ジムニーのステアリンがブレる

自動車&バイク

激しいシミーに驚いた

ジムニーの持病とも言われるステアリングのブレに関してである。
(リジッドアクスルのランクルなどでも起きることがある)
これまでにもキングピンベアリングの傷みなどで振動を感じたことはあったのだが、これほどまでに酷いシミー(まさにこの動画のよう)は初めてだった。

事の起こりは冬タイヤから夏タイヤに替えた時だ。
夏タイヤは中古ホイールにオマケとして付いてきた、ナンカンのFT-9 A/Tタイヤである。
夏タイヤに使っていたホイールの傷みが激しくなったので、交換用としてホイールを物色した。
そしてこれを4本/3千円で購入した。

冬タイヤであるアイスガードからナンカンのFT-9に交換し、最初に感じたのはステアリングの軽さと直進復元力の弱さだった。
タイヤのグリップなどでこれほど違うのかなと、最初は思った。
後に気づくのだが、タイヤ(ホイールごと)交換した時点では、いずれも純正ホイールで差は無いと思っていたからだ。

タイヤを交換して走ってみるとシミーが出る。
しかも凄まじいばかりの振動で、走ることを拒否しているかのようだ。
振動は40km/h辺りから出始める。
綺麗な舗装路を走っている分にはなんともないが、ギャップを拾うなどして一度振動が始まると手に負えなくなる。
車内のものはガタガタと振動し、ステアリングは手を添えていられないほど激しく動く。
家に戻ってチェックするとホイールナットが少し緩んでいた。
ホイールナットは確実に締めているので、振動で緩んだのだろうか。

ホイールオフセットとの関係は?

シミー対策は色々ある。
色々あると言うことは、決定打が無いと言うことだ。
しかし何故タイヤを替えたらこんなにも酷い状態になったのか。
もしやホイールが違うのではないか。
と言うかこの時点まで違いに気づいていなかった訳で… 外観も良く見れば違いがあるのに。
ホイールの裏側を見るとオフセット(インセット)らしき数字がある。
冬タイヤのホイールは20であり、ナンカンを付けたホイールは22だ。

ステアリングが軽くなること、復元力が減少することを考えるとインセット22mmでキングピンオフセットがゼロに近くなるのではないかと思う。
ジムニー純正ホイールのオフセット値は22mmだと書かれている。
しかし20mmのものも22mmのものもSUZUKIの刻印がある。

インセット22mmでキングピンオフセットがゼロに近づくとすると、インセットが20mmの場合はタイヤの中心が内側に来るのだから、ネガティブオフセットになる。
リジッドの場合にステアリング操作でキャンバーは変わるのだろうか。
変わるとすると、キングピンオフセット(SAI)値によって直進性が変わる(ステアリングの切れ角に対してタイヤの高さが変わる)事はありそうだ。

ただアライメントが変化しないとすると、SAI値による直進性の変化は余りない。
では旋回時からの復元はどうか。
SAIがゼロでない場合の方が復元力が強くなり、これは直進になりたがることを示す。
つまり直進安定性に寄与していると言うことか。

現象としてインセット20mmのホイールをインセット22mmのものにしたらシミーが発生した。
インセット20mmのホイールよりもインセット22mmのホイールの方が復元力が弱く、タイヤがぐらつきやすい??

理屈はよく分からないが、ステアリングを重くすることでこの対策を行うパーツがある。
キングピンベアリングにシムを入れて締め込んだり、ナックルシール部分に抵抗を持たせるような樹脂パーツを挟んだり、タイロッドエンドを強く締めるためのナットなどもある。

タイロッドエンドの取り付け部はテーパーになっているので、ある程度の力で締め付ければ動くことはない。
激しいシミーで緩むというのならともかく、ここの締め付けトルクを増やしてシミーが減少する理屈が分からない。

本質的には直進性をあげれば良いと思うので、キャスター角を増やすなどすれば良いがジムニーでは出来ない。
もう一つはステアリングダンパーの装備であり、BENZなどでは乗用車でもステアリングダンパーを装備しているものもある。
(ジムニー用も社外品がある)
JB64では純正でステアリングダンパーを装備した。
メーカも対策に困ったのだろう。

アライメントを変更すれば良いと言っても出来ないものは仕方がないので、キングピンとキングピンベアリング間にシムを挟んで抵抗を増やす作戦を採ってみる。
このシムは市販されていて、さほど高額なものではない。
シムではなく調整式のものもある。

シムを作る

シムなら金属板から切り出せば良いので、手元にあった0.3mm厚の銅板を加工することにした。
しかし薄い銅板は加工が面倒だ。
粘りがあるので中々削れず、銅板が薄いのですぐに曲がってしまう。
ウチにある鉄工用のキリは10mmが最大なので、それで穴を開けてからハンドリーマーで穴を拡大した。
穴の大きさは15.5φ(キングピンの太さが15φ弱)程度必要だ。

写真に写っているベアリングは、駄目になって交換したキングピンベアリングだ。
これの中央の穴(15φ)に合わせて銅板に穴を開けた。

この銅板をキングピンに挿入し、元通りに組み付ける。

最初は1枚入れてみたが、密着しているのかしていないのかよく分からない状態だったので、2枚入れた。
2枚入れてテスト走行したあとで再度バラしてみたが、シムが擦れたあともなく変形もない状態だった。

左側にのみ0.3mmのシムを2枚入れて試運転した。
振動する気配はあるが、すぐに収まる感じだった。
しかし舗装の荒れた路面を通過すると、激しい振動に見舞われた。
改善傾向にあることは間違いが無いので、更にシムを追加してみる。

ランドクルーザーのリジッドサスモデルの場合は、キングピン部分のガスケットの厚さでプレロードを調整する。
プレロードは規格値があるようで、引っ張りトルクを測るそうだ。

シムを入れ、激しいシミーはなくなった

左側には0.3mmのシムを3枚、右側には2枚を入れた。
前回同様に舗装の荒れたところを走ると、多少振動の気配はあるがすぐに収まった。
もっと厚いシムを入れるべきかどうかは悩ましいところだが、とりあえず走れるようにはなった。

トー調整で改善されるという話もある。
ジムニーでいじれるのはトーくらいなのでいじるわけだが、直進性を改善するにはトーイン方向に向けるのが良いと思うのだが、一概にそうとも言えないらしい。

SAIを変えて状態が変化するなら、ホイールスペーサーを挟んでも変わることになる。
トー調整やホイールスペーサーなど、機会があれば実験してみたい。

キングピンベアリングの交換

キングピンベアリングは2度交換している。
最初は中古でこのジムニーを買った後に交換した。1/2/3
下の写真は中古で買ったジムニーに元々付いていたものだ。

中古ジムニーで激しいシミーが出たわけではないが、年式からして交換時期ではないかと思った。
ベアリングは錆びていて、片側はローラーが外れるほどになっていた。
しかしその割にシミーは発生しなかった。

この時にベアリングを交換したので、少なくとも数年は再整備は不要だろうと思っていた。
しかし現実は厳しかった。
というか、グリスの量が少なかったのか。
最初にバラした時は、下の写真のようになっていた。
(この時はハブ部分を引き抜いてドライブシャフトが残るように分解した)
グリスは劣化というか変質していてベアリング付近には錆もみられる。

整備書ではグリスを200gを入れることになっているが、他の整備記事などを見ると”満タン”に固いグリスを入れているものがある。
最初にキングピンベアリングをと交換した時に使用したのはモリブデングリスなのだが、粘度が低い為もありグリス切れが起きやすかったのかも知れない。

2度目のキングピンベアリング交換の記事はこれだ。
夏タイヤから冬タイヤに交換したらシミーが起きた。
ただこの時のシミーは、今回に比較すれば軽微なものでしかなかった。

このベアリングはクルクル回るところではない。
交換後約3年経ったベアリング、つまり上の写真の時に交換したものだ。
右側が上部のもので錆びているし、グリスは固化している。
左側は下部のもので正常だ。

どうせイジるなら各部の再整備もする

キングピンベアリングは、まず左側だけを新品に交換した。
右側の上を開けてみるとベアリングが傷んでいたので、左側の下に付いていたもの(ほぼ傷みはない)を流用した。
これは手持ちがなかったためだが、ベアリングは安いものなので、再度新品に交換する。
交換時にグリスも固めのものに交換したい。
WAKO’Sのリチウムコンプレックスグリスはちょう度2号なのに結構堅く感じるのだが、ウレアグリスは同じちょうどでも少し柔らかい感じがする。
キングピンベアリングなど10年くらいは持っても良さそうなものなので、水分が付着しないようにグリスをたっぷり充填したい。

タイロッドエンドを交換する

タイロッドエンドも年式からすれば寿命だろう。
前回の車検時に若干ガタがあると指摘されている。
触ってみてもよく分からないのだが、プロが言うのだからガタがあるのかも。

タイロッドエンドをナックル部分から外すのは、タイロッドエンドプーラーがあれば何と言うことはない。
タイロッドエンドプーラーがないとかなり苦労するはずだ。
特にステアリングギアボックスの所はスペースがないので、プーラーがあった方が良い。

しっかり嵌合している(プーラーがないと外れないくらいシッカリ)場合は、ボルトを緩めるのはスパナやラチェットでも出来る。しかし締め込む時にスリップしてしまうようだと、インパクトが無いと少し手間がかかる。
ボルト部分はテーパーになっているのだが、取り付けた時に摩擦が少ないとボルトが共周りしてしまう。
タイロッドエンドを下から持ち上げるようにジャッキを掛けて押さえるなどすると、テーパー部分の摩擦が大きくなり供回りを防げる。
スリップがある場合は、私はインパクトで締めてしまう。
エアインパクトを持ち出すまでもなく、電動インパクトでも締まってくれる。
ある程度締まれば、あとはメガネで締め込んでいけば良い。

タイロッドからタイロッドエンドを外すのが厄介だと言われる。
ロックナットがきつく締まっていて外れないのだとか。
純正タイロッドエンドのロックナットは対辺24mmと大きい。
タイロッドもスパナで押さえられるようになっているが、何せ固いのでタイロッド側を押さえるスパナをタイヤで挟んで固定してロックナットを回した。

長さを測って分解開始

タイロッドエンドを抜いて交換する場合に、取り付け位置が狂うとトーインが狂う。
或いはステアリングのセンターが狂う。
ステアリングドラッグも、タイロッドも、正確に長さを測り、何ならタイロッドエンドの山数も数えて同じ位置に固定する。
まあトーインを取り直せば済むことなんだけど。

ロックナットは固く締まっていたが、何とか外すことが出来た。
ステアリングドラッグもタイロッドもターンバックル風になっているので、片側(右側)は逆ネジである。

タイロッドエンド2個からグリスが漏れ出したが、これは外す時にブーツを潰したからだと思う。
片側はグリスの色がちょっと不審だ。

動かした感じガタはないが、新品の方がしっとりしている感じはする。
新品は社外品を使った。

作業として特別難しいところはない。
ロックナットが固くて外しにくいとか、ナットが共周りしやすい(ぎゅっと嵌めれば大丈夫だと思う)とか、そんなところである。

これまで使っていたタイロッドエンドは、いったん外したあとに組み付けてキツくネジを締めたとしても、再度外す時には(プーラーを使うまでもなく)外す事が出来た。
しかし新品は、一度締め付けるとプーラー無しでは外れないほどキッチリと嵌合する。

純正品は普通のナットだが、社外品はロックピンが入れられる構造になっていた。
ロックナットのサイズも違う。

ネジピッチからすると、タイロッドを1回転させるとトーは7mm変化するはずだ。
基準は4mmなのだが、トーアウトにした方がシミーが少なくなるという話もある。
簡易的にトーインを図ってみると2mm位だった。

シムの枚数を減らす

タイロッドエンドを交換する時に左右輪の連結やステアリングギアボックスとの連結が外れる。
その状態でハブを手で動かしてみると、シムを3枚入れた左側は抵抗が大きい。
右側はシムが2枚なのでさほどでもない。
ちなみにシムを入れなければかなり軽く動かすことが出来る。
ハブを動かした時の抵抗感から、3枚(0.9mm)はやり過ぎなのかなと思った。
2枚に戻すとシミーが出る可能性もあるが、タイロッドエンドも交換したことの効果にも期待してシムは3枚から2枚に減らした。

ナックルシール・グリス・オイルシールを交換する

ハブベアリング交換時にナックルシールはそのまま使用した。
右側上部のキングピンベアリングは傷みがあったので、左側下部から外したものを使った。
下部のベアリングには傷みがなかったからだ。
写真は右側から外したベアリングである。

今回はグリスの変更を行うので、ベアリングも新品に交換する。
グリスを交換するにはドライブシャフトを引き抜くことになるので、オイルシールも交換する。
オイルシールは当然再使用できるものだが、意外に寿命が短いと言われているので念のため。

前回分解した時のように、エアロッキングハブを外してバラバラにする手もあるが、今回はハブ部分を付けたままドライブシャフトを引き抜くことにする。
ある記事を見ていたらドラフトと書いてあって、最初は何のことか分からなかった。
どうやらドライブシャフトのことをドラフトと言うらしい。
ドラシャとかドラシャフと書かれているのは見たことがあったが、ドラフトは初めてだった。

ドライブシャフトを引き抜くにはエアロッキングハブのバキュームホース2本とABSセンサを外す必要がある。
ABSセンサはプラスチック製のガイド的なものが挟まっているが、それが多くの確率で割れる。

ABSセンサは対辺10mmのボルトで留まっている。
多くの場合はネジを緩めてもセンサは抜けてこない。
錆などで固くなっているからだ。
無理をするとセンサが壊れる(断線する)恐れがあるので、細いマイナスドライバで徐々に隙間を広げるようにして外す。
センサが壊れずに外れたとしても、根元のプラスチックは割れるかも知れない。
割れてもまあ… 接着剤ででも止めておけば良いだろう。

なおセンサの状態と対策?はこの記事のままである。

ドライブシャフトを引き抜いてグリスを掃除する。
ビニル袋を手にかぶせて、それでグリスを掻き取るように除去した。
その後ウエスで内部を綺麗にした。

グリスまみれ状態で写真がないが、綺麗にした後はドライブシャフトのオイルシールを交換する。
オイルシールの交換は簡単である。
マイナスドライバーなどでこじって外し、新品を入れるだけだ。

前回キングピンベアリング交換時にモリブデングリスを入れたのだが、ちょう度が低すぎた。
色々な記事を見るとドライブシャフトの等速ジョイント?にはモリブデングリスを入れ、ナックル部分には固めのシャーシグリスなどを入れる事が多いようだ。
グリスが柔らかいとナックルシール部分からの漏れが多くなる。

ナックル部分のグリスはナックルシール部分の潤滑に寄与するが、例えばどこかのギアの潤滑を支えるというようなものではない。
等速ジョイントはそれなりに潤滑は必要だ。

なのでグリスの種類を変えて使う工場が多いのかなと思うが、真相は不明だ。
今回はモリブデングリスと混合しても悪影響の出ないウレアグリスを使った。
ちょう度は2であり、これより固いものは入手が出来なかった。

ギットギトのべったべたのグリスを拭き取り、等速ジョイント部分以外の所に新たにグリスを充填する。
ホーシング側の奥にもグリスを塗り、組み付ける。
余分なグリスは周りから、或いはキングピンベアリングの穴から出てくるが、これはナックルシール部分などの隙間に塗りつけた。

これでほぼ400g入っている。
整備書に従うならば200g入れれば良く、モリブデングリスは200g入れていた。
しかし3年も経たないうちに上部のキングピンベアリングが錆びたので、今回はグリスを満タンにした。
モリブデングリスに比較するとウレアグリスは固い(固いものを使った)。

ナックルシールの交換も難しくはない。
外したものに錆っぽい色がみられるので、交換時期だったのかも知れない。

組み付け後に試運転に出かけた。
シムの枚数を減らしたのでシミーが再発しないか不安もあったが、特に問題はなかった。
荒れた舗装路を走っても、振動しそうになることもなかった。
シムのみの時には振動の気配が感じられたので、タイロッドエンドの交換もそれなりに効果があったのかなと思う。

その後自動車専用道路も走ったし、舗装の荒れた山道も走ったが異常はなかった。
ステアリング復元力が小さいのは仕方がないとして、直進安定性なども問題はない。
ナンカンのATタイヤは、特に雨天時はグリップが悪い感じがする。
タイヤの性格的なところもあるので多くを望むのは間違っているとは思うので、そのタイヤにあった運転を心がけましょうという事だ。

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