ガソリン添加剤の主流はPEAである。
以前はハイオクガソリンに添加されていたが、価格の問題などで現在は使われていないそうだ。
PEA添加剤は色々なケミカル屋から販売されていて、価格や含有量も様々である。
ワコーズのFUEL1のSDSを見ると、PEA含有量は企業秘密と書かれているが、4つの主要成分の中の1つが最大25%含まれていることが分かる。
FUEL1と共によく使われるAZのFCR-062も、PEAと炭化水素系溶剤の混合物でSDSは発見出来なかった。
KUREのガストリートメントは昔から売られているもので、燃料系の洗浄と水抜き効果が謳われている。
PEAとは書かれていないので炭化水素系とアルコール系の清浄剤が主成分ではないかと思う。
これもSDSなど成分表は公開されていない。
実験はガストリートメント、FUEL1を混ぜたガソリンと、何も添加しないガソリンを大気圧下で燃焼させてススの具合を観察する。
ガソリンは約100mlをステンレス容器に入れ、そこに添加剤約2mlを加えた。
添加剤の標準使用量はガソリン量の0.3%~1%であるので、標準添加量の2倍以上を添加した。
ガソリンや添加剤を加えたガソリンに火を付け、燃料させる。
エンジン内での燃料と違い、燃料過剰なのでススが沢山出る。
ススが沢山付くようにガソリン量を多めにしたこともあり、意外に長く燃えている。
実験開始時までに多少蒸発して分量は減ったと思うが、野焼きでもしているかのごとくの煙だ。
都市部では実験出来ない程煙が出て、さすがにガソリンの量が多かったかなと思った。
写真のように容器を並べ、無添加ガソリンに火を付けると全ての容器に火が移った。
ガソリンはハイオクを使用した。
しばらく待つとガソリンが燃え尽き、火が消える。
PEAは難燃性物質なので、FUEL1添加ガソリンには燃え残りが存在する。
ガストリートメントもわずかに燃え残りが見られる。
ガストリートメント添加ガソリンは多少の燃え残りと、周囲にはススが付着している。
FUEL1添加ガソリンには多くの燃え残りが存在する。
清浄成分が蒸発?したと思われる部分にはススが余り付いていない。
無添加ガソリンに燃え残りはなく、全体にススが付着している。
底部を拡大してみる。
ガストリートメント添加ガソリンの燃え残りは、少しねばっとした感じだ。
流れるほどは残っていない。
FUEL1添加ガソリンの燃え残りは、少し溜まる程度(0.3ml程度かな)ある。
褐色のねばっとした液体だ。
無添加ガソリンに燃え残りはない。
ガストリートメント添加ガソリンを燃やした容器のススをウエスで拭いてみた。
ススは乾いている感じで、拭き取ることが出来る。
FUEL1添加ガソリンのススは湿っている。
いや、湿っている部分と湿っていない部分があり、湿っている部分は簡単に拭き取れた。
無添加ガソリンのススは表面が拭き取れるものの、容器の地肌は現れなかった。
乾いたウエスで拭き取れるだけ、ゴシゴシ拭き取ってみた。
残留物のある容器は、残留物をススにこすりつけるようにして拭いた。
ガストリートメント添加ガソリンは、薄くススが残っている。
FUEL1添加ガソリンは一部に濃いススが残り、これは拭き取れなかった。
FUEL1でピストントップのカーボンが増えるという検証動画があるのだが、カーボンを固着させるような成分があるのだろうか?
無添加ガソリンは全体に薄くススが付いていて、拭き取っても綺麗にならなかった。
次にアルカリ洗剤で容器を洗ってみたのだが、ススには全く無力だった。
スポンジで擦るなどしたが、ススを取ることが出来なかった。
特にFUEL1の燃え残り部分(左の容器)と、無添加ガソリン(右の容器)のススは強烈だ。
アルカリ洗剤がダメなら、パーツクリーナでどうだ。
ウエスでゴシゴシ擦ると綺麗にはなったが、しつこいススは残った。
KUREのエンジンコンディショナーを使ってみた。
これはカーボンやスラッジ落とし剤なので、効果を期待したのだが…
完全には取り去ることが出来なかった。
写真はFUEL1添加ガソリンのススの残った部分である。
東洋化学のキャブクリーナは洗浄力に定評がある。
これを吹きかけてみた。
かなりカーボンは取れたが、完璧には綺麗に出来なかった。
無添加ガソリンのスス、FUEL1添加ガソリンのススの一部が何とも取れにくい。
ガストリートメントの燃え残りススは綺麗に取れた。
何をやっても取れなかったFUEL1添加ガソリンと無添加ガソリンを燃やした容器は、コンパウンドで研磨して綺麗にした。
キャブクリーナやエンジンコンディショナに浸けておけば綺麗になるかも知れないが、面倒なのでコンパウンドで掃除してしまった。
添加剤を混ぜるとススが取れやすくなるのは事実だ。
気になったのはFUEL1添加ガソリンのススで、これは強固に付着していた。
ガストリートメントのススは全体的に薄く広がっている感じで、比較的簡単に落とすことが出来た。
実際のエンジンではどのようになるか?
ピストンの位置もカメラも異なるので比較が難しいが、まずはFCR-062添加前の状態。
同心円状の筋の中心がピストンの中心だ。
FCR-062をガソリンを、20リットル前後入れる度に150mlを(0.75%)添加し続け、1リットルのFCR-062を全て使い切った後の状態が下の写真だ。
確かに綺麗にはなっているが、全てのカーボンが取れたわけではない。
【8月2日更新】
上の写真を撮ってから、更にFCR-062を1リットル使い切った。
今回はFCR-062(添加量は前回同様約0.75%)に加えて、KUREのガストリートメント(添加量約1%)も投入した。
ピストンヘッドは明らかに綺麗になっている。
液体が残っているのは、難燃性のPEAなど洗浄成分だと思う。
カーボンの残っていた側も綺麗になっている。
排気バルブ
吸気バルブ
–8月2日の更新はここまで–
添加剤の燃え残りの一部は排気ガスと一緒に排出され、少量はエンジンオイルに混ざる。
これによってエンジンオイルが汚れるので、オイル交換は早めにした方が良い。
PEAの燃え残りがオイルに混ざるわけだが、PEAはオイル粘度を上げる方向に働くそうだ。
FCR-062は1リットル入りのボトルがあるが、定量を添加しながら長く使い続けるよりも、推奨添加量より多く入れた方がピストントップは明らかに綺麗になる。
PEAは難燃物質なのでオイルが汚れるのと、燃焼が不安定なエンジンやブーストアップしているターボ車などでは不完全燃焼率が増え、場合によってはノッキングレベルが上がる。
なのでいくら入れても良いと言うものではない。
ピストンヘッドを綺麗にして何がお得なのかと言われると、何とも答えにくい。
綺麗にしても走れば又カーボンは付着するし、付着するからと言ってそれが1cmも積もることはあり得ない。
カーボンの分だけ圧縮比が上がって(ノッキング余裕度があれば)良いかもしれないし、圧縮比が上がって点火時期がリタードして(ノッキング余裕度がない場合)損になっているかも知れない。
ピストンヘッドが綺麗になる云々より、燃焼室からピストンリングの隙間を通ってオイルパンに落ちるPEAの方が有効だと思われる。
特にオイルリングにはスラッジが蓄積しやすいので、そこにPEAが入るとスラッジが溶けやすくなる。
ミニの場合は直噴なので余り関係ない(吹き返しがあるので少しは効果がある)が、ポート噴射エンジンの場合は特にバルブの当たり面が綺麗になる。
吸気バルブではカーボン噛み込みなどは余りないと思っていたのだが、大量EGRを使う低燃費エンジンでは斑点状にカーボンの粒が当たり面に付着し、密着性を悪化させる。
エンジンオイルのフラッシング剤でもピストンリングなどのスラッジはある程度落とせる。
エンジンオイルとオイルフィルタを交換し、30分間程度アイドリングしてオイルを200mlほど抜いてみると、当然ながら殆ど汚れていない。
そこに即効性エンジンオイルフラッシング剤を抜いたオイル分である200ml入れ、同じように30分間アイドリングしてオイルを抜く。
抜いたオイルは結構汚れていて、スラッジが溶け出した事が分かる。
即効性エンジンフラッシング剤だと30分程度の処理時間になるが、ガソリン添加剤の場合は遅効性フラッシング剤的に効く感じだろうか。
FUEL1のボトルが大きかった頃はパワーアップ、燃費節約効果を謳っていたが、今は消極的表現に変更されているのは法対策?
複数の検証動画ではパワーも上がらないし燃費も変わらないと結論づけられ、その辺りから現在の小容量ボトル(実質値上げ?)に変わったのかな。
個人的にはガソリンに添加剤(FUEL1、FCR-062など)を入れるのは有効だと思っている。
FCR-062は1人1本に限り特価で販売されている。
1,000km走行までガソリン添加剤を入れ、オイル交換をして終わり、みたいな感じの使い方がお勧めだ。
勿論ずっと燃料添加剤を入れ続け、その間ずっと2,000kmとか3,000kmごとにオイル交換をし続けることは否定しない。
AZのFCR-062はPEAと炭化水素系溶剤の混合物で、PEA濃度は”濃い”としか書かれていない。
ワコーズのFUEL1は当初PEA濃度50%を謳っていたが、50%は言い過ぎだろうみたいな記事が出たからか?現在は”高濃度”としか書かれていない。
FUEL1はマーケティング拡大(Youtuberなどにサンプルを配る)→検証する人が増え→PEA濃度が疑問視された、という流れのようだ。
タービュランス GA-01は”新世代特殊PEA純度100%”とされていて、これがPEAを表しているのか?PEAと何かの合成物(特殊PEA)なのかは不明だ。
AZの社内調査によれば、FCR-062のPEA濃度は業界で一番濃いとなっている。
確かに標準添加量の最大値はそれを表しているように見えるが、実際の所は不明だ。
ENEOSのデポジットクリーナもPEA配合量を”業界最大級“と謳っている。
能書きとしては「本製品は主成分にENEOS独自開発PEA(ポリエーテルアミン)と特殊界面活性剤等を使用しております。」「特殊界面活性剤は水溶性デポジット(硫酸塩等)の除去に有効です。」である。
燃料添加剤は検証動画と称するインプレッション動画が多いのは、今やステマオンパレードみたいな状況だからだ。
~入れたら結果がやばかった、~を入れると驚愕の事実が!、~で劇的な変化が!、~を入れたら燃費がやばすぎる、みたいなタイトル詐欺に溢れている。
GA-01は2本(300ml)で約4千円:ガソリンに対する標準添加量0.3%~0.5%
FUEL1は2本(400ml)で約4千円:ガソリンに対する標準添加量0.25%~1%
FCR-062は3本(900ml)で約4千円:ガソリンに対する標準添加量0.25%~0.4%
ガストリートメントは2本(472ml)で約800円:ガソリンに対する標準添加量0.34%~0.47%
FCR-062は第二石油類、ガストリートメントやFUEL1は第三石油類、GA-01は第四石油類に分類されている。
石油類の分類は引火点で決まり、PEAは難燃性(発火温度230℃)である事からPEA配合量が増えると引火点が上がりやすい。
しかしワコーズではPEA含有率を上げないまま、他の添加剤成分の調整で第二石油類から第三石油類にしたと言っている。
これは危険物相当品の保管量(販売店の在庫量など)に関する規定をクリアする為だそうだ。
FCR-062を入れて走行し、ピストントップを観察するとカーボンが濡れたようになっている。
FCR-062よりずっと安価なKUREのガストリートメントでも同じように、カーボンが濡れた状態になる。
ガストリートメントの成分はG-BPAだそうだ。
G-BPAはGasoline Burning Promotion Agentsの略で、KUREが作った言葉らしい。
結局成分は不明だが、水抜き効果も謳われているので炭化水素系溶剤であるPIBA(ポリイソブテンアミン、エンジンオイル中にも含まれる清浄剤)とアルコール系の混合物ではないだろうか。
臭いは石油系溶剤を思わせる。
ガストリートメントは、2本セット×2パックを980円で買ったので、ガソリン給油ごとに1本(規定量の2.5倍位)入れている。
現在のハイオクガソリンにはPEAが添加されていないと言われていて、炭化水素系清浄剤に換えられているそうだ。
炭化水素系清浄剤は価格が安いが、清浄効果はPEAに及ばない。
ただし清浄効果が皆無かと言えばそうではなく、清浄効果を謳える程度の効き目はあるのだとか。
低粘度オイルが一般的となり、ブローバイによるスラッジの蓄積もある。
オイルに関しては潤滑性能だけではなく、カーボンの発生などの点も十分考慮すべきだそうだ。
化学合成油は水分を保持しやすく、エンジンが温まるとその水分をブローバイとして排出する。
これが吸気管内で冷えて再び乳化状態となり、スラッジを増加させる。
アイドリングストップ機能搭載車やハイブリッド車では、エンジンの停止と始動が繰り返されるので、どうしても再始動時にはススが出る。
これがEGR経路を通ってインテーク側に運ばれ、ポートを詰まらせてしまう。
ワコーズのFUEL2は排出カーボンを減らす効果があるそうなので、ハイブリッド車のインテーク系清掃後に入れ続ければカーボン蓄積が軽減される??
直噴エンジンは霧化状態の関係でPMが多いが、排出カーボンを減らす(不完全燃焼を減らす)事など出来るのかな?
燃料に0.5%添加するだけでPMが30%減りますみたいな、何かの魔法があるのだろうか?
PMの多い直噴エンジン+大量EGRは最悪の組み合わせなのだが、そこでトヨタは直噴とポート噴射の併用というコストのかかる解を選んでいる。
インテークポートやバルブに付着したスラッジを、ポート噴射で洗い流す作戦だ。
ポート噴射があるのでガソリン添加剤が有効に作用する。
一方で海外メーカでは高圧燃料ポンプとインジェクタの改良で、PM自体を減らす方向だ。
ただし高圧燃料ポンプもインジェクタも、高価なパーツとなってしまう。
もう一つは過給とバルブタイミング、噴射タイミングの設計で、遅閉じミラーサイクルで吹き返すガスを過給によって軽減する。
ただしこの方法では比出力が小さくなりがちで、低速型エンジンになる傾向だ。
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