荷重で結構変形した。
下のハンドウインチの板金は3mm~4mm程度だと思われ、かかる力の向きによっては変形する。

板金ギアの集大成、これで4tを引こうというのだから凄い。
ワイヤーリールより板金ギアの方が少し大きい位なので、殆どレバー比だけで引く事になる。
これがAmazonでは4千円以上で売られているのだから、それも凄い。
ヤフオクのショップでは1,500円くらいである。
能書きは「強力トリプルギア」、何のことかというと板金が3枚重ねてある事らしい。

商用電源で動作するウインチ

AC100V用の中華ウインチもある。
これなど1200kg/毎分4mの巻上速度を誇るが滑車を使わなければ600kgだ。
家庭用100Vで使えるとあるが、モータが2.1kWなので日本では使えない(最大電流は25A以上流れるのではないだろうか)。
滑車を使った時の牽引力を表示するのなら、ロープホイストなどを付属させればいくらでも牽引力を高められる。

ワイヤーの太さ、ボルトの太さを見ても1.2tに耐えられるとは思えない。
ちなみにこのモデルの300kg版のワイヤーの太さは3mmと、日本の200kg級工業用ウインチの半分の太さしかない。
滑車を使った場合にはワイヤーの一方をウインチ本体に引っかけるのだが、その引っかけ部分が(重さに耐えられず)破損するという記事もあった。
角材に取り付けてる金具を止めているボルトが破断するという記事もある。

この中華ウインチはコンデンサモータで、写真の黒いボックスには2個の大きなコンデンサが入っている。
2個のコンデンサは並列接続されている。
モータの小さいモデルではコンデンサは1個になり、より小型のものはコンデンサがリモコンスイッチボックスに入っている。

誘導電動機は3相用のモーターではウインチに使われる。
相の入れ替えで正転・逆転が簡単なためだ。
三相誘導電動機はスリップ率が増加(ウインチでは負荷が増大)した場合でもトルクが減少しにくい。
しかし単相コンデンサ型モーターでは、スリップ率の増加でトルクが減少していく。
これは定格以上の負荷ではトルクが減少して巻き上げが出来なくなる事を示し、破壊に至らない方向で安定する。
(電流は増える)

単相用の小型ウインチではDCモータを使うものも多い。
ブラシモータは回転数やトルク特性の設計自由度が高い事、回転数が落ちるとトルクが増大する事などのメリットがある。
ブラシモーターは負荷が増大しても回転速度が落ちにくいので、無負荷時と負荷時の巻上速度に差が少ない。

工業用のウインチは高価だが信頼性は高い。
ただし引張荷重の大きなものは三相200Vを必要とするなどで、単相100Vで動作するホイストとしては(ウインチで有名な)コーケンのBH-815の250kgが、定置型ウインチだとWK55Sが650kgで最大級ではないかと思う。

ホイストは耐荷重よりも揚程と速度が重視されているような感じがする。
BH-700の耐荷重は130kgだが、巻上速度は毎分25mと速い。
コーケンのベビーホイストは400W~800Wのモータ出力で、ギアはヘリカル歯車なので静かだと謳われる。
実際の動作音も静かなもので、モーターノイズもギアノイズも殆ど気にならない。

RYOBIだとWI-195が200kgの耐荷重で、価格は20万円くらいだ。
RYOBIのホイストは、おそらくギアノイズだと思うのだが動作音が大きい。

650kgの耐荷重のウインチはこんなにゴツいものになる。
中華ものとは信頼性が違うわけだが、こうしたものを見てしまう&壊れた中華ウインチを見ると、安易には中華ものに手を出しにくくなる。
ワイヤーの太さやワイヤーの品質を見ても、国内製品とは全く違う。
木を切り倒す時に壊れなかったから良かったが、あの時に壊れていたら危険な目に遭っていた可能性がある。

この木はウインチで引っ張って道路側に倒した。
反対側には電線があり、木の幹はその電線に接触している状態だった。
ウインチ使用3回目、まだ使えていた頃の勇姿である。

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